マイオリッジが京都大学保有のiPS細胞由来心筋細胞製造方法について海外企業と初のライセンス契約

マイオリッジが京都大学保有のiPS細胞由来心筋細胞製造方法について海外企業と初のライセンス契約

京都大学発スタートアップ「マイオリッジ」は4月19日、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療関連製品を開発する米Avery Therapeutics(Avery)との間で、京都大学およびマイオリッジが保有するiPS細胞由来心筋細胞の分化誘導法について非独占的なライセンスをAveryへ共与するライセンス契約を締結いたしたと発表した。

この契約に基づきAveryは、同誘導法を使用した製品の製造・開発販売を北米において行う非独占的な権利を得る。現在Averyの製品は、非臨床試験の段階にあるという。

なお同契約は、公表されている限り、京都大学の保有するiPS細胞由来心筋細胞製造方法として、海外企業に対して臨床応用を目指した技術供与を行う、初めてのライセンス契約となる。マイオリッジは、京都大学よりライセンスを受けた同誘導法に加えて、iPS細胞などの幹細胞や中胚葉由来細胞(心筋細胞、間葉系幹細胞、血球系細胞など)の製造にかかる基盤技術を有している。今後も独自性の高い基盤技術を世の中へ送り出すことで、再生医療の普及に貢献するとしている。

マイオリッジは、京都大学の研究成果を基に2016年8月に設立されたスタートアップ。新規低分子化合物を用いることで高価なタンパク質を必要とせずに、浮遊培養にて多能性細胞を心筋細胞を含む分化細胞へ分化誘導できる基盤技術を保有している。同誘導法は京都大学よりライセンスを受け実施している。

同技術を活用したiPS細胞由来心筋細胞の販売のほか、自社で保有する低分子化合物データベース、特許出願中の培地成分探索技術を活用したオーダーメイドの培地開発支援、製造プロセス開発支援といった、再生医療等製品を開発する企業を対象としたサービスなどの事業を展開している。

Averyは、心血管疾患に苦しむ患者のため高度な治療法を開発している企業で、主要な開発パイプラインは、慢性心不全の治療を目的に開発中の同種再生医療製品MyCardiaとなっている。同社は、独自の製造プロセスを活用しMyCardiaの大規模製造を実現し、凍結保存することで即時使用可能な製品としてMyCardiaを販売する予定。さらに同社は、独自の組織プラットフォームを活用し、他の心血管系疾患を対象とした開発も進めている。

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タグ:iPS細胞(用語)医療(用語)京都大学(組織)再生医学・再生医療細胞療法マイオリッジ(企業)日本(国・地域)

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

創薬および再生医療高品質化の研究開発を行うナレッジパレットは3月29日、シリーズAにおいて、第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家の未来創生2号ファンド(スパークス・グループ)、きぼう投資事業有限責任組合(横浜キャピタル)、既存株主のANRI。創業以来の累計調達額は約7億円となった。

ナレッジパレットのミッションは、遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)からなる細胞ビッグデータを「正確に・速く」取得する技術で細胞を診断し、製薬・再生医療業界の課題「開発・製造の困難さ」を解決するというもの。

人体を構成する基本要素である「ヒトの細胞」の状態について、同社の技術を基にした遺伝子発現プロファイルにより取得・診断し、「病因は何か」「薬の効果はあるか」「製造された細胞の品質」を特定。AI創薬により「開発効率の低さ」の解決、またAI再生医療による「製造の困難さ」の解決を目指している。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

調達した資金は、研究開発および人材採用にあて、さらなる技術開発と各領域における共同研究を加速し、より多くの難病に対処できる創薬・再生医療プラットフォームを構築する。

また今後2年間は、シリーズAで調達した資金をベースに業容を拡大。2023年にシリーズB調達の実施を目指しており、2025年にIPOを計画している。中長期的には、他社との協業のほかに、AI創薬事業、AI再生医療事業において自社での研究開発を進め、最終的には構築したデータベースを基とした新薬や再生医療プロダクトを他社にライセンスするなども目指すとした。

遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)というビッグデータ

ヒトは約37兆個の細胞で構成されており、細胞1個は30億文字に相当するDNAを持つ。さらにその中に3万カ所の「遺伝子領域」があり「RNA」として転写され、細胞の構成物質であるタンパク質を作るもととなる。

一口に「細胞」といっても心臓や肝臓など臓器の違いが生まれる理由は、この遺伝子の種類・状態により3万種類の遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)が存在していることによる。同様に、病気による違い、化合物(薬)の効果の違いなども遺伝子発現プロファイルとして現れるという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

ナレッジパレットは、この遺伝子発現プロファイルを正確・高速・大量にとらえる技術を有しており、これを基にビッグデータとして分析・診断結果を蓄積し創薬・再生医療に活用するという。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得したコア技術

同社のコア技術は、共同創業者兼代表取締役CEO 團野宏樹氏が理化学研究所在籍時に開発した「シングルセル・トランスクリプトーム解析技術」だ。このコア技術は、国際ベンチマーキングの精度指標(遺伝子検出性能・マーカー遺伝子同定性能)と総合スコアにおいて1位を獲得しており、トップ学術誌Nature Biotechnologyに掲載されている(2020年4月)。

