アリババの「独身の日」売上は過去最高の4兆1000億円

数週間にわたる積極的な広告やプロモーション、そして熱狂的な24時間の売買が終わり、Alibaba Group(アリババグループ)は米国時間11月11日、世界最大の買い物デーである「独身の日」の売上が過去最高となったことを明らかにした。

中国のeコマース大手アリババは、売上が2680億元(約4兆1000億円、384億ドル)だったと話した。これは昨年の307億ドル(約3兆3000億円)を大幅に上回る。今年11回目となった年一度のイベントだが「今年は電化製品とファッションアイテムがよく売れた」と同社の幹部がインタビューで語った。

多くの国から5億人超が参加したこのイベントは、米国のブラックフライデーとサイバーマンデーに相当するものだ。ただし、独身の日はより規模が大きい。5日間にわたる昨年のブラックフライデーの売上は250億ドル(約2兆7000億円)に届かなかった。サイバーマンデーは80億ドル(約8700億円)以下だった。アリババグループは売上高を発表する前に、開始からわずか68秒で売上が10億ドル(約1090億円)を超え、30分で100億ドル(約1兆900億円)を超えたと明らかにしていた。

中国、そして世界各地に住んでいる人が利用できるよう、アリババは多くの専用ウェブサイトを展開している。AliExpressでは中国の小売が中国外に住む人に物品を販売する。Tmallではグローバルのブランドが中国に向けて販売し、Taobaoでは中国ブランドが国内向けに販売する。アリババグループの子会社であるLazadaは東南アジアマーケットに特化していて、今年は顧客・出店者ともに倍増した。「顧客、出店者とも今年は倍以上に増え、数々の記録を打ち立てた。今後さらにいいニュースを伝えることを楽しみにしている」とLazadaの共同社長であるYin Jing(イン・ジン)氏は話した。

アリババはまた、Apple(アップル)やL’Oreal(ロレアル)、Dyson(ダイソン)など数十のブランドが1億元(約15億円)のプレオーダーを受けたことも明らかにした。

このショッピングイベントを盛り上げるためにTaylor Swift(テイラー・スイフト)やアジアのポップアイコンであるGEMを含む、数多くのセレブが登場した。アリババはまた、中国でかなり人気を集めている同社のプラットフォームのphenomenon(フィノメノン)を通じたライブストリーミングにも注力した。

ライブストリーミングビデオでは、Kim Kardashian(キム・カーダシアン)が先週、彼女の香水ブランドKKWが独身の日にTmallで販売されることを発表していた

今回のイベントで姿が見られなかったのが、アリババグループの創業者で今年9月に引退したJack Ma(ジャック・マー)氏だ。それまで、マー氏は毎年このイベントで力強いスピーチをするだけでなく、従業員や顧客に働き掛けてきた。

1時間前の記者会見で、アリババのテクノロジー責任者であるJeff Zhang(ジェフ・チャン)氏は11.11イベントを「ターボスピードで飛ぶ飛行機」と表現し、この飛行機をより効率的に飛ばすことが最大の課題だったと述べた。

改善が最も見られたものの一つが物流ネットワークだ。それでもこれはまだアリババにとって十分なものではない。先週アリババグループは、同社が6年前に他の企業と共同で設立した物流部門のCainiaoに追加で33億ドル(約3600億円)出資すると発表した。

アリババにとって最大の脅威は依然としてJD.comとPinduoduoの拡大だ。2つとも地方都市では大きなシェアを握り、より整備された物流ネットワークを有している。3社は激しい競争を展開していて、それぞれに顧客を引きつけてつなぎとめるために毎年数十億ドル規模の割引を行なっている。

JD.comとPinduoduoもまたアリババのように毎年似たようなキャンペーンを展開している。11月1日に始まったJD.comのセールは今日現在で売上が236億ドル(約2兆6000億円)を超えた。このモデルは Amazonや、Walmartがインドに持つFlipkart、シンガポールのQoo10、韓国の11th Streetも真似ている。

アリババの今回の記録的な売上は、今月中に香港での上場で150億ドル(約1兆6000億円)の調達を目指す同社が株主の注意を引くのに役立つものとなりそうだ。独身の日イベントは毎年11月11日に開催されていて、「ダブル11」としても知られている。このイベントは、結婚していない人向けのものだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

アリババの「独身の日」売上、過去最高の310億ドルー成長率は鈍化

11月11日、今年10回目を迎えたアリババの「独身の日」ショッピングフェスティバルでは、世界中の顧客が実在店舗ならびにオンラインで買い物をし、アリババはまたもや記録を塗り替えた。今年の取引額は驚異的な308億ドルを記録した。しかし前年比での成長率としてはこれまでで最も低かった。

この取引額は、2017年のサイバーマンデーブラックフライデーを足したものの倍以上となる。

今回の数字はこれまでの独身の日で最も大きなものだ。セールが始まって15時間49分で取引額は2017年の250億ドルを超えた、とアリババはツイッターで発表した。

このセールがいつ頭打ちになるかと世界が懸念しているように、売上はすでに陰りを見せている。2018年の取引額は前年比27%増だった。独身の日セールの歴史の中で最も低い伸びで、2017年の36%よりも低下しているーそれでも規模の大きさは目を見張るものだ。

成長の鈍化は、7四半期前以来のアリババの最も低い成長率と業績予想の下方修正に続くものだーしかし、直近の四半期では前年比の売上成長率は健全な54%となっている。

新たな成長の起爆剤

中国の景気停滞で、消費者は財布の紐を締めるだろうとみられている。しかしeコマース大企業は、長期的には中級階級が増加するとみて動じていない。

買い物客は、“ライフスタイルをアップグレードし、生活をより良いものにする新たな方法を模索している”と、アリババの経営執行役会長Joe Tsaiは日曜日のメディアイベントでこう語った。「これは短期周期効果の多くを相殺するだろう」。

国家統計局によると、中国の総人口14億人のうちの3億人以上が中所得者入りしている。これは、そうした人々が自由に物を買うことで中国の小売巨人の成長を促していることを意味するーそしていま、高級のものを求める傾向が進行中だ。今年の独身の日では、健康サプリメント、小型家電、スキンケア商品が取引の中で最も人気のカテゴリーだった。

アリババはまた、実在店舗も利用した。オンライン小売は“全ての消費者小売マーケットをデジタル化した”と、現会長Jack Maの来年引退時にその後を継ぐことになっているCEOのDaniel Zhangは日曜日、メディアに対し語った。過去2年間、アリババはまだ中国の消費者にアクセスしている実在店舗の小売との戦略的提携をおさえることで、ライバルであるJD.comを押しのけてきた。

しかしながら、それは収入には大きく反映せず、取引額では微妙な差がある。多くの要因が数字押し上げに貢献している。一つには、11月11日の販売に限っては払い戻し不可ということが挙げられる。多くのベンダーが、まず商品購入のためにデポジットを受け付け、残りの支払いを独身の日に実行するというプレセールを実施する。

アリババはまたセールの宣伝のために11月10日に賑やかな催しを放映する。2億4000万人超ーおおよそ中国にいる人の5人に1人ーがこの催しと独身の日コマーシャルを、中国の主要放送局とアリババ自前のビデオストリーミングサイトYoukuを通じて視聴したとされている。

次の10年

アリババは創業19年目に入り、新たな販売チャネルに目を向け始めている。「音声というのが重要なエントリーポイントとなる」と Zhangは語っている。モバイル第一の買い物体験をAIによるものへと変化させようというアリババの取り組みは、音声アシスタントスタートアップRokidとのタイアップにも表れている。

アリババはまた、中国外の消費者にも視野に入れている。今年、アリババの東南アジア拠点Lazadaプラットフォームを含む、200カ国超からの小売店が独身の日セールに参加した。Zhangは「当初から我々の夢はグローバルの買い物デーをつくることだった」と語っている。

アリババは今年、別のマイルストーンを達成した:この独身の日に10億個ものパッケージが発送された。しかしアリババはまた、パッケージの浪費という問題を指摘するプレッシャーにも直面している。

「我々はパッケージングを再定義しなければならない」とZhangは語る。これは、リサイクル材を使用するという以上のことを意味する。より重要なのは、CEOが最短距離で商品を配達したいと考えていることで、これは在庫管理を最適化するアルゴリズムによって可能となる。アリババはまた、梱包をあまり必要としない、あるいは全く必要としない商品を近所へ配達するのに、今年買収した食品デリバリーのEle.meを頼ることもできるだろう。

独身の日11月11日というのは、1の数字が並んで4人の独身者を意味し、アンチバレンタインの手段として初めて人気になったものだ。Zhangがこの日をアリババのオンラインセールスプラットフォームTmallの販促に初めて活用してから10年がたち、1日イベントとしては世界最大のオンライン買い物フェスティバルに成長した。

「我々はこのセールをさみしい人のためにつくった。今日においては、人々がどのように買い物するかという点で完全にこの日を再定義した」とZhangは結んだ。

Image Credits: Twitter: @AlibabaGroup(Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)

【解説】250億ドル規模の中国の「独身の日」とは

11月11日は、中国のテックコミュニティにとってはめでたい日だ。というのも、世界最大のオンライン買い物デー「独身の日」だからだ。この日はダブルイレブンとして知られ、中国のeコマース大企業アリババが創設してから10周年となる今年は特に力が入っている。

独身の日は今ではかなりのビジネスとなっている。11.11は中国外のアジアやその他のエリアにも及び、昨年アリババは250億ドル超を売り上げた。アリババはこれまで前年比で順調に売り上げを拡大していて、中国経済や現在進行形の米国との貿易戦争に関する懸念があるものの、今回350億ドルを超えてもなんらおかしくない。

独身の日現象を分析したので、今年どんなことになるのか、予想の参考にしてほしい。

そもそも、独身の日って何?

このイベントは、米国におけるブラックフライデーやサイバーマンデーと似たようなものだ。しかしその2つを足したものより2.5倍大きい。アリババはTaobaoマーケットプレイス、Tmall、国際サービスAliExpressなどオンライン販売プラットフォーム上のあらゆるプロダクトを割引して販売する。最近ではグローバルビジネスになっていて、東南アジアにおけるLazada、アリババとAntファイナンシャルが出資するインドのPaytmも含まれる。

このセールは、スマホ、テレビ、その他高価なコンシューマーアイテムはもちろん、ファッション、衣服、家具、健康プロダクトなどもカバーする。さほど売れないだろうと思われるものとしては、掃除プロダクト、トイレットペーパー、腐りやすいものがある。大きな需要があるものとしては車があげられる。

昨年は世界で計14億8000件もの販売があり、ピーク時は1秒あたり32万5000件の注文があった。アリババのAlipay支払いサービス利用は15億件を記録し、注文総数は8億1200万件だった。実にセールスの90%はモバイル端末経由だったーこの点は米国より進んでいて、ブラックフライデーでのモバイル経由買い物は37%サイバーマンデーでは33%だ。

アリババはまたこのセールをオフライン小売でも促進している。自社ブランドのHema、そしてテック大企業Suningハイパーマーケット運営Sun Artのような中国の大手小売とのパートナーシップを通じて実店舗にも拡大している。

コアマーケットである中国外でもこのセールを成長させようというアリババの努力を反映し、このセールは2015年に名称を “11.11 グローバルショッピングフェスティバル”に改めた。そして昨年は6万超もの国際ブランドと、225カ国超からの客をひきつけた、としている。

始まり

11月11日というのは必ずしも、オンラインでディスカウントされた商品を買うというのと同義語ではない。この日が1990年代に中国で取り上げられるようになったのは、11月11日が4つの“独身”を表すとして独身貴族を祝おうというのが始まりだったとされる。その後、人との関わりを祝うという新たな意味が加えられたー結婚を意識したかなり人気のデートだーそして可能性のあるお相手を見つけるのだ。

eコマースの要素が加わったのは2009年で、Daniel Zhangというエグゼクティブがこの日を、わずか27の小売が参加していたアリババのブランド品のヴァーチャルモールTmallの販促に使った。その後Tmall事業の担当となったZhangはいまやアリババ本体のCEOで、何年にもわたってアリババの表看板を務めたJack Maが来年引退するとき、その後を継いで会長となる見込みだ。

2009年にさかのぼるが、アリババは初の独身の日で約700万ドルの利益をあげた。今週ZhangがCNBCに語ったところによると、彼はこの販促がアリババとeコマース全体の両方にとってこのように大きな現象になるとは“思いもしなかった”という。

アリババを追う動き

独身の日が国家的な祝い事になるにつれ、JD.comやPinduoduoといった他のeコマース事業者も、消費者が金を使うこの月に資金を投入するようになった。たとえば、QuestMobileのマーケット調査によると、JD.comは昨年の11月11日にモバイルアプリのアクティブユーザーが21.1%増えた。

このイベントが国民に受け入れられたことで、年間を通して展開される他の競合するフェスティバルも活発になった。取引高でアリババについで2番手のJD.comは2010年、独身の日フェスティバルを12日間にわたって開催した。そして6月18日開催の中間ショッピングイベントを始めた。中国の家電量販店大手Suningは8月18日をセールスイベントにあてている。

しかしながら後発組のいずれもが独身の日規模には成長しておらず、アリババは世界最大のショッピングイベント拡張路線をひた走っている。

数字だけではない

独身の日は毎年成長しているが、売上はスローダウンしている。総流通量における前年比の成長は2014年に65%弱だったのが、2017年には約40%に落ちている。

しかしJack Maはいつもこうした数字の重要性を控えめに扱ってきた。2013年11月11日の前夜、彼は売上の数字は追い求めていないと中国メディアに語った。彼はその後も似たようなメッセージを繰り返している。

スケールよりも、Maは“着実な”成長を求めていると語った。それは、ショッピング騒動がロジスティックや支払いといったファンクションを強化するインフラに負担をかけることを余儀なくされるからだ。

Maの言葉は、アリババが引き続き小売のエコシステムを強化するパートナーを探しているということと一致している。昨年、アリババはHuitongdaに7億1700万ドルをつぎ込んだ。Huitongdaは地方客向けのオンライン小売のためのインフラを運営していて、また独身の日にも参加している。

同じように、アリババのファイナンシャル部門のAntファイナンシャルはeコマース企業がグローバルで展開するのをサポートするために世界中の多くの支払いソリューション企業と提携してきた。一方で、アリババのクラウドコンピュータ部門は250億ドルの商品を売るという需要をさばいている。そしてロジスティックプラットフォームのCainiao Networkもある。こちらは、昨年中国であった注文8億1200万件を処理するのを手伝った。

独身の日により、アリババは大規模にテクノロジーを取り込むようになっている。昨年、アリババはARにベンチャー投資した。Maybellineはバーチャルで客に口紅をお試しさせ、Nikeは客をひきつけるためにゲーミフィケーションを活用し、アリババのTmallサービスは衣類の販売を促進するために“バーチャル試着室”を取り込んだ。

オフラインの売上

アリババの会長Maはまた、独身の日にとって何が標準になるのかも予言している。「我々は全てのeコマース企業が参加するようにしたい。実在店舗のモールもその一部となるだろう」と述べている。

2016年、Maはオンラインとオフラインの販売の間でシームレスな統合の未来を描くのに“新小売”という言葉をつくり出した。昨年は独身の日フェスティバルのオフラインを進めた。今年は実在店舗20万店が独身の日に行うアリババの客向けのディスカウントを登録した。たとえば、ユーザーはモールでの支払いにアリババのAlipay e-walletを使うとき、オフラインのディールを利用できる。アリババはまたコンペティションの賞金を授与するのにAlipayを使っている。

アリババは昨年、新小売が11.11で“将来性があることをうかがわせた”としている。しかし具体的な数字を明らかにするのは拒否した。今年は、アリババの実店舗の成長を考慮したときー今や30以上の店舗があり、顔認証による支払いも導入しているーオフラインの存在はこれまでになく重要になっている。HemaやInTimeの実在店舗での買い物の他に、Ele.meやースターバックスの配達もだ他のローカルなデリバリープラットフォームも含む。

2018年はどうなるか

今年の独身の日がどうなるかを予想するのは難しい。というのも中国経済の停滞や、米国との関税戦争が背景にあるからだ。とはいえ、アリババの販売の大半は11.11そして年間を通じて中国で行われていて、国際的にも成長しているものの米国政府の制裁措置の影響は限定的だろう。

以下、キーポイントを挙げる。

成長率は減速:アリババの四半期収入は順調に伸びている(40%強)が、成長率そのものはスローになっている;これは11.11にもあてはまる

オフライン:アリババはeコマース飽和を相殺するために、実店舗で買い物する人のためのディールを用意してオフライン小売を促進している。

サービス:オンデマンドサービスとデリバリープラットフォームー300億ドル規模とされているーが11.11ディールを提供することで中国において重要な役割を果たす。

支払い:Alipayはオンライン、オフラインいずれでもアプリを使って支払う人にディスカウントを提供することで11.11ディールを拡大させている。

よりグローバル:アリババのグローバルでの存在感は増し続け、東南アジアで一層11.11を促進している。すでに中国拠点の販売業者とのつながりを確立し、その一方でロシアパキスタン/南アジアに協業するベンチャーを抱えている。

どのみち、アリババは11.11で世界にすごい光景を見せる。

まず最初にフェスティバルの前日に行われるきらびやかなエンターテイメントショーがあり、その後24時間、アリババのツイッターアカウントで絶え間なくアップデートが展開される。我々も最新の状況をここTechCrunch.comで展開するので、続報をお見逃しなく。

 

イメージクレジット: VCG / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)