最高のシングルカメラシステムを搭載した新iPhone SEを4万4800円から発売

アップルは米国時間4月15日に新しいiPhone SEを発表した。ディスプレイのサイズは4.7インチで、物理的なホームボタン、Touch ID、シングルのリアカメラ、A13 Bionicチップを搭載している。価格は399ドル(日本では税別4万4800円)からとなっている。新たなiPhoneユーザーや、初めてスマホを購入する人を主なターゲットとする製品だ。しかし何よりも、現行モデルとして最も小型のiPhoneを求める人にアピールすることは間違いないだろう。

画像クレジット:Apple

iPhone SEの予約注文は、4月17日の午前5時(米国太平洋夏時間)に開始され、出荷は4月24日からとなる。

本体カラーは、ブラック、ホワイト、(PRODUCT)REDの3種類から選べる。リアカメラもフロントカメラもシングル仕様。これがアップルの新しいエントリーレベルのiPhoneとなる。

その他の仕様は、全体的にかなり魅力的だ。何より、iPhone 11や同Proと同じA13チップを搭載している。アップルによれば、SEのプロセッサパフォーマンスは、価格に合わせて引き下げられているようなことはなく、iPhone 11と同等だという。

ディスプレイは、アップルの言うRetina HDユニットであり、通常のLCDパネルだ。iPhone 11やXRのようなLiquid Retinaディスプレイではない。本稿執筆時点では、コントラスト比などの細かいスペックは確認できていないが(実際には1400:1)、True Toneディスプレイとなっている。

サイズを別にすれば、新しいiPhone SEの最大の特徴は、Touch IDを備えた物理的なホームボタンを持っていることだろう。最近のiPhoneは、みなFace IDシステムを採用していただけに新鮮だ。これがサイズの制約からくるものなのか、つまりフロント用にTrueDepathカメラを組み込むスペースの問題なのかどうかは、現時点でははっきりしない。しかしおそらくは、価格を抑えるための手段の1つと考えられる。

Touch IDは信頼性が高く、そちらの方を好むユーザーもいる。私はFace IDの大ファンだが、みながマスクを着けるようになったご時世を考えると、Touch IDのメリットが再び注目を集めているとも言える。実際問題として、顔の半分をマスクで覆った状態では、Face IDを正しく動作させるのは難しい。これは以前からアジア地域では問題だった。アレルギーのシーズンや、体調の悪いときには、マスクを着けるのが習慣になっていたからだ。

iPhone SEもデュアルSIMをサポートしている。無線通信サービスの選択肢が豊富な地域のユーザーや、そこに旅行する人にとっては、嬉しい機能だろう。

大きく進化したカメラ機能

アップルは、いくつかの根拠を示して、iPhone SEが「最高のシングルカメラシステム」であると主張している。思い出してみれば、iPhone XRのリアカメラは、同じ解像度で、やはりポートレートモードをサポートしていた。しかし、新しいiPhone SEは、ISP(Image Signal Processor)およびNeural Engine(ニューラルエンジン)として機能する、最新のA13 Bionicチップを搭載している。これは、セグメンテーションマスクやセマンティックレンダリングなど、特に機械学習分野での著しい進歩を取り込んだもの。その結果、最近のiPhoneモデルの中でも、特に効果的なポートレートモードを実現している。

アップルは、XRでは3種類の照明効果(「自然光」、「スタジオ照明」、「輪郭強調照明」)のみをサポートしていた。いずれも、背景を取り除く必要がないもの。それ以外の照明効果(「ステージ照明」、「ステージ照明(モノ)」、「ハイキー照明(モノ)」)は、レンダリングと分離のパイプラインのために、さらなる処理能力を必要とする。iPhone SEでは、それらも可能となった。またiPhone SEは、iPhone 11に採用された「次世代のスマートHDR」も装備する。これもまた、新しいチップの搭載によって可能となったこと。