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同技術は、精密な分子生物学実験術とAI技術を組み合わせて、1細胞レベルで全遺伝子発現プロファイルを取得するというもので、実験室で行う精密実験プロセス「精密分子生物学実験」と、コンピューター上で行う計算科学技術「AIによる大規模バイオインフォマティクス」により構成されている。

精密分子生物学実験では、解析対象となる細胞から多段階の分子生物学実験によりRNAを抽出し、次世代シーケンス技術により全遺伝子発現プロファイルを取得する。さらにAI科学計算・二次元マッピングといったバイオインフォマティクスを介し、どのような細胞がどの程度含まれているのか、また細胞に含まれる希少かつ重要な細胞(間葉系幹細胞など)も含めて、網羅的・高精度に細胞の状態を診断するという。

製薬会社と協業が進むAI創薬事業

近年、医薬品の開発現場では、薬のターゲットとなる体内物質(創薬標的)が枯渇しており(開発が容易な新薬・疾病はあらかた手が付けられている)、難病になるほど新薬開発の難易度が上昇、開発コストが急速に肥大化しているという。このため、新薬の開発効率を高める新たな創薬技術が必要となっている。

そこでナレッジパレットは、製薬会社との連携・協業の下、様々な病気の細胞や薬剤を投与した細胞の遺伝子発現データベースを構築し、これを活用したAI解析により新薬の開発を進めている。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同社コア技術では、数多くの「微量な細胞サンプル」に対して、従来技術と比較して10~100倍のスループットで、どの化合物(薬品)が特定の細胞に効果が高く毒性が低いのかを選び出す「全遺伝子表現型スクリーニング」が可能という。

製薬会社では、薬剤の基となる数多くの化合物をまとめたライブラリーを持っており、対象の(かつ微量の)培養細胞などに対してそれぞれ処理を行い解析を行うことで、実際にどういった病気や細胞に効果があるのか特定する。ナレッジパレットは、これら大量の化合物サンプルと微量の細胞サンプルといった組み合わせでも、高精度・高速に遺伝子発現プロファイルの変化を捉えられる。これにより、従来技術と比べ1/10から数十分の1のコストで、大規模な全遺伝子表現型スクリーニングを可能としているという。

再生医療に関する3つの課題

現在の医薬品は、化合物合成で低分子化合物の製造を行う「低分子医薬品」、細胞の中でタンパク質を合成・製造する「バイオ医薬品」、ヒト由来の細胞を細胞培養により利用し機能の修復を行う「再生医療」に大別される。

再生医療では、「生きた細胞」をどう制御するかが医薬品として製造する上で大きなカギとなっているという。細胞のコントロールでは、大きく分けて「品質にバラツキが生じる」「培養液の未確立」「高い製造コスト」という3点の課題が存在しているそうだ。

品質のバラツキという点では、そもそも生きた細胞であることから個性が現れ、性質の制御が難しい。例えば同じ条件で培養した細胞、また違う研究機関が再現しようとしたところ別の細胞ができてしまったなどが起こりうるという。患者に移植予定の細胞シートが離職試験で剥がせず、移植に失敗するということもあるそうだ。

また、細胞を育てる培養液(培地)については、細胞の性質や増殖の機能を決定する生育環境にあたるものの、どのような化合物をどの程度の濃度で組み合わせると、特定の細胞に最適なのか、グローバルスタンダードが存在していない状況を挙げた。その理由として、細胞ごとに最適な生育環境を生み出すための培地調液は、高度なノウハウと手作業、多段階の実験プロセスが必要なため、試作可能なパターンが1年あたり約200種類と少なく、最適な培養液にたどり着けていないという。

これら品質のバラツキや培養液の課題が製造コストの高騰に結びついており、採算が取れない状況になっているそうだ。

同社は3つの課題の原因として、細胞がどのような性質を持っているのかという「細胞の診断技術」がなかった点を指摘。培養・製造の評価指標が不十分で、製造コストを下げられていないとした。

コア技術活用の「培養最適化」に基づく再生医療

ナレッジパレットは、コア技術(シングルセル・トランスクリプトーム解析技術)を用いることで、非常に多くの種類の培養条件で培養された細胞について、高速に全遺伝子レベルで診断することで、最適化された培養液を開発できる(培養最適化)という。

製造改善が必要な再生医療用細胞に対して、CTOの福田氏による独自のチューンナップを施した自動分注機・ロボットで多種類の培養液を作成。コア技術である遺伝子発現解析・分析により、どのような条件で培養された細胞がどのような性質を持つのか網羅的・高速に培養性能を評価しその情報を蓄積する。このデータベースとAIにより、最適な培養条件を選択できるようにするという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

この取り組みにより、バラツキのない再現性の高い細胞製造をはじめ、さらに従来増殖が難しかった細胞についても10~100倍の収量を実現するといった生産性向上、製造コストの削減が可能になるという。再生医療を「製品」として確立させ、難病の治療に役立つものにするとした。

再生医療・細胞治療に関し、日本は国際的なトップランナー

創薬・再生医療領域において日本で起業したスタートアップというと、残念ながら耳にする機会はあまりない。TechCrunch Japanでも資金調達などの掲載例は数少ない状況にある。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得(後述)という同社の技術力を考えると、海外での起業もあり得たのではないか。そう尋ねたところ、CEOの團野氏は、国内の製薬業界自体がそもそもグローバルに通じている点を挙げた。また同氏が理化学研究所においてバイオテクノロジーとAIの融合研究に従事したという経歴・人脈が、優れた人材をスピーディに採用する際に強みになると考えているそうだ。

また再生医療領域は、日本が力を入れている分野でもある。京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥氏が2012年のノーベル医学生理学賞を共同受賞したことから国として推している点が追い風となっており、民間企業やアカデミアが取り組むなか日本で起業する価値は高いという。

共同創業者兼代表取締役CTO 福田雅和氏は、日本では再生医療に関する新法が制定され、規制改革が大胆に行われた点を挙げた。法整備面では日本は進んでおり、海外から日本に参入する傾向も見受けられるという。再生医療・細胞治療に関しては日本は国際的なトップランナーといえるとした。

ナレッジパレットの技術、ナレッジパレットの事業で停滞を吹き飛ばし前進する

一方で團野氏は、「製薬の開発がすごく大変だという点は痛感しています。同時に、この領域が加速すると多くの方の幸せにつながると信じています。再生医療も同様です。再生医療だからこそ治る病気が多くあると期待されているにもかかわらず、日本では追い風があるにもかかわらず、承認された製品がまだまだ少ない状況です」と指摘。「私達の技術、私達の事業であれば、この停滞を吹き飛ばして前に進むことができると、強い気持ちで運営しています」と明かした。

福田氏は、「身近な人を治せるように、再生医療がそれが実現できるように、この領域でトップになることを決意して起業し、がんばっています」と続けていた。


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同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を手がける大阪大学発スタートアップ「クオリプス」が20億円調達

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行う、大阪大学発スタートアップ「クオリプス」は3月16日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JICベンチャー・グロース・インベストメンツ)、ジャフコSV6投資事業有限責任組合、ジャフコSV6-S投資事業有限責任組合(ジャフコ グループ)、京大ベンチャーNVCC2号投資事業有限責任組合、阪大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合(日本ベンチャーキャピタル)、富士フイルム、セルソース他。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬で、シート状に加工したものを心臓に移植するという(他家とは、第三者提供のiPS細胞から作った細胞を使うことを指す)。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待されている。

今回調達した資金により、同社はこの同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献するとしている。

富士フイルムは、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心筋再生医療研究開発の促進を、またセルソースは、同種由来間葉系幹細胞および同種由来iPS細胞由来エクソソームの利活用を通じた再生医療分野での協業を期待し資本参加したという。

クオリプスは、大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を行うことを目的とする、2017年3月設立の大阪大学発スタートアップ。同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指す。

同社は2020年夏、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、同製品の製造・供給体制を構築するため商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市において稼働させている。

また今後、3年後の上市に向けて、研究開発の加速化や商業用細胞製造施設の安定稼働を図り、事業化体制を構築するとともに、海外展開のための準備、第2、第3プロジェクトの探索研究を推進するため、第三者割当増資の実施に至ったという。

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クオリプスは12月4日、総額約20億円の第三者割当増資に関する契約を締結したと発表した。引受先は、大幸薬品、京都大学イノベーションキャピタル、テルモ、ダイダン、ステムセル研究所、および朝日インテック。

今回の資金調達により、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの実用化を一層加速化させ、様々な細胞製品の培養・加工を通じ、画期的な細胞治療薬の創生に貢献する。

大幸薬品は再生医療にかかる衛生管理分野での協業など、ダイダンは商業用細胞培養加工施設を活用した管理技術の一層の高度化など、ステムセル研究所とは再生医療関連でのシナジーなど、朝日インテックは細胞を体内デリバリーするシステムの開発などの期待のもと、資本参加を行っている。

クオリプスは、2017年3月に大阪大学の技術・研究成果をベースに、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を目的に設立された大阪大学発スタートアップ。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの製造方法に関する研究開発を推進し、さらに効率的な生産技術を確立して、世界に先駆けて再生医療等製品として製造販売承認を取得することを目指している。

同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートとは、ヒトiPS細胞から作製した心筋細胞(iPS心筋)を主成分とした他家細胞治療薬にあたり、シート状に加工されたものを心臓に移植する。有効な治療法がない重症心不全の患者を対象とし、心機能の改善や心不全状態からの回復等の治療効果が期待される。

同社は、同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの早期実用化を進めるべく、現在大阪大学で実施中の医師主導治験を支援するとともに、当該製品の製造・供給体制を構築するため、本年夏に商業用細胞培養加工施設を大阪府箕面市に稼働させた。

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