「頭痛のないヘッドレスコマース」Shopistryは5年後のeコマースの主流を目指す

Shopistryの共同創業者ジャファー・ハイダー(画像クレジット:Shopistry)

カナダのShopistryは、ヘッドレスコマースというコンセプトを、いわば逆立ちさせたいと考えている。米国時間8月16日にこのeコマースのスタートアップは200万ドル(約2億2000万円)のシード資金調達を発表して、今後も同社のツールキットや統合化、サービス、そしてマネージドインフラストラクチャの開発を続け、オンラインのブランドの成長を支えていくと発表した。

Jaafer Haidar(ジャファー・ハイダー)氏とTariq Zabian(タリク・ザビアン)氏は、2019年にShopistryを始めた。これまでのハイダー氏はeコマースやクラウドソフトウェアで多くのエグジットとベンチャー投資を経験してきた連続起業家だ。Shopistryのアイデアがひらめいたとき、彼はベンチャーキャピタリストとして仕事をしていた。ザビアン氏は、オンライン三行広告のマーケットプレイスOLXのゼネラルマネージャーだった。

Shopistryを利用して顧客は、誰でもアクセスできる個人化されたコマース体験を作れる。ハイダー氏の予想では、5年後にはヘッドレスが優勢なアーキテクチャになっているだろうという。ただし彼は「ヘッドレス」ではなくて「modular(モジュラー)」という言葉を好んで使う。

ハイダー氏は、TechCrunchの取材に対して次のように答える。「それはモジュール構造のシステムなのです。それを私たちは『頭痛のないヘッドレス』と呼んでいます。フレームワークを使ってAPIを容易に管理できるからです。一般的に、スタートアップを立ち上げると資金の半分は事業を継続することだけに使われてしまいます。彼らはShopifyのようなマーケットプレイスを使って技術的な部分を支えますが、私たちも同じことを行いますが選択肢の幅がもっと大きい。私たちは、一枚岩のシステムではないのです」。

現在、同社のプロダクトは次の5つとなる。

  • Shopistry Console:ブランドは自分に合ったスタックだけを使えばよいが、いつでも、プラットフォームを変えずに変更できる。ShopifyとSquareなど、複数のeコマース管理ツールや、決済プロバイダー、アナリティクス、マーケティング手法などをサポートしている。
  • Shopistry Cloudはパフォーマンスやデータ管理や複数サービスのオーケストレーションなどを支えるマネージドインフラストラクチャー。
  • Shopistry StorefrontとMobileでウェブとモバイルアプリのストアフロント(店頭)を管理する。
  • Shopistry CMSは、データドリブンでヘッドレスの顧客管理システムで、1つ作れば複数のチャネルに対応できる。
  • Shopistry Servicesは、デザインや技術の支援を要するブランドのためのサービスだ。

シードラウンドの投資家は、Shoptalkの創業者Jonathan Weiner(ジョナサン・ワイナー)氏やHatch LabsのAmar Varma(アマール・バルマ)氏、Garage Capital、Mantella Venture Partners(MVP)、そしてRaiven Capitalだ。

Mantella Venture Partnersの共同創業者でゼネラルパートナーのDuncan Hill(ダンカン・ヒル)氏は、声明で次のように述べている。「MVPが大事にしたい企業は、複雑なものを単純化して、高度な技術を持つ大手リテイラーが実証したイノベーションを大量の中小リテイラーに提供し、彼らの競争力を強化する開発者です。Shopistryのチームと技術は、eコマースの進化の次の段階でメジャーなプレイヤーになれるでしょう。疑問の余地なく、エキサイティングです」。

Shopistryはすでに、HonedやOura Ringなどのリテイラーのeコマースのプレゼンスを、彼ら自身が大きな技術チームを抱えなくても管理できるようにしている。

シード資金を求める前までは、ハイダー氏とザビアン氏は成長性の良いブランドと協力して約2年間、そのインフラストラクチャを構築していた。ハイダー氏によると今度の資金は、インフラの開発の継続と、営業とマーケティングのスタッフの獲得に当てたいという。

ハイダー氏によると、現状のShopistryはまだ数字として発表できるほどの成果はない。ただし顧客ベースは伸びているため、2022年には成長を報告できるだろう。ハイダー氏が今考えているのは、Shopistryのプラットフォームのバックエンドの柔軟性と統合部位を増し、もっと多くの他のプラットフォームをサポートしていくことだ。

ハイダー氏は付け加えた。「第4四半期にはもっと大きなローンチとして、市場開拓の視点にフォーカスしたい。また『アフター・ザ・セール』、売った後のフォローアップも重要だ。そして、バックオフィス(事務、会計など)の部分でも、すばらしい体験を作りたい。ユーザーはもっぱら自分のストアフロントのメンテナンスに集中して、その他の裏方部分は、データの管理も含めてうちに任せて欲しい」。

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タグ:Shopistryeコマースカナダヘッドレスコマース資金調達

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

話題のヘッドレス通販の触媒を目指すY/Cが支援するVue Storefront

「ヘッドレスコマース」は最近よく使われる言葉だ。実は私自身、すでにヘッドレスコマースについて記事を書いているVue StorefrontのCEOであるPatrick Friday(パトリック・フライデー)氏は、このコンセプトを使ってコマースエコシステム全体の中での自社の位置づけを明確にしようとししている。

「Vue Storefrontは、ヘッドレスコマースに頭となるフロントエンドを提供します」とフライデー氏は説明する。

つまり通常のヘッドレスコマース企業は消費者から「頭」が見えない部分、つまりバックエンドのインフラ構築に注力する。これに対してVueは消費者が実際に接するフロントエンドを高度なウェブアプリとして提供する。同社は自らを「ヘッドレスコマースのための稲妻のように高速なフロントエンドプラットフォーム」だと表現している。

フライデー氏とCTOのFilip Rakowski(フィリップ・ラコウスキー)氏は、eコマース企業のDivanteで働いていたときにオープンソースプロジェクトとしてVue Storefrontテクノロジーを構築し、2020年に新しいスタートアップとしてスピンアウトしたという。同社はシリコンバレーのアクセラレーターのパイオニア、Y Combinatorの最新のクラスに参加しており、SMOK Ventures、Movens VCがリードしたラウンドでシード資金150万ドル(約1億6000万円)を調達している。

「我々が会社を立ち上げたのも、資金を調達したのも、エージェントを説得したのも新型コロナウイルスによるパンデミックの最中でした」とフライデー氏は述べている。2020年12月初旬のある朝に投資家との契約にサインし、その夜さっそくYCombinatorの面接に臨んだこという。

フライデー氏をはじめとするチームは、オープンソースのテクノロジーをコアとしてビジネスを立ち上げたとき単に新しいウェブアプリを構築する以上のことができることに気づいた。つまりVueを利用すればMagentoやShopifyなどのeコマースプラットフォームをContentstackやContentfulなどのヘッドレス・バックエンド・システムに接続し、さらにPayPal、Stripeなどの支払サービスを含むサードパーティのシステムとの統合することが可能だった。

画像クレジット:Vue Storefront

フライデー氏によれば、ユーザーから「Vue Storefrontは接着剤のような存在だ。ヘッドレスアプリは複雑で使うのが難しかったが、Vueが接着剤となって多様なサービスを統合してくれた」と感謝されたという。

Vueのプラットフォームを使用して解説されているオンライン店舗は世界中で300以上となる。フライデー氏によれば、パンデミックとロックダウンにともなうeコマースの急拡大により、企業が「4、5年前のフレームワークやテクノロジー使ったプラットフォームがすでにレガシーになっている」と気づいたため、Vueの採用が加速したという。一方、ラコウスキー氏はこう説明する。

レガシーシステムを新しいプラットフォームに更新しようとすとき、Vue Storefrontが乗り換えを容易にすると考えて我々のところに相談に来るユーザーが多数います。Vueのテクノロジーを使えばバックエンドと独立にユーザーと対話するフロントエンドのコードを書くことができるのでプラットフォームのアップデートが極めて容易、迅速になります。

投資家から資金を調達した直後だったため、Vue Storefrontのチームは前回のYCデモデーには参加していない。ただし次回のデモデーには参加するという。なおVue自身は米国時間4月20日にオンラインでVue Storefront Summitを開催する予定だ。

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タグ:Vue StorefronteコマースヘッドレスコマースY Combinator資金調達

画像クレジット:Vue Storefront

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(文:Anthony Ha、翻訳:滑川海彦@Facebook

ヘッドレスコマースのSwellが約3.7億調達、柔軟性に富むバックエンドを目指す

ヘッドレスコマースの新しいプラットフォームが次々と登場しているが、SwellのCEOであるEric Ingram(エリック・イングラム)氏は「eコマースで何か新しいことをやるのは本当に難しい」という。

彼が具体的に挙げるのは、ヘッドレスのプラットフォームの多くが、フロントエンドのショッピング体験をその上に実装するためのバックエンドのインフラストラクチャーを提供して、企業がeコマースを迅速に構築できるようにしているが、実際のマーケットプレイスでは人々が従来からある製品カタログから検索、閲覧、購入している。そこに新顔のコマースが割り込むのが難しい。

「eコマースにおいて人の関心を惹く最もおもしろいアイデアは、新しいカタログを提供することではない」とイングラム氏はいう。

このほど340万ドル(約3億7000万円)のシード資金を調達したSwellは、同社プロダクトを利用するコマースのビジネスモデルの部分で、多くの柔軟性と自由度を提供することに努めている。イングラム氏はStefan Kende(ステファン・ケンデ)氏やDave Loneragan(デイブ・ロネラガン)氏、Joshua Voydik(ジョシュア・ボイディック)氏そしてMark Regal(マーク・リーガル)氏らとSwellを創業し、eコマース企業のための「未来に備えたバックエンド」の提供を目指した。ビジネスモデルの進化とともにコマースも成長し進化に適応するため、バックエンドにもその対応が求められる。

Swellのプラットフォーム上では通常のカタログも作るが、同時に同社は、独立のコーヒーロースターのマーケットプレイスであるSpinnや、B2Bの真空ポンプのマーケットプレイスNowvac、ダイヤモンドの倫理的なD2Cリテイラーを自称するGreat Heightsなどもサポートしている。

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ボイディック氏によれば、Swellには「無限の柔軟性」があるという。その一環として同社は、各コンポーネントへのAPIアクセスを提供している。また、各サイト自身が運営するネイティブのサブスクリプションをサポートし、製品の属性もその数を制限しない。

「Swellの上のすべてのストアに、独自のデータベースSaaSのプラットフォームがある」とイングラム氏はいう。

彼によると、Swellのプラットフォームは、普通ならオープンソースのアプローチからしか得られないような柔軟性を提供しつつも、そこには技術面での頭痛がないとのこと。「私たちの顧客には、自分のコードベースやデータベースを自分でメンテしたい人なんかいないからね」という。

「Swellを利用するための技術力は不要で、デベロッパーも必要ありません。実際のところデベロッパーの顧客は多いがも、普通のマーケターも多くOpsの人たちもいる。彼らは開発について多少は知っていて、システムを自分でコントロールしたいと思っている」とイングラム氏はいう。

今回の投資はBonfire VenturesのJim Andelman(ジム・アンデルマン)氏がリードし、Willow Growth PartnersとRemote First CapitalのAndreas Klinger(アンドレアス・クリンガー)氏、VercelのCEOであるGuillermo Rauch(ギレルモ・ローチ)氏、GitHubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、そしてSalesforce Commerce CloudのCEOだったMike Micucci(マイク・ミクッチ)氏が参加している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Swelleコマース資金調達ヘッドレスコマース

画像クレジット:dashu83/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)