新しい画像パイプラインによって、他にも多くのメリットが得られる。たとえば、4Kビデオ撮影では、30fpsまで「拡張ダイナミックレンジ」が使える。また、「映画レベルのビデオ手ぶれ補正」は、4Kで60fpsまで可能だ。一方、静止画撮影でも「次世代のスマートHDR」が使える。さらに、6種類の照明効果すべてが、前面カメラでも利用可能となっている。

こうしてみると、これはiPhone 11 Proの画像処理パイプラインを、シングルカメラシステムで実現したようなものと言えるだろう。しかし、そこには大きな違いもある。ナイトモードがないのだ。ナイトモードは、iPhoneの長い歴史の中でも、最も説得力のあるカメラ機能の1つだ。この点では、新しいSEを選ぶのは、カメラ機能よりも、価格とサイズを優先することになる。

ラインナップの位置関係

新しいiPhone SEの追加によって、現行のiPhone製品は、ほぼ7種類になったと言っていいだろう。iPhone XR、XS(XS Maxを含む)、それからiPhone 11とiPhone 8 Plus、さらにiPhone 11 Pro、iPhone 11 Pro Max、そして新しいiPhone SEだ。すでにApple Storeで扱っていない製品もあるが、私が信頼しているアナリストによると、そうした製品を製造している工場も、まだ残っている可能性があるという。今回のSEの登場で、アップルはiPhone 8の販売を収束させることになるだろう。そしてiPhone 8 Plusは、在庫がなくなるまで特定の地域で販売を続けて打ち止めとする。iPhone SEの、64GBモデルで399ドル(日本では税別4万4800円)という価格設定は、非常に魅力的だ。そこにわずか50ドル(同5000円)を加えた499ドル(同4万9800円)で128GBのストレージが手に入る。また256GBモデルでも549ドル(同6万800円)だ。

今回のiPhone SEをiPhone XRと比較すると、後者のメリットは画面サイズが大きいということくらいだ。しかし、それだけで2万円という価格差は大きいように感じられるだろう。

全体として分かるのは、アップルが、iPhoneの品揃えの中で価格帯の空白をなくそうと懸命に努力しているということ。そうすることで、人々をiPhoneのエコシステムに引き込みやすくしようとしている。いったんiPhoneユーザーとなった人は、さまざまなサービスによるロックイン効果と、高い顧客満足度のために、なかなかそこから抜け出ようとはしないのだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Apple、iPhone 11向けにA13 Bionicを発表

Apple(アップル)は新型iPhoneを発表した。iPhone 11にはSoC(システム・オン・チップ)のA13 Bionicが搭載されている。これは、iPhone XR、XS、XS Maxに搭載されていたA12 Bionicの改良版となる。

問題は、どれだけ高速なのかだ。Appleはまず、スマートフォン向けとして最速のGPUとCPUを設計したと語った。次にX軸のないグラフを提示したが、これはあまり理解の助けにならない。しかしカンファレンスでは後に、A13 Bionicのパフォーマンスのいくつかの詳細が明かされた。

シリコンエンジニアリングでバイスプレジデントを務めるSri Santhanam(スリ・サンタナム)氏は、A13 Bionicの詳細を伝えた。すべてはマシンラーニングのためにある。CPUは1秒間に1兆回の処理ができる。CPUとGPU、そしてNeural Engineはマシンラーニングを実行する際、より高速に協調動作する。

「iPhone 11 Proはスマートフォンのなかでも最高のマシンラーニングプラットフォームだ」とサンタナム氏は語った。

アーキテクチャについては、A12 Bionicと同じ7nmプロセスを採用し、85億個のトランジスタを搭載。これは、69億個のトランジスタのA12 Bionicから大きな進化だ。A13 Bionicは引き続き4個の省電力コアと2個のハイパフォーマンスコアが組み合わされている。

2つのハイパフォーマンスコアは前世代のそれよりも20%高速で、さらに30%省電力化されている。省電力コアは20%高速で、40%省電力化されている。

GPUはアップル独自の3D描画APIであるMetalに最適化されている。これも20%の高速化と40%の省電力化を実現している。最後に、ニューラルエンジンは8コアで、20%高速化し15%の省電力化を果たしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter