気鋭スタートアップ経営者と投資家がオススメする、GWに読むべき書籍

読者の皆さんはゴールデンウィークをいかがお過ごしだろうか? 普段は忙しい人でも、旅行や読書をして英気を養うということも多いだろう。そこで今回、過去にイベント「TechCrunch Tokyo」のスタートアップバトルに登壇してくれた起業家、そしてイベントに関わってくれたベンチャーキャピタリストを中心に、このゴールデンウィーク期間中にオススメの書籍に関するアンケートを実施した。

今回のアンケートでは、ジャンルを制限することなくマンガからビジネス書まで、回答者に自由に選んでもらった。中には、複数選んでくれている方もいる。どれも連休中に読み終える事ができる本ばかりだ。ぜひともこの機会に知識を深めてみてはいかがだろうか(掲載は回答順)。

1:TANREN 代表取締役社長 佐藤勝彦氏

(1)社外プレゼンの資料作成術

スタートアップとして5大会ほどメジャー大会で競い合ったが、その全てでファイナルまで進出、4位、3位、経済産業大臣賞と、結果を出しまくったメソッドが全て詰め込まれてます。ピッチイベントのみならず、営業の場面がある方全てが読むべき良書。

(2)社内プレゼンの資料作成術

上記、前田鎌利氏の社内資料版。社内においては更に簡略し、意思決定の速度を早めるノウハウに満ち溢れている。スタートアップ経営は速度が求められるが、意思決定を早める、理解されやすい資料生成のノウハウが詰まってる。

2:SmartHR 代表取締役 宮田昇始氏

(1) Running Lean ―実践リーンスタートアップ

スタートアップに関わる誰しもがエリック・リースの「リーン・スタートアップ」(あの青い本)を読んで「いい本だったけど、で、どうしたら良いの?」と思ったことがあるでしょう。

Running Leanは、リーンスタートアップに関する具体的なノウハウがつまった実用書です。私は、リーンなプロダクト開発の手法をこの本から学びました。それこそ SmartHRの開発初期は、本当に穴が空くほど何度も何度も読み返していました。O’Reilly 本なので、エンジニアにも受けがいいのもポイントです。

(2) 死なないために
あまりにも有名な、ポール・グレアムのエッセイ(の日本語訳)です。
書籍ではないのですが、これ以上にスタートアップが読むべき文章はないと思います。しんどい時期には特に。これ以上の説明は不要なので、文中のパンチラインを2つだけ紹介しておきます。
“スタートアップがキーを打っている最中に死ぬことはめったにないのだ。だからキーを打ち続けよう!”
“ああ、これがポールの言っていたやつか。どうしろと言ってたっけな? ああ、そうだ、 「あきらめるな」だ。”

3:モビンギ 代表取締役社長 Wayland Zhang氏
The Three Body Problem

To Pixar and Beyond

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

As an entrepreneur, those 3 books helped me on picking the right path, the right mood and patience to facing tons of challenges and difficulties.
You can also get some ideas on how successful entrepreneurs pursue their career.

4:AIトラベル 代表取締役 藤原由翼氏
(1)USAMIのブランディング論


キットカットの受験キャンペーンでAME賞(売り上げに貢献した戦略立案とコミュニケーションが評価される国際的な賞)を受賞した宇佐美氏の著書。ブランドとブランディングや具体的な実践手法について圧倒的に明快かつ簡潔に学べ、サービスデザインにも活かせます。30分ほどで読破できる一方でスルメのように味わい深く、新幹線の移動中などに気分転換も兼ねて思考を巡らせるのにオススメの一冊。

(3) バリバリ伝説


「頭文字D」の著者がその昔連載していたバイク乗りのマンガです。愚直にナンバーワンになるために挑戦する姿とフロンティア精神は、まさにスタートアップの起業家に通じるモノがあり、主人公の生き様に共感せざるを得ません。長編ですが社内へのマインド教育に使えるかもしれない作品です。

5:キャスター 代表取締役 中川祥太氏
(1) 確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

マーケティングサイドに関する、思考プロセスが非常にわかりやすく纏まっている。「全て実行できるか?」や、「事業に当てはまるか?」は、思考プロセスの理解という意味では重要な内容が盛り込まれている。マーケター(特にウェブマーケター)で、これを理解していないのであれば、仕事を依頼する事は無いと感じる一冊。

(2) ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か


一般的にスタートアップにおいては「プロダクトマーケットフィット(PMF)するまで」の内容が充実しており、その後のプロセスに関して言及されている内容は少ない。これはPMF後の「スループットを最大化する」というプロセスにフォーカスされており企業が大きくスケールする際に必要な挑戦に対する手が明確になっている。

6:電玉 代表取締役 CEO 大谷宜央氏
Prototyping Lab 「作りながら考える」ための Arduino 実践レシピ

ハードウェアに全く詳しくない、触れたことのない人におすすめです。アイデアの可能性、できることの可能性が広がるはずです!やってみると広がる世界があるはずです。

7:グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー, Chief Operating Officer 今野穣氏
(1) ITビジネスの原理


(2) 未来に先回りする思考法

(3) 抜擢される人の人脈力


(4)知性を磨く

(5)センスは知識からはじまる

出版時期に関わらず、できるだけ普遍的・本質的な本で、かつ休み中にリラックスして読み進められる異なるジャンルの5冊を推薦します。読書には情報収集・スキル習得・熟思黙考など、いろいろな目的があるかとは思いますが、これらの本はそれぞれのジャンルで原理原則に基づくが故に思考の再現性も高く、将来にわたって血肉となるのではないかと思います。

素晴らしい本は沢山ありますが、今回はそんな主旨で選びました。

8:クービック 代表取締役 倉岡寛氏

サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福


絶対に読むべき本。人類の歴史について3つの革命 (認知革命、農業革命、科学革命) を通じて論じており、人類がどのような変遷を辿ってきて、これからどこに向かっていくのかについて考えさせられる本。今の時代を後世の人類 (もしかしてサピエンスではない可能性) が振り返った時にどのように思うのか、そんなことに思いを馳せながら読んでみると、日頃身の回りで起きている日常も新しい目で見えてくるような気がする。

9:個人投資家 千葉功太郎氏
(1) 漫画「監査役 野崎修平」「頭取 野崎修平」

マイナーだけどビジネス系漫画として普通に超面白い。読みやすいです。監査役から始まって最後は頭取になるということだけ聞くとアレな感じがしますが、内容はまったく違います。上場企業のコンプライアンスについて、監査役という立場からの問題提起、社内での行動、役員会や社内政治と、大きな会社を作る中で発生していく知らない未来があり、さらに現場と経営、株主と経営、業界と経営、国と経営と様々な視点で経営が描かれていて勉強になります!

(2)もやしもん・銀の匙


この2シリーズの漫画とアニメを複数回づつ観て、さらに帯広で聖地巡礼したりして、自分のアグリビジネスへの知識の基礎が完成しました!農業から醸造へ、この2シリーズで語られている背景をきちんと頭に入れてググって勉強しておけば、どんなアグリな場でも話が見えて来ます。便利だし、美味しいし。

 

現代版ケータイ小説?人のチャットを覗き見るように物語を読むアプリTapがローンチ

screen-shot-2017-02-22-at-12-18-35-pm

米国時間2月22日にローンチされたTapは、チャットのような見た目で携帯電話上に物語を表示させるアプリだ。Tapを開発したWattpadは、作家のためのソーシャルパブリッシングプラットフォームを運営している。同社は世界中に4500万人もの読者を抱え、Wattpadユーザーはウェブサイトやモバイルアプリ経由で、約2億5000万種類の物語を読むことができる。

そしてWattpadはこの度リリースしたTapで、従来のフォーマットを離れ、ユニークな物語の楽しみ方を試そうとしている。

Tapユーザーは「チャットスタイル」で物語を楽しむことができる。つまり、ユーザーが文章をタップするたびに、だんだんとその先の物語が紐解かれていくような仕組みになっているのだ。Tap上の物語は、読者が他人のチャットのやり取りを覗き見ているようなイメージで書かれているとWattpadは説明しており、物語を読んでいるときのアプリの見た目もチャットアプリのようだ。

ローンチ時点では、ホラー、ロマンス、ドラマといったさまざまなカテゴリーの物語が数百種類も準備されている。

screen696x696-4

さらにTapユーザーは、自分でもチャットスタイルの物語を作れるようになるが、現在のところこの機能は同プラットフォーム上の一部の作家しか使えない。Wattpadによれば、数週間のうちに他のユーザーも執筆・出版機能を使えるようになる。

また、チャットスタイルで物語を読めることに加え、ユーザーはお気に入りの物語をソーシャルメディアで共有することもできる

Tapはフリーミアムモデルを採用しているため、WattpadはTapのリリースで、従来のプラットフォームに加えて新たな収益源を獲得したことになる。アプリと一部の物語は無料だが、有料プランも準備されており、有料ユーザーは限定コンテンツを含む全ての物語を読むことができる。なお料金は週額2.99ドル、月額7.99ドル、年額39.99に設定されている。

最近Wattpadは、UniversalTurnerマンガ出版社らとの契約を通じて、ハリウッドやエンターテイメント業界とも関係を深めているが、Tapのサブスクリプションサービスで、すぐにもっと分かりやすい形で売上を拡大することができるかもしれない。

screen696x696-3

実はTap以外にも、似たようなサービスが最近誕生しており、Tapの競合でフィクション作品を扱うHookedはチャットスタイルのインターフェースと、執筆環境をユーザーに提供している。Amazonも子どもをターゲットに、Amazon Rapidsというチャット風インターフェースのサブスクリプションサービスを開始した。さらに広く見れば、Serial BoxHardboundといったモバイル読書アプリや、さらには、短いコンテンツをやりとりできるという意味ではSnapchatのようなソーシャルアプリともTapは競合することになる。

しかしTapのサービスは、単に物語を切れ切れに表示させるのではなく、あくまで人のチャットを覗き見るようなスタイルをとっているため、読者は誰かの携帯で勝手にプライベートなメッセージのやりとりを盗み見ているような感覚を味わうことができる。この仕組みは、日常的にモバイルコンテンツを楽しみ、人とのやりとりにも主にモバイルデバイスを使っているティーンやヤングアダルト層にウケるかもしれない。

TapはApp StoreGoogle Playから無料でダウンロードできる。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

出版業界の未来

Books In Library

私はDigital Readerのエディター、Nate Hoffelder氏が好きだ。彼は業界にこびない数少ないブロガーの1人だし、文章に余計な装飾を施すこともない。彼の主張は、本は素晴らしい、出版業界は破滅に向かう、書くことは非常に重要だ、というものだ。

だからこそ、彼がChip McGregor氏の主張を批判したときは嬉しかった。彼の主張とは、今後は本がモバイルに直接配信されるようになり、メインストリームの出版社がいよいよ変革に本腰を入れ始めるにつれて、インディーズ出版からユーザーが離れていく、というものだ。McGregor氏の主張のなかには正しいものある ― スマートフォンで読む電子書籍は今後ますます普及するだろう。でも、間違いも多い。

最初の間違いとは何か。彼は、Barnes & Nobleがベストセラー作品だけを集めた小規模の本屋を開店すると信じている。McGregor氏はこう主張する:

Barnes & Nobleはベストセラー作品だけを取り扱う小規模な本屋を開店するだろう。これに関する内部情報を持っているわけではないが、Amazonが従来型の本屋を始めようとしている今、B&Nもマーケットシェアを取り戻すための何らかの策を考えなければならない。

ほかに適当な言葉がないのでハッキリと言うが、B&Nはすでに死んだ。大規模ストアを構え、その中にあらゆる種類の本やぬいぐるみなどを詰め込むという彼らの戦略は失敗したのだ。コーヒーを飲みたい、または雑誌を無料で立ち読みしたいという欲求がなければ、B&Nに足を運ぶ理由などない。その点、電子書籍の誕生によって独立系の本屋は助けられ、大型本屋は破壊されたといえる。しかし、新作や中古本、そして子ども向け書籍を扱う小規模の本屋チェーンという姿を想像することはできるが、B&Nがその役割を担うとは思えないのだ。

加えて、彼の主張のなかにはインディーズ作家が大規模のパブリッシャーに戻ってくるというものがある。でも、そうはならないと思う。McGregor氏は自身のブログポストの中で、パレートの法則に従えば収益の80%は20%のライターから生まれると書いている。パブリッシャーが意思決定をするとき、彼らが持っているのは不完全な情報だけだ。それを考えれば、彼らがその20%のライターを特定することができるという考えは馬鹿げていると言わざるを得ない。

そうではなく、今後は多種多様な作家たちがインディーズ作家としての道を選ぶことになるだろう。メインストリームのパブリッシャーとしてではなく、インディーズとして成功した作家の代表例がEliot Peper氏だ。他にもたくさんいる。また、McGregor氏は99セントという超低価格なインディーズ本の価格設定にも懐疑的な見方をもっており、そういった価格設定はこれから衰退していくだろうと述べている。しかし、それも起こりそうもない。99セントの価格設定は、収益を伸ばしたり、Amazonのランキングをあげる方法としては賢いやり方だ。その価格設定をやめることは、すなわち、多くのインディーズ作家の死を意味する。

これまでに述べたことを要約する。McGregory氏の主張のなかには賛同できるものもある。モバイル・オンリーという考え方は今後も広まっていくだろうし、キリスト教SFなどのニッチなテーマは衰退していくだろう(McGregory氏は、「近年では、キリスト教SF小説をいまだに取り扱っている出版社は数えるほどしかいない。出版社の多くは、少数の人々にしか受け入れられない宗教色の強すぎる本を扱うのではなく、クオリティの高い文学小説や、広範な人々に受け入れられる女性に関するストーリーを取り扱うようになった。サスペンス系の小説を扱っているところもある」と述べている)。だが、B&Nやインディーズ作家に関する彼の意見には反対だ。伝統的な出版業界の外側では、物事が上手くまわっている。何か新しいことしたいという気持ちさえあれば、近年の出版業界の慣習に従うことなく、それを達成することも可能なのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter