GMが手放し運転システムを市街地走行に拡大

GMには、手放し運転が可能な運転支援システムであるSuper Cruise(スーパー・クルーズ)を開発する「大きな組織」があるが、その機能をハイウェイから降りた市街地でも使えるように拡大すると、同社グローバル製品開発副社長のDoug Parks(ダグ・パークス)氏は米国時間5月19日に公表した。

同市はまた、CiTi主催の2020 Car of the Future Symposium(未来の車シンポジウム)で行われたウェブキャストインタビューで、GMは現在のSuper Cruise製品の改良も継続すると話していた。

「Super Cruiseの改良を継続しながら、私たちは新機能の追加を続け、ハイウェイ以外にも広げます」とパークス氏。さらに、内部でUltra Cruise(ウルトラ・クルーズ)と呼ばれている別チームが、市街地での手放し運転を可能にする製品の開発にあたっているとも述べた。

「私たちは、それと同じ能力をハイウェイから降ろそうと考えています」と彼はいう。「Ultra Cruiseは、Super Cruise全体を含みさらに自宅周辺、市街地や路地などに範囲を広げたものになります。つまりUltra Cruiseの領域は、実質的に常時、すべての道路です」

しかしパークス氏は、これは自動運転ではないと慌てて釘を刺した。先進運転支援システムの能力は向上しているが、それでも人間のドライバーによる操作や安全確認は必要だ。

「最終的にはそうなる可能性もありますが、私たちはUltra Cruiseを常時完全な自動運転とはいいません」とパークス氏。

Ultra Cruiseが実用化される時期について、パークス氏は言及していない。GMの広報担当者は、パークス氏のインタビューの後に公開した声明の中で、手放し運転支援システムの技術を他の車種に広げていくと述べている。また「この能力をより多くのシナリオに拡大させる方法を研究するチーム」があるとも話している。

GMは「今日はまだ具体的な名前などは発表できませんが、注目していてください」と話していた。

この新しいUltra Cruise機能は、現在の市場で最も高性能と広く目されているTesla(テスラ)の先進運転システムAutopilot(オートパイロット)にぶつけてくるものと思われる。Teslaの「完全自動運転」パッケージは、Autopilotの進化版だ。一時停止の標識や信号を認識でき、その手前で自動的に減速して停止できる。だがその機能はまだベータ版と見なされている。

GMのUltra CruiseはLiDARのマップデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンサーに、運転席の人間の注意力をモニターするドライバー・アテンション・システムを組み合わせたものだ。Teslaの運転支援システムAutopilotとは異なり、Super Cruiseのユーザーはハンドルに手を置く必要がない。ただし、視線はまっすぐ前に向けられていなければならない。

ソフトウェアを更新してオーナーに改良した機能を試してもらうというTeslaの方式と比べると、GMのアプローチはゆっくりだ。2017年にGMがSuper Cruiseの提供を開始したとき、対応車種はキャデラックのみ(しかもフルサイズのCT6セダン限定)で、ハイウェイでの使用に限られていた。変化が起きたのは、Super Cruiseの対応車種を広げるとGMが発表した2019年からだ。

GMの新しいデジタル車両プラットフォームは、電気的帯域幅が広く、データ処理能力が高くできており、Super Cruise能力を導入しやすくなっている。2020年1月にGMは、2021年型Escalate(エスカレード)を含む一部のキャデラック搭載のSuper Cruiseに、ドライバーに代わって車線変更を自動的に行う機能を追加した。

このSuper Cruiseの強化バージョンでは、ステアリングや速度調整などの機能も向上している。これは2021年型キャデラックCT4とCT5セダンに搭載され、続いて2021年型キャデラックエスカレードにも導入される。発売は2020年後半とのことだ。

画像クレジット:GM

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(翻訳:金井哲夫)

Brodmann17がローエンドCPUにも対応する自律コンピュータービジョン技術で1100万ドルの投資を獲得

自律走行車両と運転支援技術にとって、高効率なコンピュータービジョン・システムは決定的な意味をもつ要素だが、高価でかさばるハードウエアに依存しないコンピュータービジョン技術を提供する方法(ローエンドのCPUでも利用可能な深層学習ソフトウエア)を開発したあるスタートアップが投資ラウンドを確保し、今年末のサービス開始に向けてギアをシフトアップした。

Brodmann17(ヒトの脳の一次視覚野があるブロードマン領野に由来する)は、OurCrowdが主導するシリーズA投資として1100万ドル(約12億3000万円)を調達した。これには、Maniv Mobility、AI Alliance、UL Ventures、Samsung NEXT、Sony Innovation Fundが参加している。

Brodmann17の高速演算を実現する最先端技術は、物、道路、広範な景観を目で見て対処する人工知能を用いた車載機能全般に利用できるようデザインされている。これは、IntelのMobileye、Boschなど他のOEMが開発したサービス、BMWなどの一部の自動車メーカーと競合するものだ。

自動車は、以前にも増してハードウエアとして認識されるようになった。そのため、上記の企業だけでなく自律運転業界すべての企業は、技術界が経験したことのない巨大な課題に取り組んでいる。自律走行システムは高価であるばかりでなく、大量のエネルギーを消費し、自動車の大きな空間を占拠するため、どの企業も、この問題のひとつでも、できればすべてを解決できる道を探っている。さらに、現在のところ、多くの解決策はクラウドで演算を行うため、数テラバイトものバンド幅を消費し、運転シナリオに許容限度を超える遅延を発生させてしまう。

Brodmann17の宣伝文句によれば、その中核製品は、「軽量」にデザインされた、深層学習をベースとするコンピュータービジョン技術だという。ソフトウエアを基本とするソリューションであるため、小型の、ローエンドの車載プロセッサーでも利用でき、システムにどのようなLidar、カメラ、レーダーが実装されていても、完全に対応できるという(ただ、ローエンドのCPUで使えるとは言え、高速なCPUの場合とは比べものにならない)。

高速化の成績。Brodmann17のFPS。

計画では、Brodmann17の技術は、完全な自律走行を支援するものとして展開されることになっているが、自律走行車両が実用化するのはまだ何年も先の話だ。CEOのAdi Pinhas(深層学習とコンピュータービジョンの専門家であり、Ami​​r AlushとAssaf Mushinskyという2人のAI科学者と同社を共同創設した)は、最初の商業展開は、先進運転支援システム(ADAS)の形で行われるだろうと話している。これは現在、人が運転する自動車の前後のカメラで静止体と物体をより正確に認識できるよう、グローバルな大手自動車メーカーが取り入れようとしている技術だ。

だが、これは決して小さな魚ではない。ADASは、すでに多くの新型車で重要な装備となっているばかりか、その普及率と機能性は今後も成長を続ける。サードパティーから、まるごと、または一部が納入されることが多いADASシステムだが、2017年の時点で市場規模は200億ドル(約22兆3300万円)。2025年には920億ドル(約102兆7340億円)に達すると予測されている。

私は、その本社が置かれているテルアビブで、Brodmann17の創設メンバーと初めて会った。あれは2年前、その街で運営されているサムスンNEXTインキュベーターの片隅で、たった4人で活動していたときだ。彼らは、小さなプロセッサーに収まり、一般的な運転シナリオで遭遇する大小の物体のかすかな雰囲気の違いを大量に特定できる技術の最初のバージョンを見せてくれた。

それが今では、70名のスタッフを抱えるまでに成長した。そのほとんどが技術者で、独自技術の開発にあたっている。しかし、初期の開発ステージから一段上がるために、さらに社員を増やしてゆくという。

Pinhasは、ここ2年ほどの間に、技術界と大きな自動車産業が、自律運転車両のコンセプトに迫る方法に面白い変化が見られたと話している。

一方では、みんなが自律運転に関して可能なことを出し合っている。それは新しい試作車を作ってテストするというロードマップを加速させる明らかな助けになっている。もう一方では、そうした研究が増すことで、完全なシステムが出来上がるまでに、この先どれほどの研究開発が必要になるか、自律運転には今後どのような未知の要素が現れるのかという、現実的な見方ができるようになったという。

「今は、市場が一歩後退したかのように私には見えます。自律運転システムの開発を加速したいと誰もが望んでいますが、同時に、今年のCESで気がついたのですが、レベル5の話をする人が一人もいなかったのです」とPinhasは言う。レベル5とは、自律運転サービスにおける自律度の最高レベルのことだ。CESは、1月に開かれる大規模な技術系見本市で、次世代の輝かしい新サービスが初めて披露される場所でもある。「現状では、レベル4の開発に取り組みつつ、考えることが最適だと感じています。みんなでよく考えて、ロボットタクシーが、高度に洗練されたシナリオでどのように走らせることができるのかを確かめるのです」

そこに、Brodmann17はADASを入れ込む考えだ。それにより、現在実用化されているサービスに力を与える。そしてそのコンセプトを提示しつつ、将来の開発とサービスの足場を固める。

もうひとつ、Pinhasが指摘した面白い進展がある。これまでデータを演算し理解するためには、データのトレーニング量が重要だと考えられていたが、より賢いニューラルネットワークの開発に重点がシフトしているという。「これまでは『誰がいちばんたくさんデータを持っているか』でしたが、今はみんなが持っています」と彼は言う。「今は、トレーニングのためのアルゴリズムが重視されます。専門家たちは、(人間のように「思考する」ようデザインされた)ニューラルネットワークがすべてを解決すると、ずっと考えてきました。しかし今はまだ、そのネットワークのトレーニング方法を解明することが鍵となっている段階です。単にそこへデータを投げ込むだけでは解決しません」。まさにそこは、Brodmann17が長い間フォーカスしてきた分野であり、「他の企業も始めようとしている」ものだ。

Pinhasは、今日の自動車用コンピュータービジョン市場でもっとも進歩しているのはMobileyeだと認めている。とは言え、まだまだ世の中は進化の初期段階であるため、たくさんのイノベーションが誕生する余地があり、スタートアップにも大企業にも、インパクトを与えられる機会が十分にある。それこそ、投資家たちがBrodmann17に興味を抱く理由だ。そしてそれが、このスタートアップが次の段階に必要な資本を得るために、すでに次の投資ラウンドに向けて動き出している理由でもある。

「私たちは、Brodmann17が現在最高水準の深層学習AI企業であると確信しました。この会社には、非常に経験豊富な経営チームがあり、AIアルゴリズムの基礎に大きな飛躍をもたらした、卓越した技術の先進性があります」と話すのは、OurCrowdの共同経営者Eli Nirだ。「Brodmann17の技術は、AIの低計算量実装への扉を開きました。コストと複雑性と価格を大幅に低減し、数多くの分野、業界での利用が可能になります。私たちは、このラウンドを主導でき、この会社の未来の成功に貢献できることを大変に嬉しく思っています」

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(翻訳:金井哲夫)