移民農業労働者が米国で就労資格を得て法的に保護されるサービスをSESO Laborが提供

Biden(バイデン)政権が、米国の移民制度を改革する際によく見られる問題に対処する法案を議会に提出しようとしている一方で、SESO Labor(SESOレーバー)というカリフォルニア州の小さなスタートアップが450万ドル(約4億8000万円)を調達して、農場が合法的に移民労働者の手を借りることができるようにした。

SESOの創業者Mike Guirguis(マイク・ギルギス)氏は、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)やNFX(エヌエフエックス)などの投資家から資金を調達している。Trulia(トゥルーリア)の創業者であるPete Flint(ピート・フリント)氏が同社の取締役に就任した。同社は12の農場と提携しており、現在46の農場とも交渉中である。もう1人の共同創業者、Jordan Taylor(ジョーダン・テイラー)氏はFarmer’s Business Network(ファーマーズビジネスネットワーク)で最初の製品担当者として勤務した経験があり、以前はDropboxに所属していた。

SESOは1986年から施行されている規制の枠組みの中で、H-2Aビザの取得プロセスを合理化・管理するサービスを開始した。このサービスを利用すると移民農業労働者は、法的保護を受けながら米国に一時的に滞在できる。

現時点でSESOはビザ手続きを自動化し、労働者が必要とする事務手続きを整備することで、申請手続きを円滑化している。同社は労働者1人あたり約1000ドル(約10万6000円)を請求しているが、労働者自身へのサービスを徐々に提供していくことにより、安定した収益源を確保することをギルギス氏は想定している。「最終的には、農業経営者と農場労働者の双方に総合的なサービスを提供したい」とのことだ。

SESOは現在、2021年に1000人の労働者の受け入れを見込んでおり、現段階では収益が発生する前の段階である。ギルギス氏によると、就労ビザを扱う最大の業界関係者は今のところ1年間に6000人の労働者を受け入れているため、SESOは市場シェアを獲得するためにしのぎを削らなければならない。

米国における移民と農業労働者の複雑な歴史

国内での労働者不足を見込む農業雇用主が、移民ではない外国人労働者を一時的または季節的に農場で雇用できるように設立されたのが、H-2Aプログラムだ。労働者には米国の賃金法や労災補償の他、医療保険改革法(オバマケア)に基づく医療の利用を含むその他の基準が適用される。

ビザプログラムを利用して労働者を雇用する雇用主は、出入国時の交通費を支払い、住居を無償または有償で提供し、労働者に食事を提供する必要がある(給与からの天引きが可能)。

1952年に移民国籍法の一環として、H-2ビザ発給が開始された。これにより主に北欧への移住を制限していた出身国別割当制度が強化されたが、1924年に移民法が制定されて以来初めて、アジア系移民に米国の国境が開かれた。1960年代には入管法がさらに緩和されたが、1986年の大規模な移民法改革によって移住が制限され、企業による不法就労者の雇用が違法になった。H-2Aビザは、不法就労者の雇用にともなう罰則を受けずに農場で移民労働者を雇用する手段にもなった。

スタンフォード大学を優秀な成績で卒業し、労働政策に関する卒業論文を書いたギルギス氏によると、一部の移民労働者にとってH-2Aビザは最後の切り札だという。

ギルギス氏は給与計算関連のビジネスを展開するGusto(ガスト)を引き合いに出しながら、同社の最終的な目標について次のように語っている。「私たちは、農場と農業関連ビジネスのための人材派遣ソリューションを用意しています。農業の分野でガストのようになり、人材派遣の包括的なソリューションで農場を強力にサポートしたいと思っています」。

ギルギス氏が指摘するように、農業に従事する労働者のほとんどは不法滞在者である。「これまで食い物にされてきた労働者にとって、H-2Aは法的に就労することを可能にするビザです。雇用主が労働力を確保できるように私たちは支援しており、農業経営者が農場を維持するためのソフトウェアを構築しています」

