NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は11月18日、短信レポート「バイデン次期大統領で変わる米国の技術イノベーション・気候変動政策」を公開した

米国第46代大統領になるジョー・バイデン氏は、トランプ大統領とは大きく異なる技術イノベーション政策および気候変動政策を公約に掲げている。NEDOはこうした変化について、様々な分野で発信されている客観的な情報を整理・分析したTSC Foresight短信レポートとして公表。日本と関わりの深い米国の新たな方向性を注視しつつ、NEDOはこのレポートを基にあらゆる領域で議論を深め、「イノベーション・アクセラレーター」としての役割を強化することで、世界的な課題解決に貢献するとしている。

技術イノベーション政策部分

バイデン次期大統領は「Innovate in America」(アメリカでのイノベーション)を政策として掲示。3000億ドル(約32兆円)を新産業・技術の研究開発に投資し、数百万人分の質の高い雇用を創出するとしており、アメリカの世界的なリーダーシップを確保したい考え。技術流出には慎重なものの、国際的な枠組みを重視する姿勢も見せる。米国第一主義を推し進めたトランプ大統領とは異なり、米国の技術イノベーション政策を強化しながらも、より一層同盟国重視の姿勢に転じる見込み。

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

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気候変動政策部分

バイデン次期大統領は、大胆な気候変動対策を講じることで気候変動に伴う不平等の是正を追求するという、環境正義の基本思想を持つ。現政権が離脱したパリ協定への復帰も公約に掲げており、また遅くとも2050年までに、米経済全体でCO2排出量をゼロにすることも表明している。具体的施策として、大規模なインフラ整備などからなる「クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画」を発表し、4年間で約215兆円を投入する計画。さらに気候変動に焦点をあてた省庁横断的な先進研究プロジェクト機関として「ARPA-C」(Advanced Research Projects Agency focused on Climate)新設を表明し、米国の気候変動政策は大きく前進すると予測。

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

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カテゴリー: その他
タグ: ジョー・バイデン / Joe Biden(人物)政策Policyアメリカ(国・地域)

英ブレア元首相の提言、社会と政府におけるテクノロジーの役割を考える

【編集部注】著者のTony Blair氏は、英国元首相で現在はInstitute for Global Changes(地球変動研究所)所長を務める。

産業革命は、政治社会学に劇的な変革をもたらした。米国では、資本主義の反動として、近代化を恐れる人たちによりポピュリスト党が結成された。英国では、経済の大変動によって政治の形が変わった。工場法から、結果的には福祉国家の基盤を築いたデイビッド・ロイド・ジョージによる自由主義的改革まで、その影響は次の100年全般に及んだ。

今日、また新しい広範な革命が進行しつつあり、前回と似たような効果を波及させている。左翼、右翼に関わらず大衆主義者たちが台頭し、その勢いは19世紀末の米国のポピュリストよりも強まっている。だが彼らも、昔と同じように近代化を拒絶している。彼らは己の現状を保つためにスケープゴートを探し求め、とうとうテクノロジーがその標的に定められた。

社会秩序を本当の意味で変革できる分野の進歩を後退させてしまっては、損失だ。少なくともイギリスでは、1909年にロイド・ジョージが「人民予算」を提案したときから、官僚機構のやり方はあまり変わっていないように見える。

この技術革命について熟知し、それを公益のために応用できる最初の政治家が、次の100年の姿を決めることができる。遺伝子編集や人工知能、それに核融合や量子コンピューターなどの画期的な飛躍を探る研究も含め、それらのテクノロジーの急速な発達は、私たちの経済、社会、政治に大きく変革が引き起こす。

だが今はまだ、適切な質問ができる人間はほとんどいない。答えが出せる者は言うに及ばずだ。だからこそ私は、政策立案者が取り組むべき唯一にして最大のテーマはテクノロジーであると力説しているのだ。私の研究所では、そうした決定的な問題を綿密に考察し、テクノロジーを使った政治的に実行可能にして最良の政策や戦略のキュレーションを支援したいと考えている。それにより、テクノロジー、研究におけるイノベーションと投資、開発を、進歩的なプログラムの最前列に置くことができる。そしてこれは、テクノロジーは社会全体にとってポジティブな力であるという、私たちの信念に基づいている。

これは、変革によって表面化した問題を無視するものではない。なぜなら、それはプライバシーや社会的興味に関連する重大な問題だからだ。

2013年4月23日、ニューヨークにて。市内にあるローワー・マンハッタン・セキュリティー・イニシアチブの監視カメラの画像。対テロセンターでは、警察官と民間の警備員が、金融地区とその周辺のローワー・マンハッタン地区に設置した4000台以上の監視カメラと自動車のナンバープレート読み取り装置をモニターしていた。ロンドンの「リング・オブ・スティール」に習って、潜在的脅威を特定するよう設計されている(写真:John Moore/Getty Images)

労働市場において、自動化の結果として生じた、または生じるであろう変化に対しては、その矛先がすでに取り残された感覚を抱いている人に向けられやすいため、政府の役割をもっと深く考える必要がある。再訓練だけでは不十分だ。おそらく、技能への生涯にわたる投資が必要となる。そのため、ベーシックインカムも十分な対策になるとは思えない。それは最後の手段だ。能動的でよく的を絞った政治的対策ではない。

しかし悲観論は、未来へのよき案内人にはなれない。最後には、単純な国家主義であれ、保護主義であれ、民族主義であれ、なんらかの保守主義の形に帰結するのが落ちだ。そのため、リスクを緩和しながら好機をうまく操るこの方針を信じる私たちの課題は、それを人々の生活と結びつけることだ。これは、ニューディールや人民予算のよう重大な政策として考えるべきだ。私たちが未来へ舵を切ることで、社会秩序に大変革が起きる。

もっとも高いレベルでは、これは21世紀の国家の役割という問題になる。規模や予算に関するイデオロギー論争は捨てて、今の人々の要求に合わせるために社会を作り変える方向で話しあうべきだ。米国では、オバマ大統領が最高技術責任者の活躍もあり、大きな前進を果たした。しかし、周囲の変化の速度に追いつくためには、政府の仕事のやり方を全面的に考え直すことが求められる。

写真提供:Shutterstock/Kheng Guan Toh

重要な鍵を握るすべての政策分野に、私たちはこう問うべきだ。人々が、自分が望むとおりに暮らし、生活の質を向上させ、反映し成功するチャンスを増やすために、テクノロジーをどう使えばいいか?

例えば、教育では新しい教え方のモデルが考えられる。オンライン学習は、学習方法に変革の可能性をもたらしたが、AIは、教えることの本質を変えるかもしれない。各個人に適合させたプラットフォームがあれば、教師は解放され、自分の時間をもっと有意義に過ごせるようになる。学費援助の新しい形もあるだろう。ソフトウエア開発者のための学費後払いの学校Lambda Schoolは、わくわくするような未来の可能性を与えてくれる。

同様に医療でも、診療におけるテクノロジーの役割が実証されている。しかし、私たちが資源の再配分を変えること、たとえば現場のスタッフを解放して患者と接していられる時間を長したり、さらには今使われている医療の形そのものを変えてしまうことで、大変革が起きる可能性がある。終末期医療や高齢者介護では、膨大な費用がかかる。しかし、予防やモニターリングに多くの予算を振り向けることで、結果的に人は長生きができ、病気への不安も減り、病気自体も、重篤になる手前で治療できるようになる。テクノロジーは漠然としたものと思いやすいが、このように使えば革命が起きる。

インフラと運輸にも、膨大な利益が潜在している。それは、新式の高効率な輸送機関であったり、もっと市民の役に立つ公共スペースをデザインであったりする。これには、社会と密接に結びついた大型プロジェクトが必要になるが、例えば、センサーでデータを集めて、日々の生活の質を高めるサービスの向上をはかるなど、日常的な、小さくてシンプルなところにも変革の芽がある。eスポーツのThe Boston Majorのオフィスは、そうした考え方の先駆者だ。データを役立てる方法を考えるとき、税金、福祉、エネルギー、公益に、もっと重点を傾けなければならない。

