RocketLabが月や火星、金星を探査する次期宇宙船に搭載する新エンジンをテスト中

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、次期宇宙船のPhoton Lunar(フォトン・ルナ)に搭載する新しいエンジンのテスト段階に入っていると、創業者でCEOのPeter Beck(ピーター・ベック)が明かした。同氏は 、同社のエンジン開発チームによってテストが勧められているhyperCurieと呼ばれるエンジンの画像を公開した。

hyperCurieはその名前が示すように、現在Rocket Labがミッションに使用しているElectronロケットの第3段と、Photon(フォトン)宇宙船(衛星バス)に搭載されているCurieエンジンを進化させたものだ。hyperCurieはRocket Labが開発中の新しい宇宙船であるPhoton Lunar に搭載され、月や火星、金星、さらにはその先まで小型のペイロードを運ぶ。

Rocket Labは今年2月、NASAに代わって月にペイロードを打ち上げる契約を獲得しており、NASAや他の顧客のために、月周回軌道や他の深宇宙の目的地へと小型衛星を投入する機会の増加を見据えていることは明らかだ。NASAの月探査ミッションは長期的な有人ミッションのための重要な要素である、月周辺にLunar Gatewayと呼ばれる軌道ステーションを建設し配置するという、NASAの最終目標の前段階になるだろう。

ベック氏は今月初めにPhoton Lunarの詳細なワイヤーフレームの概略図を公開したが、その中にはhyperCurieエンジンを搭載した宇宙船が描かれていた。hyperCurieは圧力式のCurieとは異なり、電動ポンプを採用することで性能を向上させ、より多くの推力を発生させる。

Rocket LabによるNASAのための月着陸ミッションは、現在のスケジュールによれば2021年に実施される予定であり、このエンジンがすでにテスト段階に入っているのは順調ということだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

タッチで操縦する宇宙船Crew Dragon、僕らはまた一歩SF映画に近づいた

革新的に進めるか、それともこれまでに実証された方法に留まるかの判断ができずしてまったく新しい宇宙船を製造することはできない。Crew Dragonの製造にあたり、SpaceX(スペースX)はボタンやダイヤルを廃止し、全面的にタッチスクリーンを採用することにした。今月後半に飛行する宇宙飛行士も長年の訓練と筋肉の記憶を取り払う必要があるが、それほど悪くないと彼らは言う。

まもなくDragonカプセル乗り込んで国際宇宙ステーションに向かう2人の宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグラス・ハーリー)氏は、同宇宙船を実際に操縦する最初の2人となる。

「新品の宇宙船で飛行することができるなんて、おそらくテストパイロット学校中の生徒の夢でしょう。良い友人と共にこのような機会を得ることができて私はとても幸運です」と、NASAが放送した記者会見でベンケン氏は言う。

もちろん、彼らは万全の準備を整えて飛行に臨んでいる。シミュレーターでは無数の時間を費やし、初期の段階からSpaceXと協働で取り組んできた。

「SpaceXに出向き、さまざまな制御メカニズムを評価したのは少なくとも5〜6年前のことです」とハーリー氏。「彼らは機体をどのように操縦するべきかを検討しており、最終的にタッチスクリーンインターフェイスが選ばれました」。

「もちろん、パイロットとしての私の全キャリアの中で身につけてきた機体のコントロール方法とは確かに異なりますが、我々はとてもオープンマインドな心持ちで取り組んだと思います。機体を正確に飛ばし、誤って触れたり間違った入力をしたりしないようにするため、彼らと協力して調和方法、つまり自分のタッチを実際にディスプレイと結び付ける方法を定義しました」。

同記事のトップの写真と以下の写真を比較してほしい。以下は宇宙飛行士がロシアのSoyuzカプセルの操縦を学ぶための物理シミュレーターの写真だ。

従来の操縦室

どちらも正直、足まわりのスペースがゆったりしているとは言えない

もちろん最新の航空機であってもいまだ非常に多くの物理的な制御装置が装備されている。パイロットは慣れているだろうが、設計は間違いなく古いと言える。

ベンケン氏によると、これらの宇宙船は、ISSに行きドッキングするという特定の目的を念頭に置いて作られている。この機体で火星に行くわけではないため、その事実が設計と操縦方法に影響しているのだ。

「この飛行タスクは非常にユニークなものです。宇宙ステーションに近づき、近接して飛行し、その後ゆっくりと接触。これはおそらくスペースシャトルや航空機の飛行で通常見られるものとは少し異なります」とベンケン氏は控えめな表現を用いて言う(実際は夜と昼ほどの明確な違いがある)。「タッチスクリーンインターフェイスを審査した際、我々は実際に目下のタスクに焦点を当て、この特定のタスクにおいて優れたパフォーマンスを発揮できるよう努めました」。

プロトタイプのCrew DragonはすでにISSに打ち上げられ帰還している。自律的かつ遠隔的に操縦されたものだ。

「我々にとっても彼らにとっても、当初はこういったさまざまな設計上の問題に取り組むことには困難がつきまといましたが、タッチスクリーンを用いた手動飛行の観点からすると、機体は非常にうまく飛ぶようになりました」とハーリー氏。

「違いとしては、スティックを使用する場合と比較して入力を行う際は非常に慎重に行う必要があるということです。たとえば飛行機を操縦している場合、スティックを前に押すと機体は下に下がります。タッチスクリーンで実際にそれを行うためには、スクリーンと私が調和しなければなりません」。

「タッチスクリーンへの切り替えが必ずしもすべての飛行タスクに適しているとは、私は思っていません」とベンケン氏。「しかし今回のタスクでISS近くまで安全に飛行するためには、タッチスクリーンが十分な機能を果たしてくれると思っています」。

ハーリー氏によると、操縦のための機構と読み出された情報がすべて同じ場所にあることは大きな利点だと言う。「たとえば、機体を飛ばすために見ているのと同じ場所に、ドッキングターゲットが表示されています。なのでこれまでとは少し異なる方法ですが、このデザインは全体的に非常にうまく機能しています」。

しかし、シミュレーターで学べることは限られている。この最初の有人飛行はまだテスト段階であり、カプセルの次のバージョンを完成させるには今回からのフィードバックが必要だ。結局のところ、数十年前に遡るシステム上で20もの異なるノブのポットを再配線するよりも、ソフトウェアの更新をプッシュする方が簡単なのだ。

「我々はこのテスト飛行の一部を担う者として、飛行前の段階や宇宙ステーション付近でも機体の実際の手動飛行能力をテストできるように設計しました」とハーリー氏は説明する。「期待どおりに作動するか、シミュレーターで見せた飛行通りかを確認するためです。将来の飛行士が手動で宇宙船を飛ばす必要が生じた場合に備え、飛行テストでは他の事項同様に用意周到でなければなりません。つまり、Crew Dragonのさまざまな機能をすべてテストするために、我々がやれることをすべてやっているわけです」。

すべてが計画どおりに進んだ場合、今月後半に飛行予定のCrew Dragonの同バージョンについて、今後さらなるニュースを耳にできることだろう。差し当たって、著者はSpaceXとNASAの両方に、制御方式とその開発に関する詳細情報を求めておいた。

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Category:宇宙

Tags:Crew Dragon SpaceX 宇宙船

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(翻訳:Dragonfly)

商業衛星の寿命を伸ばす初の宇宙船の打ち上げに成功

これまで商業衛星は事実上使い捨てだった。数トンもある10年以上稼働する巨大衛星でさえ、いずれは燃料が切れて大きな宇宙ゴミになるか、何らかの機会的故障によって終末迎えることになる。Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が開発し、ロシアのソユーズに乗って米国時間10月9日に打ち上げられた新しい宇宙船が、それを変えるかもしれない。

MEV-1と呼ばれる衛星補修宇宙船は、軌道上のインテルサット901と出会い、自身の軌道修正用ロケットエンジンを使って衛星を理想的な目標軌道に戻すという特別任務を担っている。その結果、18年を経過した古い衛星の寿命を最大5年間伸ばすことができる。インテルサット901の軌道修正に成功すれば、MEV-1が推進燃料の枯渇したほかの軌道衛生にも同じことができる可能性は高い。

事実、MEV-1宇宙船自身の耐用年数15年に設計されており、ドッキングとアンドッキングを複数回実行できるので、2トン前後の地球同期衛星にドッキングして15年以上ミッション期間を延長させるとNorthrop Grummanは表明している。

これによって商業衛星は新しい時代を迎え、運用コストがさらに削減されることでスタートアップや小さな会社でも利用できるようになる可能性がある。NorthropのMEV-1は、実質的に宇宙の曳航船であり、地球同期衛星の寿命を倍増させることができる。これはもしMEV-1が複数の顧客を見つけて開発と打ち上げのコストを分散できれば、莫大なコストをかけることなく大きな利益を上げられる可能性がまだまだあることを意味している。

ほかにも衛星支援プロジェクトは進行中であり、先週TechCrunch DisruptのStartup BattlefieldでファイナリストになったOrbit Fabなどの会社は恩恵に預かるかもしれない。Orbit Fabは宇宙で衛星に燃料補給するシンプルなシステムを開発している。補給宇宙船が衛星とドッキングすることなく、繋がって燃料を補給できる方式だ。ほかにも、複数の顧客の要求に応じてモジュールやセンサーをアップグレードすることで、衛星の設計や開発、打ち上げへの投資の見返りを最大にする宇宙補給サービスが考えられる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

グリーンで小さくて強力な宇宙船用エンジンを作るTesseract

宇宙関連の推進装置の中でも、多くの注目を浴びるのは打ち上げロケットやその巨大なエンジンだが、打ち上げは宇宙の入口までの話に過ぎない。宇宙は広大だ。Tesseract(テッサラクト)は、宇宙船のための新型のロケットエンジンを開発した。それは小型で高効率であるばかりか、地上にいる我々にとって安全な燃料を使用するというものだ。

ロケットの推進装置は、この数十年間に進歩を続けてきた。しかし、ひとたび宇宙に出ると選択肢はかなり狭まる。窒素と水素の化合物であるヒドラジンは、シンプルでパワフルな燃料として50年代から使われていて、これ(または同類の自発火性推進剤)を使用するエンジンは、今日数多くの宇宙船や人工衛星の動力源になっている。

しかし、ひとつ問題がある。ヒドラジンは毒性と腐食性が大変に強いのだ。これを扱うには、専用の施設で防護服を身につけ、細心の注意を払わなければならない。しかも、それは打ち上げの直前に準備することになっている。毒性強い爆発物を、必要以上に長期間保管しておくのは危険だからだ。そのため、ロケットの打ち上げや宇宙船の数が大量に増えてコストも大幅に下がっても、ヒドラジンの取り扱いだけは、高コストで危険なものとして残されている。

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それに代わる宇宙空間での推進装置の研究は、以前から続けられている。Accionのエレクトロスプレー・パネルホールスラスター(SpaceXのStarlink人工衛星が使用している)、ソーラーセイルなどがあるが、大多数のミッションや宇宙船にとって、実用的な選択肢は化学推進方式に絞られてしまう。残念ながら、毒性のない代替燃料の研究は、ほとんど成果を上げていない。しかし、Tesseractは、その時が来たと公言している。

「90年代にチャイナレイク海軍センターで初期の研究が行われていました」と話すのは共同創設者のErik Franks(エリック・フランクス)氏。しかし、予算の割り当てが変更になり、その研究は消滅してしまった。「時期も悪かったのでしょう。業界はまだ、飛行実績のある有毒な推進技術で満足している非常に保守的な防衛関連企業に牛耳られていましたから」。

TesseractのRigelエンジンの燃焼試験

しかし彼らは、軍のシステムの失効した特許によって、方向性を定めることができた。「私たちの挑戦は、あらゆる化学物質群を調べて、私たちの目的に適うものを見つけ出すことでした。そして、とてもいいものを発見しました。企業秘密なので何かは教えられませんが、とても安価で、非常に高性能です」。

これで顔を洗えるとまでは言わないが、密閉式の防護服を着なくても、ゴアテックスのつなぎで宇宙船に燃料補給ができる。肌に触れたとしても、ヒドラジンのように皮膚炎が一生残るようなことがない。

時代も変わった。今の宇宙でのトレンドは、何億ドルもの経費を使って静止衛星軌道に何十年間も留まる衛星から離れ、5年から10年程度の運用を想定した小型で安価な衛星に移っている。

数々の宇宙船を、いろいろな人たちが作るようになり、安全で環境にやさしいものに人気が集まるようになった。もちろん、取り扱いコストも低く、専用施設もあまり必要としないことから、製造から準備の工程がさらに民主化されている。だが、それだけではない。

ヒドラジンを推進剤として使いたくないと思えば、ホールスラスターのような電気式のエンジンに切り替えることができる。これは、電荷を帯びた粒子を放出することで、ごく小さな反作用を生じさせるというものだ。もちろん、1秒間に数え切れないほどの回数で放出される(その力が積み重なる)。

しかしこの推進方式は、高比推力(単位燃料あたりに得られる力の測定基準)ではあるものの、推進力はきわめて小さい。V6エンジンを搭載した従来の自動車から、時速8キロのソーラー電気自動車に乗り換えろと言うようなものだ。それでも目的地に行くことはできる。経済的でもある。しかし長い時間がかかる。

人工衛星は、ロケットなどで地球の低軌道に打ち上げられた後は、自力で目標の軌道にまで上昇しなければならない。おそらく、数百キロメートルほど上空になる。化学推進式のエンジンなら、数時間から数日で到達できるが、電気式では何カ月もかかるだろう。20年間も軌道に留まることが想定されている軍用の通信衛星なら数カ月の猶予はあるが、Starlinkなどが打ち上げを計画している数千基もの短命な衛星の場合はどうだろう。打ち上げから数カ月後ではなく1週間後に運用を開始できる衛星の場合は、寿命のかなりの部分を移動に割いてしまうことになる。

「従来型の推進装置で、性能を落とすことなく、毒物を排除して取り扱いコストを削減できるとしたら、新世代の人工衛星が選ぶべき最良の道は、グリーンな化学物質だと私たちは考えます」とフランクスは言う。そして、それがまさに彼らが作り上げと主張するものだ。もちろん、理論だけの話ではない。下の動画は、今年の初めに行われた燃焼試験の模様だ。

「寿命が尽きたときのことも重要です。長く、ゆっくりと螺旋を描きながら落下します。そのとき、他の衛星の軌道を何度も横切るため、衝突の危険性が劇的に増加します」と彼は話を続けた。「大規模な衛星コンステレーションの場合、責任ある運用を行うには、収拾の付かない宇宙デブリの問題を増大させないためにも、寿命が尽きた後は速やかに落下させることが大変に重要になります」

Tesseractには、フルタイムの従業員が7名しかいない。同社はY CombinatorのSummer 2017のクラスに参加していた。それ以来(それ以前からも)、彼らは、提案予定のシステムの開発と宇宙航空産業との関係構築に精を出してきた。

Tesseractの2つの主要製品の想像図。左がAdhara、右がPolaris。

彼らはシード投資で200万ドル(約2億1800万円)を調達した。ロケット科学者でなくても、この程度の資金で何かを宇宙に打ち上げるのは不可能であることぐらいわかる。幸いにも、彼らにはすでにいくつかの顧客がある。そのひとつは正体を明かしていないが、来年、月に宇宙船を飛ばす計画を立てている(この有力情報はしっかりとフォローするので乞うご期待)。その他に、Space Systems/Loral(SSL)がある。この企業は1億ドル(約108億8000万円)の基本合意書に署名した。

Tesseractが製造を計画している主要な製品が2つある。Polarisは“キックステージ”だ。打ち上げロケットなどで宇宙まで運ばれた衛星を、より遠くの軌道まで運ぶ短距離宇宙船だ。動力には、同社の大型エンジンRigelが搭載される。これは月への運行が想定されたプラットフォームだ。上の想像図では、右側で6Uキューブサットの塊を運んでいる。

SpaceXは60個の衛星を打ち上げ後にStarlinkの追加情報を公開(本文は英語)

しかしフランクスは、資金は別のところにあると考えている。「私たちが考えるシステムは、さらに大きな市場機会である、小型衛星向けの推進システムです」と彼は話す。2つめの製品Adharaは、小型の衛星や宇宙船のための乗り合いバスのようなもので、同社はひたすら、コンパクトで、もちろん、環境にやさしいことを心がけている(上の想像図では小さな装備として描かれている。スラスターの名称はLyla)。

「いちばん欲しいものは、完璧に、買ってすぐに使えるシステムだと顧客から聞かされました。昔ながらの衛星製造業者がずっとやってきたように、あちらこちらの業者から部品を買い集めて自分たちでシステムを一から組み上げるという形ではないのです」とフランクスは言う。それを実現するのがAdharaだ。「あくまでもシンプルに、ボルトで装着するだけで、目的の場所へ移動できるようになります」。

こうしてエンジンの開発は、当然のことながら簡単ではなかった。しかし、Tessaractは従来のものを根本的に作り変えたというわけではない。原理はこれまでのエンジンとほぼ同じだ。だから、開発経費は馬鹿みたいな額にはならなかった。

同社は、それが現時点で実用的な唯一のソリューションであるかのような言い方はしない。本当に小型で軽量な推進装置を求めるなら、目的の軌道まで1週間から1年かかっても構わないというなら、おそらく電気推進方式のほうが適している。また、高いデルタVが求められ、作業員の安全対策を十分に行える大規模ミッションなら、今でもヒドラジンが最有力だろう。しかし、今もっとも急速に成長している市場は、そのどちらでもない。そしてTesseractのエンジンは、効率的でコンパクトでずっと安全に扱える、その中間地点に腰を据えている。

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(翻訳:金井哲夫)