山口大学が温泉の入浴効果をカピバラで証明!? 肌荒れ改善や保温、リラクゼーション効果を検証

山口大学が温泉の入浴効果をカピバラで証明!?肌荒れ効果や保温効果、リラクゼーション効果を検証

温泉入浴後前後のカピバラの表情・行動比較。Aはカピバラのくつろぎ状態(リラクゼーション効果)をスコア化したもの。目と耳の状態で評価。Bは目の評価。入浴後にリラクゼーション効果が増している。Cは耳の評価。入浴後にリラクゼーション効果が増す傾向にある

山口大学は12月14日、美肌の湯として1200年の歴史を誇る湯田温泉の効能を、カピバラを使った動物実験で初めて実証したと発表した。今回、科学的に解明された温泉の効果は、ヒトにも適用できるとのことで、健康の維持と増進、長寿社会への貢献が期待されるという。

本来、南米のアマゾン川流域に暮らすカピバラは高温多湿の環境を好むため、寒い日本では温泉浴をする愛らしい姿が知られているが、実際、冬季には乾燥による肌荒れが認められている。そこで、山口大学大学院共同獣医学研究科実験動物学の井中賢吾氏と担当教授の木村透氏は、「白狐が見つけた美肌の湯」とのいわれがある山口県の湯田温泉で、カピバラを使って皮膚への効果を調べた。同時に、保温とリラクゼーションといった温泉の効果とされながらも科学的裏付けの乏しかったものの検証も行っている。

その結果、入浴21日後にカピバラの肌荒れは正常な状態に回復した。皮膚性状を表す指標も、水分量が増加し、pHは弱アルカリ性に留まった。色素沈着を数値化するメラニン値は下がり、血行状態を示す紅斑値は上がり、「美肌効果を数値で捉えることができた」とのこと。

温泉入浴でもたらされるリラクゼーション効果は、カピバラの表情と行動でスコア化した。特にまぶたの状態と耳の位置から、リラックスする様子が見てとれた。

保温効果においては、入浴後30分間の頭・体幹・四肢末端の保温状態を調べた。冷えた3部位は入浴によって温まり、その後の計測時間中の体温の低下は抑えられた。これで、温泉は湯冷めしにくいという言い伝えも実証されたことになる。

山口大学が温泉の入浴効果をカピバラで証明!?肌荒れ効果や保温効果、リラクゼーション効果を検証

ここでわかった効果はヒトにも適用できるため、健康の維持増進に貢献できる可能性がある。また、解明された効果を活用した山口県湯田温泉地区の地域観光産業との連携や、健康増進計画への展開も期待されるとのことだ。

なお、謝辞に「地元の山口市内湯田温泉配給協同組合および湯田温泉旅館協同組合の協力並びに秋吉台サファリランドの支援に深く感謝する」と記されている。

山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

固形がんに対するCAR-T細胞療法の研究開発を行うノイルイミューン・バイオテックは3月22日、シリーズCラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約23億8000万円の資金調達を発表した。

引受先は、新規引受先の第一生命、Binex Holdings、澁谷工業、ヘルスケア・イノベーション投資事業有限責任組合、KD Bio Investment Fund 4、また既存株主のBinex、BiGEN。

ノイルイミューン・バイオテックは、山口大学および国立がん研究センター発スタートアップとして2015年に設立。同社のコア技術PRIME(proliferation inducing and migration enhancing)を利用したCAR-Tを主とする遺伝子改変免疫細胞療法の自社パイプライン事業および共同パイプライン事業を推進してきた。今回調達した資金により、自社パイプライン事業におけるリードパイプラインNIB-101の臨床開発を促進する。

NIB-101は、特定のがん細胞の表面に存在する糖脂質の一種であるGM2を標的としたPRIME CAR-T細胞であり、現在、年内の臨床試験開始を目指して準備を進めているという。

山口大学および国立がん研究センター発スタートアップのノイルイミューン・バイオテックが23.8億円調達

CAR-T細胞とは、遺伝子を導入する技術を用いて作製する細胞で、がんを高感度に見つけ出し、かつ強力に攻撃する能力を持つという。白血球の一種T細胞を血液から取り出して、そこにキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)と呼ばれるがん細胞を見つけるアンテナの役割をもつ人工的な遺伝子を導入し、1~2週間程度体外で培養して増やした後に患者に投与する。すると、CAR遺伝子を導入されたCAR-T細胞は、がん細胞の目印となるがん抗原を認識し、これを標的として攻撃する。

ただ、CAR-T細胞療法はがんに対する有効な治療法となる可能性が示されているものの、血液がん以外の固形がんに関しては優れた治療効果を示せていないという。固形がんを標的としたCAR-T細胞療法は各国の研究機関や製薬企業において開発が進められているが、いまだ承認されたものはないそうだ。固形がんと血液がんでは特徴が異なる点があり、固形がん局所へのCAR-T細胞の送達性および固形がんの不均一性 (tumor heterogeneity)が課題となっているという。

この解決策として、ノイルイミューン・バイオテックはPRIME (Proliferation-inducing and migration-enhancing) 技術の研究開発を実施。CAR-T細胞およびその他の免疫細胞のがん局所への送達性を向上させ、生体内において宿主の免疫システムを活性化することにで、多様ながん抗原に対する免疫応答を誘導して固形がんの不均一性に対応するとしている。

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