オープンソースで大企業を築いたRed Hat(社員数7300)が、エンタプライズITのポートフォリオ充実のため、また企業買収を行おうとしている。本日(米国時間10/16)同社は、ITオートメーションのスペシャリストAnsibleを買収すると発表した。同社の得意分野は、オンプレミスとクラウドの両ソリューションを組み合わせたハイブリッドITの、構築、デプロイ、そして管理だ。
これまでの噂では買収価額が1億ドル強とされていたが、業界筋によると実際には1億5000万ドルに近いようだ。Red Hat自身は買収の条件を何も公表しないが、買収の完了は今月とされている。ただし、Red Hatのほかにも、Ansibleにアプローチしている企業が数社あるらしい。
2013年にSanta Barbaraで創業したAnsibleはこれまで主にMenlo Venturesと、e.venturesのパートナーDoug Carlisleから計600万ドルしか資金を調達していない。それに対し1億5000万ドルは、相当大きなリターンだ。
AnsibleはOpenStackクラウドのスペシャリストとして名を上げ、今年前半にはその支援者としてCisco, HP, CSCおよびRackSpaceとパートナーシップを結んだ。Red HatによるAnsibleの買収は前者が今後もOpenStackビジネスを拡大していく意思の現れであり、それにはハイブリッドクラウドの管理や、OpenStackとコンテナの展開など広範囲なサービスが含まれる。
とくに今回の買収では、Red HatによるDevOps向けプロダクトの底入れが期待され、デベロッパ兼オペレータが頻繁に現場の問題に即応して、迅速にコードを書き、デプロイもしていくという最近の成長トレンドを、支援していくものと思われる。すでにTwitterなどのテク企業では行われていたこの実践が、今やほかの業界の企業にも普及しつつある。
“Ansibleは、その過程を自動化する方法を提供する”、とMenloのCarliseは語り、それがRed Hatが同社に関心を持った理由でもある、と述べた。
Red HatのVP Joe Fitzgeraldは声明文の中で、“AnsibleはITオートメーションとDevOpsにおける、誰もが認めるリーダーである。同社はRed Hatが目標とする、摩擦のないITの提供に、大きく貢献するものと思われる”、と言っている。
また、Ansibleの協同ファウンダでCEOのSaïd Ziouaniは、“オープンソースのグローバルリーダーであるRed Hatが、ITオートメーションとシステム管理の未来に挑戦するためにAnsibleを選んだことに感動している。このことは、Ansibleのシンプルなサービスと、エンタプライズのカスタマベース、そして強力なコミュニティが、コンピューティングとネットワーキングとクラウドとコンテナのすべてをカバーするエンタプライズITオートメーションにおける、勝者になりつつあることの、強力な認定である”、と声明している。
買収に関するRed Hat自身の説明はここで読める。本誌ライターのFrederic Lardinoisによると、Ansibleは複雑なOpenStackに一見単純な外見を与えて、一般ユーザにとって使いやすいものにしている。
そのようにAnsibleは、コードのデプロイに伴う大量の専門技術や専門知識を不要にして、ふつうに英語でコマンドできるようにした、新世代のITプラットホームに属する、とされている(私の知人がそう説明してくれた)。
買収に関するRed Hatの声明文は、“競合するソリューションと違ってAnsibleではコーディングのスキルが要らないので、ITオートメーションの最大の障害の一つが取り除かれている”、と述べている。
Red Hatによると、Ansibleの技術がカバーしているのは、アプリケーションをプライベートとパブリック両方のクラウドにまたがってデプロイし管理する能力、DevOps方式でサービスのデリバリをスピードアップすること、OpenStackのインストールとアップグレードを簡素化/合理化すること、オーケストレーションと構成を単純化することによってコンテナの採用を加速すること、などである。
Red Hatは今日、ニュースの一部として決算報告の簡単なアップデートも発表した。それによると買収は同社の第三および第四四半期の売上に大きな影響を及ぼさない。2016会計年度のNon-GAAP操業費用はQ3で200万ドル、一株あたり0.01ドル増加し、Q4ではこの買収の結果400万ドル(0.02ドル)となる。
Red Hatは1999年に上場し、今回はその14番目の買収となる。