Superstrataが3Dプリントで作られたカーボン製ユニボディ自転車Ionの予約注文の受け付けを開始

Superstrata(スーパーストラタ)を見るたびに、どれだけ早く盗まれてしまうのだろうか、とどうしても考えてしまう。それはこの自転車の責任ではない。実際は逆で、そこが長所だ。たぶん、ニューヨークという街に長く住みすぎたために蓄積された経験が、私にそう思わせるのだろう。

SuperstrataのIon(イオン)は、4000ドル(約43万円)の自転車だ。だが、そこらの4000ドルの自転車(何を指しているかは、ここでは省く)とは訳が違う。滑らかな外観も目を引くが、Ionはなんと3Dプリントされたカーボンファイバー素材のユニボディ自転車なのだ。この製造法により、乗る人の体型に合わせたカスタム自転車を作ることが可能になっている。びっくりするような価格ではあるが、1万2000ドル(約130万円)以上もする従来のカーボンファイバー製自転車に比べたら、Ionは安い。

Superstrataブランドで発売されるのは2車種。前述の電動アシスト自転車Ionと、2800ドル(約30万円)の非電動自転車Terra(テラ)だ。どちらもまだ、完全には商品化されていない。現在、クラウドファンディングのIndiegogoで予約注文の受け付けを開始したところだ(キャンペーンはすでに当初の目標額10万ドルの5倍の資金を集めている)。このキャンペーンは、Alabaster(アラバスタ)やMisfit(ミスフィット)の創設者であり、ここ数年の消費者向け電子機器の動向に詳しい人にはお馴染みのSonny Vu(ソニー・ブー)氏が主催している。

画像クレジット:Superstrata

3Dプリント自転車の長所ははっきりしている。同社の説明によると、身長140cmから225cmの人まで車体を対応させることができるという(そこじゃない、均整美などのもっと楽しい面があると指摘される方もいるだろうが、話のポイントはわかってもらえると思う)。Superstrataでは、18の部分の長さを調整してユニボディのフレームを作っている。そうすることで、重量1.3kg(非電動モデルの場合)にも満たないフレームの強度が格段に上がる。同社がTechCrunchに話してくれたところによると、重複のない組み合わせは25万通りにのぼるという。プリントが完了すると、あとは人の手で仕上げられる。

Superstrataは、ただの新しい自転車スタートアップではない。サンフランシスコ湾岸地区を拠点とする積層造形スタートアップであるArevo(アレボ)傘下の新ブランドだ。Superstrataは、Arevoのサービスと複合積層製造技術を製造業界に売り込むためのデモンストレーションの役割も担っていると、ブー氏はTechCrunchに述べた。

その大きな目標を達成するために、Arevoは大規模なシステムを完備したプリント工場をベトナムに建設しているとブー氏はいう。

「ただ何かをプリントして、『ほら、こんなこともできますよ』というだけの話ではありません」とブー氏は最近のインタビューで話してくれた。「名前から色、ブランド、フォント、工業デザイン、ユーザーエクスペリエンスに至るまで製品全体を、B to C(企業対消費者間取引)のすべてを作ろうということです」。

Superstrataの製品がいかに早く開発されたかを自分の目で見て理解してもらえれば、将来の顧客が夢中になってくれるとブー氏は目論んでいる。設計から製品化直前のプロトタイプまで、全工程に要した時間は約2カ月だったとブー氏はいう。その時間の大半は、各自転車ごとに大量のカスタマイズを可能にするためのプリント工程の設計に費やされた。

ブー氏は、Superstrataが自立した高級品メーカーになることを目指しているが、同社は今回の2車種の設計を、自転車の専門家とデザイナーに大きく頼ってきた。賛否が分かれるところだが、デザイン的に興味深い点としてシートチューブを廃止したがある。

「たしかにデザインはちょっと派手なもにになっています」とブー氏はいう。「これも強度を誇示したくて、このようなデザインにしました。もちろん、シートチューブを付けようと思えば付けられました。しかし全体がカーボンファイバーで作られているので、かなりの重量に耐えられるという点を見て欲しいのです」。

注目すべきは、この2車種は大幅なカスタマイズが可能であっても、ハンドルバーや車輪などが固定された閉鎖的システムではないということだ。車輪やその他の部品は他社製品に交換することができる。Superstrataがそうした柔軟性を持たせたのは、いずれにせよハードコアなサイクリストは、余計なものを取り払ってフレームとフォークだけにしてしまうであろうことを想定しているからだ。

今ならさらにお得なポイントがある。どちらの車種も、クラウドファンディングのキャンペーンで早期に支援した人は割引価格で購入することができる。出荷予定は12月となっている。

画像クレジット:Superstrata

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(翻訳:金井哲夫)

3Dモデリングカーネルのスタートアップが11億円超を調達、Autodeskの元CEOも支援

私たちのほとんどは、幾何学的モデリングカーネル(またはソリッドモデリングカーネル)が、どのようなものかを知らないが、どんなCADもしくはデザインアプリケーションも、形状を作るためにそれを内部で用いている。それは、CADデザインの数学を行ってくれる、基底にあるインフラストラクチャなのだ。対象に穴を開けたり、線を組み合わせたり、角を削るためには新しい対象の縁の曲線を計算しなければならないが、こうした計算は洗練されたアルゴリズムの支援なしには行いたくないものだ。モデリングカーネルとは、製品モデリングを生み出すための3Dソリッドオブジェクトを定義したり保存したりするための、コアとなる数学関数を集めたライブラリであり、それを使うことで製品モデリングが比較的円滑なものとなる。

興味深いことに、1つのカーネルを構築するためには多大な時間を必要とする(数学者や博士、およびコンピュータ科学者の育成に時間がかかるのはもちろんだが)ために、最後に構築された市販の幾何学カーネルたちは、主に80年代の終わりから90年代の始めにかけて登場したものだ。中でも最も人気があるのは、3D ACISモデラー(ACIS)である。これはSpatial Corporationによって開発され、現在はフランスの3D設計およびエンジニアリングソフトウェア大手DassaultSystèmesが所有している、幾何学的モデリングカーネルである。このカーネルは、CADから3Dアニメーション、そして造船まで、あらゆる業界で使用されている。

もう1つはParasolidだ。これはもともとShape Data Limitedという会社によって開発され、現在はSiemensによって所有されている幾何学的モデリングカーネルだが、3D CGソフトウェア製品に組み込むために、他社にライセンスが行われている。

2002年にAutodeskがACISから枝分かれする形でShapeManagerというカーネルを作り始めたものの(同時期にはPTCのGraniteやDassaultのCGMなどもあった)、何年にもわたってACISとParasolidの2つが実質的に市場を支配していた。このことでDassaultとSiemensは500億ドルにも達する市場を両者で分け合い、そのライセンスを使い手には厄介な条件の下で高価に提供してきた。

だが現在、創業以来独自カーネルの開発に取り組んできた、シアトルに本拠を置く創業4年のDyndriteという会社が、その状況を変えようとしている。同社は、いまや製造用ハードウェアの能力がソフトウェアの能力を追い越していることを指摘しつつ、世界が同社のソフトウェアを必要としているのだと主張している。それは最新の製造、最新のコンピューターアーキテクチャ、そして最新のデザインニーズを意識したカーネルである。

「(他のスタートアップが頭を悩ませてきたものの)大部分は、(巨大な2社の)後追いを追求したことから始まっています。しかし30年の歴史をもつ製品と同じ機能を全て持つものをスタートアップが構築するのはとても難しいことです」と語るのはDyndriteの26歳の創業者兼CEOのハーシ・ギョール(Harshil Goel)氏だ(彼はUCバークレイから1つの数学、2つの機械工学に関連する学位を取得している)。

Dyndriteは「別の方針をとりました」と彼は付け加えた。そのカーネルは3Dプリンティングの新しい世界のために構築されてる。より具体的には、高次ジオメトリを含む、現在あるすべてのジオメトリタイプを表現することが可能だという。またラティス、サポート、スライス生成などの特定の加法的な計算も扱うことができる。ギョール氏によれば、このカーネルを用いることで、数日もしくは数時間かかっていた処理時間を数分に、場合によっては数秒までに削減することができるのだという。

Dyndriteが突破口を開けるかどうかはまだわからない。しかし初期の成果はとても有望なもののように見える。この15人の会社は、GoogleのAI重視の投資ファンドであるGradient Venturesが主導したシリーズAラウンドで、1000万ドル強の資金を調達した(同ファンドはシードファンドでも資金提供を行っている)。このラウンドに参加した他の投資家には、Cota Capitalや、Amplify Ventures、The House Fund、FlexportのCEOであるライアン・ピーターセン(Ryan Petersen)氏、Autodeskの元CEOであるカール・バス(Carl Bass)氏などの初期からの投資家たちも含まれている。バス氏とギョール氏の関係は9年前に遡る古くからのものだ。

彼らが出会ったのはギョール氏がバークレー校の新入生で、バス氏が同大学の学生だったときだが、Engineers Without Borders(国境なき技術者会議)という集まりで他の学生たちと話したのが始まりだった。バス氏に専攻が何かと尋ねられて、ギョール氏は自分が純粋数学を専攻していて、いつもマシン室に入り浸っていると答えた。数年後、ギョール氏はバス氏に作っているもののデモを行った。そのときのバス氏の言葉が「投資したほうがいいよね?」だった。それ以来、彼は自分のメンターなのだと、ギョール氏は語る。ギョール氏は彼と似たようなキャリアを辿ることを熱望し、同じくらい楽しんで過ごしたいと熱望しているのだと言う。「カールは、全てをぶち壊すことで、最悪のエンドユーザーの役割を果たしたいと思っているのです」とギョール氏は笑いながら語った。

現在目指している方向に関しては、Dyndriteは今月初めに業界イベントで、その技術を披露したばかりだ。また同社は、「 開発者協議会 」もローンチした。これはOEMたちがDyndriteのカーネルと加算ツールキットを活用する際に必要となる、ツール、リソース、その他のものを提供するプログラムだ。その開始時のメンバーに含まれているのは、HP、Nvidia、EOS、およびAconity3Dなどだ。

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(翻訳:sako)