南米の投資家の間でホテル投資が人気

南米の大手ベンチャーキャピタル投資家たちの一部が、現在ホテルチェーンを支援している。

実際、コロンビア最大のホテルチェーンであるAyendaが、新しい調達ラウンドで870万ドル(約9億7000万円)を調達した。

Kaszek Venturesが主導したこのラウンドは、コロンビアおよび周辺地域における、Ayendaの継続的な拡大をサポートすることになる。このホテルチェーンは、既にコロンビア国内で150のホテルを運営しており、最近の発表によればペルーにも進出を果たした。

資金は、Kaszek VenturesおよびIrelandia Aviation、Kairos、Altabix、そしてBWG Venturesなどの戦略的投資家たちから調達した。

2018年に設立された同社は、現在コロンビア内にそのブランド名の下で4500室以上を運営し、国内最大のホテルチェーンとなっている。

ベンチャーファームによる実店舗チェーンへの投資は、北米よりも新興市場ではるかに一般的だ。Ayendaへは、ソフトバンクグループがインドのホテルチェーンOyoに対して行った大きな賭けや、昨年末にLvYue Groupに対してTencent(テンセント)、Sequoia China、Baidu Capital、そしてGoldman Sachsたちが投資した(発表によれば)「数億ドル規模」(数百億円規模)の投資行動を反映したものだ。

「私たちは大きな産業を再定義しようとする企業を探しているのですが、そこで出会ったのがAyendaだったのです。彼らはこの地域で、前例のない方法でホテル業界を変えようとしているのです」と語るのはKaszek VenturesのパートナーであるNicolas Berman(ニコラス・バーマン)氏だ。

Ayendaは、フランチャイズシステムを通じて独立したホテルと連携し、ホテルの稼働率とサービスを向上させている。ホテルは、チェーンへの参加を申請し、営業開始の承認を受ける前に、最大30日間の審査プロセスを経る必要がある。

アイルランド航空のマネージングパートナーであるDeclan Ryan(デクラン・ライアン)氏は、次のように述べている。「最高のコストパフォーマンスの下に幅広いホテルの選択肢を提供することで、利用客はより頻繁に移動し、経済を活性化させてくれます」。

同社は、2020年にそのホテルに、100万人以上のゲストを迎えられることを期待している。客室は、アメニティと24時間体制のカスタマーサポートチームを含め、1泊20ドルで提供されている。

Oyoの話は、ホテルチェーンへのベンチャー投資拡大を検討している企業にとって、警告を発する物語かもしれない。かつて高く持ち上げられたこの企業は、私たちが書いたように、厳しい批判の対象となってきた。

New York Times(NYT)は、インドのテクノロジーコミュニティで注目を集めている、ハイテク採用の低予算ホテルチェーンOyoに関する詳細なレポートを公開した。NYTの記事では、Oyoは無認可の部屋を提供し、その感心できない慣行の中でも特に、トラブルを抑止するために警察官を買収していたと書かれている。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドからの数十億ドルに支えられたOyoが、インド版WeWorkになるかどうかが真の懸念材料である。インドのスタートアップエコシステムは、r成長しシリコンバレーの競合相手とぶつかるようになるにつれて、多くの障壁に直面する可能性がある。

トップ画像クレジット:inxt /Shutterstock

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(翻訳:sako)

30歳未満の消費者の90%がターゲット――新興市場の人々の生活を支えるフィンテック

【編集部注】執筆者のJoshua Matemanは、中国本土を拠点に金融、アントレプレナーシップ、テクノロジー、消費動向、農業、ゲーム、スポーツ、アートに関する執筆活動を行っている。

国家が繁栄するにつれて、国民は郊外から大都市や海外に移り住み、経済力をつけながらグローバル経済に参加する。

そして彼らは食べ物を購入し、電気料金を支払い、交通機関のICカードをチャージし、オンラインサービスの料金を支払い、海外から商品を購入し、ローンを返済し、親戚に送金しなければならない。

