米政府のTikTok、WeChatの排除命令の全文とその背景

トランプ米大統領が署名した、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)と、米国人・米国企業との取引を禁じる大統領行政命令(米政府リリース)、WeChatに関するほぼ同様の命令(米政府リリース)が公開されている。ホワイトハウスではTencent(テンセント)が運営する中国で広く利用されているチャットサービスのWeChatとの取引も禁じたと発表している。ただし米国ではTikTokに比べてWeChatの利用は極めて少なく、在住中国人コミュニティが中心だ。

これらの大統領行政命令は45日後に発効するが、最大の問題は文言が不明確なことだ。伝えられるところによれば、どのような行為が禁止の対象になるのかについてウィルバー・ロス商務長官でさえ現在は答えられず、今後45日間で検討するという。さらにこれらの命令が米国におけるTikTok、WeChatおよびTencent製アプリなどの中国系アプリの運営そのものに与える影響も明瞭でない。

命令の文言自体はTikTok、WeChatの運営そのものを直接に禁じていないが、政府はこれらを他の方法で間接的に禁じることができる。トランプ大統領は8月6日に「中国の信頼できないサービスを追放する」と発表した。 このクリーン・ネットワーク・プログラムはWeChatとTikTokの禁止が含まれるものと考えねばならない。

Tencentの広報担当者は「影響を判断するために大統領行政命令の検討しているところだ」と述べた。

TikTokは「この命令の根拠は誤っており、デュープロセス(適正な手続き)を欠いている。これは世界のビジネスに対し米国が法治主義であることを疑わせる危険がある」と反論している。

大統領行政命令は冒頭で国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)と国家非常事態法(National Emergencies Act)を根拠として挙げている。ここで「合衆国におけるアプリの運営」を安全保障上の脅威と認定しているのは極めて異例で、おそらくは適法性を巡って訴訟が予想される。ByteDanceはインド政府による禁止を解除させる努力(未訳記事)を続けている。インドは7月にTikTokと59のアプリを一括して禁止した。米国同様、インドもこれらアプリによる個人データの収集が国家安全保障に脅威となるとしている。

一方、Microsoft(マイクロソフト)はTikTok事業をByteDanceから買い取る交渉を進めていると発表した。交渉の期限は9月15日だ。大統領命令が発効するのはマイクロソフトが発表した交渉期限の直後だ。ByteDanceはTikTokの所有権をマイクロソフトに引き渡すことに原則的に同意している(ロイター記事)と報じられた。ただし少数株主の地位を求めているようだ。.

ByteDanceに関する大統領命令は「中華人民共和国の企業によって製造、所有されるモバイルアプリ利用の拡大は、米国の安全保障、外交政策および経済をは脅かしている。現時点では、これらのモバイルアプリ、特にTikTokによる脅威に対する措置が必要と認められる」と述べている。

これに続いて行政命令は、発表から45日以降、 米国の司法権がおよぶいかなる人物あるいは組織もByteDanceおよび一切の子会社と取引が禁じられるとしている。ただし「関連ある放棄によって特に許される場合」は除かれる。命令はTikTokの位置情報、閲覧履歴、検索履歴を含むよるユーザーデータへのアクセスについて「中国共産党による米国人の個人データおよび知的所有権を持つデータへのアクセスを許し、連邦政府職員並びに契約諸機関の位置情報ならびに個人に対する詳細情報を取得させ、 こうしたデータが脅迫、産業スパイ行為のために利用される危険がある」と認定している。

トランプ大統領は先月末、行政命令によって Tiktok の利用を禁止するつもりだと述べた。大統領とマイケル・ポンペオ国務長官を含む政府高官はこの数週間、TikTok が米国の安全保障に対する脅威であることで次第に強い表現を使っていた。TikTokは北京に本拠を置く企業、ByteDanceが開発、所有しており、Tiktok の中国版であるアプリ(Douyin)も運営している。これに対しByteDanceはikTokの運営をできるかぎり中国から遠ざけようと努力し、そのデータも中国国外に保存されているとした。

Tencentのアプリも全面禁止の可能性

トランプ大統領のWeChatを禁止命令は、 TikTok 禁止に比べればやや意外だったが、完全に驚きというわけではなかった。ポンペオ国務長官が今週大統領は近くTikTokに対して措置を取るとした発表の中で、対象としてWeChatその他の中国製アプリも挙げているからだ。 ByteDanceの場合と同様大統領はWeChatのデータ収集は中国共産党にユーザーデータへのアクセスを許す危険性があり米国の安全保障にとって脅威であると述べている。またこの命令の中でWeChat は中国政府にとって政治的に問題のあるコンテンツを検閲しているとも述べている。

命令の禁止範囲はWeChatだけにとどまらず、米企業に対してがTencent Holdingおよびその子会社との取引を全面的に禁ずるものとなっている。

商務長官が今後45日の間にどのようにして禁止される取引の具体的な範囲を決定できるのも大きな疑問の一つだ。Tencentが米国のテクノロジー企業、エンタテインメント企業に対して行っている投資を考えると、行政命令は結果としてこれらのビジネスに多大な不利益を与えるおそれがある。Tencentの米国における投資は広汎さや巨額さでソフトバンクの投資と比較されることがある。過半数株主は株式への配当以外にも取締役への特別ボーナスなど様々な方法で利益の還元を得ることが可能だ。

例えばTencentは長年、Spotify、Snap、Reddit, Tesla, Warner Music、Universal Music、reddit、Teslaなどの大企業を始め、Fortniteの開発元のEpic GamesやLeague of LegendsのRiot Gamesのような高収益のゲーム企業にも投資を続けてきた。

この点に関してLos Angeles Timesは、ホワイトハウス高官が「行政命令による禁止はWeChat に関連する取引のみに限定され、他のTencent Holdingsとの取引には関連しない」と説明(Los Angeles Times記事)したと報じている(。しかし命令の文言からこのように読み取れるかどうは不明だ。

TechCrunchの取材に対してマイクロソフトはコメントを避けた。TechCrunchはホワイトハウスにも取材を続けている。

画像:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

TikTokは国家安全保障上の脅威?米国上院議員が情報機関に調査を要請

2人の米国上院議員が、動画共有アプリのTikTok(ティックトック)が「国家安全保障上のリスク」を引き起こす可能性があるか否かの評価を、米国政府の最上級情報機関に対して要請した。

A photo taken on December 14, 2018 in Paris shows the logo of the application TikTok. – TikTok, is a Chinese short-form video-sharing app, which has proved wildly popular this year. (Photo by JOEL SAGET / AFP) (Photo credit should read JOEL SAGET/AFP/Getty Images)

上院議員のCharles Schumer(チャールズ・シューマー)氏とTom Cotton(トム・コットン)氏による書簡の中で、議員たちは国家情報局のJoseph Maguire(ジョセフ・マグワイア)長官代行に、アプリのメーカーが、米国人のデータを中国当局に引き渡す可能性があるかないかを尋ねたのだ。

TikTokはこれまでに、およそ1億1000万回ダウンロードされており、ソーシャルメディアネットワーク上で共有可能な短く気軽なビデオを録画する機能が人気を博している。だが2人の議員は、TikTokは北京に本社を置く会社が所有しているため、位置データ、クッキー、メタデータなどの同社の所有するユーザーデータが、たとえ米国内のサーバーに保存されていたとしても、中国政府によって引き渡しを求められるのではないかと述べている。

シューマー氏とコットン氏は、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)が中国の法律を「現在も遵守するように強制されている」と警告している。

「セキュリティの専門家たちは、中国共産党によって搭載されている諜報活動を支援し協力を行うために中国企業たちを縛り付けている、中国の諜報機関、国家安全保障、そしてサイバーセキュリティ法の曖昧なパッチワークに対して懸念を表明している」、と米国時間10月23日に出された書簡で報告されている。「データやその他の活動に対する中国政府の要求を審査する、独立した司法機関がなければ、中国企業がその要求に同意しない場合に、上訴するための法的メカニズムが存在しないことになる」。

おなじ法的原則はどちらの側にも適用される。中国を含む一部の国では、米国政府を利する形でスパイ活動を強要される可能性があるという懸念から、米国企業は排除されるか、アクセスが制限されてきた。

米国政府の大規模な監視活動を明らかにしたエドワード・スノーデンによる暴露の余波で、多くの主要テック企業が、米国政府への協力のおそれから、中国政府の国家承認購買リストから皆排除されたのだ

上院議員たちはまた、このアプリが北京に対して「政治的に影響があるとみなされる」コンテンツを、検閲していることを懸念していると述べている。9月にはガーディアン紙が、アプリのモデレーターが、チベットの独立、天安門広場の虐殺、禁止された宗教団体である法輪功に関連するコンテンツを、積極的に検閲していることを明らかにしている。

また2016年の米国大統領選挙で見られたように、このアプリは外国から影響を及ぼすツールとして使用される可能性があるため、このアプリは「スパイ防止活動」に対する脅威をもたらす可能性があるとも述べている。

私たちの問合せに対して、国家情報局長官のスポークスマンはコメントを返さなかった。

TikTokは、書簡を「慎重にレビューしている」と述べている。「私たちTikTokは、TikTokが米国において信頼され責任ある企業市民であり続けることをまず改めて申し上げる以外に、現時点でこれ以上のコメントをするつもりはありません。もちろん議会や関連する法執行機関との協力は惜しみません」とTikTokの広報担当者Josh Gartner(ジョッシュ・ガートナー)氏は述べている。

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(翻訳:sako)

米連邦通信委員会が中国移動通信の通信インフラ参入申請を却下

FCC(連邦通信委員会)は中国移動通信(China Mobile)の米国市場参入の申請を却下する見込みだ。国営企業の中国移動は移動体通信プロバイダーとして世界最大であり、米国においてモバイルネットワークサービスの提供を申請していた。これに対し、FCC委員長は安全保障上のリスクを理由として認可に反対するという意見を公開した。米国のテレコムサービスにおいて重要なプレイヤーとなるという中国の試みはまた後退を余儀なくされそうだ。

中国移動は米国のモバイルインフラにおいて音声、データ通信事業を展開することを申請していた。FCCの広報担当者の電話記者会見によれば、米国のモバイルキャリアが中国にモバイルキャリアと通信を行う場合、そのインフラは現在中国側にある。

中国移動の申請を却下するというFCCの草案は明日公開され、5月に委員会で投票が行われる。申請は2011年に提出されていたが、今回アジット・パイFCC委員長はここれを正式に却下しようとしている。米国の安全保障上、決定的重要性9を持つインフラを外国組織が建設、運営しようとする場合、行政府の承認を必要とする。しかしトランプ政権は昨年この申請は認められるべきでないという見解を明らかにしていた。

ここ数ヶ月FCCの担当チームは中国移動のこれまでの活動を調査していた。アジット・パイ氏はその結果を次のように要約した。

中国移動の米国におけるテレコミュニケーションサービスを許可することは国家安全保障および法執行活動に深刻、重大なリスクを生じさせることが明白となった。このため中国移動の申請を認めることは公衆の利益に合致しないものと私は信じる。

外国勢力が重要な米国のインフラに参入を図るときに安全保障上の問題が伴うのは必然的だ。このような場合、リスクを軽減するための何らかの制限を課し、あるいは相手国政府との間で協定を結ぶことがある。たとえばドイツ企業がハード、ソフトで米国の通信インフラに参入する場合、こうした企業は米司法当局にデータへのアクセスを認め、ドイツの司法当局は捜査上の情報を米国に提供するなどの条件の下に認可される場合がある。

しかしこうした条件付き認可が行われるのは相手国との間に基本的な価値観の一致がある場合に限られる。問題の企業を(間接、直接に)所有している国家との間に信頼関係が存在シない場合は不可能だというのがFCCの見解だ。これはHuawei(ファーウェイ)が米国の5Gネットワーク構築に参加しようとしたのを退けたのとほぼ同様の理由だ。連邦政府は中国政府の強い影響下にある組織にはインフラ市場への参入の許可を与えないとしてきた。

「こうした理由による申請の却下は前例がないわけではないが、今回のケースでは行政府がFCCに対して安全保障上の理由により申請を却下すべきただと勧告した初めてのケースだという点に特に注意すべきだ」とパイ委員長は別の覚書で述べている。

すでに緊張している米中関係をさらに悪化させるかもしれないが、中国移動はこの結論を予期していたはずだ。申請がワシントンの官僚的手続きのブラックホールに吸い込まれた3年ないし4年たってもなんの回答もなかった時点で希望を捨てていたと思われる。

申請却下の決定の草稿は明日公開される。これには決定に至った理由と関連する証拠が含まれるはずだ。 FCCとしての賛否は5月9日に開催される公開の委員会における投票で決定される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook