ロサンゼルスの新型コロナウイルス抗体保有者は公式感染者数の55倍

南カリフォルニア大学(USC)がロサンゼルス郡公衆衛生局と共同で実施した最新研究で、ロサンゼルス郡人口の2.8~5.6%がCOVID-19(新型コロナウイルス)の抗体をもっていることが示された。これは22万1000~44万2000人の市民が過去に感染していたことを示唆しており、検査によって確認されたよりも最大55倍の人数に上る。これは、感染は以前考えられていたよりもはるかに広がっていると疑っているカリフォルニア州が、短期間に行った2回目の抗体調査であり、ソーシャル・ディスタンス対策を継続する正当な理由でもある。

ロサンゼルス郡の研究結果には、よいニュースもある。もし抗体検査の結果が正確であれば(われわれは現時点で彼らの報告が正しいかどうか確信は持っていない。特に免疫性については)、感染者の致死率は公式診断例のデータよりもずっと低いことになる。USCの研究による抗体検査を通じて計算された感染率は、先週スタンフォード大学が発表したサンタクララ郡の感染率と驚くほど似通っていて、同郡では4万8000~8万1000人が感染から回復したことを示している。

ロサンゼルスの研究が、誤差を考慮した上で郡人口全体に外挿した結果、2.8~5.6%の市民が抗体をもっていることを示しているのに対して、スタンフォード大学の研究では、2.5~4.2%の住民が新型コロナウイルスの抗体をもっているという結果がでている。これらの数値は、検査キットの精度および検査標本の性別年齢層に基づいて補正されている。

いずれの研究論文も相互査読を受けていないので、ある程度疑ってかかる必要がある。しかし、双方の数値の密な近似や、世界で行われた過去の類似研究の結果を踏まえると、新型コロナウイルスの実際の感染数は公表されている数値よりはるかに多いことを示唆していると考えられる。公表数値は通常、診察で確認されたものだけを数えるが、その大部分は中度から重度の症状を示している患者が対象だ。

未検知感染者率の高さは、新型コロナウイルスの脅威が見かけより低いことを意味すると捉えるべきでは決してなく、この新しい情報は、外的症状がないために診察を受けることも隔離や接触者追跡の対象になることもなかった人々からの感染が、誰の予想よりもはるかに多いことを意味しているにすぎない。

これは、ソーシャル・ディスタンス対策がいっそう重要であることを意味している。なぜなら、新型コロナウイルスの潜在保菌者を識別することがこれまで思っていた以上に困難だからだ。感染の特質を理解することは、究極的にはウイルスにさらされる最大の危険を避ける対策の向上に役立つのだろうが、現時点でこの新しい情報からわかっているのは、新型コロナウイルスはわれわれがこれまで理解していたような早期の前兆をみせることなく、はるかに効果的に人々に伝わっている、ということだけだ。

画像クレジット:Kit Karzen https://www.kitkarzen.com/ /

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロサンゼルス消防局がドローン飛行隊の大規模増強を計画

消防活動の近代化を目指すロサンゼルス消防局(LAFD)は、ドローン航空隊を拡大して大規模に展開することを含む、数々の最新テクノロジーの導入を検討している。米国でもニューヨークやシカゴに次ぐ最大級の消防局であるLAFDは、予算規模はおよそ6億9100万ドル(約750億円)、雇用者数3500名以上、2018年には49万2717件の通報に対応している。

LAFDにはすでに11機のドローンからなる航空隊があり、258台の消防車、救急車、ヘリコプターによる車両航空隊を補完している。しかし、無人航空システム計画部門の指揮をとるRichard Fields(リチャード・フィールズ)消防司令長は、さらに大幅に数を増やしたいと願っている。

ロサンゼルスは、中国のドローンメーカーDJIとの合意も手伝い、消防活動へのドローン利用では先駆者的存在だが、この4月に同社との契約を交わしている。その当時、このドローン製造と画像処理技術の開発を行う中国企業DJIは、緊急時対応準備のためのツールとしてドローンをテストし展開すると発表していた。米国の消防局との契約では、最大規模になると同社は話している。

「米国の中でも卓越した治安機関であるLAFDとの提携強化により、同消防局専用に開発したDJIのドローン技術の先進性を役立てることができて、大変にうれしく思ってます」と、DJIの企業パートナーシップ・マネージャーのBill Chen(ビル・チェン)氏は、その契約当時の声明の中で述べていた。「私たちの双方向の協力関係をとおして、米国でも1、2を争う複雑な都市環境における緊急事態にドローンを展開するという難題から、DJIは貴重な経験を学ぶことができます」。

あれからおよそ5カ月が経過した今、フィールズ消防司令長はドローン飛行隊倍増の検討に入り、計画は十分に成功したと思われる。「我々の次なる計画は、ドローンを我々の専門的人材の補助に利用することです」とフィールズ氏は言う。「つまり、消防士やそのサポートクルーによる危険物処理、都市部での捜索と救助活動、海や河川での救助活動の支援だ」とフィールズ氏。

LAFDの河川救出チーム。写真提供:Flickr/ LAFD Mike Horst

消防局が求めるテクノロジーは、ドローン本体に止まらないとフィールズ氏は言う。「ドローンの汎用性を高めるには、多くのテクノロジーが必要になります。【中略】最も貴重なツールはドローンではなく、そのセンサーです」。

現在までで最も有効な利用法は、赤外線技術を用いて目に見えるものと、センサーが検知した熱の特徴とのバランスをとって組み合わせることだった。

LAFDのドローンパイロットになるための訓練は、とくに厳しいとフィールズ氏は言う。通常は、80時間の訓練を受けることになる。フィールズ氏によれば、「私たちの訓練は米国でも最高のものです。民間市場には、これに勝るものはありません」とのことだ。

現在、LAFDのドローン飛行隊はすべてDJIのドローンで構成されているが、それはこの数年間、軍隊や文民が躊躇してきたことだ。

米国の中核的なインフラが中国技術に依存することへの不安感は、ファーウェイなど中国のネットワーク企業の問題からDJIのドローン技術にまで広がっている。

2018年に米国防総省は、サイバーセキュリティー上の脆弱性を理由に、民間企業製のドローンの購入と利用の禁止令を出した。これが発令されたのは、米国土安全保障省の役人と議員団が、特にDJIを名指しして、それを使って中国政府が米国をスパイする恐れがあると指摘してから1年後のことだった。

しかしながら、ボイス・オブ・アメリカ9月号の記事によれば、この規則は絶対的なものではなく、数多くの軍の支部では、今でもDJIのドローンを使っているという。ロサンゼルスでも、この問題を深刻に受け止めているとフィールズ氏は話した。LAFDは、規制当局や米国自由人権協会などの権利擁護団体と密接に協力し合い、LAFDが収集したデータの扱いに関して厳格な指針を打ち立てた。

「私たちは、リアルタイムで状況確認ができるようドローンから情報を得ることを目的に計画を立てています」フィールズ氏。「それにより、指揮本部長は問題に対する視野を広め、的確な判断ができるようになります」。

フィールズ氏によれば、記録・保管されるのはLAFDが被害の評価を行うための局地的な火災現場のデータのみであり、後に地図のレイヤーに変換されて火災頻発地帯の記録として残されることもあるという。

中国にデータが送信される件に関連して、重要インフラの地図データはインターネットとは切り離して処理されるとフィールズ氏は話している。「そのデータはドローンに蓄積されますが、90%はドローンの運用に関する情報です。ドローンがどこにいるか、どのような状態か、それ自身の緯度と経度、ドローンが収集するのはそのようなものです」とフィールズ氏。

同氏は、政府が外国製ドローンを使うことに懸念を示したとしても、解決策はあると考えている。規制すればいいのだと。「基準を満たせばいいのです。米国の国土の上空を飛ばすには、いくつかの許可を取得しなければなりません」と彼は言う。「DJIのドローンは中国製だから悪い。だから捨ててしまえと言うのは、なんの答にもなりません」。

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(翻訳:金井哲夫)

SnapchatによってL.A.がテクノロジーの中心地へと進化する

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編集部注: 本稿を執筆したJustin ChoiはNativoのCEOである。

もしあなたがシリコンバレーの歴史を書き表すとすれば、まずはそこにあるコミュニティの数々を観察することから始めることだろう。Google、Yahoo、Oracle、PayPalなどの企業は、何年ものあいだ優秀な人材をこの場所に惹きつけてきた。そういった企業が成熟期に達したり、買収やIPOなどを行う時期に達すると、彼らが抱える優秀な人材は分散し、次の世代を担う企業で芽を出しはじめる。

実った果実は、母となる木から遠く離れて落ちることはない。新しい企業は、自分たちの先輩企業の近くで会社を立ち上げ、成長させようとする傾向がある。そのおかげでベイエリアのコミュニティを維持する良い循環が生まれ、この地域は今でも起業家やテクノロジーの最初の目的地として機能しているのだ。

