クラウドファンディングのMakuakeがAndroidアプリを配布開始、iOSから遅れること約2年

クラウドファンディングサイト「Makuake」を運営するは12月16日、Androidアプリの配布を開始した。2017年10月にリリースされたiOSアプリに遅れること2年弱、Androidユーザーもスマートフォンから手軽にプロジェクトへの支援が可能になる。

同社によると、2019年9月期第4四半期時点での過去1年間において「Makuake」で決済実績があるサポーターの決済割合は70%と高いが、2019年6〜10月の期間にiOSアプリ経由で出資した利用者のリピート決済率はさらに高い85%となるなど、Android版の登場が待たれていたという。iOS版では気になるカテゴリを登録することで新着プロジェクトの通知を受け取れる「Myタグ機能」などの機能がリピート率アップに貢献していたようだ。

もちろんAndroid版アプリにもMyタグ機能が備わっており、気になるジャンルのプロダクトやサービスの情報はいち早く手に入れられる。もちろん、応援購入したプロジェクトの活動レポートや実行者からメッセージももプッシュ通知で知らせてくれる。

同社は12月12日に東証マザーズに上場し、公開価格1550円で初日終値は2980円、12月16日の終値では3780円を付けるなど上場後も株価が順調に上がっており、同社の事業に対する期待度の高さが見てとれる。

さらに12月13日には、元Facebook Japan執行役員ディレクターで、現在はPwC Japan Managing Directorの職にある馬渕邦美氏を社外取締役として迎えるなど、経営基盤の強化にも抜かりがない。同社は今後、馬渕氏からマーケティングや経営に関する助言を受けることで、サービスおよび同社の継続的な成長を目指すとのこと。

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マクアケ、ふるさと納税型のクラウドファンディング「Makuakeガバメント」を開始

クラウドファンディングサービスを運営するマクアケは5月15日、地方自治体向けふるさと納税型クラウドファンディング「Makuakeガバメント」を開始すると発表した。

地方自治体の活性化を目的として2008年度から始まった「ふるさと納税」。地方自治体に寄付をすることで、寄付金の一部を所得税や住民税から控除できたり、地域の特産品をお礼としてもらえることなどが特徴だ。しかし、実際には寄付金の使い道ではなく返礼品ばかりが注目されてしまい、自治体のあいだで行き過ぎた返礼品競争が起きてしまうなどの問題が指摘されていた。

そのような背景のなか、マクアケは返礼品ではなく寄付金の使い道にフォーカスしたふるさと納税を目指し、Makuakeガバメントを開始した。

Makuakeガバメントで自治体を支援するユーザーには、通常のふるさと納税と同じく返礼品が贈られるほか、寄付金額の一部が所得税および住民税から控除される。最大の特徴は、Makuakeガバメントでは通常のクラウドファンディングのように、サイト上にあげられたプロジェクト毎に寄付できることだ。そのため、自分が寄付したお金の使い道を明確に知ることができる。

これまでにも、自治体が抱える問題を解決する手法としてクラウドファンディングに着目する例はあり、各自治体が独自にクラウドファンディングを立ち上げる「ガバメントクラウドファンディング」という言葉も生まれた。

しかし、すべての自治体が必ずしもPRやマーケティングに長けているわけではなく、結局は返礼品の魅力を前面に打ち出さざるを得ないという例もあったようだ。そのため、マクアケがこれまでに培ったPR面でのノウハウを自治体が活用できることも、本サービスの魅力の1つだとMakuke取締役の坊垣佳奈氏は話す。

Makuakeガバメントは本日よりサービスリリース。現時点で予定されているプロジェクトは以下の4つだ。坊垣氏によれば、それぞれ数百万円規模がゴールとして設定される見込みだという。

  • 岡山県西粟倉村:河川環境の再生に関するプロジェクト(6月末開始予定)
  • 京都府宇治市:宇治橋通り商店街の活性化に関するプロジェクト(6月初旬開始予定)
  • 北海道下川町:スキージャンプ選手の育成に関するプロジェクト(5月中開始予定)
  • 北海道紋別市:「オホーツクとっかりセンター」の施設改修に関するプロジェクト(6月中開始予定)

マクアケ取締役の坊垣佳奈氏

社名変更で「加速するタイミング」、クラウドファンディングのMakuakeは地方と世界を目指す

左からマクアケ取締役の木内文昭氏、代表取締役社長の中山亮太郎氏、取締役の坊垣佳奈氏

「もともとクラウドファンディングは『募金サイト』のイメージが強かったり、一部のアーティストやクリエーターの認知はあるが使われる領域が狭かったりした。だが、アイデアの善し悪しに絞って、腹をくくってやってきた結果で伸びてきたのがこの数年。ここでブランドを加速するタイミングだと判断した」

