多様性のあるスタートアップの支援を目指す学生主導のアクセラレーターEnvisionが動き出した

新しいスタートアップ・アクセラレーターEnvision(エンビジョン)を紹介しよう。現役大学生と卒業したばかりの人たちによって設立されたこのグループは、最初のスタートアップ・コホートの募集を締め切った。

だが彼らの目標は、単にスタートアップを支援してくれる企業を探すことではない。Envisionの2人の共同創設者Annabel Strauss(アナベル・ストラウス)氏とEliana Berger(エリアナ・バーガー) 氏は、今や誰もが知るところとなった多様性の現状を打破することだと話す。

「私たちがEnvisionを始めたのは、Womxn、黒人、Latinxの企業創設者が、それぞれ3パーセント以上、1パーセント以上のベンチャー資金を獲得できる未来を確信しているからです」と彼女たちは電子メールに書いてくれた。「学生のチームとして、自分自身で問題に対処し、企業創設者の成功を助けたいと考えました。私たちの使命は、早い時期に成功できるよう起業家を支援し、無視されがちな声を大きく伝えることです」
(訳注:Womxnは女性のインクルーシブな呼称。発音はウォムエックスエヌ。Latinxはラテン系の人たちの男女を問わない呼称。発音はラティネックス)

彼らのデータによれば、Envisionには190件の応募があり、最初に設定したストレッチゴールの100件を大きく上回った。その200件近い応募者の中から、彼らは15組を選考した。ストラウス氏とバーガー氏は、当初は10組まで絞り込む予定だったと話している。しかし、その応募の勢いに応えるべく、最初のコホートのサイズを2倍にしたのだと2人はTechCrunchのインタビューで述べた。

Envisionでは8週間のカリキュラムが予定され、参加企業のエクイティーを求めない資本金およそ1万ドル(約107万円)が提供される(彼らはまだ必要な資金の調達中だが、TechCrunchに提示された数値からすると、急速に金額を伸ばしているようだ)。

8週間のプログラム期間中に予定されているのは、テーマ、1対1のメンタリング、スタートアップ経験が豊富な講師とのオフィスアワー、そして最後にメンターによる投資家対策の集中講座と招待客のみのデモデーだ。Envisionアクセラレーターの回転の軸となっているのは、6月の初めにこの世に現れてから集めたメンターと協力者たちだ。

Envisionは、大学生と卒業したばかりの人たち11人によって運営されており、Ryan Hoover(ライアン・フーバー)氏、Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏、Alexia Tsotsis(アレクシア・ツォツィ)氏など、同プログラムに欠かせない十分な数のスタートアップ専門家講師を急いで選定した。企業からの支援も潤沢にあるようだ。今朝、TechCrunchに送られてきたこの電子メールによれば、Soma Capital、Underscore VC、Breyer Capital、Grasshopper Bank、Lerer Hippeauがスポンサーに加わっている。実際、Envisionのパートナー紹介ページは、シリコンバレー人脈と有名スタートアップ起業家の名士録といった感じだ。

Envisionと話をしているうちに、私は、今日ベンチャー投資に関わっている学生がいかに多かを知り、少々驚かされた。Envisionはその傾向を表す好例だ。たとえばストラウス氏は、General Catalyst(ジェネラル・カタリスト)を「動力」とするRough Draft Ventures(ラフ・ドラフト・ベンチャーズ)に参加している。EnvisionのスタッフであるQuinn Litherland(クイン・リザーランド)氏もまた、Rough Draft Venturesの一員だ。TechCrunchでも今朝お伝えした学生の起業に特化したContrary Capital(コントラリー・キャピタル)は、EnvisionのTimi Dayo-Kayode(ティミ・ダヨカヨデ)氏、James Rogers(ジェームズ・ロジャーズ)氏、Eliana Berger(エリアナ・バーガー)氏、Gefen Skolnick(ゲフィン・スコルニック)氏が代表を務めている。まだまだある。Danielle Lomax(ダニエル・ロマックス)氏、Angel Onuoha(エンジェル・オヌオハ)氏、Kim Patel(キム・パテル)氏も、みなベンチャー投資の世界で活動している。

ストラウス氏、バーガー氏、そしてその他のEnvisionのメンバーの今の悩みは、190件の応募から参加企業をいかにして理性的に選考し、その最初のコホートにどのようにして最大限の支援を提供するかだ。プログラムが首尾良く進み、2カ月以内に開催を予定しているデモデーが、スタートアップと投資家の双方に有意義なものと認めらたならば、Envisionは第二のクラスを開催しないわけがない。だが当然のことながら、今の時点ではY Combinator(ワイ・コントリビューター)、TechStars(テックスターズ)、500 Startups(ファイブハンドレッド・スタートアップス)などの足跡を辿り、支援企業から一定のエクイティーを受け取るほうが得策と言えるだろう。

Envisionのウェブサイトのトップには、大きな文字で「多様な人たちの会社創設を支援します」と書かれている。この目標を達成できれば、それは、歴史的に多様な起業家への投資を拒否してきた昔ながらのベンチャー投資世界への露骨な批判となる。

10名ほどの大学生と卒業したばかりの人たちが、ほんの数週間でアクセラレーターを立ち上げ、200件近くの応募から多様な参加者を選考する。そうなれば、どんな言い訳も通用しなくなる。

画像クレジットchuttersnap Unsplash

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(翻訳:金井哲夫)

存在教育エラー:学生のソフトウエア教育に失敗しました

[著者:Ryan Craig]
University Venturesのマネージング・ディレクター。

ほとんどのデジタル革命のきっかけとなった画期的な発明は、ゼウスの額からアテナが生まれたように、アメリカの大学の研究室から、直接、飛び出してきたものだが、学校の側からすると、アメリカの高等教育は、これまでずっとのんびりした態度でやってきた。もちろん、コンピューター・サイエンスの講義はたくさんあり、何百万人という学生がインターネットを通じて受講している。MITなどは、AIのための新しい単科大学を10億ドル(約1125億5000万円)をかけて設立した。しかし、25年から50年ほど前の人間がタイムトラベルして今の大学を訪れたとしたら、環境はあまり変わっていないように感じるだろう。ただ学生が、人と目を合わせたがらず、デジタルデバイスの画面を見つめている点が違うぐらいだ。

こうした昔ながらの大学の姿は、変革を経験した職場から訪れた人には、さらに驚きだろう。10年前まではデジタルデバイスをまったく、あるいはほとんど使わなかった職場も、学生がスマートフォンの画面を食い入るように見つめるように、コンピューターの操作ができる人間を血眼で探している。紙の書類で行われていた仕事は、今は完全にデジタル化されている。仕事に関わる機能を持つ業界固有のビジネス・ソフトウエアの使用経験は、簡単な職種であっても、今や業務経歴書には必須項目だ。

このことは、数週間前に250名の大学関係者の前で講演を行った際に、彼らの急所を突いた。私は、アメリカのビジネス業界でナンバーワンのSaaSプラットフォームSalesforceの使い方を授業で教えている大学はどれほどあるか尋ねてみた。

誰も手を挙げなかった。

理由はいくつかある。学生が最初に就いた仕事で、しっかりと働き成功できるように必要な技術を身に着けさせることに全力を傾けている(または少しでも真剣になっている)教師が、まったくとは言わないが、ごく僅かしかいないことも考えられる。学生が就職できなくとも、彼らはクビにはならない(今のところは)。もうひとつは、コストの問題だ。そうしたスキルを持つ学生を強く望む声が企業から伝えられていても、それを教える能力を持つ教師を探して雇うぐらいなら、役に立たない科目を教えていたほうが安上がりなのだ。さらに、技術の変化が激しいという理由もある。どんなに一生懸命に教えても、数年後には時代遅れになっているという観念がある(もちろん、現実のビジネス・ソフトウエアの世界はまったく違う。Salesforceのような基本的なプラットフォームの寿命は長く、10年を超えてもいまだ現役だ。なかには一世代続くと予想されるプラットフォームもある)。

しかし、大学が学生たちに、就職に必要なソフトウエアの使い方を教えたがらないいちばんの理由は、ミレニアル世代(Z世代)は「デジタル・ネイティブ」(生来のデジタル人間)なので教える必要がないと、彼らが思い込んでいることだ。

デジタル・ネイティブという考え方は、今に始まったものではない。何十年もの間、デジタル技術と共に育った子どもたちは、あらゆるデジタル製品を受け入れることができると思われてきた。たしかに、大学生たちはNetflixやSpotifyやスマートフォンを使いこなしているのは事実だ。しかし、彼らが子どものころから親しんできたスマートフォンは、会社の電話のとり方や、就職に欠かせないビジネス・ソフトウエアの使い方は、これっぽっちも教えてくれていないことも事実だ。

デジタル・ネイティブにとっても
ビジネス・ソフトウエアは
非常に厄介な代物だ

高等教育機関と連携してビジネス・ソフトウエアのトレーニングを提供するスタートアップPathstreamの共同創設者Eleanor Cooperは、こう話している。ミレニアル世代とZ世代は「直感的に操作できて、すぐに満足できる結果を与えてくれるInstagramのようなプラットフォームは使い慣れていますが、ビジネス・ソフトウエアを習得するといいう体験は、例外なく、まったく逆です。たちまちイライラして、満足できる結果はなかなか得られません。まずは何時間もかけて技術的なステップを踏み、ソフトウエアのセットアップを行います。その後でようやく、悪夢のようにボタンを押しまくる操作の段階に入ります。今時のソフトウエアからすれば、よくて退屈、悪くすれば時代遅れで不確かな代物です」

先月のThe New Yorkerの記事『Why Doctors Hate Their Computers』(なぜ医師はコンピューターを嫌うのか)で、Atul Gawande博士は、患者のケア、つまり「診察所見の記録や閲覧、処方箋の薬局への送付、検査とスキャンの予約、結果の評価、手術の予定、保険請求書の送付」などを行うためのSaaSプラットフォームEpicの導入を試みたときの話をしている。

最初に16時間のトレーニングを受ける必要があった。Gawandeは「患者の氏名を探したり、緊急連絡をしたりといった最初の練習ではよくできました。しかし、検査の結果を評価する段になると、頭が混乱してきました。画面の左側には13個のタブの欄があり、ほとんど同じ言葉が書かれていました。チャート評価、結果評価、評価フローシートなどです。どうやって情報を入力するか、まだ何も教わっていません。しかも、それぞれのタブで開くフィールドには固有のツールがあり、微妙に雰囲気も違います」

デジタル・ネイティブにとっても、ビジネス・ソフトウエアは非常に厄介な代物だ。今の学生たちはシンプルなインターフェイスに慣れている。しかし、シンプルなインターフェイスが使えるのは、メッセージや動画を選ぶといった、シンプルな機能しかない場合のみだ。現在主流のビジネス・ソフトウエア・プラットフォームは、単機能ではない。何千とまでは行かなくても、何百もの機能がある。

Gawandeは、IBMのエンジニアFrederick Brooksの著書『The Mythical Man-Month』(邦題『人月の神話』丸善出版)を引き合いに出している。この本には、ダーウィンの進化論になぞらえて、クールで簡単に使える(「数人のナードが友人のナードのために」作った限られた機能を持つ)プログラムから、より多くの機能をより多くの人に提供する大きな「製品」としてのプログラムへ、そして「まったくクールじゃないプログラム・システム」に進化する様子が説明されている。Gawandeは、大学院の学生が小さなスケールの流体力学をシミュレーションするためのプログラムFluidityの例をあげていた。研究者たちはそれを大変に気に入った。そしてすぐに新機能のためのコードを追加した。するとそのソフトウエアは複雑になり、使いづらくなり、制約の多いものになってしまった。

煩雑なインターフェイスの他に、ビジネス・ソフトウエアが本当に難しいもうひとつの理由は、ビジネスの商習慣に固められて、がんじがらめになってしまった点だ。Salesforceのコンサルタントはこう言うだろう。Salesforceのカスタマイズを試みる(または設定を変える)ぐらいなら、会社の商習慣をSalesforceに合わせたほうがずっと簡単ですよと。それは、すべてのビジネス・ソフトウエアに言えることだ。Gawandeが指摘するように、「多くの人に適応し、多くの機能を提供しようとするほど、プログラムは自然に制限が多くなります。ソフトウエア・システムは、私たちがグループとして使うことを想定しており、そのために否応なく、官僚的な性質になるのです」

デジタル・ネイティブの伝説は
大学にとっては便利なものだ
それが学生が本当に
必要としているものではなく
学校が教えたいことだけ
教えていればよいとするための
言い訳になるからだ

ソフトウエアに規定された商習慣は、職務全体、業界全体にわたり標準化されつつあり、非常によく知られるようになっている。よく知られるようになったので、人事担当は、それを知っている人材を欲しがる。そうなると、大学はソフトウエア教育だけの話ではなくなる。学生にビジネス・ソフトウエアを教えるということは、当然のこととして、業界および職務の専門性も備えさせることになる。それには、16時間の訓練などでは、まったくおぼつかない。

「仕事用のシステムが、なぜスマートフォンのように、柔軟で、簡単で、カスタマイズができるようにならないのでしょうか? その答は、これらのシステムの目的が異なるからです」とGawandeは話す。「一般消費者向けの技術は、自分のためだけのものです。複雑な企業向けの技術は、自分一人では難しい仕事をグループで行うことを支援するもの、つまり、連携のためのものです」

デジタル・ネイティブの伝説は、大学にとっては便利なものだ。それが、学生が本当に必要としているものではなく、学校が教えたいことだけ教えていればよいとするための言い訳になるからだ。しかし、それは自己中心的で、浅はかで、愚かなことだ。Netflixやスマートフォンがテクノロジーなのだと思ってしまわずに、外の世界に出て、自分の大学の入学審査や財務や人事といった職務に使われているソフトウエアを見て欲しい。大学卒業生の95パーセントは、そうした職場からキャリアを積むことになる。教職員ラウンジのような場所ではない。それも、幸運な学生の話だ。それ以外の卒業生は、スターバックスのような場所からスタートすることになる。

Gawandeは、その記事の中で、ビジネス・ソフトウエア・プラットフォームに順応して働く(そして生きる)には大変な苦労を重ねる必要があるが、ソフトウエアは、世界を食い尽くそうとしていると書いている。それが消費者にとって、よい結果をもたらすという。Epicを導入すれば、病院は、3カ月以上オピオイドを使用している患者を探し出して、その人の過量摂取の危険性を減らすことができる。または、ホームレスの患者の結核の検査が3回続けて陰性だったとき、隔離の必要はないと伝えることができる。「私たちはこれを、私たちのためのシステムであり、またそうではないと考えています」と話すのは、医療システムの最高医療責任者だ。「これは患者のためなのです」

この恩恵は、大学が新しい教育プログラムができたと大喜びして入学者数を増やすことになったデータ解析革命がもたらした恩恵と同質のものだ。しかし、よりよい成果を得るために追加されるデータは、まずキャプチャーしなければならない。それを行うのが、複雑なビジネス・ソフトウエアだ。だから、自分で種を撒かずにビッグデータの果実だけを収穫しようとする大学の考え方はズルくて、少くとも偽善的だ。種を撒くためには、ビッグデータを活用できるソフトウエアの扱いに欠かせない技術とビジネスの実践的知識を学生たちに植え付けることが肝心であり、それには、大胆な投資が自ずと必要になる。

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(翻訳:金井哲夫)

AppleはWalletに大学の学生証を統合し利便性を拡大

教育市場は、長い間、Appleのハードウエア事業の成長に不可欠なものだったが、今では教育市場、とくに大学生の間での人気を新たな取り組みに利用し始めた。10月2日より、Appleは、大学施設への出入り、食事や本の購入、その他の学内のサービスが利用できるように、学生証と、Apple WatchとiPhoneのコンタクトレス決済システムWalletの統合を開始した。これを最初に導入する学校は、デューク大学、アラバマ大学、オクラホマ大学となっている。

Appleは、このサービスを6月のWWDCで発表していた。そのときに予告されていた3つの大学は、ようやくこれが使えるようになったわけだ。Appleによると、今年の年末までに、ジョンズ・ホプキンズ大学、サンタクララ大学、テンプル大学も導入を開始するという。

この機能拡張は、Appleのモバイルウォレットが成長の波に乗っている時期に行われた。iPhoneとApple Watchのユーザーは、支払いにこれらの機器を使うのが大好きな人たちであると見なされる(Androidユーザーの3倍は熱心だ)。その背中に乗ったApple Pay(現在24の市場で利用されている)は、今もっとも人気のあるモバイル・コンタクトレス決済システムだとAppleは主張している。前四半期だけで10億回の取り引きが行われたという。これは前年の3倍だ。

この取り引きのほとんどは、とくに、昔ながらのアメリカン・エキスプレスやビザのクレジットカードを使ったApple Payに結び付いており、昔ながらの小売店で使用されている。Appleは、今年の年末までにはアメリカの60パーセントの小売店がApple Payに対応すると見ている。これには、上から100位までの小売チェーンのうちの70社が含まれる。

しかしAppleは、ポイントカードや都市交通機関の乗車カードなど、さまざまなサービスのカードをアップロードして利用するようユーザーに働きかけ、第二の成長の波によってWalletを便利にしようと努力してきた。すでにアメリカの12の大都市圏ではApple Payが導入されているが、その範囲はイギリス、中国、日本など海外にも広がっている。

学生証の統合も、その圏内にあるとAppleは話している。

「iPhoneとApple Watchは、日常の行動に変化をもたらし、モビリティーの新しい時代へと私たちを導いてくれました」とAppleのインターネットサービス副社長Jennifer Baileyは声明の中で話している。「Apple Payを開始したとき、物理的な財布に取って代わるというゴールを目指して乗り出したのです。交通、ポイントカード、コンタクトレス・チケットを追加することで、Walletには、単に支払いを行う以上の能力が備わりました。今、大学のコンタクトレス学生証によって、お客様に、さらなる簡便性、利便性、安全性をお届けできることを嬉しく思っています」

Apple Payは、Appleに莫大な利益を直接的にもたらすものではないかも知れないが(第三者指摘では、支払いのパーセンテージは非常に低いとのこと)、間接的にそれは、人々と電話機や腕時計との新しい関係を生み出し、それらの機器を、ユーザーにとってより価値の高いものにする。そしてユーザーは、Appleのエコシステムとのつながりをさらに強めることになる。

大学では(その他の学校でも)、学生証は身分を示すものとしてだけではなく、サービスや施設の利用や支払いなどにも使われるようになってきている。コンタクトレス版の学生証の利用も増えてきた

その理由のひとつに安全性がある。すべてが1枚のカードに収まれば、学生はいくつもの貴重品を持ち歩かずに済む。紛失したり盗まれたりしても、カードならすぐに再発行が可能だ。同時に、腕時計や携帯電話は、つねに持ち歩くものなので、それらを統合すれば、Appleのデバイスロック機能によってカードの安全性が向上する。これは理にかなったことだ。

不明なのは、その学生証を使って学生が支払いを行ったとき、Appleは(ほんのわずかでも)手数料を取るのかどうかだ。その件についてはAppleに問い合わせているので、わかり次第報告する。

Walletがこれから参入する学校は、単に「大きな取り引きが行われない小売りの場」というわけではない。AppleはWalletで、スポーツ観戦のチケットを持ち運べるようにした。それを使って会場に入ってから、人々は売店での支払いにWalletを使う(Appleが手数料なしの取り引きで利用を促すための手段になるかも知れない)。

今日、Appleは、アメリカではK-12(幼稚園児から高校生まで)の教育市場を占める割合は14パーセントから17パーセントの間と見られている。K-12市場と、さらに上の学年の市場を獲得しようと必死になっているGoogleやMicrosoftとの競争の中で、こうしたサービスの追加がAppleにどれだけ大きなシェアをもたらしたかがわかるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)