量子コンピューターを制御する古典的コンピューターに注力するQuantum Machines

量子コンピューターは通常、量子世界のエキゾチックな特性を、基本的な管理を担う古典的コンピューターと組み合わせたハイブリッドマシンとなっている。この業界では、量子プロセッサーの部分に注目が集まりがちだが、量子部分がより強力になるにつれて、古典的な部分がボトルネックになりつつある。つまりデジタルコマンドを、量子コンピューティングの世界のアナログ世界で使うために変換するプロセスを担う部分だ。そしてそれこそ、ステルス状態から姿を表したイスラエルのスタートアップ、Quantum Machinesが取り組んでいる課題なのだ。

同社のQuantum Orchestration Platform(量子編成プラットフォーム)は、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて量子システムをコントロールする完結したソリューションとなっている。同社は独自のカスタムパルスプロセッサーを開発した。このプロセッサーが、やりとりしている量子プロセッサーとは独立に、とは言ってもサポートした状態で、マルチキュービットの操作を受け持つ。

「量子コンピューターの古典的なレイヤーには、まだ満たされていない真のニーズがあります。そこがボトルネックとなっているのです」と、Quantum Machinesの共同創立者であるItamar Sivan(イタマー・シヴァン)氏は語った。「私たちは、この業界の進歩を阻んでいるものについて、真剣に検討してきました。この業界を前進させるためにいまできることは何か。そして、将来の進歩を加速するにはどうしたらよいのか。これまでは、ほとんどの努力が量子プロセッサーだけに注がれてきたので、私たちがこの課題に取り組むのは、むしろ自然なことでした」。

彼の説明によれば、量子プロセッサーで複雑なアルゴリズムを実行するためには、非常に強力な古典的コンピューターも必要だという。しかし、ムーアの法則も終わろとしている今、それを効果的に実現するには、特殊なハードウェアが必要となる。そして、Quantum Machinesのハードウェアは、非常に高速なキャリブレーション機能を備えている。それにより、制御している量子プロセッサーから、より優れた、より正確な結果が得られる。もちろん同社は、この問題をどのように解決したのか、詳しいことは公開していない。その部分は、同社のチームが開発した秘密のレシピというわけだ。

シヴァン氏は、Yonatan Cohen(ヨナタン・コーエン)氏とNissim Ofek(ニッシム・オフェク)氏とともに、この会社を設立した。3人とも、一流大学の博士号を取得し、量子コンピューティングの課題に取り組んできた豊富な経験を持っている。「私たちの経験を考えると、ずるいほどの優位性があると言えるでしょう」と、シヴァン氏は冗談めかして語った。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

IBMが53量子ビットの量子コンピューターを近日公開

量子コンピューティングの探究を続けるIBMは、53量子ビット(Qubit)の量子コンピューターを近々顧客に提供すると、米国時間9月18日にIBM Q Networkで発表した。来月中旬に稼働予定の新システムは、一般利用向けとしては最大の汎用量子コンピューターになる。

新しいマシンは、IBMがニューヨークに新設し、同じく今日発表された「Quantum Computation Center」内に設置される。新センターは実質的にIBMの量子コンピューター用データセンターであり、ほかに20キュービットのマシンが5台設置され、来月にはその数が14に増える予定だ。IBMは同社の量子コンピューターについて95%のサービスアベイラビリティを約束している。

IBMによると、新しい53量子ビットシステムにはいくつもの新しい技術が盛り込まれており、クラウド向けにこれまでより大規模で信頼性の高いシステムの提供が可能になる。スケーリングが容易になり、エラーレートを下げるコンパクトなカスタム回路を導入し、プロセッサーも新たに設計した。

ibm q

「2016年、それまで一部の研究者しか利用できなかった量子コンピューティングを何万人ものユーザーに解放することを目標に、最初のクラウド向け量子コンピューターを公開した。以来、当社は全世界で大きく力を入れてきた」とIBM ResearchのディレクターであるDario Gil(ダリオ・ギル)氏は語る。「この熱意あふれるコミュニティーの目標は、Quantum Advantage(量子コンピューティングの優位性)と我々が呼ぶことを成し遂げ、今日の古典的な方法ではなし得なかった問題解決に役立てることだ。IBMの量子コンピューターシステムを広く普及させることで、その目標を達成できると信じている」。

こうしてIBMが量子コンピューティングを広く公開し始めたことは、同社の量子コンピューターへの取組みの真剣さを示すものだ。現在同社の量子プロジェクトは、商業、学術、研究合わせて80の団体と提携しながら進められている。現在あるマシンで実用的問題解決を始めている例もあるが、最先端の量子コンピューティングは、未だに基本アルゴリズムをテストしたり簡単な問題を解決することしかできていない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

D-Waveがハイブリッド量子プラットフォームを公開

初期の量子コンピュータのスタートアップD-Waveが、新製品「D-Wave Hybrid」の一般提供を開始することを発表した。これはオープンソースのハイブリッドワークフロー・プラットフォームで、開発者は通常のコンピューティングと量子コンピューティングを融合したハイブリッド量子アプリケーションを作ることができる。D-Wave Hybridは、同社の量子コンピューティング・クラウドサービスであるLeapの一部を構成するソフトウェア開発キット、Oceanの一コンポーネントとして提供される。

量子コンピューターは、量子チップを制御するために伝統的コンピューターが必要なため、基本的にほとんどがハイブリッドシステムだ。本プラットフォームは、D-Waveが最近発売した2000Qファミリーハードウェアおよび将来のシステムで走るアプリケーションを開発するための環境を提供する。

D-Wave HybridやRigettiなどのライバルが提供する類似のツールは、量子コンピューターをコプロセッサーとして有効な場面で使うアプリケーションを作るという使い方が一般的だ。さらにD-Wave Hybridは、今はまだ比較的能力の限られている量子プロセッサーで処理できるように、大きい問題を小さな部品に分解するときにも役立つ。

「量子ハイブリッド開発では、伝統的コンピューティングと量子コンピューティングの能力をすばやく組み合わせることができる。実際、われわれの量子テクノロジーを使うアプリケーションのほとんどは、伝統的コンピューティングと量子コンピューティングのハイブリッドとして動作する。現在多くのプログラムでCPUとGPUが協調して動作しているのと同じだ」とD-Waveの執行副社長・最高製品責任者のAlan Baratz氏は言う。「われわれのアプローチは実践的だ。D-Wave Hybridは、現行の問題解決の知識をハイブリッドプラットフォームに適用することで、ユーザーが段階的に量子の力を利用できるようにしている。こうすることでわれわれは、顧客が真の企業利益を得られるサービスを開発できる」

同システムの初期ユーザーであるVolkswagenは、トラフィックフローの最適化やその他の最適化問題に関わるさまざまな小規模の概念証明にこのシステムを使っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

約17億円の量子コンピューターを無料で貸し出すD-WAVEの「Leap」、ついに日本でも正式公開

カナダの量子コンピューター企業D-WAVE Systems(以下、D-WAVE )は日本時間3月26日、同社の量子コンピューター「D-WAVE 2000Q」に無料でアクセスできるクラウドサービス「Leap」を、日本を含む33カ国で利用可能にすると発表した。これまではアメリカおよびカナダ限定の公開だった。

D-WAVE Systemsの量子コンピューター「D-WAVE 2000Q」

Leapは、D-WAVEが販売する量子コンピューターにアクセスできるクラウドサービスだ。その量子コンピューター「D-WAVE 2000Q」は販売価格が1500万ドル(日本円で17億円程度)とも言われ、さらにシステムを最適な状態で動作させるには専門家のサポートが必要だった。しかし、そのコンピューターへのアクセス権をクラウド上で貸し出すことで、誰もが気軽に量子コンピューターを使用することができる。また、本格的な開発者のためには1時間あたり2000ドル(約22万円)の有料プランも用意している。

これまで、Leapは(正式には)アメリカとカナダ限定のサービスであったが、今回の発表でEU、日本、アイスランドなど33カ国でも新たに利用可能になる。D-WAVE CEOのVern Brownell氏は、TechCrunch Japanの取材に対し「D-WAVEの日本顧客は、量子コンピューターアプリケーションという領域を真っ先に拡大してくれた人たちです。自動運転からデジタル広告配信の最適化、工場の自動化まで、彼らは様々な分野で素晴らしいイノベーションを起こしました」とコメント。

また、日本市場への拡大について同氏は、「私たちは何千もの量子コンピューターエンジニアのためにLeapを開発してきましたが、それを日本人の開発者にも届けることは私たちにとっても重要なマイルストーンの1つだったのです。今後も、日本マーケットは最新鋭の量子コンピューターアプリケーション、その専門知識、そして研究成果の生まれ故郷となるであろうと思っています」と話した。

D-WAVEはこれまでにデンソーやリクルートコミュニケーションズなどの日本企業と量子コンピューターアプリケーションの実証実験を進めてきた。同社は今回の発表と併せ、それらの実証実験が終了したと発表。今後はそのアプリケーションを実際のビジネスの現場へと応用していく。デンソーはD-WAVEの量子コンピューターによって開発した自動走行車を同社の工場に配置。そしてリクルートコミュニケーションズは量子コンピューターによって最適化されたTVコマーシャルを運用する予定だ。

IBM、CESで史上初の商用量子コンピューターを発表――20Qビットだがパイオニアとして大きな意義

今日(米国時間1/8)、ラスベガスで開幕したCESでIBMは世界で初となる実験室の外で稼働する商用量子コンピューターを発表した

このIBM Qシステムには20Qbitの量子コンピューターと伝統的なコンピューターが統合されている。ビジネス、研究の双方で、従来のコンピューターとほぼ同様にアプリケーションを作動させることができる。物理的にはまだ相当にかさばるシステムだが、量子コンピューター部分の冷却システムを始め、利用に必要なすべてのハードウェアがパッケージに含まれているとう。

IBMは発表にあたって「作動に必要なすべての要素を統合した初の汎用量子コンピューター」だと強調した。もちろん 20Qbitというのは量子コンピューターとしてはきわめて小規模であり、量子コンピューターが必要とされる典型的に困難な課題を解くにはまったく力不足だ。このシステムのQbitの持続時間は100マイクロ秒レベルだという。

IBM が「現在のコンピューター・テクノロジーでは計算が困難と考えられている課題を解決するための第一歩が踏み出された」とパイオニアとしての意義を強調するのは無理ない。ある種の問題は規模の拡大と共に指数関数的に計算量が爆発し、現行のコンピューター・システムでは実用的な時間内でも処理が不可能となる。量子もつれを利用した量子コンピューターではネックが一挙に解消されると期待されている。ただしわれわれはまだそこまで来ているわけではない。そうではあるが、このシステムは第一歩ではある。IBMはシステムは将来アップグレードできるし、メンテナンスが容易であると述べた。

ハイブリッドクラウドおよびIBM Research担当 上級副社長のArvind Krishnaは「IBM Qシステムは量子コンピューターの商用化に向けての大きな一歩だ。このシステムは量子コンピューティングが研究施設の外でも稼働することを実証した点が決定的に重要だ。我々はビジネスや科学研究に役立つ実用的な量子コンピューティング・アプリケーションの開発を進めていく」と述べた。

またQシステムのデザインも見逃せない。 IBMは十分誇りにしていいだろう。スーパーコンピューターの普及にあたったは 「世界でもっとも高価なベンチ」と呼ばれたCrayコンピューターの独特なデザインが果たした役割も小さくなかった。IBMはMap Project OfficeUniversal Design Studioなどのスタジオと提携してデザインを決定したという。また英王室の宝石やモナリザなどの名画の展示のデザインで知られるGoppionも協力した。 
IBMでは Qシステムは単なるハードウェア以上のアート作品だと考えているという。たしかにその成果は驚くべきものだ。高さ幅が2.7メートルの気密された直方体で、伝統的コンピューターなど他の部分はシャーシー内に隠されているが.、中央の透明な部分に量子コンピューターがシャンデリアのように輝いている。

この量子コンピューターが欲しいならIBM,と提携する必要がある。量子コンピューターはAmazonのプライム会員になれば送料無料で翌日届く、というようなレベルにはなっていない。

ちなみに IBMは石油メジャーのExxonMobilやCERN、Fermilabなどの著名な研究機関と提携してIBM Q Networkを作った。これはビジネス利用と研究利用を統合し、 量子コンピューティングのユースケースを共有するコミュニティーの確立を目指すものだ。参加メンバーは量子コンピューティング・ソフトウェアを共有することができる。またクラウドベースの量子コンピューティングも計画されている。

CES 2019 coverage - TechCrunch

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滑川海彦@Facebook Google+

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