そう語るのは、クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営するマクアケ代表取締役社長の中山亮太郎氏。同社は10月1日に社名をサイバーエージェント・クラウドファンディングからマクアケに変更したばかり。10月6日にはiOSアプリもリリースした。プッシュ通知や検索機能を提供することで、購入者の利便性を高める。

2013年8月にスタートしたMakuakeは、これまで約3000件のプロジェクトを掲載。1000万円を超える大型の資金調達の事例は60件以上、中には1億円を越えるプロジェクトも存在している。同社がサービスを開始する以前から、「CAMPFIRE」や「Readyfor」といったクラウドファンディングサービスはあるが、今では各社がそれぞれ特徴のあるプロジェクトを掲載している。

その中でMakuakeが得意とするのは、ガジェットや文具、職人の作り上げた小物、新型飲食店の会員権など、今までになかった「モノ」が中心だ。プロジェクトにお金を払うのは、6割が既存ユーザー。そのプロジェクトだけのファンではなく、珍しい商品を買う場として利用しているユーザーが増えてきているのだと同社は見ている。「企画をして、クラウドファンディングをして、(量産で)生み出して、事業が回っていくというプロセスは大体3年ほどかかる。それがMakuake上で一周した」(中山氏)

ソニーの事例を契機に大企業との連携も加速

大手メーカーとの連携も積極的に進めている。そのきっかけともなったのは、ソニーの新規事業創出プログラムから生まれた電子ペーパーウォッチ「FES Watch」。2014年に発表されたFES Watchのプロジェクトは、追加販売も合わせると2000万円以上を集めた。現在は「Makuake Incubation Studio」を立ち上げ、大手企業のR&D部門などが持つ技術をプロダクトに落とし込み、Makuakeでの販売まで行うというコンサルティング事業も展開している。

「FES Watch」のプロジェクト

このMakuake Incubation Studioからは、シャープや東芝、JVCケンウッドなどとのプロジェクトが生まれている。「企業の人は今、新しいモノを生み出すときに悶々とした気持ちを抱えている。例えば20代、30代向けのガジェットを出すのに、60代の役員では分からないことだってある。以前は寄付の印象も強かったので『大企業のくせにクラウドファンディングを使うのはけしからん』とも言われたが、ここ1年はなくなってきた」(マクアケ取締役の木内文昭氏)。Makuake Incubation Studioは事業面でも手数料以外のビジネスとして同社の成長を担っているという。

ビジネスの話をもう少しすると、同社は2016年度の同社の決算は当期純利益が5900万円の赤字。今期の見通しについては非公開としたものの「銀行からの借入も可能。健全な状況」とのことだった。8月にはプロサッカー選手本田圭佑氏率いるKSK Angel Fundからの投資も受けている。「(本田氏に)会った瞬間に『1兆円規模になると思う』と言われた。(今後の子会社上場について)可能性は閉ざしたくない。さまざまな調達方法を考えている。親会社もいるし、事業は回っているので銀行借入も可能だ」(中山氏)

今後は地方のプロジェクト立ち上げ、海外展開も

そしてMakuakeは現在、地方のプロジェクト立ち上げにも力を入れているという。全国75行を超える金融機関と連携・提携して、地域の製造業者や飲食業者などのプロジェクト発掘、支援を行っているという。1億円以上を集めた折りたたみ式電動ハイブリッドバイク「glafit」のプロジェクトを手がけたのも、和歌山県発のバイク関連用品メーカーだったりする。「技術を持っていて、BtoBだけではなくBtoCでもプロダクトを作りたいという話や、いいモノだけど売れないのでリブランディングしたいという話など、マーケティングやプロモーションがうまくいってないけれどもいいモノというのはすごくある」(マクアケ取締役の坊垣佳奈氏)

「glafit」のプロジェクト

米大手クラウドファンディングサービスの「Kickstarter」も日本でサービスを開始したが、「そんなに意識はしないが、海外のサービスが日本にやってくるというのは市場があると判断されているということ、よいニュースだ。そこは歓迎している。だが(クラウドファンディングは)日本にとってとても重要なインフラ。これをしっかり国産でやっていかないと、国にとってもよくないなと思っている」(中山氏)。そう語る一方で、Makuakeの海外展開についても進めていくという。「日本のメーカーの研究開発技術は高いが、まだまだ生かし切れていない。Makuakeでやっているのは、日本のすごい技術をマーケットに出していくこと」「プラットフォームが自分の都合で海外に出ていっても受け入れられにくい。世界の人が(日本語のMakuakeを)翻訳してでも欲しいモノが必要。そんなモノとセットでグローバル展開をしていく」(中山氏)