これが達成されたなら、政府は、社会で起きている変化と、もっとうまく足並みを揃えられるようになる。現状では、この2つは同期していない。政府が追いつけない限り、人々の役に立つものであるはずの制度は、信用と信頼を失い続ける。そこに、大衆主義が幅を利かせる余地が生じてしまう。しかし、その責任は政治家だけが負うものではない。テクノロジー業界も、政治はわからないと言って済ませていては何も始まらない。

テクノロジー業界の人々は、誤解や不信を募らせるのではなく、政策展開を理解し、支援するべきだ。なぜなら、このわずか20年と少しの間で、デジタル革命が私たちの社会の経済を劇的に変えてしまったからだ。これは継続することができる。ただし、数多くのスローガンが切望する変革が本当の意味で実現するのは、企業と政府とが協力し合ったときだけだ。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

「米国AI構想」に本当に必要なもの

[原文へ]
(翻訳:sako)

これがトランプ政権が掲げるテクノロジー政策だ

NEW YORK, NY - NOVEMBER 09:  Republican president-elect Donald Trump acknowledges the crowd during his election night event at the New York Hilton Midtown in the early morning hours of November 9, 2016 in New York City. Donald Trump defeated Democratic presidential nominee Hillary Clinton to become the 45th president of the United States.  (Photo by Joe Raedle/Getty Images)

ドナルド・トランプはテクノロジーに詳しくない。私たちが彼について知っているのはそれくらいだ。彼は携帯電話やEメールをあまり利用しないことで知られている。Anderson Cooperがモデレーターを務めたCNN主催のタウンホール・ミーティングでは、トランプ流のツイートの仕方が説明されている。「そばにいる若くて素晴らしい女性たちの1人に、ツイートしてほしい内容を叫ぶだけだ。私がやることは叫ぶことだけで、あとは彼女らがやってくれる」。

しかし、たとえ彼がアーリーアダプターではないにしろ(そして、コンピューターを生涯使わないかもしれないにしろ)、大統領選挙に当選した彼の政策はテクノロジー業界に大きな影響を与えることになる。そして、最終的には私たちの生活にも大きく関わってくる。

テクノロジーが彼の政策の中心的な要素となっているわけではないが、インタビューやスピーチ、ディベートの中には彼がテクノロジーについて語っている部分がある。そこから、トランプ大統領のテクノロジーに関する政策を予測してみよう。

Apple製品はアメリカ国内で製造させる:トランプはこれまでもAppleに対して強い態度を取ってきた。サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の犯人から押収したiPhoneのロック解除をAppleが拒絶した問題に対してトランプは、バレンタイデーの5日後にApple製品のボイコットを訴える発言をしている。

その1ヶ月前には、彼は中国に対する不信感を利用するように、Apple製品はアメリカ国内で製造させると発言している。バージニア大学に集まった聴衆に対してトランプは、「Apple製のコンピューターは他のどこでもなく、アメリカ国内で製造させる」と話した。彼はまた、Ford製のクルマやOreoのクッキーについても同様の発言をしている。

温暖化対策の予算を削減する:彼はインタビューの中で地球温暖化問題について大いに語っている。そのほとんどは、地球温暖化という問題が存在している事すら信じていないという主張だ。または、それを引き起こしたのは人間ではないという主張である。地球温暖化は中国のでっちあげだと主張する時もあった。9月のCNNとの対談で彼は、「きれいな空気や、清潔さというものは信じているが、地球温暖化は信じていない」と話している

2012年のツイートを見てみると、「地球温暖化のコンセプトは、アメリカの製造業の競争力を落とすことを狙う中国によって作り上げられたものだ」と彼は述べている。彼は「ジョーク」だと言うかもしれないが、その数年後にはもう一度、地球温暖化はでまかせであり、アメリカはその対策にお金を費やすべきではないと述べている。