難しい状況が続く中でも国境を開放する

労働力不足を指摘する最新の数字が現状を反映しているのであれば、農場には人材が必要だが、ロイターの記事を見てみると、問題の主な原因はH-2Aビザの発給不足ではなさそうだ。

ロイターの記事によると、農業機械を操作する労働者に発行されたH-2Aビザの数は、2019年10月から3月にかけて1万798件に増加した。ロイターが引用した米国労働省のデータによると、これは前年比49%の増加である。

H-2Aビザを取得できないということが問題ではなく、米国に渡航できないということが問題なのだ。国境管理の強化、収束しない世界的なパンデミック、パンデミックにともなう移動制限などにより、移民労働者は自分の国から出国できなくなっている。

このような状況でも適切な手段があれば、多くの農場がH-2Aビザを進んで利用できるため、不法移民を減らし、米国人労働者がやりたがらないであろう厳しい農作業に従事してくれる労働者を増やすことができる、とギルギス氏は考えている。

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David Misener(デビッド・ミーゼナー)氏は、オクラホマ州を拠点として農作物を収穫するGreen Acres Enterprises(グリーン・エーカーズ・エンタープライズ)のオーナーだが、通常雇用している移民労働者の代わりとなるふさわしい労働者を見つけるのに苦労している。

ミーゼナー氏は雇用しようとした米国人労働者について「収穫する方法や、収穫作業を仕事にするということを理解できませんでした」とロイターに対して語った。

「移民労働者がH-2Aを利用すると、自国で受け取る賃金の10倍を上回る賃金を受け取ることができます。手取りが時給40ドル(約4200円)相当になるため、誰もがH-2Aを欲しがっているのです」とギルギス氏はいう。

ギルギス氏は、適切なインセンティブと、農業経営者が申請・承認プロセスを管理するための簡単な方法を用意すれば、H-2Aビザを利用する雇用主の数が、国内の農業労働力の30%から50%にまで増加する可能性があると考えている。つまり、移民労働者が応募できる求人数が30万件から150万件に増える可能性があり、移民労働者がビザを取得して就労しながら、米国人と同じようにさまざまな法的保護を受けられるということだ。

事務処理を改善して農業労働者を保護する

創業者のギルギス氏は、いとこが農場を立ち上げるのをサポートした経験から、農場労働者のつながりとそれを取り巻く問題に関心を持つようになった。月に数回ギルギス氏が週末に手伝いに行ってたときにいとこの夫から、不法就労者として渡米した際の話を聞いた。

H-2Aプログラムを利用する雇用主は、不法労働者を雇用することで逮捕されることにともなう法的責任を負う必要がなくなる。トランプ政権下で実施されていた不法労働者に対する取り締まりが、ますます増えているのだ。

それでもこのH-2Aプログラムのルーツが、米国の移民政策の暗い過去にあることを否定することはできない。一部の移民擁護者は、H-2Aの制度が専門技術者向けのH-1Bビザと同じように、構造的な問題があると主張している。

移民労働者の支援団体であるResilience Force(レジリエンス・フォース)の創設者Saket Soni(サケット・ソニ)氏は、次のように述べている。「H-2Aビザは、雇用主が労働者を農業分野で受け入れるために使用できる短期の一時ビザプログラムです。すでに時代遅れとなっている移民制度の一部であるため、修正が必要です。米国に滞在する1150万人に市民権を与えるべきです。他国から来た労働者は必要に応じて、国内に滞在できなければなりません。H-2A労働者には市民権を取得する手段がありません。労働者たちが職場での問題について声を上げることができず、私たちのところにやって来るのです。H-2Aは労働者にとってありがたい贈り物であるだけなく、悪用される可能性もあります」。

ソニ氏がいうには、労働者が置かれている状況は非常に不安定であり、解雇されてもどこにも行けないため、仕事の問題について声を上げにくくなっている。合法的にこの国に滞在できるかどうかは、雇用主にかかっているからだ。

