住宅ローン借り換え支援のMFSが3.3億円調達、BtoBtoC型サービス開始でユーザーリーチ拡大めざす

住宅ローンの借り換え支援サービス「モゲチェック」などを提供するMFSは3月30日、YJキャピタルゴールドマン・サックスを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達総額は3億3000万円だ。

写真左より、MFS代表取締役の中山田明氏、COOの塩澤崇氏、CTOの大西貴之氏

低金利が続く日本では、以前に組んだ住宅ローンを借り換えることで金銭的なメリットを得られることが多い。MFSが提供するモゲチェックでは、ユーザーが11項目の質問に答えるだけで、借り換えによる金銭的メリットの総額と、融資を受けられる確率を判定する。また、MFSは同じく11項目の質問に答えることでユーザーの信用度をスコアリングして推定の融資可能額を表示するという、新規で住宅ローン借り入れるユーザーに向けた「モゲスコア」も提供している。

MFSはこれら2つのサービスを無料で提供している。マネタイズポイントは、その後に提供する手続き代行サービスだ。融資が完了したときのみ、住宅ローンの支払い削減額の10%を成功報酬として受け取る。MFSはこれまでに3000件の借り換え相談を受け、うち約440件ほどが成約しているという。

そして、そのMFSが今回の資金調達とともに発表したのが、BtoBtoC型サービスの「モゲチェックPLUS(以下、PLUS)」だ。同サービスは不動産会社向けのサービスで、不動産会社は不動産を購入しようとしている消費者のデータをPLUSに入力することで、融資確率を判定し、最適な住宅ローンを推薦することができる。また、PLUS上でローン申し込みの手続きが可能で、ユーザーが銀行に来店する必要がなくなる。

少し考えてみると、PLUSが提供する機能は従来サービスのモゲチェック、モゲスコアと大差ない。重要なのは、これまでC向けにしか展開してこなかったサービス群を、B向けにも展開することを決断した点だ。その理由として、MFS代表取締役の中山田明氏は、住宅ローンの借り換えメリットをエンドユーザーに直接説明するのは非常に難しかったと話す。また、もともとMFSはエンドユーザーとの接点として来店型の相談窓口を展開していたが、これも現在はコールセンターに相談と手続き代行の機能を集約し、今後は直接店舗を増やす予定はないという。

MFSと同じく住宅ローンの借り換え支援サービスを提供するWhatzMoneyは、2016年6月に不動産会社向けのローン仲介サービスとして一足早くBtoBtoC型サービスを提供開始した。そのことからも分かるように、住宅ローンの借り換えメリットをエンドユーザーに直接説明するのは非常に難しいようだ。

2009年に創業のMFSは、2015年9月にマネックスベンチャーズなどから9000万円を調達。つづいて2016年6月には2億円を、2017年8月には2億5000万円を調達している。今回のラウンドを含む累計の調達金額は8億7000万円となる。

住宅ローン借換で浮いたお金を原資にリフォーム提案、日本のWhatzMoneyが新サービス開始

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住宅ローンの比較・検索サービス「WhatzMoney住宅ローン」を展開する日本のWhatzMoneyは本日、リフォーム会社比較サイトの「リショップナビ」を運営する株式会社アイアンドシー・クルーズ(以下、IACC)と業務提携をすると発表した。これにより同社は、住宅ローンの借り換え支援サービスの「ゼロカラリフォーム」をローンチする。

WhatzMoneyが展開中のWhatzMoney住宅ローンは、763社の金融機関が取り扱う1万7000件以上の住宅ローンを網羅するサービスだ。一方で、IACCが運営するリショップナビには1200社以上のリフォーム工務店が加盟しており、同サービスはこれまでに累計で3万人を超えるユーザーを獲得している。この2社が手を組んで新しくローンチするサービスが「ゼロカラリフォーム」だ。

WhatzMoneyは同サービスを通して、リショップナビに加盟するリフォーム工務店に、住宅ローンの借り換えシュミレーションやフォローアップサービスを提供する。工務店はゼロカラリフォームを利用してリフォーム希望者に住宅ローンの借り換えを促し、借り換えによって浮いた金利支払額の差を元に、リフォーム希望者の実質的な負担を抑えたリフォーム提案をすることが可能になる。

矢野経済研究所の調べによれば、2015年の日本の住宅リフォーム市場規模は約6.5兆円だった。既存の住宅を有効活用したいというニーズの増加を背景に、今後10年間でこのマーケットの市場規模は約7.4兆円まで拡大すると言われている。しかし、実際の現場におけるリフォームの受注には大きな壁がある。それは、高額なリフォーム費用だ。

平均的なキッチンまわりのリフォームでは100万円から150万円程の費用がかかり、より規模が大きなリフォームの住宅の増改築では、200万円から300万円程の高額な費用がかかることもある。実際のリフォーム受注の現場では、たとえ消費者にリフォームの希望があっても高額な費用を前に断念してしまうケースもあるようだ。

そこでゼロカラリフォームでは、消費者にローン借り換えによって得られるメリットを具体的に提示することで、実質的な負担を抑えたリフォーム提案を実現しているのだ。

ゼロカラリフォームではまず、IACCが運営するリショップナビによってリフォーム希望者とリフォーム工務店をマッチングする。消費者の住宅ローン情報を元に、工務店はWhatzMoneyに住宅ローン試算の申し込みをする。申し込みを受けたWhatzMoneyは、工務店に借り換えシュミレーションと住宅ローンプランについてのサポートを提供する。工務店はそのシュミレーション結果を利用して、借り換えによって得をする具体的な金額を消費者に提示し、それを原資にしたリフォーム提案を可能にするという仕組みだ。WhatzMoneyは借り換えを決断した消費者に対してフォローアップサポートも提供している。

WhatzMoney代表取締役社長の前田一人氏は、「不動産営業の方は、不動産の専門家であって、住宅ローンの専門家ではありません。そのため、多くの不動産営業の方が”どの住宅ローンがお客様に最適なのかわからない”などという課題を持っています。本サービスにより、不動産営業の方は住宅購入者に最適な住宅ローンの提案ができるようになります」と説明する。

同サービスにとって追い風となるのが、日本の金利水準だ。長期金利が継続的に低下を続ける日本では、住宅ローンの借り換えによるメリットが大きい。

10年以上の住宅ローンは、10年もの国債金利(長期金利)と連動する。過去10年間の長期金利を見てみると、2016年では1.5%を超す水準にあった長期金利はその後下落を続け、マイナス金利政策の導入が始まった今年は0%を切る水準で推移していた(11月中旬からは再び0%を上回る金利水準となっている)。

例として、借入残高が2000万円で、残りの借入期間が20年、金利1.5%の住宅ローンを組んでいる消費者を考えてみよう。工務店がゼロカラリフォームを利用して、その消費者に金利が0.5%の住宅ローンへの借り換えを提案できた場合、その消費者が手にする「借り換えによるメリット」は200万円となる。先ほども述べたように、平均的なキッチンのリフォームにかかる費用が100万円から150万円だということを考えれば、非常に魅力的な提案だと言えるだろう。

しかし、ここまでメリットの大きい住宅ローンの借り換えを検討していない消費者も多い。「住宅金融支援機構の調査によれば、およそ50%の住宅ローン利用者が自身の住宅ローンの内容を理解しておらず、日々の生活の中で、住宅ローンの見直しなどを行う機会がありません」とWhatzMoneyの前田氏は話す。そもそも借り換えによるメリットを消費者が理解していなかったり、知っていても面倒くさくて手がつけられない、というのが現状なのだ。

日本のスタートアップの中にも、MFS株式会社の「モゲチェック」など住宅ローンの借り換えを促すアプリやサービスなどはある。しかし、MFSが2つ目の有人店舗を11月にオープンしたことからも分かるように、消費者に借り換えのメリットを理解してもらうという点が各社にとって最大の課題となっているのだ。

その点、WhatzMoneyは今回の業務提携により、「この資金を利用すれば、このリフォームが可能になる」という具体的なメリットを消費者に提示することで、潜在的な借り換えのニーズを引き出す仕組みを構築したと言えるだろう。