アメブロの再発明ではない-サイバーの新サービス「Ameba Ownd」はお手軽なサイト作成サービス

サイバーエージェントのブログサービス「アメーバブログ(アメブロ:Ameblo)」と言えば、芸能人や著名人の公式ブログを筆頭に——「改行がありすぎ」なんて揶揄されるような若い世代の日記などが話題になったこともあるが、そんなブログもひっくるめて——幅広い層に支持されているブログサービスの1つだ。

そんなAmebloを提供しているサイバーエージェントが3月に入り、「Ameba Ownd(アメーバオウンド)」なるブログ風なサービスのスタイリッシュなティザーサイトを公開している。同サービスがいよいよ3月18日、正式オープンした。

このAmeba Ownd、ブログのような日記も、企業紹介のような静的なページも作れるし、TwitterやInstagram、Facebookなどのソーシャルメディアと連携して、サイト上に集約して表示できる。ではこれはブログサービスと考えていいのか? サイバーエージェントでAmeba事業を統括する堀浩輝氏いわく、Ameba Owndは「誰でも無料でオウンドメディアを作れるサービス」なのだそう。

シンプルなUIでブログから企業サイトまでを作成可能

Ameba Owndでは、3ステップでサイトの開設が可能。カラーバリエーションを含めて100点以上のデザインから好みのものを選択し、サイト名などを入力してやればよい。Ameba Ownd上でブログのようなフロー型のコンテンツを書くこともできるし、Amebloと連携して、Owndのページ上にAmebloで書いているブログを表示することもできる。レスポンシブデザインでサイトを作成するため、スマートフォンでの閲覧にも対応している。

投稿画面は非常にシンプルにしており、1つの画面で前述のブログライクなページの投稿も、TwitterやFacebookの投稿も可能。ただしInstagramは外部サービスからの投稿ができないため、連携してもOwnd上での投稿はできない。また、正式サービスの開始に合わせて、サイトの作成、更新、閲覧が可能なスマートフォンアプリも提供する。簡易的な解析機能を自前で提供するだけでなく、Google アナリティクスにも対応。さらにEC向けのカート機能なども今夏をめどに提供する予定だ。

堀浩輝氏

「ブログの再発明」ではなく「ウェブサイト」

サイバーエージェントらしい点なのだけれども、著名人やアーティスト、クリエイター、企業などに対しても利用を促しているそうで、正式公開前からスターバックス コーヒーやヘアサロンのSHIMAがサイトを開設していたほか、クリエイティブ・ディレクターのNIGO氏、ディレクターの夏木マリさん、俳優の水嶋ヒロさん、ミュージシャンのZeebra、MISIA、ゲスの極み乙女。など約50のサイトが開設される。

Ameba Owndで作成されたスターバックスのサイト

ほかにもサイト開設は進んでおり、4月中にも100サイトを突破する見込みだそうだ。ただし著名人に関しては「Amebloとあまりかぶらないようにしている。アーティスト、クリエーター、美容サロンなどを中心に打診している」(堀氏)ということだった。

これまで芸能人をはじめとした著名人ブログが1つの価値になっていたAmeblo。でもAmebloのサービスだけでは、自己紹介のような静的ページを作るのは難しいし、デザインこそ変えても、サイト構造を大きく変えることはできない。またソーシャルメディアのフォロー数を増やすような施策をしたくても、そこまできっちり連携できるわけでもない。

そういった既存サービスで実現しないことの課題感、それと同時にmediumStrikinglyのような海外で新しいCMS、ブログシステムが台頭してきている一方で、国内からはその手のイケてるサービスがまだ登場していないといった背景もあってサービスを開発するに至ったのだそう。

ただ、Ameba OwndはAmebloの次、次世代のブログサービスという位置づけではないと堀氏は強調する。「Owndはブログサービスでなく、ウェブサイト。Amebloと連携して補完できるものだし、ブログサービスの再発明ではない。もちろんデザイン性が高いブログを使いたい人にとってはブログサービスと思ってもらって構わないが、ライトな層にとっては機能が多すぎる。それならば引き続きAmebloを使ってもらいたい」(堀氏)

単体でマネタイズしなくたっていい

Ameba Owndのマネタイズはまず、「とにかく規模を作る」ということだそう。とにかくユーザーを増やし、トラフィックを増やしさえすれば、サイバーエージェントグループで広告商品を作ってマネタイズしていけるという。すでに企業の利用も始まっているが、何かしらのキャンペーンと合わせてOwndのサイトを開設するということでもビジネスになるという考えだ。

また、「そもそもOwnd単体で黒字化する必要はない」という考えもあるそう。AmebloやOwnd、ゲームなどを含むサイバーエージェントのコンシューマ向けサービス群を指す「Ameba」は、会員数が約4000万人(2014年8月時点)、月間流入数が約6億セッション。スマートフォンだけでも見ても会員数が約2400万人(2015年2月時点)、MAUが約460万人(同月)という数字だ。このトラフィックを生かしてOwndに集客したり、逆にOwndから何かしらのマネタイズエンジンとなるサービスに送客したりすればいいと考えているそうだ。

サイバーエージェントと言えば、2014年夏に体制変更を発表し、Ameba事業の従業員数を1600人から800人に半減。Ameba事業から離れる800人で新規事業を立ち上げるとしていた。その新規事業部門やAmeba事業部から、新規サービスが続々リリースされる予定なのだそう。これらとOwndがどう連携していくのだろうか。


サイバーエージェントがAmeba事業の大改革、人員を半減しネイティブアプリや音楽ストリーミングなど新領域に

サイバーエージェントは7月24日、2014年9月期第3四半期の決算説明会を開催した。その中で、主力事業の1つであるAmeba事業の人員を現在の1600人から800人に半減し、800人を新たな成長分野にあてる大幅な構造改革に踏み切ることを明らかにした。

Ameba事業ではこれまで、「ガワアプリ」(ブラウザの外側だけ、という意味でウェブブラウザを表示するスマホアプリのこと)こそ提供してきたが、ネイティブアプリではなくブラウザベースでAmebaのプラットフォームを構築することに注力していた。

今回の構造改革でCP事業本部(ゲーム、コミュニティ以外のネイティブアプリ事業。内製のほか提携やM&A含む)、コミュニティ事業本部(Amebaの既存コミュニティサービスおよび各サービスのフルネイティブ化)、新規事業(音楽、動画関連の新事業)の3つの事業部を設立。Ameba事業から離れる800人を3つの新事業にあてる。

決算説明会の場でサイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏は「Ameba事業は決してジリ貧になっているわけではないが、早めの構造改革が得策と考えた。これまで進めてきたブラウザのプラットフォーム戦略は一定の安定収益が得られているが、急激な拡大は難しいと判断した」と説明。明日7月25日に社内で説明会を開催し、8月1日付けで辞令を出す。

大幅な人員減になるが、藤田氏は「LINEが400億円(LINEの2013年通期の単体売上高)、600人規模でやっている。メディアを運営する規模としては適正。一気にスマホシフトした中で残った体制なので、いいタイミングで整理できたと思っている」と説明する。

新規事業はそれぞれ個別採算制とする。今後はプラットフォームを作るというよりは、「フルネイティブのアプリを出して、1つヒットが出れば他のアプリに誘導をして…ということをしていく」(藤田氏)とのこと。また、音楽関連の新規事業については、「Spotify」などの名前も例に挙げて、音楽ストリーミングサービスを検討中であると明かした。決算説明会後に藤田氏にあらためて話を聞いたところ、Amebaで培った芸能・音楽関係のネットワークをもとに権利者などとの話し合いを進めている最中だという。