そして今、Snapchat(正確には、親会社のSnap)がIPOを行うと報じられ、2017年3月頃には約250億ドルかそれ以上の企業価値を持つ公開企業が新たに生まれる可能性がでてきた。「Snapchatマフィア」たちが2020年台にシリコンバレーのようなコミュニティをLAで創り上げていく可能性は大いにある。どんな企業でも南カルフォルニアと北カルフォルニアが分断された状況を一手に作り変えることはできないものの、SnapchatのIPOが実現する時期は、LAを将来のスタートアップコミュニティの中心地に変えるような、他の大きなトレンドと並行して起きるのだ。

SnapchatマフィアたちはFacebookやPayPalの後を追うのか?

シリコンバレーの起源はいつかと人々に尋ねると、「8人の反逆者たち」がShockley Semiconductor Laboratoryを離れ、Fairchild Semiconductorを創業した1957年だと答える者がほとんどだ。同企業の出身者はその後、IntelやAMDなど数々の企業を立ち上げている。

近年の最も有名なマフィアといえば、もちろん、PayPalマフィアたちだろう。Elon Musk、Peter Thiel、Max Levchin、Jeremy Stoppelman、Reid Hoffman、David Sacks、Dave McClure、Chad Hurleyなどがその例だ。このマフィアが立ち上げた企業は、Tesla、SpaceX、SolarCity、Yelp、LinkedIn、YouTube、Palantir、Yammer、Clarium Capital、The Founders Fund、500 Startupsなど、数えればキリがない。PayPalの出身者たちが創出した価値の大きさは計り知れず、このようなマフィア集団がもう一度誕生することは想像しがたい。

だが、規模は小さいながら同じようなマフィア集団は他にもある:Facebookの出身者たちはPath、Quora、Asanaや数々のVCを立ち上げた。Yahoo出身者が創り上げたのは、WhatsApp、Chegg、Slack、SurveyMonkey、Clouderaなどの企業だ。Instagram、Foursquare、Pinterest、Twitterの創業者たちはGoogleの出身者である。

今、そのような真のテック・スーパースターたちはLAにいる。優秀な人材を惹きつける力を持つ企業がその街にあるのだ。1億5000万人のデイリーアクティブユーザー数と巨額のバリュエーションを誇る、Snapchatだ(参考のために言えば、Facebookが100億ドルの企業価値に達したのは、ほんの7年前だ)。

もしあなたが野心と才能に溢れた若者であれば、どこに行こうとするだろうか。すでに急激な成長とイノベーションのステージを終えたFacebookだろうか。それとも、あなたの仕事が企業の成長に直結する、Snapchatだろうか?すでに何人かは心を決め、古巣を離れている。Facebookの元プロダクト部門長であるSriram Krishnanがその1人だ。彼に続く者はこれからもっと現れるだろう。

コンテンツ:王の帰還

もちろん、Snapchatがもつ人材がLAに留まっているのは、そこにあるコミュニティが不活発であるからではない。

「コンテンツは王様だ」という言葉は、Hollywoodの重鎮たちが長く語り継ぐマントラだ。しかし過去20年間、コンテンツ製作者は王様と呼ばれるには程遠い存在だった。コンテンツの販売や流通という分野は、テクノロジーを駆使するプレイヤーがディスラプションを狙う分野だったのだ。今日もこの状況は当てはまる。そして、そのようなプレイヤーの多くはBay Areaの出身者だ。

まず初めに、インターネットの急激な普及により、多くの新聞にとっての利益の源泉だったクラシファイド広告業界が破壊された。その後、2000年台前半に誕生したAppleのiTunesとiPodが、音楽業界を玉座から引きづり下ろす。近年ではソーシャルメディアの普及により、従来のオンライン広告モデルが倒れ、新たにクリッカブルでシェアラブルなコンテンツ広告が誕生している。そしてもちろん、Netflixなどのオンデマンドビデオ・ネットワークを忘れてはならない。そのようなサービスによって映画館や映画製作スタジオ、従来型のテレビ制作会社は敗走を重ねているのだ。

この20年間で、コンテンツ配信のあり方は大きく変化した。従来型のメディアネットワーク通じたコンテンツ配信に取って代わり、テクノロジーを駆使したプラットフォームを通じたPC、タブレット、モバイル端末へのオンデマンド配信が生まれたのだ。多くの点において、このことは21世紀のコンシューマー・テクノロジーを語る上で欠かせない要素である。伝統的なメディア企業がもつ、コンテンツ配信手段の破壊の物語だ。

プラットフォーム誕生の時代は終わり、プラットフォーム戦争の時代に突入した。

トレンドは今にも変わりつつある。コンテンツに力のバランスが移りつつあるのだ。Facebook、Apple、Amazon、Google、Netflixなど、メディアのパラダイムシフトを引き起こした破壊的なプラットフォームがその主役となる。人々がコンテンツを消費する方法が完全に変わった今、このような企業が争う相手は伝統的なメディア企業ではない。これからは彼ら同士が争うことになる。プラットフォーム誕生の時代は終わり、プラットフォーム戦争の時代に突入したのだ。今後は、古い企業が新しいプレイヤーと妥協案を結ぶという場面ではなく、そのような新しいプレイヤー同士が争う場面こそがゲームの中心となる。

その争いはコンテンツをめぐる戦争だ。コンテンツこそがプラットフォーム間の差別化の要因であり、彼らはコンテンツのクオリティを高めるために巨額の投資をしている。今年、Netflixはコンテンツ製作のために60億ドルを費やし、Amazonは30億ドルを費やした。AppleはTime Warnerの買収を検討していると報じられている。TwitterはNFLを初めとするスポーツの生配信に望みをかけ、ミュージック・プラットフォームをもつApple、Spotify、Amazon、Tidalなどは音楽アルバムの限定リリース権をかけて互いに争っている。

このような現状はすべて、コンテンツ・クリエイターの聖地であるL.A.にとっては良いニュースである(この街にとって唯一のライバルはニューヨークだ)。Facebook、Google、Twitterなどの企業から離れてSnapchatにやってきた優秀なテック系人材と、コンテンツ・クリエイターが共存するこの南の大地には、スタートアップ・ルネサンスを加速するための土壌があるのだ。

テクノロジーに特化したモノカルチャーに代わる、L.A.の活気のある文化

サンフランシスコに住む私の友人たちは、街に根付くテクノロジーに特化したモノカルチャー(単一的な文化)に不満をもらす。私には彼らの言い分がよく分かる。かつてのサンフランシスコは、様々なバックグラウンドをもつ、クリエイティブで一風変わった人材を惹きつける街だった。美しく、安価で、(良い意味で)奇妙なこの街を彼らは気に入っていたのだ。テック系スタートアップにそこまで興味がない人々にとって、最近のサンフランシスコは、物価が高くなっただけではなく、多様性に欠けたつまらない街となってしまった。まさしく、現在のBay Areaは誰もが気に入るような地域ではなくなった。

その一方でL.A.は広大で、活気に溢れている。様々なバックグランドを持つ人々が住み、隣を見れば自分とは違うタイプの人がいる。そして彼らは、それぞれが違った目的や興味を追いかけている。この街のテックシーンも成長しつつある:この街での資金調達や人材の獲得は、以前よりもずっとやり易くなった。だが恐らく、L.A.のスタートアップシーンがもつ最大の特徴とは、業界の文化によって街全体がもつ文化が塗り替わることがないという点だろう。多くの人がこの特徴を魅力に感じている。

この街の文化と多様性によって恩恵を受けるのは、人々の生活の質だけではない。Google GlassとSnap Spectaclesを比べてみることにしよう。Spectaclesには、Glassにはないファッション性がある。プロダクト開発にかかわる様々な意思決定は、企業が属する環境に影響を受ける。L.A.に拠点を置くSnapchatでは、どのような物が「クール」なのか、消費者にとって何が一番重要なのかという点が重視される。一方で、シリコンバレーでは技術的に達成可能なものは何かを考え、文化的な側面にフォーカスすることは少ない。

Snapchatは南カルフォルニアのPayPalになる可能性がある:L.A.で解き放たれたSnapchatのモメンタムと将来性によって、これから誕生するスタープレイヤーたちは、この街を彼らが向かう候補地の1つとして考えるようになるだろう。テクノロジーの物語における次の章では、コンテンツが重要な役割を担うことになる。そして、そのコンテンツこそが、L.A.文化の根幹となる要素なのだ。Evan Spiegelに刻み込まれたL.A.のDNAがSnapchatに与えた影響をすでに理解している人もいるだろう。

Bay Areaの階級闘争やモノカルチャーに疲れきった起業家にとって、L.A.は魅力的な選択肢だ。この街での生活の質の高さと、比較的安価な生活費も、この街に移住する理由の一つになるだろう。Snapchatこそが、そのトレンドを加速し、この街のテックカルチャーに活気をもたらす存在なのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter