食料品を15分で届けるクイックコマース「Grovy」、東欧進出と持続可能性で差別化を図る

Grovyのファウンダーたち(画像クレジット:Grovy)

また1つ、食料品を15分配達の「クイックコマース」スタートアップがこの分野に参入し、山ほどの企業があふれるこの市場に加わろうとしている。しかし、Grovy(グロービー)は、混み合っているヨーロッパ西部を避け、東部で日常デリバリーのリーダーになることを目指している。

300万ユーロ(約3億8000万円)の調達ラウンドをLighthouse Ventersのリードで完了した同社は、フランクフルトとマインツでドイツ市場への参入を果たした後、すでにプラハ、ブカレストにオフィスを構え、中央および東ヨーロッパへの拡大を図っている。

多くの企業が、最大20%にのぼる高い手数料と低賃金のギグワーカーに依存しているのに対し、Grovyはフルタイム労働者のみを雇い、配送手数料を5%に固定し、40ユーロ(約5120円)以上の注文では無料だと同社は語る。

同社のもう1つの特徴は持続可能性で、配達には自転車とEV(電気自動車)のみを使用し「見た目の悪い」野菜や賞味期限の迫った生鮮食品を割引販売している(食品廃棄物の軽減に役立つ)他、食品廃棄物のスタートアップであるToo Good To Goらと提携し、カーボン・オフセット・プログラムも導入している。

Grovyの共同ファウンダーでCEOのJustin Adams(ジャスティン・アダムス)氏は「フランクフルトとマインツというクイックコマース需要の高い地域は実験に理想的でした。しかし、このモデルをドイツの他の都市へ展開するのではなく、未だに10分配達が目新しくスケーリングの可能性が膨大な中央・東ヨーロッパ地域の大都市へこのモデルを持ち込むことにしました」。

筆頭出資者であるLighthouse VenturesのマネージングディレクターMichal Zalesak(マイケル・ザレサク)氏は次のように語った。「Grovyは、通常の食料品チェーンなら1年かかることをわずか数週間で成し遂げました。膨大な競争圧力にもかかわらず、クイックコマースにおける同社独自のアプローチは、ドイツで驚くべき成功を収めました。私たちは彼らのヨーロッパ中東部への進出を支援します」。

Grovyには、ドイツのGorillas(ゴリラズ)とFlink(フリンク)、ワルシャワのLisek(リセック)などの直接的な競合がいるが、同社が運用しているヨーロッパの他の都市の大部分では、Bolt(ボルト)やDeliver Hero(デリバリー・ヒーロー)などの1時間配達のライバルしかいない。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Untitled Venturesが130億円を投じてロシア・東欧のスタートアップ獲得に乗り出す

プーチン氏には悪いが、ロシアと東欧の起業家間で競争が始まっている。そして今、西洋の腐敗した資本家たちが敵を打ち負かそうとしているのだ!冗談はさておき、先にロシア語圏の起業家を対象とした1億ドル(約110億円)規模のファンドが登場したばかりだが、以来、他にも続々とファンドが誕生している。

ロンドンを拠点とするUntitled Venturesがこの競争に加わり「東欧出身の創業者による野心的なディープテック・スタートアップ」への投資を目的とした2つ目のファンドに1億ユーロ(約130億円)を投じることとなった。

同社は西欧や米国に拠点を置く、あるいは移転を検討している起業家を対象にしているという。高い技術を持つことでよく知られているロシアや東欧の創業者の話に常に喜んで耳を傾けてくれる、既存の西欧のVCと協力してこれが実現されていくわけだ。

Untitled Venturesは、バルト諸国、CEE(中央および東ヨーロッパ)、CIS(独立国家共同体)から誕生した、あるいは西欧ですでに設立されている、牽引力のあるB2B、AI、アグリテック、メディカルテック、ロボティクス、データマネジメントなどのスタートアップを対象としていく予定である。

同ファンドのLPにはGlobal Network Managementの創業者であるVladimir Vedeneev(ウラジーミル・ヴェデニェフ)氏も。またUntitled Venturesは、Google、Telegram Messenger、Facebook、Twitch、DigitalOcean、IP-Only、CenturyLinks、Vodafone、TelecomItalyをパートナーとして迎えると伝えている。

Untitled VenturesのマネージングパートナーであるOskar Stachowiak(オスカル・スタコヴィアック)氏は次のように話している。「10社以上ユニコーン企業、2020年だけで10億ユーロのベンチャー資金が生み出され、Veeam、Semrush、Wrikeなどのサクセスストーリーが誕生しました。この急成長中地域から生まれたスタートアップこそ、我々が注力すべきアーリーステージの投資です。STEMに重点を置いた教育システムと約100万人のハイスキルな開発者のおかげで、我々はこの地域の新星を十二分に発掘してサポートすることができるのです」。

また、同社のマネージングパートナーであるKonstantin Siniushin(コンスタンチン・シニューシン)氏は次のように話している。「我々は経済効率を重要視していますが、それと同時に、科学的要素の大きい技術プロジェクトを、ベラルーシ、ロシア、ウクライナなどの経済的に不安定な旧ソ連の国々から持ってくるという社会的使命を果たしたいと考えています。しかし、世界市場での販売機会の創出や、次の投資を得るためのヨーロッパでの事業展開を支援するというだけではありません」。

「私たちには、1号ファンドの最初のポートフォリオで蓄積したすばらしい経験があります。ルクセンブルグ、ドイツ、英国、ポルトガル、キプロス、ラトビアなどの欧州諸国でビジネスを構築するだけでなく、スタートアップ企業を物理的に移転させ、欧州またはグローバルで活躍する企業として認識してもらえるように成長させていくのです」と同氏は話す。

誤解のないよう言っておくが、東欧から大規模なスタートアップを誕生させるという作業は、地元からの資本がほとんどないことが多いため、現在も必要以上に難しいことである。しかし最近ではVitosha Venture PartnersLaunchub VenturesなどのCEEファンドが設立されたり、ルーマニアで大ヒットしたUiPathがあったりと状況は変わりつつある。

Untitled Venturesチーム。

  • Konstantin Siniushin(コンスタンチン・シニューシン)- 技術系シリアルアントレプレナー
  • Oskar Stachowiak(オスカル・スタコヴィアック)– 経験豊富なファンドマネージャー
  • Mary Glazkova(メアリー・グラスコヴァ)– PR&コミュニケーションの専門家
  • Anton Antich(アントン・アンティク)– アーリーステージの投資家で、Insight Venture Partnersに
    50億ドル(約5511億円)で買収されたスイスのクラウドデータマネジメント企業、Veeamの元副社長
  • Yulia Druzhnikova(ユリア・ドルジニコワ)– ハイテク企業の国際化に経験豊富な人物
  • Mark Cowley(マーク・カウリー)– 20年以上にわたり、中東欧・ロシアの民間企業や上場企業への投資に携わってきた人物

Untitled Venturesのポートフォリオハイライト:Fund I

  • Sizolution:ドイツに拠点を置く、AIを活用したサイズ予測エンジン
  • Pure app:ポルトガルに拠点を置く、自発的で匿名性のデートアプリ
  • Fixar Global:ラトビアに拠点を置く、商業用途の効率的なドローン
  • E-contenta:ポーランド発
  • SuitApp:シンガポールに拠点を置く、AIを活用したファッション小売業向けのミックス&マッチ提案
  • tech:米国に拠点を置くAI認識技術
  • Hello, baby:米国に拠点を置く保護者用アシスタント
  • Voximplant:米国を拠点とする、音声、ビデオ、メッセージングのクラウド・コミュニケーション・プラットフォーム(イグジット済み)

画像クレジット:Untitled Ventures

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

【コラム】東欧のスタートアップは見過ごされ、過小評価されている?

ロシア語圏や東欧のテクノロジー系の起業家は、世界で最も技術力が高い人たちだと言われている。

例えば、Coursera(コルセラ)が発表した「2020 Global Skills Index(2020年グローバルスキル指標)」では、60カ国6500万人の学習者の中で、ロシアの学習者がテクノロジーとデータサイエンスの分野で最も高い能力を持っていることがわかった。また、起業家精神のレベルも高く、今なお成長を続けている。

彼らの技術的な能力や起業家としての才能に加えて、1つ疑問が残る。彼らは投資対象になりうるのか?

推定では、英国、欧州、米国などにおける主要な拠点で活動するロシア語圏および東欧の起業家は、すでに1万7000人ほどいると言われている。

多くの人が知らないだけで、成功した事例に、Telegram(テレグラム)、Revolut(レボリュート)、TradingView(トレーディングビュー)、PandaDoc(パンダドック)、Preply(プリプリ)などの有名企業がある。2019年だけでも、ロシア語圏の起業家が設立した企業は、合わせて125億ドル(約1兆3760億円)以上で米国の企業に売却された。最も主要な案件としては、Veeam(ヴィーム)のInsight Partners(インサイト・パートナーズ)への50億ドル(約5500億円)の売却、MagicLab(マジックラボ)の米投資運用会社Blackstone(ブラックストーン)への30億ドル(約3300億円)の売却、DXC Technology(DTXテクノロジー)のLuxoft(ルクソフト)の20億ドル(約2200億円)の買収などが挙げられる。

関連記事:スイスのデータ管理企業Veeamを投資会社のInsight Partnersが約5500億円で買収

Leta(レタ)の私たちのファンドは、2017年のBright Box HK(ブライト・ボックス HK)のZurich Insurance Group(チューリッヒ・インシュアランス・グループ)への売却や、WeWork(ウィーウォーク)によるセールス&マーケティングプラットフォームUnomy(ウノミー)の買収など、国際的な企業に買収されたスタートアップを支援してきた。

このような実績と成功にもかかわらず、東欧の起業家は、自国で活動していても、投資家に見落とされ、過小評価されていると思う。

ロシアの伝統というスティグマ

その理由は、文化的な違いの認識、理解、信頼、自信の欠如、そして悲しいことに、ロシアや東欧のネガティブなステレオタイプに煽られてのリスク回避など、数え切れないほど挙げられる。実際、多くの起業家は「西洋」の同業者と同じ土俵に立つために、自分の伝統や経歴をわざわざ控えめにしているほどだ。

最近、当社のアナリストが行った調査によると、ロシア語圏や東欧圏の起業家のかなりの割合が、投資家を惹きつけることができず、シード資金の調達に成功していないということがわかった。

また、シード資金、シリーズA、シリーズBの資金調達に成功した場合でも、米国の同業他社に比べて平均65%、英国やEUの起業家に比べて40%以上少ない資金調達額となっているという。従業員1人当たりの資金調達額は、米国と英国の平均よりも2倍近く少なく、買収案件の発生比率は、米国とEUの企業がそれぞれ17%と20%であるのに対し、これらの企業は約5%だ。

では、これらの企業は成功率が低い、あるいは成長特性が異なると考えてよいのだろうか?

いや、そのようなことはない。私たちの分析対象となった起業家や企業は、成長と投資家への利益還元という点で、十分な力を発揮している。同業他社と比較しても、特にシードやシリーズAの段階で力強い成長を遂げており、資金燃焼率も低く、投資をリターンにつなげる効率性も高い。

チャンスの宝庫

いくつかの成功事例があるにもかかわらず、東欧のスタートアップ企業の多くはまだ見過ごされ、過小評価されていると思う。投資家にとっては、これは未開拓の大きなチャンスだ。

私自身がIT起業家であり、幸運にも自分の財布からお金を出すことができる立場にあるので、自分が成功したように他の人が成功するのを手助けし、その過程で非常にエキサイティングな企業や型破りな技術を世に送り出すことが私の使命だと考えている。

私たちは、より多くの安心感と説得力を必要としている他の投資家と協力して、この重要でエキサイティングな未開拓分野の市場をよりよく理解し、導いていきたいと考えている。自分たちの分析と自分たちのファンドのパフォーマンスから、投資家に魅力的なリターンを提供できると確信している。

編集部注:本稿の執筆者Alexander Chachava(アレクサンダー・チャチャバ)は、シリアルアントレプレナー、投資家、テクノロジー関連の投資会社であるLETA Capitalのマネージングパートナー。

画像クレジット:Juanmonino / Getty Images

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(文:Alexander Chachava、翻訳:Akihito Mizukoshi)