100万時間の滞空を達成したインターネット接続気球、1カ所に留まれる巧妙な仕組み

Googleの親会社であるAlphabet傘下のLoonは、全世界の空から高速インターネット接続を提供することを目指しており、数週間前にケニヤで商用トライアルをスタートさせることが発表されている。このLoonのインターネット気球が総計で滞空100万時間の大台に乗ったという。

気球の高度は成層圏の最上部で、1万5000mから2万mあたりをジェット気流に乗って飛ぶ。Loonのエンジニアは地域ごとの上層気流に関する詳細なデータを収集し、人工知能によって気球の高度を調節することによって同一地域の上空に留まれる航法システムを開発した。

Loonの気球群はこれまでに延べ4000万kmを飛行した。これは月まで50回往復できる距離だ。この間気球を操縦したソフトウェアは狙いどおりの位置をキープするためにユニークな方法を用いている。

気球は上から見てジグザグのコースを飛ぶ。これはヨットがタッキングしてセールの開きを変えながら進むのに似ている。ただし、そのナビゲーションは直観に反しており、いかに熟練したヨットマンでも思いつかないようなものだ。気球は成層圏の気流に沿って吹き送られていくが、それでも目指す場所に行く方法を編み出せるのだ。

figure8 Loon

気球が長時間同一区域に留まるためには上下に高度を変えて8の字型の飛行が必要な場合がある。逆方向に吹く気流が高度によって何層にもなっている場合があるからだ。8の字パターンによる飛行は単純な円運動の飛行に比べて、安定した長時間のLTE接続を実現するうえで有効であることが確認された。

こうした複雑な運動パターンは人間が操縦するのであれば普通選択されない。ナビゲーションを自動操縦システムにまかせて、気球が置かれた状況下で最適なパラメータをシステム自身に発見させる方法の有効性がここでも証明された。

LoonのCTO(最高技術責任者)であるSalvatore Candido(サルバトーレ・キャンディド)氏はブログ記事で「この自動操縦システムがAIと呼べるかどうかはよく分からない」と説明している。最近、テクノロジー企業はAIの定義を思い切り拡張し、多少でも複雑な動作をするソフトウェアはすべてAIだと主張する傾向があるだけに、Cキャンディド氏の慎重さは称賛すべき公正な態度といっていいだろう。しかし呼び名はどうであれ、このソフトウェアが気球を一箇所に滞留させ、安定したインターネット接続を提供するという目的を果たしたことはすばらしい。

Loonはすでに台風に襲われたプエルトリコ、地震が起きたペルーで壊滅した通信網を代替するために役立っている。これまで地上に中継設備を建設することが主として経済的な理由によって阻まれてきた遠隔地に、手頃な価格のインターネットをもたらすためにLoonが果たす役割は今後大きくなっていくだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

World Viewの新型気球、成層圏で27時間滞空に成功――地表観測、有人飛行などに活用へ

World Viewは成層圏を飛行するStratollite気球を開発しているスタートアップだ。同社は先週末の実験で成層圏上層に気球を27時間滞空させるという新記録を樹立した。成層圏で1昼夜以上にわたって気球を制御下においての飛行に成功したのはこれが最初だ。

これはWorld Viewにとって大きな一歩だ。同社はStratollites気球を一週間以上、最終的には数ヶ月にわたって成層圏に滞空させたい考えだ(TechCrunchでは今年2月、アリゾナのWorld View本社を取材した)。同社は気球に高精細度のカメラなどのセンサーを搭載し、地表の状況を詳細にモニターするなどのミッションを考えている。成層圏気球は特定の軌道に制約されず、また衛星打ち上げにはともなう莫大な費用負担がない。

ただしStratollitesと呼ばれる成層圏気球が機能するためには大きな環境変化に耐える必要がある。特に成層圏上層では昼夜の温度差などの変化はきわめて厳しいものがある。先週の実験の成功でWorld Viewの気球は成層圏の環境変化に耐える可能性があることを示すことができた。また成層圏気球として始めて高度制御にも成功した。

World Viewのビジネスモデルにとって今回の成功は大きな意義がある。同社では最終的に気球による成層圏の有人飛行を計画している。これは気球に吊り下げられたVoyagerカプセルにより宇宙との縁となる大気圏最上層を飛行するというものだ。下のビデオでWorld View取材時のもようをご覧いただきたい。

〔日本版〕World Viewでは高度をコントロールすることで互いに異なる方向に吹くジェット気流を利用して一定の場所の上空に留まるテクノロジーを開発している。また成層圏有人飛行が実現した場合、1人7万5000ドルで観光飛行も計画しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+