早起きは三文の「損」であることが判明!? 朝型人間と夜型人間の睡眠の問題と生産性との関連を調査

早起きは三文の「損」であることが判明!? 朝型人間の夜ふかしと夜型人間の早起きに関する生産性との関連を調査

東京医科大学は3月28日、いわゆる朝型人間と夜型人間の睡眠の問題と生産性との関連性を調査し、朝型人間の夜ふかしと、夜型人間の早起きが、生産性低下に関連していることを明らかにした

人間には、早寝早起きで昼間に高い生産性を発揮する朝型の人と、遅寝遅起きで夜に高い生産性を示す夜型の人がいる。こうした朝型か夜型かの体内時計の傾向は「クロノタイプ」と呼ばれている。クロノタイプは遺伝や細胞周期によって決められているため、後天的に修正することは難しい。そのため、朝型の人の夜勤、夜型の人の早朝勤務では体の調子が出ずに生産性が下がり、これを続けると健康上の問題が生じることがわかっている。しかし、クロノタイプと生産性低下との関連を調べた既存研究がわずかにあるものの、見解が一致していない。そこで、東京医科大学精神医学分野の志村哲祥兼任講師らによる研究グループは、クロノタイプと生産性の関係、つまり本当に「早起きは三文の得」なのかを調査した。

調査対象は、2017年から2019年にかけて、IT・官公庁・金融・放送業・コンサル業などの第三次産業42社に勤務する人のうち、質問紙調査に回答しデータ利用に同意した8155人。平均年齢は36.7歳。

まずは体内時計の指標となる「睡眠負債がない状態において、自然に眠り自然に起きるときの、睡眠時間帯の中間時刻」を調べたところ、平均は午前4時16分だった(平均4:16。標準偏差:1:33)。これは、0時過ぎに寝て8時ごろに起きることを意味し、ここに属する人が全体でもっとも多かった。そして、午前1時30分以降に寝て9時30分以降に起きる夜型と、夜10時半ごろ前に寝て6時半以前に自然に起きる朝型の人とが少なくない割合で存在した。

生産性については、1時間の遅寝で生産性が0.29%低下し、1時間の早起きで0.14%低下することがわかった。この傾向には朝型と夜型で違いがある。朝型は起床時刻による影響はなく、入眠時刻が1時間遅れると生産性が0.48%低下していた。夜型では入眠時刻の影響はなく、起床時刻が1時間早まると生産性が0.26%低下した。

夜型の傾向が強いほど生産性が低いことも示されたが、それはクロノタイプと生産性低下(プレゼンティズム)が直接関連しているからではなかった。夜型の人は様々な要因から睡眠に問題を生じやすく、そのために生産性が落ちるという間接的な理由からだった。

早起きは三文の得か否かについては、前述のとおり1時間の早起きで0.14〜0.26%の生産性低下が見られる。これをOECDの平均賃金に換算すると年額8000〜1万3500円ほどとなり、日額にすると約3文になるとのこと。つまり、早起きは3文の損だったわけだ。

このことから研究グループは、健康的な生活を通じて生産性を維持するためには、「夜ふかししないこと」、「無理に早起きしないこと」、「良好な睡眠をとること」が重要だと話している。

長時間座ったままの状態において低着圧ストッキングがエコノミークラス症候群を軽減する可能性、東京医科大が発表

長時間座ったままの状態において低着圧ストッキングがエコノミークラス症候群を軽減する可能性、東京医科大が発表

東京医科大

東京医科大学の健康増進スポーツ医学分野 黒澤裕子講師らの研究グループが、長時間座ったままの状態の際、低着圧のストッキングを着用することで、血栓症の発症リスクを軽減できる可能性があるとする研究結果を発表しました。論文は、3月1日発行の国際医学雑誌Medicine & Science in Sports & Exerciseに掲載されています。

長時間、座った状態が続いた場合、足の静脈に血栓が生じるいわゆるエコノミークラス症候群や、命に係わる肺塞栓症を併発することがあるのは良く知られています。このため、姿勢を変えたり、適度に動きまわったりということが推奨されていますが、実際に長時間に渡る座位姿勢が人体にどのような影響を与えるのか、その詳細なエビデンスは不足しているとのこと。

このため研究グループでは、平均22.6歳の健康な男性9名を対象に、飛行機のエコノミークラスシートに近い形状の椅子に、8時間連続で座ってもらうという実験を実施。この際、無作為に選んだ左右どちらかの足に低い着圧のストッキングを着用してもらい、1時間ごとに足の周径囲、動脈血流、筋酸素化レベルの測定を実施し、ストッキングの着用有無の影響を確認しました。

この結果、いずれの場合も動脈血流の低下や足の周径囲の増大が起こったものの、ストッキングを着用した足では、その割合が有意に低かったとのことです。

ストッキングの着用は医療現場でも導入されていますが、着圧の高いものは筋力が低下し皮膚の弱い高齢者では履きにくさから着用率が下がったり、皮膚炎の原因ともなっていたとのこと。しかし、今回の研究でこれまで医療現場で推奨されていた着圧よりも低い着圧でも血栓症発症リスクの予防効果が期待でき、履きやすいために着用率の向上も期待できるとしています。

なお、研究グループは今後、座りっぱなしによる悪影響を予防する方法として、座位中の運動実施効果も検証する予定とのことです。

(Source:東京医科大学Engadget日本版より転載)

金沢大学などが乳がん発症の超早期兆候を作り出す仕組み発見、がん予防・超早期がんの診断治療への活用に期待

金沢大学などが乳がん発症の超早期の兆候を作り出す仕組みを発見、がん予防・超早期がんの診断治療への活用に期待

金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構などによる研究グループは10月19日、乳がん発症の際に必ず表れる超早期の微小環境を作り出すメカニズムを発見したと発表した。癌予防、超早期がんの診断治療への活用、ひいてはがん撲滅への寄与が期待される。

乳がん発症の超早期には、間質細胞、免疫細胞などが集まり、がん細胞を取り囲む微小環境が作り出される。その微小環境から生み出されるサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)が、がん幹細胞様細胞に影響を与えていることはわかっていたが、実態は不明だった。この研究では、そのメカニズムを分子レベルで明らかにした。さらに、この微小環境がFRS2βといいう分子によって整えられ、がん細胞の増殖が始まることも突き止めた。

FRS2βの影響で炎症性サイトカインが生み出され、細胞外に放出されると、そこに間質細胞や免疫細胞が引き寄せられる。マウスを使った実験では、この状態の乳腺に乳がん幹細胞様細胞を移植すると、1カ月以内に大きな腫瘍ができた。だが、FRS2βのない乳腺に乳がん幹細胞様細胞を移植しても、まったく腫瘍はできなかった。

この研究を発展させることで、乳がん発症前に整えられる乳腺微小環境を標的とした治療が可能になり、乳がんの発症予防、早期治療が実現するという。

研究グループのおもなメンバーは、金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構の後藤典子教授、東京医科大学分子病理学分野の黒田雅彦主任教授、東京大学医科学研究所の東條有伸教授(研究当時)、東京大学特命教授・名誉教授の井上純一郎教授、国立がん研究センター造血器腫瘍研究分野の北林一生分野長、九州大学病態修復内科学の赤司浩一教授、慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授ほか。