「労働力が必要なら、労働者を1人の人間として受け入れなければならないという考えを、私たちは強く支持しています。労働者が足りなければ、滞在を認めるべきです。H-2Aは移民が利用できる時代遅れの制度です」とソニ氏は語る。

ギルギス氏はこの制度についてはっきりと異議を唱えている。そして、SESOのようなプラットフォームが、今後このようなビザで入国する労働者の利便性とサービスを向上させるだろうと述べた。

「最終的に、移民労働者がもっと多くの給料を稼げるようなサービスを検討しています。今後、送金業務と銀行業務を開始する予定です。私たちのサービスは、このプログラムに参加する雇用主と労働者双方に利益をもたらすもので、搾取されるようなことはないと認識してもらう必要があります」とギルギス氏はいう。

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

トランプ大統領就任時の米国が中国人留学生に発行したビザは4月以来99%減少との報道

Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領がさまざまな手を尽くして外国人を米国から締め出そうとしてきたことは周知の事実であり、高い技術を持つ外国人労働者向けのH-1Bビザプログラムの最近の大改訂(The Wall Street Journal記事)によって、雇用者はH-1B労働者に高い給与を支払うことを強制され、申請者の資格を得るのに必要な学位の種類の範囲が狭められたのもその一例だ。この行動はすでに多数の訴訟の引き金(The Wall Street Journal記事)となっている。

それでも、2020年世界中の学生に発行された米国ビザが、これほど劇的に減少したことには驚く人もいるだろう。米国国務省のデータを挙げたNikkei Asia(日経アジア)の最新記事によると、中国本土の申請者に対して4~9月の間に発行されたF-1学生ビザはわずか808件で、2019年同時期に発行されたF-1学生ビザ、9万410件より99%少なかった。他の国の学生についても状況は変わらず、インドの学生に発行されたF-1ビザは88%、日本の学生は75%、韓国の学生は75%、メキシコの学生は60%それぞれ前年から減少している。

いったい何が起きているのか?いくつかの要因が重なっているようだ。

新型コロナウイルスはもちろんその1つで、家族は子どもたちを米国に送り出すことにいっそう躊躇している。米国の新規感染者数は11月1日だけでも9万3581件で、一方中国は24件、インドは3万8000件、日本は486件、韓国は97件、メキシコは3762件だった。

人種問題もある。多くのアジア人とアジア系アメリカ人が、ドナルド・トランプ氏の新型コロナウイルスを巡る発言は自分たちが生活全般で直面している人種差別を悪化させていると指摘し、「kung flu(カンフー・インフルエンザ)」や「China virus(中国ウイルス)」などの言葉を使われたという回答が多数(ScienceDaily記事)あった。ワシントン州立大学研究チームの最新の研究によると、新型コロナウイルスパンデミック以来増えている人種差別の報告は、健康被害の報告とも一致している(日経アジアは、すでに米国で学んでいる学生も標的となっていると指摘し、米国から出ていけと罵倒された23歳の中国人女性の話を掲載している)。

中国によるワシントンでのスパイ活動への積極的な注目も大きな役割を果たしていると同誌はほのめかし、米国ビザ取得が困難なために一部の中国人学生はカナダなど別の国に向かっていると推測している。

例えばMike Pompeo(マイク・ポンペオ)国務長官は7月にリチャード・ニクソン図書館で行った演説で、「我々は両手を広げて中国国民を歓迎したが、中国共産党は我々の自由で開かれた社会を利用しただけだった。中国は我々の記者会見、研究センター、高校、大学、さらにはPTA集会にまで(USA TODAY記事)活動員を送り込んだ」と語った。

中国人学生に対する反発に限っていえば、トランプ政権では新しいことではないが、ここ数カ月間かなりエスカレートしている。2018年から、国務省は特定の研究分野で学ぶ中国人大学院生のビザを1年間に制限し(The New York Times記事)、経過後は再申請が必要とした。この動きはオバマ政権時代に中国人に5年間の学生ビザを保証した政策(The White Houseリリース)を撤回するものだった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

