核融合技術の開発企業General Fusionの支援にShopifyとAmazonの創設者が参加

本日(米国時間1月14日)、簡単な発表があり、カナダの核融合技術開発企業General Fusion(ジェネラル・フュージョン)は、Shopify(ショピファイ)の創設者Tobias Lütke(トバイアス・ルーク)氏が立ち上げた投資会社が、同社の資本政策表に加わったと伝えた。

ルーク氏のThistledown Capital(シスルダウン・キャピタル)からの投資額は公表されていないが、この追加資金によってGeneral Fusionは、その資本政策表に、西側世界のeコマース業界における2つの最大手企業の創設者2人の名前を載せることとなった。

Amazon(アマゾン)の創設者であり最高責任者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、10年近く前にGeneral Fusionに投資した最初の人物だ。それ以来、同社は安定して資金調達ができるようになった。2019年には、同社は1億ドル(約103億円)を獲得した。その資本コミットメントは、Crunchbaseによれば少なくとも総額1億9200万ドル(約20億円)という資金の一部となるが、実際にはもっと多いと思われる。

事実、General Fusionは、実証用の核融合炉建造に向けて、2020年は資金調達を続けていた(General Fusionリリース)。

General Fusionの方式は、1970年代に米国海軍研究試験所が提唱し開発された磁化標的核融合(MTF)という技術に基づいている。

同社の方式では、約100電子ボルト(可視光線の光子エネルギーのおよそ50倍)という適度な温度に温められたプラズマをフラックス・コンサーバー(磁場を閉じ込める容器)に磁気を使って封じ込める。そして、そのフラックス・コンサーバーとその中でプラズマを包んでいる磁場を高速で圧縮することで、プラズマは超高温になり、高速な核融合燃焼が始まり、核融合が引き起こされる。General Fusionの最高科学責任者で創設者のMichel Laberge(ミシェル・ラバージュ)氏は、2017年に同社の技術をそう解説していた。

同社が使用するのは、直径およそ3メートルの球体。そこに溶融鉛と液体リチウムを入射し、空洞を作る。この空洞に、磁気によって閉じ込められたプラズマ燃料を断続的に送り込む。すると、球体を取り巻くピストンが球体の中心に向けて圧力波を発生し、プラズマを圧縮して核融合の条件を整える。

核融合反応から逃げ出した中性子は液体金属に取り込まれ、それにより液体金属が発する熱で蒸気タービンを回して発電を行う。熱交換器と蒸気がタービンが動力を生み、蒸気はリサイクルされてピストンを動かす。

近年、General Fusionと北アメリカで最大のライバル企業Commonwealth Fusion Systems(コモンウェルス・フュージョン・システムズ)は、共に技術を大きく進展させ、小型核融合技術の商用化に近づいた。

過去においては、核融合技術は常にあと10年だというジョークが語られていたが、現在これらの企業は、大々的にとはいかないまでも、4年後には初の市場投入ができると見込んでいる。

それに向けてCommonwealth Fusion Systemsは、MRIマシン20台分の磁力を生み出す重さ10トンの磁石を製作している。「この磁石が稼働すれば、投入するよりも多くの電力を引き出せるようになります。核融合のキティーホークの瞬間を迎えるのです」とCommonwealthの最高責任者Bob Mumgaard(ボブ・マンガード)氏は昨年のインタビューで話していた。

その他にも、たとえば2025年を目標に定めるイギリスのTokamak Energy(トカマク・エナジー)など、この技術の商用化を目指すスタートアップ企業が競争を繰り広げている。

General Fusionと同じく、Commonwealthにも潤沢な資金を有する支援者がついている。Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が支える持続可能な技術に特化した投資会社Breakthrough Energy Ventures(ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ)もそのひとつだ。2018年に公式に設立されたこの企業は、Commonwealthに2億ドル(約20億7000万円)の投資を約束している。

これらの企業が核融合技術の市場投入を目指す間、政府もその商用化が円滑に進むよう下地の整備を行っている。

昨年末、トランプ政権は新型コロナ経済救済および包括的予算充当のための法案(米国議会資料)に署名したが、これにはアメリカでの核融合エネルギーの開発を支援するための修正案も含まれていた。

その新しい修正条項が米エネルギー省に実施を指示したのは、核融合エネルギーの科学研究と開発計画、慣性核融合エネルギーおよびその他の新方式を対象とした将来の新しい核融合発電方法を探るエネルギー省公認の計画、国の研究所と核融合技術開発企業による官民の協力体制を作るINFUSEプログラムの再認可、そして、企業の研究開発のみならず本格規模のシステム建造を支援する段階的開発計画の策定だ。

Fusion Industry Association(米核融合工業会)が12月に出した声明によれば、これは同団体がアメリカに求めていた政策活動の、ひとつの礎石となる重要な計画だ。

5年間で3億2500万ドル(約340億円)という予算の放出は、実際にアメリカ政府は核融合業界の貢献に見合うだけの研究に力を入れることの表れだ。そこで作られる実証施設は、核融合技術の導入促進に向けた長い道のりを支えることになる。

2019年創設のThistledown Capitalは、産業界の脱炭素化を実現する技術への投資を目的として結成された。オタワに拠点を置く同社は、すでに大気中の二酸化炭素を回収する技術CarbonCure(カーボン・キュアー)を支援している。

「General Fusionには、世界でもっとも影響力のあるテクノロジー界のリーダーたちから資金協力を引き出してきた頼もしい経歴があります」とGeneral Fusionの最高財務責任者Greg Twinney(グレッグ・トゥイニー)氏は言う。「核融合は地球を救うテクノロジーです。私たちは、よりグリーンな未来を追究するThistledown Capitalのミッションに協力できて、大変に誇りに思います」

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画像クレジット:Oleg Kuzmin/TASS / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

小型商用核融合炉を開発するボストンのスタートアップが約54億円を調達

25年間におよぶ研究の末、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちは、核融合商用化への扉の鍵を手に入れたようだ。

Commonwealth Fusion Systemsは、その研究の成果だ。消費者にクリーンで安定した電力を届けるために太陽のパワーを制御するという、数十年間にわたる研究開発の上にこのスタートアップは成り立っている。彼らはこのほど、米国で最も資金力のある民間投資家たちから、商用化を推し進めるための5000万ドル(約54億円)の追加投資を受けた。

同社はその技術を発表し、イタリアのエネルギー企業Eni、世界でもっとも裕福な男女によって設立された投資コンソーシアムであるBreakthrough Energy Ventures、そしてMIT自身の未開拓分野の技術を対象とした投資手段The Engineから、最初に6400万ドルの資金を集めている。

今回は、Steve Jurvetsonが創設した投資企業Future Ventures、Khosla Ventures、Chris SaccaのLowercase Capital、Moore Strategic Ventures、Safar Partners、Schooner Capital、 Starlight Venturesが参加している。

Commonwealth Fusion Systemsは2014年、核融合の経費削減を目指す学生の課題として始まった。このクラスは、当時MITのPlasma Science and Fusion Center(プラズマ科学および融合センター)主任だったDennis Whyteが教鞭を執っていたのだが、そこでARC(Affordable、Robust、Compact:手頃な価格で頑丈でコンパクトの略)と彼らが呼ぶ新しい融合炉技術が考案された。それでも数十億ドルという値札が付く、投資家も尻込みしたくなる規模の技術だった。

そこで彼らは製図台に戻り、エネルギー利得を生む(投入したエネルギーより出力されるエネルギーが上回る)必要最低限の核融合炉の検討を始めた。

エネルギー利得は、ほとんどの核融合炉技術において、もっとも難しい課題となっている。核融合を成功させた研究所やプロジェクトはいくつかあるが、それを維持しつつ、投入エネルギーよりも多くのエネルギーを引き出すことは、難題のまま残されている。

欧州のITER核融合炉は、200億ドル(約2兆1500億円)をかけた多国籍プロジェクトだが、2045年に達成予定の発電量の、いまだ60パーセントのあたりに留まっている。北米に目を戻すと、TAE TechnologiesとGeneral Fusionの2社が核融合パワーを安価に生み出す研究を行っている。イギリスでは、First Light FusionとTokamak Energyがそれぞれ独自の方法で核融合発電に取り組んでいる。

Commonwealth Fusion Systems(CFS)の最高責任者であるBob Mumgaard(ボブ・マムガード)氏の目からはかは、すべてが計画通りに進んでいるように見えている。順調だ。「CFSは民間核融合を実現させ、本質的に安全で、世界的にスケーラブルで、カーボンフリーで、無限のエネルギー源を供給するための軌道に乗っています」と彼は声明の中で述べている。

CFSの専門家たちは、可能なかぎり小型の核融合炉を2025年までに完成させることにしてるが、それは核融合反応を閉じ込めておくためのMITが独自に行ってきた磁石技術の研究によるところが大きい。実際、資金の大半は、CFSが核融合反応を閉じ込める完全な磁石技術の構築に向けられている。最終目標は、熱として、または蒸気でタービンを回して発電して、50メガワットを生み出させることだ。

環境に多大なリスクのある原子炉と違い、核融合発電所は、通常の工業施設とほぼ同じ区分になるだろうとMumgaardは言う。「核融合度のハザードプロファイルは、これからも工業施設(のカテゴリー)に留まります。法律はありますが、核融合炉を実際に作った人がまだいないので、前例がないのです」

マムガード氏は、200メガワット級の融合炉も思い描いている。それなら、風力発電ファームや太陽光発電所に置き換えることができる。

「前進と、何を目指すのかの両方を対比させて、常に監視しておく必要があります」と彼はいう。「電力網において二酸化炭素排出量を劇的に減らせる手段をまだ手にしていないというのが、一般の人々のほぼ一致した意見です。再生可能エネルギーも含め、最大の利得を生むものとは、実用規模で最も利得の高いものとは、1カ所につき数百メガワットの電力を生み出せる方式を意味します」。

マムガード氏によれば、再生可能エネルギーだけでは現代の大都市圏の需要を満たすことはできないという。「現代のライフスタイルを支えるための電力として、凝縮されたエネルギー源を求める声が強いのです」。

この問題に対する人々の意見は、次第に分かれつつある。とりわけ、エネルギー政策を考える団体の中で噂されていたグリーン・ニューディール政策を支持するサンライズ・ムーブメントの賛同者で、核エネルギーに反対する人たちの間にも分裂が起きている。しかし、エネルギーの専門家の大半は、混合型のアプローチを提唱し、ゼロエミッションを実現するためには(それが科学コミュニティの最終ゴールでもあるが)、核エネルギーをそこに加える必要があると指摘している。

「私たちは、この20年間、核融合に適切なクリーンエネルギーへの投資機会を探ってきました」と、Future Venturesの最高責任者であるSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベンソン)氏は声明の中で述べている。「核融合をビジネスに転換できる企業を求めいましたが、ついにCommonwealth Fusion Systemsと出会いました。彼らのアプローチを支えるハードサイエンスは、彼ら自身と加えてこの分野の世界中のリーダーたちによって実証されています。高度なエンジニアリングによって、CFSは太陽周期のパワーを制御する力を得ようとしています。それは世界を変え、あらゆる問題が改善されるクリーンなベースロード電力の時代を招くものです」

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(翻訳:金井哲夫)