「あなたは、あなたが食べているものが食べている存在です」と、Blue Apron(ブルー・エイプロン)の元COOで、現Cooks Venture(クックス・ベンチャー)の共同創設者およびCEOのMatthew Wadiak(マシュー・ワディアク)氏は言う。
このほど1200万ドル(約12億8000万円)の投資を獲得したCooks Ventureは、現在の穀物の栽培、家畜の給餌、そして究極的には地球環境を保全する方法を考え直そうとしている。彼らの戦略は三段仕込みだ。
まずCooks Ventureは、小規模の農家と契約し、自社の知的資産を応用して環境再生力のある農法を実践する。それは同時に、自社のおよそ320ヘクタールの農場でも行う。そこでは、土壌を守り、地中に二酸化炭素隔離ができる作物の選定も行う。さらに、地中の二酸化炭素量、養分、その他の生物学的用要因を測定し、生物の多様性を高め、害虫の数を減らす。第一線の気候学者たちも、世界中の農場でこれを実践すれば気候変動は逆転すると信じていると、同社は話している。
しかし、製品としての環境再生型農法はCooks Ventureが目指すものの、ほんのひと切れでしかない。結局、Cooks Ventureは畑で何を作るのか?答はニワトリの餌だ。ただし、ずっと昔から使われてきた餌とはわけが違う。
Cooks Ventureのニワトリの餌は、同社のニワトリ専用に作られるものだ。それは、何世代にもわたって選別された、最高に健康な消化器官を持ち自由に外に出られる今では珍しいニワトリだ。簡単に言えば、10年以上かけて遺伝系列を隔離して作られた「エアルーム・チキン」(Heirloom chicken、先祖伝来のニワトリという意味)だ。このニワトリは暑さにも強い。同社がこれを国際展開しようという段階になったときに、異常に暑い地域でも育てられるということだ。
このニワトリは、さまざまな餌に対応できる。通常の養鶏場で使われている餌よりも、食物繊維やタンパク質が多いものが食べられるので、オメガ3脂肪酸の量が多く、味もいいとワディアク氏は言う。さらにCooks Ventureは事業規模を拡大し、処理工場の拡張にも成功したため、週に最大で70万羽のニワトリを出荷できるようになった。
同社の主要な収益モデルが鶏肉の販売であることは明白だ。現在、FreshDirect(フレッシュダイレクト)とGolden Gate Meat Company(ゴールデン・ゲート・ミート・カンパニー)と提携しており、その他多くの提携小売店も近々発表されることになっている。また同時に、同社のウェブサイトでも並行して販売する。
だが今回の投資金は、収益モデルの上流と下流の構築にも役立てられる。Cooks Ventureは農家と手を組み、環境再生型農法を実践するほかに、この環境再生型農法を利用して単位面積あたりの作物のカロリー量を高める、従って収益が増える方法も教えることにしている。それに伴う知的資産、つまりどの作物を育てるべきか、農場に残すべき樹木や池はどれか、どのように輪作するかといった知識が、彼らの貴重な製品となる。
下流では、Cooks Ventureは同社の遺伝系統の増産に興味のある世界中の養鶏農家や企業と手を組みたいと考えている。
これにより同社は環境再生型農法に特化した初の垂直統合型農業企業となる。
ワディアク氏によると同社の最大の挑戦は、人々に環境再生型農法技術を教え、昔ながらの非経済的で環境にも悪い農業システムから方向転換させることだという。
「米国の農業の97%は穀物であり、その作物のほとんどが家畜の餌になっています」とワディアク氏は言う。「この国の家畜給餌システムに対処して、そのシステムに関する政治的な虚偽を正すためにロビー活動を行わなければ、食糧システムを変革し環境再生農法を確立することは大変に困難になります」
さらに彼は、米国の農家は全有権者の2%であるのに対して、数十億ドルがロビー活動に使われ、トウモロコシと大豆の補助金拡大に賛成するよう国会議員に働きかけていると話していた。
今回の1200万ドル(約1億2871万円)は、AMERRA Capital Management(アメラ・キャピタル・マネージメント)の投資によるものだ。
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(翻訳:金井哲夫)