しかし、国民の93%が銀行サービスを利用できるアメリカとは違い、発展途上国の市民の多くにとって銀行は縁遠い存在だ。世界中で約20億人の成人が正規の金融サービスにアクセスできない状態にある上、彼らが利用できるサービスはプロセスが複雑で料金も高いものばかりだ。

この問題を解決するために、フィンテックスタートアップはさまざまなオンライン・モバイルサービスを開発しており、消費者にも歓迎されている。特に若い世代は段々とネット銀行を受け入れるようになっており、30歳未満の消費者の約90%はいわゆる新興市場に住んでいる。

Paul Wuが、モバイル通信キャリアのためにアプリストアの開発を行うGMobiを立ち上げたのは、2011年のことだった。その後、同社は外部サービスのためのモバイルウォレットをローンチ。現在ではGMobiに在籍する100人の社員のうち、約3分の1が同社のモバイルペイメントサービス「Reach Pay」に取り組んでおり、このサービスはGMobiの新たな収益源として急成長を遂げている。

台湾発のGMobiは文化的、言語的に近いことから、まず中国本土への進出を模索したが、AlipayとTencent Payという二大サービスがすでに市場を席巻していた。「もう中国本土には進出できません」とGMobiの本社で台北郊外の山を眺めながらWuは言った。「中国の競争は死ぬほど厳しんです」

そこでGMobiはインドに目を向けることにし、数年間の準備期間を経て、プリペイド携帯のチャージや送金ができるモバイルウォレットOxymoneyをローンチした。ユーザーのほとんどは社会経済的地位の低い人たちでパソコンも持っていないため、GMobiはモバイルでのサービスのみ提供している。

例えば、ニューデリーに移り住んだ農村出身の労働者が、故郷の親にお金を送りたいと考えているとする。現状だと、普通は街中にある送金業者の店舗を訪れ、用紙に必要事項を記入し、どう計算されているのかよくわからない料金を支払って送金を行い、それから数日〜1週間経って親が住む農村部の銀行にお金が届く。

しかしOxymoneyを使えば、上記のプロセスにおける無駄や面倒くささがなくなる。WuはOxymoneyのプロセスを、GMobiの役員室でホワイトボードとマーカーを使って説明した。現状のフローは「消費者→業者→お店→消費者」へと簡略化できると彼は言うのだ。

ユーザーがOxymoneyを使って送金すると、まず大手の送金業者のもとにそのお金が届く。農村部に住む親も銀行口座を持っていない可能性が高いので、その後お金は銀行口座を保有している村のお店のもとに届き、親はそこでお金を回収することができるという仕組みだ。

このプロセス全体にかかる時間は約1日で、ユーザーは送金額の1%を手数料として支払う。ミニマム料金は設定されていないが、GMobiの1000万人におよぶインドのユーザーは、通常1件あたり15〜30ドルを送金している。

「私たちは金融サービスを効率化することで、中産階級〜下位中産階級の人々の経済状況を改善する手助けをしたいと考えています」とWuは語った。「まだまだ銀行の店舗を訪れる人が多いので、これからも積極的に消費者を教育していかなければいけません」

インド全体としての動向も同社を後押ししている。スマートフォン市場の伸びが世界一のインドでは、2021年までに携帯電話の契約数が14億件に達すると予測されている。さらに、インド政府はG20に送金手数料の削減を急ぐよう要請しており、インドの都市化が進むにつれて(現在人口の3分の1が都市部に住んでいる)送金額も増えていくだろう。

デジタル・インディア」構想のもと、政府は通貨や決済を含め、生活のあらゆる側面の電子化を推し進めている。

「この構想のおかげもあって、私たちは急成長しているんです」とWuは話す。

デジタル化構想がスタートアップの追い風となっている一方で、それに異議を唱える人もいる。コメディアンのBill Burrは、デジタル化構想が進むにつれて第三者に自分の情報が管理されるようになってしまうことを危惧しており、ポッドキャストの中で「全員にマイクロチップが埋め込まれるような世の中に向かって進んでいる」と語った。

現状、GMobiは国内送金だけ取り扱っている。海外送金についても考えてはいるが、実際に取り組むとなると、文化的にもオペレーション的にも規制的にもかなりの負担がかかってくる

「各国でライセンスを取得しなければならず、一定の資本金が必要になる上、現地の銀行と接続するために別のプロセスも経なければいけません」とWuは言う。「そのため、海外送金をはじめるのは簡単なことではないんです」

反マネーロンダリング規制が厳しさを増す中、海外送金には時間がかかるだけでなく、送金者が銀行の窓口を訪れなければいけないということもよくある。しかし、100人の社員を抱えるdLocalはその状況を変えようとしている。

送金用のインフラを開発するdLocalは、企業やお店(先進国が中心)が顧客(新興国が中心)からの支払いを受け取れるような仕組みを提供している。

例えば、FacebookやAirBnB、Uberといった企業がアジアや南米でサービスを提供した場合、それぞれの市場でオペレーション上の違いがあるため、支払いを受け取るのにも一苦労する。そこでdLocalは、SMSやモバイルウォレット、オンライン送金、クレジットカード、データカード、デビットカード、さらには現金まで含めた150種類以上の支払い方法をカバーする単一のプラットフォームを運営しているのだ。

dLocalの共同ファウンダーでCEOのSevastian Kanovichは、成功の理由について次のように語っている。「新興国に住む人たちは海外でも使えるクレジットカードを持っていないため、それ以外の方法で決済をしたいと思っています。しかも実際に彼らがどんな決済手段を使いたがってるかというのは、国によってさまざまです」

9年前、まだ南米のウルグアイに住んでいたKanovichは、dLocalのようなサービスの需要を目の当たりにした。当時、消費者はオンラインで商品を購入しても、海外で使えるクレジットカードをもっていなかったため支払いを完了することができなかったのだ。Kavonich自身は海外対応のクレジットカードを持っており、よく友人にそのカードを貸していた。

「消費者側はオンラインで商品を購入する気があるのに、お店側には彼らのお金を受け取る準備ができていなかったんです」とKavonichは言う。

個人間の送金だと顧客確認(Know-Your-Customer: KYC)や反マネーロンダリング(Anti-Money-Laundering:AML)規制をクリアするのが難しいため、dLocalは取引関連の決済のみを取り扱っている。彼が各国の中央銀行とP2P決済について話したところ、「全く別の話で、P2P決済だとさらに規制が厳しくなる」ことがわかったのだ。

国によっては規制変化の見通しが立ちづらく、これが彼らにとっての障害となっている。「ゲームのルールが完全に固まっているということはなく、政府がルールを変更することもあります」と彼は言う。「これこそ、私たちにとって最大の脅威なんです」

このような課題はいくつかあるものの、Kanovichはそれに怯むことなく前に進もうとしている。dLocalは現在18か国でサービスを提供しており、今年中にその数を30か国まで増やす予定だ。特にトルコ、コロンビア、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、チリで人気のdLocalだが、Kanovichはアフリカやアジア太平洋地域に大きなチャンスが眠っていると考えている。

dLocalは「グローバル化の波にのって進み、大きなチャンスをつかもうとしています」と彼は言う。

その他に成長が見込まれる領域といえば仮想通貨が考えられるが、dLocalは現時点では仮想通貨をサポートしていない。Kanovichは個人的にはビットコインを支持しているが、彼によれば新興国の銀行はそこまで乗り気ではないようだ。「仮想通貨がもう少し一般に普及するまで待ってからでないと、各国の中央銀行を説得するのは難しそうです」

最近資金調達を行ったフィリピンのCoinsは、公共料金の支払いや送金、プリペイド携帯のチャージ、世界中のサイトでのオンラインショッピングを携帯電話から行えるサービスを運営しており、決済手段のひとつとして仮想通貨を受け付けている。

そもそもCoinsは「金融サービスのギャップを埋めるため」に設立されたと、ビジネスオペレーション部門を率いるJustin Leowは話す。「特に発展途上国では利用できる金融サービスにかなりの格差があります」

彼らの提供するサービスのひとつにP2P決済がある。海外へ出稼ぎに出た人をターゲットに、Coinsは従来の送金業者よりも安く、効率的に、早く母国へお金を送る手助けをしているのだ。これまで10%近くかかっていた手数料も、Coinsを使えば2~3%の範囲に抑えられる。

例えば、香港に住む出稼ぎ労働者が毎月の所得700ドルの半分にあたる350ドルを母国のフィリピンに送金しているとする。彼にとって35ドル(10%)と10.5ドル(3%)の手数料の差は大きい。

統計によれば、世界中で毎年6010億ドルが送金されており、そのうちの約75%が発展途上国に関連したものだとされている。さらに、世界銀行のデータによれば、国民の10%が海外に住んでいるフィリピンだけでも、年に280億ドルが国境を超えて送金されており、二大送金先のインドと中国への送金額は年間600億ドルにのぼる。

フィリピンの銀行では最低預入残高が高く設定されているため、人口の3分の1以下しか銀行口座を持っていない。銀行口座の保有者よりもFacebookユーザーの方が多いくらいだ。

「つまり、銀行はかなりの数の人にサービスを提供できていません。しかし、私たちはこれまでに開発してきたモデルのおかげで、彼らの需要を満たすことができるのです」とLeowは言う。

CoinsはビットコインやStellarなどの仮想通貨もサポートしている。「仮想通貨を扱っているからこそ、世界中の送金を扱うプラットフォームとして機能できるんです」と彼は続ける。

Coinsのインフラにはブロックチェーン技術が採用されているが、顧客は裏で何が起きているかを完全に理解する必要はないとLeowは言う。「顧客が気にしているのは、送金先にきちんとお金が届くがどうかということですからね」

その一方で、Coinsが仮想通貨をサポートしているからといって、銀行のビジネスが脅かされるわけではない。「私たちのサービスには(銀行が)必要なんです。その代わりに、私たちはこれまで銀行がリーチできなかった人たちを取り込むことで、彼らのビジネスに貢献しています」

このような動きは結果的に消費者のメリットに繋がる。従来の銀行は顧客の情報を十分に把握できていないことが多いが、テック企業は顧客の趣向や行動に関するデータを収集し、ニーズに合わせたサービスを提供することができるのだ。

そして、銀行口座を持たない人を対象にサービスを提供している企業には、金銭的、そして社会的なメリットがある。

「Coinsがターゲットとしている市場には心躍るようなチャンスが眠っていますし、私たちは大勢の人の生活に良い影響を及ぼすことができるんです」とLeowは語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

アクセラレーターとフィンテックが鍵を握る南米のスタートアップ界

【編集部注】執筆者のNathan Lustigは起業家で、チリのサンティアゴに拠点を置くシードステージ投資ファンドMagma Partnersのマネージングパートナーでもある。

南米のスタートアップは、クリエイティブなプロダクトを生み出し、現地だけでなく世界中の問題を解決しようとしている。しかし、外から南米のスタートアップシーンを見ている投資家の中には、同地域の魅力に気づきながらも手が出しづらいと感じている人もいるようだ。実際に、南米でのアーリステージ投資にはいくつかの課題があるが、そのハードルを越えるだけの価値があると感じられるような例を私はいくつも見てきた。

私が初めてチリのサンティアゴを訪れたのは、Start-Up Chileのパイロットプログラムに参加した2010年のことだ。当時チリではスタートアップに関する議論がほとんど行われておらず、スタートアップが何かを知っている人もほぼいないような状態だった。その後アメリカに戻って9か月くらいの間に、共同設立した会社が買収されたため、私は新興市場に眠るチャンスを求め、チリに戻ることを決めた。

それから数年の間、アントレプレナーシップに関する授業を行ったり、地元の起業家のメンターとして活動するうちに、気づけば私自身が南米企業に投資するようになっていた。これまでに30社以上のアーリーステージ企業へ投資してきた私は、南米のアーリーステージ投資の環境が現在これまでで1番良い状態にあると考えている。以下がその理由だ。

先陣を切ったVCのおかげで投資家の不安感が和らいでいる

アルゼンチンのNXTP LabsやブラジルのVox Capitalのように、南米で早くから活動を開始したVCのおかげで、他の投資家の参考になるような前例ができた。もともと南米の人々には、リスクを嫌い失敗をとがめる傾向があったが、彼らは誰よりも早く南米にスタートアップカルチャーを芽吹かせようとしたのだ。

しかし数多くの困難が、そんな先駆者的VCを待ち受けていた。まず彼らは、現地の起業家が南米とシリコンバレーは別物だと理解できるように、教育を施さなければいけなかった。VCの数にしても、企業の評価額にしても両地域の間には大きな隔たりがある。しかし彼らの経験が、最近増加傾向にあるアーリーステージ投資を考えているファンドや企業への良い教訓となっているのだ。

また、南米のスタートアップエコシステムが成長するにつれて、アーリーステージ投資のフローが大きく改善され、不安感もかなり和らいできているため、投資の数自体も増えている。2011〜2015年の南米の投資傾向についてまとめた、Latin American Venture Capital Association(LAVCA)のレポートによれば、VCが5年間で集めた資金の総額は23億ドルにおよぶという。

さらに過去数年の間に、以前VCから投資を受けたファウンダーが、エンジェル投資家やファンドのリミテッドパートナーとして、他の企業に投資するケースも見られている。コロンビア系アメリカ人で、起業家から投資家に転身したAndrés Barretoもそんなファウンダーの1人だ。GroovesharkやPulsoSocialなど、いくつものスタートアップを立ち上げた彼は、2012年にSocialatom Venturesを設立して投資活動をスタートさせた。コロンビアに拠点を置き、Firstrock Capitalと呼ばれる2つめのファンドの資金調達を最近終えた同社は、アーリステージ企業への投資を行うと共に、彼らの成長を促すような手助けをしている。

現在も積極的な活動を行っているSocialatom Venturesは、最近では南米でプロダクトを開発しながらアメリカ市場を狙うアーリーステージ企業への投資に力を入れている(注:私がマネージングパートナーを務めるMagma Partnersは、これまでに2度、Socialatom Venturesと共同出資を行ったことがある)。

南米に投資を呼び込むアクセラレーター

増加を続けるアクセラレーターや、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、サンティアゴ(チリ)、メデジン(コロンビア)といった南米の主要スタートアップハブで日々経験を積んでいる起業家の影響は、南米の投資エコシステム全体におよんでいると言って間違いないだろう。

南米のスタートアップシーンに入りこむなら今がチャンスだ。

2014年の調査では、アクセラレーターが存在するだけで、その地域のシード・アーリーステージ投資の数が増えることがわかっている。確かに私もこの”波及効果”を南米で目の当たりにしてきた。Start-Up ChileWayraをはじめとする、アーリステージ企業向けアクセラレータープログラムの数が増えるにつれて、南米のスタートアップ界自体が注目を集めるようになってきている。つまり、このようなプログラムの存在が、外部の投資家に南米の魅力を伝えているのだ。

投資活動を盛り上げるフィンテックスタートアップ

通常スタートアップは業界を問わず経済全体に影響をおよぼすが、南米でもっとも大きな変化が起きているのが銀行業界だ。というのも、南米では銀行口座を持っていない人の数がまだ多く、フィンテック企業にとってはそれが大きなチャンスになっているのだ。

Finnovistaによれば、南米のフィンテックスタートアップの数は最近1000社を突破した。フィンテック企業が南米、そしてグローバル市場でスケールする上で、既存企業との戦略的パートナーシップや政府からの認証、そして初期の活動を支える資金は欠かすことができないが、投資家は彼らの活動を支えている。

LAVCAの調査では、南米で2015年の資金調達額がもっとも大きかった分野はフィンテックだということがわかった。2015年の時点で、同分野はITセクター全体の投資額の30%を占めており、2016年前期を見てみるとこの数は40%に伸びている。

世界中でアクセラレータープログラムを運営しているStartupbootcampは、最近南米への進出を発表し、メキシコではFinnovistaと共同でフィンテックに特化したプログラムをローンチした。Finnovistaは、過去4年間にフィンテックスタートアップがどのように南米の金融サービスを変えてきたかを目撃しつつも、彼らは自分たちの力だけではスケールできないと考えているのだ。当該プログラムでは、メキシコをはじめ世界中から選ばれたフィンテックスタートアップに対し、資金面や運営面でのサポートを提供している。

ここ数年南米を飛び回り、優秀な起業家と世界中の投資家をつなぎ合わせてきたSeedstarsも、今年は南米のフィンテック市場に注目している。現地でのイベントを勝ち抜いた、コロンビアのクラウドファクタリング(売掛債権買取)企業Mesfixと、ブラジルのフィナンシャルプランニングサービスQueroQuitarは、ファイナリストとしてSeedstars Summitでプレゼンテーションを行う予定だ。

500 Startupsも南米でのシードステージ投資に力を入れており、International Finance Corporation(IFC)と共同で設立した1000万ドルファンドでは、今年中に現地のアーリーステージ企業120社へ出資しようとしている。

Googleも負けてはいない。南米のスタートアップ十数社がGoogleのLaunchpad Acceleratorに参加し、同社のネットワークやリソースを使いながら、自分たちの可能性を最大限発揮しようとしている。MicrosoftはブラジルでBR Startupsファンドを立ち上げ、アーリーステージとレーターステージのギャップを埋めることを目標に、これまで70社への投資を行った。決済サービス大手のVisaも、独自のアクセラレータープログラムをローンチし、ブラジルのフィンテックスタートアップに資金とノウハウを提供している。

少し前まではVCが他の地域に注目していたため、南米のスタートアップはアーリーステージでの資金調達に苦しんでいた。しかし同地域に対する見方が変わり、スタートアップエコシステムの成長を促そうとする動きが南米全体の民間・公的組織の間で広まっていった結果、資金調達のチャンスやスタートアップの数は継続的に増えている。さらに、ブラジルのNubankアルゼンチンのIguanaFixをはじめとする、スタートアップのサクセスストーリーが増えるに連れて、業界全体が勢いづいてきている。南米のスタートアップシーンに入りこむなら今がチャンスだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

500 Startupsは1000万ドルのファンドでラテンアメリカへの投資を継続

500 Startups は、グローバル投資へのコミットメントを新たなラテンアメリカファンドによって積み増ししている。目標金額は1000万ドルでその名称はLuchadores IIというものだ。これはスペイン語でレスラーを意味する。このファンドは、500 Startupsによるこの地域を対象にした2番目のもので、欧州、アジア、アメリカの中で、不十分な対応しか行われていない市場を対象にして、その数を増やしつつあるシード投資の一環だ。

アクセラレーターは2010年以降、様々な形でラテンアメリカへの投資を継続してきた。新ファンドのマネージングパートナーであるSantiago Zavalaは、ラテンアメリカにおけるユニコーンの数を倍増させる希望を胸に、約120社のラテンアメリカの新星たちに投資を行う。

500 Startupsの創業パートナーであるDave McClureは、国際投資を通して得ることのできる利益に対して、長期間強気の姿勢を保っている。米国内での取引、特にシリコンバレーでの取引は、その競争力故にプレミアム価格が付き易いからだ。

「私たちは、追加投資では10倍の利益を得ることを目指しています」とMcClureは国際的な投資について語った。500 Startupsのラテンアメリカに対する投資は、追加を含めて9500万ドル以上に達する。

しかし、ラテンアメリカの新興企業への投資の課題は、彼らが強力なエコシステムのサポートを欠いていることだ。より大きなB、C、Dラウンドを、この地域で見かけることは少ない。また起業家向けエコシステムへの強みを持つローカルな買収者も限られている。

これこそ、International Finance Corporation(IFC)が、新しいファンドに対するリミテッドパートナーとして加わった理由だ。従来IFCは、より後段のステージの企業への投資を行ってきたが、過去2年以上に関しては、リミテッドパートナーとしてシードステージのファンドにも自ら関わるようになった。

「私たちは、すべての発展途上マーケットの中で、マイクロファンドの最高の種を見つけようと努力しています」と、語るのはIFCのVC投資グローバルヘッドのNikunj Jinsiだ。

McClureは、 Accel Partners、Index Ventures、Sequoia Capital、そしてTiger Globalの名を、スタートアップの立ち上げからエグジットのための国際的なパイプラインを構築しているファンドとして挙げた。

「それ以外のファンドは、始めるのが遅すぎましたし、既に出来上がった企業を相手にしようとしているのです」とMcClureは付け加えた。

ラテンアメリカの中には、他の地域よりも速く成長しているエリアが存在する。500 Startupsの拠点が置かれているメキシコシティは成熟しているが、他の都市ではまだ、強力なメンターネットワークやその他の必要なリソースが不足している。

500 Startupsは、シードプログラムを通じて、国際的な提携と共に強力な関係を保とうとしている。同社はスタートアップを指導するために、定期的に、様々な地域にパートナーを送り出して、海外の企業にシリコンバレーを訪問する機会を提供している。

McClureはコミットしていないものの、本日(米国時間3月15日)のラテンアメリカファンドのアナウンスは、アジアへの展開を強く匂わせるものだった。同社は最近、中国での存在感を増したところだ。とはいえ、まだ同地域内での特定のファンドについては発表されていない。

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(翻訳:Sako)

同業他社が沈む中iFoodが3000万ドルを調達し南米市場を攻める

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世界的にフードデリバリースタートアップの勢いが落ちてきているようだが、南米の投資家は、少なくともひとつのある企業に新たな光を見出している。

ブラジル発のオンデマンドフードデリバリーサービスを展開するiFoodは、この度3000万ドルを新たに調達し、南米でのビジネス拡大とオンラインフードデリバリー市場での基盤固めをしようとしている。

オリンピック選手がブラジルで金メダルを目指す中、iFoodは新規に調達した資金を利用して、フードデリバリースタートアップ界の表彰台のトップを見据えているのだ。

3000万ドルの資金はiFoodもよく知る投資家から出資されることとなった。Naspersが投資を行ったモバイルコマースの雄Movileや、イギリスを拠点とするグローバルオンラインテイクアウトサービスの上場企業JUST EATは、昨年にもiFoodに対して5000万ドルの投資を行っていた

そのため、この度の資金調達は3社の複雑に絡み合った関係の延長線上にあると言える。今年に入ってiFoodはブラジルにあるJUST EAT傘下のhellofood Brazilを買収しており、新たな資金の一部はメキシコへの拡大を目的として、JUST EATのメキシコ子会社SinDelantalの買収に利用される予定だ。

以前のTechCrunchの報道によれば、MovileはiFoodの支配権の60%を握っている一方、グローバルプレイヤーであるイギリスの巨大フードデリバリー企業Just Eatもその30%を保有している。

メキシコ最大のフードデリバリー企業であるSinDelantalは、2015年2月にJUST EATに買収された。そして2016年2月にJUST EATが買収したhellofood MexicoのオペレーションをSinDelantalと統合したことで、SinDelantalの勢いはさらに増した。

新しい買収話がまとまれば、iFoodはSinDelantalの株式の49%を保有し、SinDelantalはiFoodと、iFoodの30%を保有するJUST EATのジョイントベンチャーとして事業を行うこととなる。なお、買収金額は発表されていない。

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「iFoodは常にモバイルエクスペリエンスのことを意識しています。私たちは携帯電話を使ったフードデリバリー業界で、1番簡単で使いやすいサービスを提供したいと考えています」とiFoodの共同設立者兼CEOのFelipe Fioravanteは説明した。「Movileが持つモバイルの強みのおかげで、常に進化を続ける世界レベルのサービスを生み出すことが出来ました」

この南米のスタートアップに対する新たな投資は、フードデリバリー業界への投資に勢いが無いグローバル市場の流れとは逆行するように映る。

グローバル市場で企業の統合や評価額の急低下が普通になっている中、JUST EATとiFoodだけがその恩恵を受けているのだ。アメリカではSpoonRocketが業務を停止し、その資産をiFoodに売却した一方、ヨーロッパではRocket InternetがJUST EATに対してフードデリバリー事業の売却を行った。

新興市場の状況はさらに悪く、最近のBloombergの記事が示唆しているように、特にインドは大きな打撃をうけている

以下はBloombergのウェブサイト上にあるSaritha Raiの記事の抜粋だ。

ベンチャーキャピタルの資金は干上がり、スタートアップは次々と市場から消えていっている。ムンバイを拠点とし、フードデリバリーアプリの先駆け的存在でもあるTinyOwlは、Sequoia Capitalを含む投資家から2300万ドルを調達していたものの、資金がほぼ底をついてしまったため、TinyOwlよりも規模の小さな競合のRunnrに身売りすることとなった。また、GoogleやAmazon幹部から資金調達を行ったDazoの昨年の事業停止に続き、SequoiaとSnapdeal.comの支援を受けた食料品配達サービスのPepperTapも4月にその幕を閉じた。グルガーオンを拠点とし、インドで唯一のフードテック系ユニコーンであるZomatoでさえ、HSBC Securities and Capital Markets (India)のアナリストによって、今月その10億ドルにおよぶ評価額を半減させられてしまった。

一方、南米でも特にブラジルとメキシコのビジネスは様子が違うようだ。

5年前にローンチしたiFoodは、1万軒以上のレストランとパートナシップ契約を結び、毎月170万件の配達実績を積み上げている。

「ブラジルでの成功を見た後、メキシコでもiFoodと協力関係を結ぶというのは当然の決断でした。」とJUST EAT CEOのDavid Buttressは声明の中で述べた。「iFoodはローカル市場について細部まで理解していて、モバイルサービスにも強みを持っています。この勝利のコンビネーションこそ、私たちが拡大に向けて求めているものでした」

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細かな情報を超えて、南米中のテクノロジー・サービス業界の成長率を表す数字の中には驚くべきものがいくつかあり、これがJUST EATやMovileによる南米企業への投資の理由なのかもしれない。

言葉にするととても味気ないが、世界銀行は南米の中期的な経済見通しの中で、その大きな成長可能性について触れている。

以下が世界銀行のコメントだ。

マクロ経済の持続や物価・金融の安定、さらには引き続き強気の投資家の存在を背景に、経済成長の原動力が再度バランスし、安定した消費拡大を補完するような形で(ネット)輸出額や、プライベートセクターへの投資が増加していくだろう。中期的には、金融・通信・エネルギー分野でのさらなる構造改革によって、経済活動の活発な拡大に向けた土台が固められることが期待される。

世界銀行のこの評価は星の数で言えば3個半くらいに値する。また、マクロ指標と同じくらい重要なのが、他の業界が縮小している南米経済でのEC業界のシェアの大きさだ(多くの新興市場で似た現象が起きている)。

南米中で劇的に増加しているスマートフォンの保有率や、WhatsApp・Facebookといったソーシャルメディアを支配する膨大な利用者数(人口の半分しかインターネットを利用できないにも関わらず、南米のユーザーがWhatAppのユーザーベースの38%、Facebookのユーザーベースの20%を占めている)を背景に、ソーシャルメディアの利用者数は今後さらに増えていくだろう。

同時にアメリカのテック企業は南米の可能性に気づきはじめた。PayPalは最近メキシコの通信大手América Móvilとパートナシップを組んで、モバイルウォレットプラットフォームの開発にあたっている。

18カ国で約3億人の契約者(AT&Tの契約者数の約3倍)を抱えるAmérica Móvilも、Uberと同社のLTV(顧客生涯価値)の一部を含む戦略的提携を行い、南米でモバイル業界が担う役割の重要性を強調する結果となった。

ECが同地域では突出しており、2015年には南米全体で23%の成長率を記録している。これは中国を除く全ての市場を上回る成長率で、中でも経済危機で何年にもわたる打撃を受けたアルゼンチンでは40%の成長を遂げていた。クレジットカードの普及率が15%程度で、人口の約半数が銀行口座を持っていない地域におけるこの数値の意味を考えてみてほしい。このような状況にあっても、様々なデジタルソリューションが人々に求められるているという実態が数字から見て取れる。

これらのトレンドは、iFoodが成功し続ける上で良い前兆となるものばかりであると同時に、マクロ経済が振るわない市場にあってもデジタルビジネスは成長できるということを証明している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter