くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」。販売期間は2022年3月11日~3月15日(なくなり次第終了)

ウミトロンは3月4日、AI・IoT技術を活用したスマート給餌機「UMITRON CELL」(ウミトロンセル)で育成した真鯛が、回転寿司チェーンの「くら寿司」において販売されることを発表した。「【愛媛県産】AI 桜鯛(一貫)」として、3月11日から3月15日まで数量限定で全国で取り扱う(なくなり次第終了)。価格は110円。同養殖技術で育てた魚を大手外食チェーンで商品化するのは初めての試み。

ウミトロンは、水産養殖にAIやIoT、衛星リモートセンシングなどの技術を活用することで、持続可能な水産養殖の実現に取り組むスタートアップ企業。同社のUMITRON CELLは、スマートフォンなどから生け簀の魚をリアルタイム動画で確認したり、遠隔操作での餌やり操作を行えたりできる水産養殖者向けスマート給餌機。くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化くら寿司、「AI桜鯛」を3月11日から数量限定で全国販売―ウミトロン開発のAI搭載スマート給餌機で生育した真鯛を商品化

また、AIが魚の食欲を判定して餌量やスピードを最適化・制御できるため、水産養殖者の労働負荷削減、魚のサイズや品質を保つための給餌をはじめ、海への餌の流出を防ぐなど環境面での配慮にも貢献。現在、近畿・四国・九州地域を中心に、主に真鯛、シマアジ、サーモントラウトなどの魚種に導入されている。

くら寿司は、2010年より「漁業創生」をテーマに様々な活動を行なっており、2021年11月には業界初の水産専門会社である子会社「KURA おさかなファーム」を設立。漁業における人手不足と労働環境の改善を目指し、UMITRON CELLを導入した「スマート養殖」の実証実験として、2021年春から愛媛県内で真鯛の委託養殖を開始した。今回販売するAI桜鯛は、このスマート養殖で育てた真鯛で、大手外食チェーンでの商品化は初の試みとなる。

ウミトロンは、UMITRON CELLを活用した真鯛の委託養殖事業を、KURAおさかなファームとの協業で2021年6月頃から本格始動する予定。養殖用の稚魚や餌を委託養殖事業者に提供し、スマート養殖で寿司ネタにできる大きさまで生育してもらい、養殖した魚の全量をKURAおさかなファームが買い取る計画となっている。今後もくら寿司およびKURAおさかなファームとの協働により、クオリティの高い商品の安定供給と、養殖生産者の経営リスクや労働負荷の軽減・収入の安定化に貢献したいという。

近畿大学、大豆イソフラボンを与えチョウザメをすべてメスにすることに成功―キャビア生産の安全な効率化に期待

近畿大学、大豆イソフラボンを与えチョウザメをすべてメスにすることに成功―キャビア生産の安全な効率化に期待

近畿大学水産研究所新宮実験場(和歌山県新宮市)で飼育研究しているコチョウザメ

近畿大学は3月4日、大豆イソフラボンを含んだ飼料を与えることで、コチョウザメをすべてメスにすることに成功したと発表した。これにより、キャビアの生産の効率化と、オスの活用という問題が大きく改善される。

コチョウザメは、東ヨーロッパからロシアにかけて分布するチョウザメの一種で、チョウザメ科の中ではもっとも成長が早く、3年ほどでメスの体重は1kgに達し卵を持つようになる。コチョウザメのキャビアは「スターレット」と呼ばれ、小粒ながら稀少な品種として珍重されている。

しかしチョウザメは、オスとメスが1対1の割合で生まれるため、キャビアの生産効率が低い。そこで、近畿大学水産研究所新宮実験場の稻野俊直准教授を中心とする研究ブループは、 2021年5月から、大豆イソフラボンを用いたコチョウザメのメス化の研究を行ってきた。研究グループは、ふ化後2カ月のコチョウザメを25匹ずつ5つのグループに分け、その3つに大豆イソフラボンの一種であるゲニステインを含んだ飼料を、ゲニステインの配合量を変えて180日間与え、その後70日間にはゲニステインを含まない一般的な飼料を与えた。1つのグループには180日間女性ホルモンを含む飼料を与え、残る1つのグループには一般的な飼料を与えた。

その結果、ゲニステインを少量含む飼料のグループではメス化は見られなかったが、もっとも多く(1gあたり1000μg・マイクログラム)を含む飼料を与えたグループの中から8匹を抽出して調査した結果、コチョウザメのすべてがメス化していた。また、遺伝的にはオスでありながら卵巣を持った個体数の割合も100%だった。

研究グループは、この研究に先立ち、大豆イソフラボンを溶かした水につけナマズをメス化する実験にも成功しているが、大豆イソフラボンの経口投与でコチョウザメをメス化させたのは日本で初めてとなる。今後は、大豆由来の飼料原料によるチョウザメのメス化の研究に取り組むということだ。

カキの養殖・技術DXなどを手がけるリブルが総額1億円調達、養殖技術の強化拡大を目指す

牡蠣(カキ)の人工種苗生産・販売から養殖・販売・スマート漁業化まで牡蠣関連事業に取り組むリブルは2月1日、第三者割当増資により総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は食の未来1号投資事業有限責任組合、SBプレイヤーズ、地域とトモニ1号投資事業有限責任組合、Less is design、瀬戸内Startups 1号投資事業有限責任組合、オプティマ・ベンチャーズ。

調達した資金は、水産業界においてニーズが高まっているという三倍体種苗の生産・供給能力の拡大と、養殖技術の見える化や生産作業の省力化・効率化(水産DX、スマート漁業、スマート養殖)、他地域漁場への技術展開にあてる。三倍体種苗とは、生き物が通常2組持つ染色体を3組持つ「産卵しない」牡蠣という。卵を作らないため身痩せすることがなく、通年で出荷することが可能。種なしブドウや種なしスイカが代表例とされる。

2019年よりリブルは、自社漁場においてシングルシード生産方式の実装可能性を模索し、新たな養殖技術の見える化に取り組んできた。シングルシード方式とは、ホタテの貝殻に密集した状態で付着した牡蠣を筏から吊り下げる従来型の養殖手法ではなく、牡蠣をかごに入れて1粒1粒バラバラの状態で養殖をする手法という。付着物が付きにくく、殻が綺麗に形成される。

従来の牡蠣養殖の手法では、天然採苗と養殖育成の過程で資材として使われるプラスチック部材の大量消費・流出が課題となっており、同社では、シングルシード生産方式への切り替えを通じて、経済性向上に加え、環境負荷を軽減した手法を全国に広める取り組みを展開している。これにより、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて、「海の豊かさを守る」取り組みを続けていくとしている。

また、牡蠣養殖の要となる「種苗」において、天然種苗からのマーケットシフトに備え、研究開発を繰り返し、国内トップ水準を自負できる人工種苗の技術力を築いてきたという。今後、シングルシード生産方式におけるスマート養殖技術の他地域展開、高品質な三倍体種苗の供給の強化・拡大を展開していくため、資金調達を実施した。

2018年5月設立のリブルは、牡蠣養殖から日本の水産業の改革に取り組む水産領域スタートアップ。自社漁場を所有し養殖に取り組み養殖事業者目線でのニーズを熟知しているほか、種苗生産から成品生産販売・スマート漁業化まで一気通貫で取り組んでいる。日本の水産業に今一度誇りを取り戻すとともに、「世界一おもしろい水産業へ」をコンセプトにチャレンジを続けている。

エビの養殖を市街地のビル内に設置した「アクアタワー」で行うVertical Oceans

John Diener(ジョン・ディーナー)氏は、水産養殖による栄養学・遺伝子学会社CEOの仕事の一環として、何百というエビ養殖場を訪れてきた。しかし彼は、多くの施設で環境的に持続可能でない手法が使われていることにいら立ちを感じてきた。ある晩、妻が夕食の材料に冷凍エビを買ってきたとき、彼は自分が関わっている産業が自分たち家族の健康に悪影響を及ぼしていることに気がついた。なぜか?そのエビが養殖場で抗生物質を使っていることで知られている国から来たものだったからだ。ディーナー氏は我慢の限界に達し、海産物のための新しいモデルの構築に着手した。

その結果がVertical Oceans(バーティカル・オーシャンズ)だ。このスタートアップが持続可能なエビを養殖する巨大な「aqua towers」(アクアタワー)は、市街地のビルなどの施設の中にも設置することができる。タワーの中では化学物質や抗生物質を使うことなく季節に関わらずエビを養殖できる。ここで思い出して欲しい、エビは全世界で年間500億ドル(約5兆7000億円)の市場であることを。

バイオテック専門のアクセラレーターであるIndieBio(インディーバイオ)出身のVertical Oceansは、最近350万ドル(約4億円)のシードラウンドをKhosla Venturesのリードで完了した。これは(私の知る限り)、シリコンバレーのファンドが水産養殖のスタートアップに投資した初めての事例だろう。Khoslaは300万ドル(約3億4000万円)を出資、SOSVが残りの50万ドル(約6000万円)をプロラタ方式で引き受けた。

これまでに同社は、核となる生化学的コンセプトが有効で優れた商品を生み出すことを見せるために、シンガポールの小さな概念実証用施設で、最近6カ月に10回の収穫を行った。

競合面では、シンガポールにはバーティカル(垂直型)水産養殖システムを使用しているUniiversal AquacultureとApollo Aquacultureの2社がある。米国にはTru Shrimpという屋内システムがあり、垂直型養殖に限らず、スケーラブルな屋内養殖技術を開発している。

Vertical Oceansの水槽(画像クレジット:Vertical Oceans)

ディーナー氏はこう話している。「私たちの製品は海でとれた新鮮なエビのような味で、これを再循環型水産養殖システムで継続的に実現することは非常に困難です。当社の製品は非常に品質がよく新鮮なので、養殖冷凍エビではなく、天然エビと対等に販売できます。価格の高さは、市街地で垂直型システムを使って養殖するコストを補って余りあります」。

システムは「場所無依存」な都市型垂直養殖に特化して作られており、シカゴなどの厳冬都市でも使用できる。現在同社はシンガポール中心部に隣接した新しい施設を建設中で、そこでは同社のテクノロジーをフルスケールで開発する予定だ。

ディーナー氏と共同ファウンダーのEnzo Acerbi(エンゾー・エイサービ)氏は、以前昆虫タンパクの会社で一緒に働いたことがあり、その会社のテクノロジー開発とスケールアップを手がけていたので、農業テックのスケーリングの経験をもっている。

画像クレジット:Vertical Oceans

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日・海の日から実証販売

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日の「海の日」から実証販売

AI、IoT、衛星リモートセンシングなどのテクノロジーを水産養殖に活かすことで食料問題と環境問題の解決に取り組む「ウミトロン」は7月21日、イオンリテールと共同で、おいしさ・安心・サステナブルの3点にこだわった養殖魚「うみとさち」を、7月22日の「海の日」から実証販売すると発表した。

この実証実験は、売り場にPOPやリーフレットを置き、商品にはQRコードを添付して、「生産者による品質や安心へのこだわり、海の持続可能性に配慮した取り組み」などを消費者に伝えるというもの。また、海の未来を考える料理人集団Chefs for the Blueに所属するミシュランシェフたちが考案した和洋中など6ジャンルの簡単レシピ、生産者や養殖魚に関する情報なども提供される。

実証販売は、東北、関東を除く本州と四国の「イオン」「イオンスタイル」で、7月22日から25日、さらに7月30日と31日に行われる。販売されるのは、「地域の生物多様性や水質保全など海洋環境に配慮し、国際基準に則った飼料・投薬使用を行なっている」真鯛商品。

ウミトロンのテクノロジーのひとつに、スマート給餌機「UMITRON CELL」がある。AIで魚の食欲に合わせた餌やりが可能で、複数真鯛事業者との大規模実証実験の結果、従来給餌量の2割削減を達成できた。魚の食欲をスマートフォンで確かめ、遠隔で餌やりを行うことで、これまでより少ない餌でも、出荷時のサイズや質が保ちつつ育成期間を1年から10カ月に短縮できたという。餌の海洋流出も抑えられる。

このようにウミトロンは生産現場の課題解決に取り組む中、消費者側の海の持続可能性に対する認識を高め、購買チャンネルを増やすことも重要だと感じていた。そこで「うみとさち」ブランドを立ち上げた。今回の実証販売の目的はそこにある。ウミトロンと同じく、持続可能な生態系づくりを支援しているイオンリテールの理念と合致したことから、この実証販売が実現した。

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日の「海の日」から実証販売

真鯛商品イメージ(切り身)

持続可能な水産養殖を支援するウミトロンとイオンがこだわりの養殖魚「うみとさち」を7月22日の「海の日」から実証販売

真鯛商品イメージ(刺身)

今後は、「うみとさち」の取り扱い魚種と商品形態を増やし、「サステナブルシーフードを(消費者の)日常生活の購買における身近な選択肢のひとつ」となるよう展開してゆくとのことだ。

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カテゴリー:フードテック
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