産業廃棄物を回収する収集車の配車最適化をAIで実現するファンファーレが「配車頭」を正式リリース

ファンファーレは8月24日、廃棄物回収に特化したAIによる配車計画の自動作成サービス「配車頭」(ハイシャガシラ)を9月に正式リリースすることを発表した。併せて、Coral Capitalからの3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回調達した資金は、営業体制の強化、サービスリリースに伴うカスタマーサポートの拡充などに活用する予定だ。

「配車頭」は、廃棄物の収集運搬に特化したAIを用いた配車管理サービス。同社によると、複雑で時間のかかっていた配車計画作成に必要な作業時間を従来の100分の1以下にできるとのことで、現在特許出願中だ。

廃棄物回収は、住民の生活の維持に欠かせないエッセンシャルワークの1つだが、現在深刻な人手不足に陥っている。家族経営の業者が多く、高齢化や跡継ぎ不足などの問題を抱えているからだ。同社代表の近藤志人氏によると、業界ではこういった問題を解決するため、現在複数の会社を組織化して業界再編を進めている。ここにも特殊な事情があり、会社自体を吸収してしまうと、その会社が所持していた廃棄物回収の免許が取り直しになってしまう。産業廃棄物にもさまざまな種類があり、それに伴いさまざまな免許取得が必要なのだ。そこでホールディングス形式で子会社化するケースが増えているそうだ。そして株式上場によって、さらなる社会的な信用を得る方向に向かっている。

もう1つの問題は、工事現場などでも最後に残るのが産業廃棄物であり、廃棄物回収事業者が回収タイミングを見極めるのは難しい現状がある。「工事現場側の都合で数時間の待ち時間や日時の再調整が発生したり、住宅地や建物密集地などでは廃棄物回収トラックの長期間の乗り入れが禁止もしくは忌避されることもあるため、数km先で長時間待つというケースも多い」と加藤氏。

配車頭はこういった廃棄物回収業の特殊な事情を条件に組み込んで最適化した配車サービス。ユニック車(クレーン付きトラック)のルート回収にも対応しており、廃棄物品目ごとに最適なコンテナの積み込み、積み下ろし順を踏まえた配車計画を作成できる。もちろん、廃棄物回収・破棄後のコンテナ洗浄など、産廃の収集運搬で発生するさまざな要件もシステムに組み込まれている。配車頭の概要は以下のとおり。

  • 正式名称:配車頭(ハイシャガシラ)
  • サービス対象地域:全国
  • 料金:月額5万円〜(詳細はお問合せフォームから)

なお、今後は配車計画の最適化だけでなく、受発注のオンライン化による発注の効率化や、収集運搬後の処理の効率化にも対応していく予定とのこと。同社は、電話やFAXなどが主流のアナログな廃棄物回収業界を、AIを活用したDXによって人手不足の解消と廃棄物回収車の稼働効率の向上を進めていく考えだ。

ファンファーレは2020年3月、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が手掛ける、起業を目指す現役東大生や卒業生などの大学関係者、起業をしてまもない東京大学関連ベンチャーに対して事業化資金や経営支援を提供するプログラムの新たな支援先にも選ばれている企業。同社代表の近藤氏は前職のリクルートホールディングス時代にUX業務を担当する傍らで、副業として産廃大手の基幹システムの改善に携わってた人物。その際に現場の課題を知ったことがの起業につながった。

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たこ焼きロボ開発のコネクテッドロボティクスが8.5億円調達、イトーヨーカドー内へロボ設置も

写真に向かって前列の左から3人目がコネクテッドロボティクス代表取締役社長の沢登哲也氏

たこ焼きやソフトクリームなどの調理ロボットを開発しているコネクテッドロボティクスは7月3日、約8.5億円の資金調達を発表した。グローバル・ブレインをリードインベスターとしたシリーズA投資ラウンド1で、以下の企業を引受先とした第三者割当増資となる。

  • グローバル・ブレイン(グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合)
  • ソニー(Sony Innovation Fund)
  • 東京大学協創プラットフォーム開発(協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合)
  • 500 Startups Japan(現・Coral Capital)
  • 三井不動産

なお同社はシードラウンド2ですでに約1億円を調達しており、調達総額は約9.5億円となる。同社は2014年2月設立のスタートアップ。代表取締役社長の沢登哲也氏は、東京大学でロボット工学を学んだあと、京都大学大学院に進学。卒業後に飲食店を立ち上げ、飲食業界のさまざまな問題点に直面したことがきっかけで、コネクテッドロボティクスを設立したという異色の経歴の持ち主だ。

関連記事:器用にたこ焼きを返す調理ロボットを開発、コネクテッドロボティクスが6300万円調達

今回調達した資金により同社は、マーケティング強化による販路拡大と新ロボットおよび新ロボットサービスの開発を進める。具体的には、人材の採用と技術力の強化を計画しており、事業推進を大きく加速させさたいとしている。

同社のロボットといえば、テレビにもたびたび登場する長崎・ハウステンボス内にあるたこ焼きロボ「OctoChef」(オクトシェフ)とソフトクリームロボの「レイタ」があまりにも有名だ。

OctoChefは、ディープラーニングを活用して焼き具合を画像解析することで、適切な時間でたこ焼きをひっくり返すことができるアームロボ。生地の作成などの準備、タコや天かすなどの具材の生地への投入、ソースやマヨネーズなどをかけるといったトッピングには人の手が必要だが、鉄板への生地の流し込みから焼き上げ、焼き上がったたこ焼きの取り分けまでをOctoChefが担う。OctoChef1台で、1回あたりの生産量96個、約12人ぶんのたこ焼きを製造できる。

ソフトクリームロボのレイタは、注文から商品提供までに対応。タブレット端末などでメニューを選んだあと、ソフトクリームのコーンをロボットのアーム部分に差し込むと、あとは器用にアームを動かしてソフトクリームを作り上げていく。ソフトクリーム1個あたりの提供時間は30~40秒。

これらのロボットの特徴は、産業用のアームロボットを使っている点。同社がソフトウェアでチューニングを施すことで専用ロボ化しているのだ。特定用途向けに特注するロボットは導入コストが1000万円を超えるケースも多いが、大量生産される汎用ロボであれば導入コストを大幅に抑えられる。同社によると、これらのロボットシステムをサブスクリプション契約した場合の年間コストは、スタッフ1人の人件費よりも安価になるという。もちろん、休憩を取らせる必要もなく、8時間以上労働させてもまったく問題がないし、不平不満も言わない。ちなみに、OctoChefはユニバーサルロボット社のURS、レイタはDobot社のDobot Magicianがベースだ。

同社はこのほかにも、自動食洗機ロボットサービス「Dish Washing System」やコンビニ向け「Hot Snack Robot」、自動朝食調理ロボットサービス「Loraine」の開発も手がけている。今回の資金調達によりこれらの開発スピードがアップすることに期待したい。

  1. CR06

    自動食洗機ロボットサービス「Dish Washing System」
  2. CR04

    コンビニ向け「Hot Snack Robot」
  3. CR05

    自動朝食調理ロボットサービス「Loraine」

さらにコネクテッドロボティクスは本日、セブン&アイ・フードシステムズと提携し、関東近郊のイトーヨーカドー内に出店しているファストフード店「ポッポ」に、Octo Chefとレイタを展開することを発表した。

10月をメドに関東近郊の1店舗にまず導入し、その後他店舗に広げていく方針だ。具体的な店舗名にについては現時点では非公開となっている。

衛星による毎日全地球観測インフラの実現へ!東大宇宙系スタートアップが総額25.8億円調達

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する「協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合」は12月7日、東大関連の宇宙系スタートアップ3社に総額7億円を出資した。

小型光学衛星のコンステレーションによる全地球観測網の構築を目指すアクセルスペースに対して約3億円、小型衛星による宇宙デブリ回収を目指すAstroscale(アストロスケール)に約1.1億円(100万ドル)、「小型合成開口レーダ衛星」のコンステレーションによる地球観測を目指すSynspective(シンスペクティブ)に約3億円という内訳だ。

またアクセルスペースは、東大IPCからの約3億円を含め、シリーズB投資ラウンドとして総額25.8億円を資金調達している。引き受け先は以下のとおりで、31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースIがリードインベスターを務める。

左から、三井不動産ベンチャー共創事業部田中氏、同菅原部長、 アクセルスペース代表取締役中村氏、グローバル・ブレイン百合本社長、同社パートナー青木氏

・31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI(三井不動産/グローバル・ブレイン)
・INCJ
・協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(東京大学協創プラットフォーム開発)
・SBIベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合(SBIインベストメント)
・SBIベンチャー企業成長支援2号投資事業有限責任組合(同上)
・SBIベンチャー企業成長支援3号投資事業有限責任組合(同上)
・SBIベンチャー企業成長支援4号投資事業有限責任組合(同上)
・第一生命保険

アクセルスペースはこの資金調達によって、2020年に2機のGRUSの追加打ち上げを予定している。資金調達に併せて、2017年から延期されていたGRUS初号機の打ち上げと組織改編についても発表した。

GRUS初号機

GRUS初号機は、2018年12月27日にソユーズ(Soyuz-2)を使い、ロシア連邦ボストーチヌイ射場から打ち上げられることとなった。同社は、今後数十機のGRUS衛星を打ち上げ、2022年に毎日全地球観測インフラ「AxelGlobe」の構築を目指す。

組織改編については、中村友哉CEO、野尻悠太COOは留任となるが、新たに同社の共同設立者で取締役だった宮下直己氏がCTOに任命された。そのほか、CBDO(最高事業開発責任者)に山崎泰教氏、CFOに永山雅之氏が就く。なお、同社創業者の永島隆氏は取締役CTOを退任し、今後は上席研究員となる。