2015年12月に開かれた集会では以下のように述べる場面もあった。「オバマはこのことを地球温暖化と関連付けて話しているが、(中略)その多くはでまかせだ。でまかせなんだ。つまり、地球温暖化は金になるんだ。いいかい?それはでまかせなんだ、そのほとんどはね」。彼の主張は明らかだろう。また、寒い日が来ると彼は、これこそが自身の「でまかせだ」という主張を裏付けていると述べることもあった。

Jeff Bezosには悪い知らせ:「もし私が大統領になったとしたら、彼らに何か問題があるだろうか」。これは、今年2月にトランプがJeff BezosとAmazonを指して言った言葉だ。「大いに問題だろう」。その時トランプは、Jeff BezosによるThe Washington Postの買収について話していたところだった。Jeff Bezosが「クリントンびいき」のThe Washington Postを、税金逃れの手段、そしてAmazonに有利となるような政治的な影響力を振りかざすための手段として利用しているという主張だ。

それに対する返答としてBesozがトランプに用意したのは、彼が開発するBlue Originロケットの乗車券だった(これは片道チケットだと推測する人もいる)。

NASAは低軌道を離脱して、地球の調査をやめるべきだ:トランプはアメリカの宇宙開発プロジェクトを大きくしたいと考えている。NASAの本拠地があるフロリダに集まった聴衆に彼は、「地球低軌道の物流業者という役割からNASAを開放する。その代わりに、私たちは宇宙のさらなる探検に注力する。トランプ政権になったあと、宇宙開発の主導権を握るのはアメリカとフロリダなのだ」と述べた

だが、トランプが無限の彼方に興味があることを示す一方で、彼のNASA計画には内省の意味が込められているとは言いがたい。つまり、彼の政権は地球上の生命には興味がないということだ。

先月公開されたSpace Newsの論説では、2人の専門家が「NASAは地球中心の活動よりも、深宇宙での活動に専念すべきだ」と述べている。おそらくこの見解は、トランプが人間が引き起こしたものではないと主張する、地球上の気候変動のことを考慮したものではないだろう。
まあ、居住可能な新しい惑星を地球が完全に破壊される前に見つけることができれば、万事うまく収まるというわけか。

ネットワーク中立性は支持しない:トランプがネットワーク中立性について不平を言う理由は、彼がこのコンセプトを検閲とイコールで考えているのが理由のようだ。彼はネットワーク中立性のことを「トップダウン型の権力掌握術」だと呼び、それはFCC(連邦通信委員会)の公平原則と同じようなものだと加えた。公平原則とは、ある問題のすべての側面に対して均等な時間を割いて取材をし、その問題を公平に伝えることをニュースの報道者に求めたものだ。今後予定されている、反規制を掲げる運動家のJeffrey Eisenachとトランプとの会見は、ネットワーク中立性の支持者にとって悪いニュースだと考えられている。

サイバー攻撃には厳罰を:ヒラリー・クリントンとの最初のディベートで明らかとなった、トランプのサイバーセキュリティに関する政策は、、、とても分かりづらかった。モデレーターのLester Holtにサイバー攻撃について聞かれると、彼はこう語った。

私たちはサイバー攻撃やサイバー戦争に対して厳しい態度で望む必要があります。これは大きな問題なのです。私には10歳になる息子がいて、彼はコンピューターを持っています。それを彼は非常にうまく扱うので驚きです。インターネットのセキュリティというものは、とても、とても難しい。もしかすると、それは達成不可能なものなのかもしれません。しかし私が言いたいのは、私たちはやるべき事をやっていないということです。

トランプのWebサイトでは、彼がこのコメントで言いたかったことをもう少し明確に伝えている(このコメントよりも何かを明確に伝えることは、そう難しいことではないことは明らかだが)。そこではヒラリー・クリントンのEメール問題が何度も言及されているのに加えて、ハッキング被害を伝える過去数年分の記事の引用、そして、アメリカのインターネットがもつ脆弱性に対して彼がどのように行動していくかということが列記されている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter