ハニカム構造などメタマテリアル活用設計アルゴリズム開発の東大発スタートアップが9000万円を調達

ハニカム構造などメタマテリアル活用設計アルゴリズム開発の東大発スタートアップが9000万円を調達

ハニカム構造などメタマテリアル活用の設計アルゴリズム「DFM」を開発するNature Architectsは9月30日、シリーズAのエクステンションラウンドにおいて、第三者割当増資として合計9000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は三菱マテリアルCVC(MMCイノベーション投資事業有限責任組合)、ニフコ、PKSHA SPARX アルゴリズム1号ファンド。2020年5月に完了した資金調達と併せて、シリーズAラウンドとしては累計4.15億円の調達となった。

また今回、同社DFM技術を社会実装するために事業面での協業を見据えたパートナー企業と資本提携を行った。三菱マテリアルCVCとは材料面で、ニフコとは製品開発面で、さらにPKSHA SPARXアルゴリズム1号ファンドとは設計アルゴリズムおよびライセンスビジネス面において協業を目指す。

東京大学発スタートアップのNature Architectsは、2017年5月に設立。メタマテリアル活用により、従来のモノづくりとは根本的に異なる製品設計が可能になる設計アルゴリズム「DFM」(Direct Functional Modeling)の開発を手がけている。メタマテリアルとは、ハニカム構造など、人工的な構造によって素材を超える特性(弾力・変形など)を付与されたものを指す。可動部など機構的な動きを弾性変形によって生み出す構造(コンプライアントメカニズム)なども含む。

従来のモノづくりでは、ボルト・フレームヒンジなどの「硬い」部品を組み立てることで製品設計をを行う。これに対してDFMでは、各パーツのあるべき「硬さ」を計算し、それを実現するメタマテリアルを生成・割当て可能にする設計アルゴリズムとなっている。メタマテリアルを活用できれば、部品ごとの「硬さ(柔らかさ)」を自在に制御することが可能になるという。

その結果、硬い部材に振動吸収機能を付与するなど、従来実現できなかった新機能をパーツに付加したり、フレーム・稼働部など部位ごとに必要な様々な機能を部品に分けることなく一体で設計・製造することが可能になるとしている。

DFMの適用範囲は、ロボティクス・自動車・航空宇宙など動きを明示的に扱う最終製品はもとより、レバー・スイッチ・ファン・バネなどの部材も対象としている。

関連記事
未来のテスラ車のバッテリーは車体と一体構造で剛性、効率、安全性、コストを改善
SpaceX、再利用を目的とするロケットの海上回収に3回連続で成功中
ペンシルベニア州立大の研究員が本物のクローキングデバイスを作った

ペンシルベニア州立大の研究員が本物のクローキングデバイスを作った

ペンシルベニア州立大学の研究員Amanda D. Hanfordが、音波を迂回させる(反射しない)ことによって、一部の感知技術に対してオブジェクトを不可視にする、本当のクローキングデバイス(cloaking device, 物を隠すデバイス、忍者デバイス)を作った。

報告記事は曰く:

Hanfordのチームは、音波が、反射せずに迂回して進むようなメタマテリアルの開発に取り組んだ。メタマテリアルは一般的に、密度が負である、など、自然界に存在しない特異な性質を示す。そのために、メタマテリアルの最小の構成部位であるユニットセルは、この研究の場合、音波の波長よりも小さくなければならない。

Hanfordは、水面下で音を偏向させる音響学的なメタマテリアルを作った。それは、難しい開発テーマだった。テストではその素材を水中に置き、それをねらって発射した音波を測定した。水中のエコーは、音波がその素材から反射していないことを、示していた。したがってその新素材は、ソナーにとって不可視だろう。

まだ初期的段階の技術なので、オブジェクトが完全に不可視にはならないが、しかし水中では検出がきわめて困難だ。これからは、水平線上にレーザー銃を備えた潜水艦が現れたら、船の船長は“クローキングデバイスをonにせよ!”、と叫ぶようになるかもしれない。そう考えると、なかなか楽しい技術だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa