川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

川崎重工は11月29日、無人VTOL機「K-RACER」と配送ロボットを連携させた無人物資輸送の概念実証に成功したと発表した。無人VTOL機に配送ロボットを搭載して飛行して、着陸後に配送ロボットが目的地へ荷物を届ける一連の作業を実施し、人の手を介さない完全無人による荷物の配送を確認できた。

K-RACERは、2020年に飛行試験を行った機体を改修し、100kgのペイロードを実現したもの。カワサキモータース「Ninja H2R」のスーパーチャージャー付きエンジンを搭載している。無人VTOL機は今後、長野県伊那市から委託を受けて実施する「無人VTOL機による物資輸送プラットフォーム構築事業」でも使用する予定という。

配送ロボットは、無人VTOL機に搭載可能で、荒れた路面や段差のある道路でも走行できるように開発された電動車両。

概念実証は、以下の流れで行われた。川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

  1. 手動積み込み:有人での配送ロボットへの積み込み
  2. ロボ自動乗り込み:配送ロボットが自動走行で駐機中の無人VTOL機へ接近し、自動で乗り込む
  3. 自動離陸:無人VTOL機が配送ロボットの乗り込み後に自動で離陸
  4. 自動飛行:無人VTOL機があらかじめ定められた経路を自動で飛行
  5. 自動着陸:無人VTOL機があらかじめ定められた着陸地点に自動で着陸
  6. ロボ自動離脱:無人VTOL機が着陸後、配送ロボットが自動で無人VTOL機から離脱し、配送目的地へ自動走行
  7. 手動取り出し:配送ロボットが自動走行で配送目的地へ到達後、有人で荷物を取り出し

川崎重工では今後、物流業界の労働者不足、道路状況や地形に左右されない物資輸送、山小屋や離島などへの安定した物資輸送のためのシステム開発といった社会課題の解決に貢献したいと話している。

Walmartが自動運転スタートアップNuroと自動配送実験をヒューストンで実施へ

Walmart(ウォルマート)は米国時間12月11日、新たな試験プログラムを発表した。食料品の自動宅配実験をヒューストンの店舗で来年から始めるという。ウォルマートは、無人で商品を顧客に配達する技術を持つロボティック企業であり自動運転車のメーカーのNuro(ニューロ)と提携している。このプログラムでは、Nuroの車両はウォルマートのネット通販で注文された食料品を、ヒューストンでのサービスを希望し選ばれた一部の顧客に届けることになっている。

この自動配送サービスでは、ニューロが特別に開発した荷物専用の配送車R2が使われる。トヨタ・プリウスをベースにした食料品専用の配送車と同じく、これにはドライバーも客も乗車できない。プログラムの目的は、食料品自動配送の実効性とこうしたサービスがウォルマートの顧客サービスをどれだけ改善できるかを確かめることにある。

Nuroはこれまで、自動運転スタックの開発と、地域の家庭に商品やサービスを届ける特注の無人車両にそのスタックを組み合わせることに力を入れてきた。その車両には2つの荷物室があり、食料品のバッグを最大で6つ積むことができる。ソフトバンク、Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)、Gaorong Capital(ガオロン・キャピタル)などのパートナーから10億ドル(約1080億円)を超える投資を受けている。3月には、ソフトバンクビジョンファンドから94000万ドル(約1020億円)の融資を受けたことを発表している。

同社は自動配送の研究で知られているが、自動運転トラックのスタートアップのIke(アイク)に自動運転技術のライセンス供与も行っている。Ikeは現在、Nuroのスタックのコピーを所有している。その企業価値は、最新のラウンドを元にすると数十億ドルに達する。Nuroも、Ikeの少数株を取得している。

Nuroにとっては、ウォルマートとの提携が初めてではない。2018年にはKroger(クロガー)と提携して(Krogerの食品と医薬品販売部門Fry’sも含まれる)自動運転版のプリウスと、カスタム生産のロボットR1の試験を進めている。R1は安全のためのドライバーを乗せずに自動運転ができる車両として、アリゾナ州フェニックス郊外の街スコッツデールで配送サービスを行っていた。2019年3月には、NuroはKrogerとの共同サービスをテキサス州ヒューストンに移し、自動運転版プリウスで運用を開始した。2020年、Nuroは第2世代のロボットR2を使い、Kroger、ドミノ、ウォルマートとの共同試験に臨む。

またウォルマートにとっても、Nuroが最初の自動運転パートナーというわけでもない。ウォルマートは今年の初めに、スタートアップのUdelv(ユーデルブ)と組んで食料品の自動配送実験をアリゾナ州実施した。さらに今年の夏には、アーカンソー州ベントンビルにあるウォルマート本社近くの大型倉庫から食料品を配達する実験を自動運転車のスタートアップであるGatik AI(ガーティックAI)と進めた。さらに、2018年には自動運転の企業のWaymo(ウェイモ)と、ウォルマートの食料品配送トラックを使ったパイロット事業を立ち上げている。食料品の自動配送実験は、フォードや宅配業者のPostmates(ポストメイツ)とも協業している。

「無類の規模を誇る私たちは、何百万もの家庭に食料品を宅配でき、この業界の未来へ向けたロードマップを描くことができます」と、ウォルマートのデジタル事業上級副社長Tom Ward(トム・ワード)氏は述べている。「その過程で私たちは、私たちの店舗からお客様のご自宅の玄関まで、自動運転技術を応用して食料品をお届けするための方法を、いくつも試してきました。この技術は、私たちの食料品集配サービスと、お客様の日常を少しだけ楽にするという私たちの理念の、ごく自然な延長線上にあるものと信じています」と同氏。

ウォルマートの食料品ネット通販事業は成長著しいが、外部の配送サービスとの提携に依存しているのが現状だ。今のところウォルマートは、Point Pickup(ポイント・ピックアップ)、Skipcart(スキップカート)、AxleHire(アクスルハイヤー)、Roadie(ローディー)、Postmates、DoorDash(ドアダッシュ)といった全米の配送業者と提携して配達業務を円滑に回している。Delv(デルブ)、Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)との提携も試したが、今は解消している。2019年末には、ネットショップのウォルマート・グロサリーは、3100件近い集配場と1600件の店舗で食料品の配送サービスを行う予定だ。

ウォルマートの食料品ネット通販事業への投資は、売り上げの急増と、Amazon(アマゾン)やTarget(ターゲット)のShipt(シプト)、Instacart(インスタカート)などと価格的にも競合できる選択肢を顧客に提供するという利便性をもたらした。第3四半期には、ウォルマートの食料品事業はネット販売の売り上げを、35%増という期待を上回る41%増にまで拡大させた。これにより、収益増の記録更新が続き、米国で21四半期連続の売上増となった。

今四半期は、ウォルマートは1279億9000万ドル(約13兆9000億円)という収益により株価は1ドル16セント上昇した。しかし、ウォルマートの電子商取引事業は、新しい技術や企業買収のために資金が減り続けており、社内の緊張が高まっている。ウォルマートによると、ニューロとのパイロット事業は2020年に開始されるという。

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(翻訳:金井哲夫)