H-1Bビザ停止で進むニアショアリングはスタートアップにとって好機になる

著者紹介:Andrés Vior(アンドレ・ボワール)氏はintive(インティブ)のVP兼アルゼンチン担当マネジャー。コンピューターエンジニア、ブエノスアイレス大学(UBA)卒。アルゼンチン・ソフトウェア・コンピューターサービス企業会議所(CESSI)会員。

今年6月、ドナルド・トランプ大統領はH-1B就労ビザの発給を一時停止する大統領令に署名した。このビザの対象者には、ソフトウェア開発に従事する専門職も含まれる。

シリコンバレーや、テック企業が集まるその他の拠点において、労働者の71%が外国人であることを考えると、この大統領令により、スタートアップは物流面とビジネス面の両方でいくつもの困難に直面することになる。

ニアショアリングは、パンデミック前から選択肢の1つとして存在していた。しかし、就労ビザの発給停止にリモート革命の進行が重なってその緊急性が増し、企業はニアショアリングをソリューションとして再考し始めた。その結果、今回のビザ発給停止は、企業はソフトウェア開発能力を海外から調達する好機となっている。

ニアショアリングとは、距離または時間帯が近い地域から人材やチームを採用することだ。ニアショアリングにより、米国企業は、優れた人材が見つかりやすく、就労環境や給与もより良好な近接地域からサービスを調達できる。これにより、企業はコストを最大80%削減できる可能性があり、同時に、柔軟で自由が利く、より良いキャリア開発オプションを従業員のために用意できる。

ニアショアリングはビザ発給停止への実際的な対応策であるだけでなく、企業にとって長期的な人材採用方法になる可能性がある。ニアショアリングの具体的な手順について、以下に説明してみようと思う。

リモートチームの基礎を築く

パンデミックの最中でも開発者の需要が下がることはなかった。多くの企業がサービスのオンライン化に向けてチームデジタルプラットフォームを構築、運用、最適化するチームを必要としているためだ。ビザの発給が停止されたということはつまり、米国外の企業が開発者ニーズを満たせること、特に、企業が問題を新たな方法で解決するのを助けるフレッシュで多様なスキルセットを持つ外国人のテック人材を調達する方法があることを意味している。

かつては、米国に移住してアメリカンドリームをつかむことが外国人プロフェッショナルたちの目標だった。しかし、その流れは変わった。パンデミック前から、米国は「外国人が住みやすいと思う国ランキング」で順位を46位から66位に落とし、移住先として人気を失いつつあった。コロナ後にはその人気低下が加速する恐れがある

世界中がかつてなくオンラインでつながっている現在、企業も個人も、世界トップレベルのテクノロジースタック、話題の企業との付き合い、世界トップレベルの研究など、米国が提供するチャンスから移住せずして恩恵を受けられる。そういう意味では、ニアショアリングとは、外国人メンバーが、母国の快適さと世界的な大手企業とのつながりという、両方のいいとこ取りができる環境だと言える。

リモート勤務へのシフトが進んでいることは、メンバーが互いに離れた場所で働いていてもチームが十分に機能することを実証している。リモート勤務の方が生産性幸福度が向上する、という研究結果もあるくらいだ。世界的にリモート勤務へのシフトが進む中で、ニアショアリングは現在、適切かつ有益な方法だとみなされるようになっている。ビザ発給停止をうけてニアショアリングを選択する企業は、この波をうまくとらえて活用し、リモートチームの働き方に関するベストプラクティスを確立する機会とすることができる。例えば、コミュニケーション、進捗状況の追跡、休暇、開発計画などに関する方針を、新たな状況と明確な経営理念に基づいて決めることができるだろう。そうすれば、開発者たちとのパートナー関係をスムーズに築くことができる。

ニアショアリングの別の利点は、柔軟なチームが、スタートアップのスケールアップモデルに役立つことだ。さまざまな国にいる開発パートナーと協力できるため、より広いネットワークを構築でき、それぞれの現地市場でより早く成長できる。ゼロから海外展開する場合とは異なり、ニアショアリングを行っていれば、どんなに小さくてもすでに現地に拠点があるため、それを足掛かりとして海外展開を進めていくことができる。

投資家の注目を集める

スケールアップモデルの場合と同じく、H-1Bビザの発給停止がきっかけで、ニアショアリングは海外の開発スタジオと戦略的なパートナー関係を築くための現実的な方法となっている。オフショアリングとは対照的に、ニアショアリングのパートナーは、時差がなく、より緊密かつ迅速に動けるため、オフショアリングの場合よりも重要な役割を任されることが多い。アジャイル開発のように、製品やサービスのテスト、反復、修正という一連の工程を短い期間にまとめて何度も繰り返すことが必要なスタートアップにとって、そのような敏しょう性は非常に重要だ。これがアウトソーシングのチームになるとアウトプットが限定的になるし、フリーランサーは複数社のプロジェクトを同時に抱えるため、企業のビジョンに深く共感して働くことはない。

ニアショアリングであれば、スタートアップは特定のビジネス分野やテクノロジーに関する専門性を備えたパートナーを見つけることによって、市場投入までの時間を短縮できる。システムをゼロから構築するのではなく、バージョン2.0を投入するところから始められる。なぜなら、より幅広い選択肢から専門家を選べるということは、業界の仕組みをすでに理解しているチームと提携できる可能性が高まることを意味するからだ。ニアショアリングのパートナーには、さまざまな産業分野に関して、企業が直接採用する人材では知り得ないレベルの膨大な知識がある。そのため、ニアショアリングのパートナーという心強い相手がいれば、企業は優秀なチームをゼロから集めるという難しい仕事にわざわざ取り組む必要はない。

資金調達の面でも、ニアショアリングが持つ同時性、敏しょう性、即応性はスタートアップにとって追い風となる。投資家は、ニアショアリングを行っている企業は、挑戦しようとしている潜在市場について現場からインサイトを得ており、リモートチームを活用して成功するビジネスモデルを持つ企業だと考える。世界全体が完全デジタル化へと向かう今、成長を促進するリモート開発をすでに導入しているスタートアップは間違いなく投資家を振り向かせることができる。

チームの多様化を促進する

ニアショアリング先を探す米国企業がまず目を向けるのは中南米だ。中南米は米国から近く、インターネットの普及率も向上しており、高度なスキルを持つ開発者が非常に多くいるため、ニアショアリング先として非常に魅力的な場所である。

ニアショアリングではダイバーシティ(多様性)が中核的な役割を担うことも注目すべき点だ。現在、テック業界ではヒスパニック系従業員の割合が突出して低く、全体のわずか16.7%にすぎない。物理的に離れているとはいえ、中南米にニアショアリングすれば、異なる社会的・経済的背景を持つ人材を社内に迎えることになり、業界全体における彼らの存在感が目に見える形で向上し、平等化への確かな基盤が据えられる。

一部の研究でも、多様性はチームの創造性に影響を与え、企業の利益増加にもつながることが証明されている

さらに、ニアショアリングは、より自然な形で多様性を向上させる。外国人のチームメンバーはキャリアを築くために、自宅、友人、家族を後にする必要がない。海外で働いたことがない人にとって、米国に移住するというのは気が遠くなるような大仕事だろう。生活水準が変わり、新しい文化に慣れなければいけないのだから、当然だ。ニアショアリングであれば、慣れ親しんだ場所で働くことができるため、ビジネスプロセスのスピードに慣れるまでに必要な時間も少なくて済む。地元の人間関係から感情的なサポートを得ることもできる。これは今のような状況において、職場でもプライベートでも従業員の福祉を守るために重要なことだ。

適切なパートナーを見つける

適切なニアショア先を見つける鍵はリサーチだが、スタートアップには、候補地の場所や現地のエコシステムについて詳細な分析を行う時間もリソースもないことが多い。適切な人材をニアショアで見つけるには、ニアショアリングパートナーに、現地人開発者のスカウト、調査、彼らとのコミュニケーションを担当してもらうことが、最も実際的である。

適切なニアショアリングパートナーを見つけるには、該当する業界における実績があり、ニアショア元にあるスタートアップから良い評価を受けているかどうかを確認することが必要である。そのパートナーが拠点とする地域で高い知名度を持っているかどうかも重要なポイントだ。インターネットでそのパートナーのプレスリリースや、主催イベント、ウェブサイトの全体的な内容をチェックして、顧客からの依頼が途切れない、評判の良い企業かどうかを確認する。

適切なニアショアパートナーが見つかったら、希望する場所に置くチームが文化的な面で何を必要としているかを理解するために、彼らから情報を収集する。ニアショアパートナーはあなたの会社のいわば開発パートナーになるのだから、彼らを自社の研究開発部門として活用できる。彼らは、あなたの会社をテック面でサポートし、適切なタイミングで適切なチームを編成できるようアドバイスし、スタックや手法について指針を与え、チームが生産的に働ける環境を整えてくれる存在だ。対照的に、フリーランサーを使うことにはリスクがある。なぜなら、現地の具体的なニーズを把握することができるとは限らないからだ。文化面での理解が欠けると、パートナーを見つけることはできない。代わりに、あなたのスタートアップが真に目指すものではなく、表面的な部分だけに注目するベンダーが見つかってしまうので、注意が必要だ。

相性が良いニアショアパートナーが決まったら、詳細な契約と秘密保持契約をすべてのチームメンバーと締結することが必要だ。ニアショアリングの場合、ある程度は相互に信頼することが必要だが、スタートアップのライフサイクルの中で極めて初期段階にあるこの時点では、自社のプロセスやデータが競業他社に漏れないようにすることが重要である。ニアショアパートナーの財務状況が健全であり、長期的なモデルに耐えうる状態であることも確認しておく。それに応じて、職責や成果物を測る基準をサービスレベル契約で定義する。これらの手続きをすべて完了したら、いよいよ、有意義で長期的なパートナーシップの構築に専念できる。

新しいノーマルに順応する

新型コロナウイルス感染症により、人材採用はリモート優位の領域になった。従来型の採用方法は見直されており、生産的に働くために必ずしもオフィスに出勤する必要はないことに企業も気づき始めている。実のところ、外国人従業員のビザ費用や管理費が不要になることで、企業のコストは大幅に削減される。

リモート勤務に最適化された慣行を時間の経過とともに企業が確立していけば、ニアショアリングはさらに増えていくだろう。人々は、キャリア開発、福祉、倫理すべてが守られるチームで働きたいと願っており、ニアショアリングは、生活環境を変えずにそれらすべての条件を満たすことができる。

創業初期からニアショアリングを行うスタートアップは、採用制限に苦しむ大手テック企業と競合することになるかもしれない。パンデミックがいつ終息するかわからない今、ビザの発給再開の時期を予測することは難しいため、テック企業は別の方法で開発チームを構築しなければならない。スタートアップには、ワークフローを大幅に変えることなく製品のリモート開発アプローチを調整できるという強みがある。また、より幅広い人材を引きつけるフェアで革新的な職場を整えるという意味でも、スタートアップは大手企業の先を行っている。

開発者は仕事のチャンスをつかむために自分の文化から離れる必要がなく、企業は多様性から恩恵を受けられるニアショアリングは、双方にとって有益だ。結局のところ、H-1Bビザ発給停止は、テック業界おいて、世界中のリソースを活用して最善の成果を生み出すという真のグローバル化を促進したのかもしれない。

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(翻訳:Dragonfly)

Dear Sophie:新しいオンライン授業の規則は、F-1学生にとって何を意味するのか?

編集部注:ソフィー・アルコーンは、シリコンバレーにあるAlcorn Immigration Lawの創立者であり、2019年Global Law Expertsアワードの「カリフォルニア州アントレプレナー移民サービス年間最優秀法律事務所」を受賞している。彼女は、人々をビジネスおよび機会と結びつけ、彼らの人生を広げている。

テクノロジー企業での仕事に関連する出入国関連の質問に答える相談室「Dear Sophie」を再びお届けする。

シリコンバレーの移民弁護士であるSophie Alcorn(ソフィー・アルコーン)はこう言っている。「世界中の人々が国境を越えて夢を追い求めることを可能にする知識の普及に、あなたの質問は欠かせないものです。人事部に属する人や会社の創立者、またはシリコンバレーで仕事を探している人を問わず、次回のコラムであなたの質問にお答えしたいと思います」。

「Dear Sophie」コラムはExtra Crunchの購読者の方向けに配信されている。プロモーションコード「ALCORN」のご利用で、1年または2年の定期購読が半額になる。

Dear Sophie:

会社の創立者の一人が現在、F-1 STEM OPTで米国に滞在している。会社が彼女のH-1Bビザのスポンサーとなっているが、先日RFE(追加書類依頼)を受け取った。

昨日のF-1ビザ留学生に関する移民局の発表は、彼女にとって何を意味するのか?H-1Bが却下されるのか?支援が必要か?どうすればいい?

—クパチーノの憂慮者

Dear 憂慮者さん:

F-1学生がトランプ政権の留学生入国禁止令の影響を受けるかどうかは、私の最新のYouTubeライブをご覧になればお分かりになる。H-1Bビザの禁止については、先週のDear Sophieコラムを読んでいただければと思う。

留学生は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機的状況により、春と夏の間はオンライン授業を受けることが許可されていたが、それはこの秋に終了する。この新しい命令によって、リモートのオンライン授業のみを提供している学校の多くの留学生は、強制送還を避けるために「次善の移民計画」を見つけるか、秋学期の前に米国を出国しなければならなくなる。

多くの一流大学では、留学生が学生の20%以上を占めている。NAFSAによると、留学生は2018~2019学年度に米国経済へ410億ドルの貢献をしており、45万8000人の雇用を支援または創出したとされている。現政権は移民問題に関して、「細事にこだわり大事を逸する」ことを継続しているようだ。

大学は、この最近できたどうにもならない縛りに苦戦している。大学は、学生の安全を守るだけのためにオンライン授業を続け、留学生をこの国で暮らす彼らの家から追い出すのか?それとも、地域社会の健康を危険にさらしても、学生を強制送還から救うために学校を再開することになるか?

学生にとって、これは別の学校を探したり、アメリカを出国する方法を懸命に考えたり(母国が帰国を許可していない場合もある)、「次善の移民計画」を考えたりすることを意味している。昨日の動画では、F-1ビザの代替案を探っている

幸い、その共同創立者の方はOPTを利用しているので、昨日米国移民・関税執行局(ICE)から出された非常に限られた情報と、学校向けにSEVISが発表した若干広範なメッセージガイダンス(「2020年秋学期については、すでに米国に滞在している継続のFおよびMの学生は、学習プログラムを正常に進めている場合、または学習プログラムの一部として、あるいは学習プログラムの修了後に、承認された実習に従事している場合、SEVISでアクティブのステータスを維持することができます」)を最初に読んだ限りでは、最新のF-1規制が彼女に影響するとは思えない。

RFEに関しては、これが安心材料になるかどうかは分からないが、決してあなたたちだけ受け取ったわけではない。H-1B申請者のうち、追加書類依頼(RFE)を受け取る割合は、2016年以降2倍近くになっている。2016会計年度には申請者の約21%がRFEを受け取ったが、2019年度にはこれが40%以上になっている。今会計年度の最初の2四半期では、H-1B全申請者のうち41%がRFEを受け取っている。近日中に私のポッドキャストで、追加書類依頼(RFE)、初回書類依頼(RFIE)、却下予定通知書(NOID)について取り上げる予定なので、ぜひチェックしていただければと思う。

ここで、最初の質問に対する答えを明確にしておく。RFEを受け取ったからといって、H-1B申請が却下される可能性が高くなるわけではない。実際のところ、RFEは承認を受けるために申請を強化する最後の機会を提供している。大きい問題であるため、RFEへの回答を作成する際には、経験豊富な移民弁護士に相談することをお勧めする。

米国市民権・移民局(USCIS)がRFEに記載されている期限までにRFEに対する回答を受け取るよう確約してください。先週、USCISは期限を延長した。新型コロナウイルス感染症の危機的状況とUSCISが直面している予算不足のため、3月1日から9月11日までの間に発行されたRFEの期限が、期限から60暦日後に自動的に延長される。あなたの会社が期限までにUSCISに回答を送付しなかった場合、そのH-1B申請は却下される。

USCISがどのような追加書類を要求しているのかを常に正確に理解しておく必要がある。申請パッケージの原本をチェックして、要求された書類や証拠が含まれていなかったかを確認してください。USCISはすでに提出された情報を誤って見落としていることがある。その場合は、回答パッケージで要求された書類を再提出してください。要求された書類を提供できない場合、その理由を説明し、可能であれば代替書類を提出してください。それ以外の場合は、要求された書類または証拠を提出してください。

USCISがRFEを発行する理由の中で最も多いのは、その職種が専門的な職業として適格であること、または有効な雇用主と従業員の関係が存在することを示していない場合だ。受け取ったRFEがこれらの理由のいずれかである場合、USCISがそれぞれの要件に対して何を求めているのかを簡単にご説明する。

H-1Bビザの申請資格を得るためには、申請でその外国人が就こうとしている職種が専門的な職業であることをUSCISに証明する必要がある。その仕事には高度で専門的な知識の理解と応用が必要であり、通常は特定の専門分野で少なくとも学士号(または同等の経験)が必要であることの証明を提供する必要がある。近年、USCISは何が専門的な職業に該当するかについて、その解釈を狭めている。例えば、コンピュータープログラミングは専門的な職業とは見なされなくなった。またUSCISは、学士号を必要としない職種や、コンピューターシステムアナリスト、財務アナリスト、市場調査アナリスト、人事マネージャーなどの肩書きが付く職種にも説明を求めている。

創立者が自分の作った会社のために働く場合、雇用主と従業員の関係が存在することを証明するのが困難になる。雇用主がH-1B受益者の仕事を管理していることを証明する必要がある。創立者の場合、会社の誰か(取締役会または共同創立者)がH-1B受益者を監督し、その個人を解雇する権限を持っている必要があることを意味する。これを適切に設定する方法はたくさんある。

RFEへの回答に必要なすべての証拠や書類の準備ができたら、RFEの原本を最初のページとして1つの回答パッケージにまとめ、提出してください。記録用に回答パッケージのコピーを保存し、追跡と配達証明のオプションを使用して正確な場所に回答を送付してください。

4月22日と6月22日に発令された行政布告の下、米国大使館と領事館はビザおよびグリーンカードの発給を停止しており、また新型コロナウイルス感染症に関連する渡航制限が続いていることを踏まえると、その創立者の方は当面米国に留まるべきだ。

彼女の長期的な移民を保障するためには、あなたの会社が次のいずれかのグリーンカードのスポンサーになることを検討する必要がある(彼女が資格を持っている場合)。

トランプ政権は、合法的な移民をさらに制限するための取り組みをまだ完了していないようだ。彼らは現在H-1Bビザ、EB-2グリーンカードまたはEB-3グリーンカードで米国に滞在している人が、米国人労働者の機会を制限していないかを調べている。さらなる制限や停止の拡大が実施される可能性がある。もしそうなった場合、当然ここですべてをご説明する。

RFEについてより具体的な質問があれば、お聞かせください。幸運を祈る!

—ソフィーより

ソフィーに対して質問がある方は、ここで質問できる。当方は、内容の明確化および(または)スペースを確保するため、提出された内容を編集する権利を留保する。「Dear Sophie」で提供される情報は一般情報であり、法的助言ではない。「Dear Sophie」の制限に関する詳細については、こちらの完全な免責事項をご覧ください。Alcorn Immigration Lawでソフィーに直接問い合わせることができる。

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