グーグルがハイブリッドクラウドに全力、エッジ・オンプレミスのマネージドソリューション新ポートフォリオを発表

米国時間10月12日、Google(グーグル)は、同社の年次カスタマーカンファレンス「Google Cloud Next」において、ハイブリッドクラウドサービスの幅広いポートフォリオを発表した。これらのサービスでは、Googleのデータセンターネットワークのエッジ、パートナー施設、または顧客のプライベートデータセンターでコンピューティングを提供し、すべてを同社のクラウドネイティブ管理コンソールであるAnthosで管理する。

今回の発表の背景には、パブリッククラウドには必ずしも適さない特殊なワークロードを持つ顧客を取り込むという戦略があると、GoogleのIaaS担当GM兼VPのSachin Gupta(サチン・グプタ)氏は述べている。このようなニーズは、潜在的な顧客から絶えず聞かれていたという。

そのためには、合理的な代替案を提供することが必要だ。「パブリッククラウドへの移行を妨げるさまざまな要因があることがわかりました」とグプタ氏はいう。例えば、低遅延の要求があったり、処理しなければならないデータが大量にあったりして、そのデータをパブリッククラウドに移したり戻したりすることが効率的でない場合がある。また、セキュリティ、プライバシー、データの残留、その他のコンプライアンス要件がある場合もある。

このような背景から、Googleは純粋なパブリッククラウドではないさまざまな状況で機能する一連のソリューションを設計した。ソリューションは、Googleの世界各地のデータセンター、通信事業者やEquinixのようなコロケーション施設のパートナーデータセンター、あるいは企業のデータセンター内の管理対象サーバーの一部として、エッジに設置することができる。

後者については、Dell(デル)やHPEなどのパートナー企業が提供するサーバーであり、Amazon(アマゾン)が提供するOutpostsのようにGoogleが製造・管理するサーバーではないことに注意が必要だ。また、これらのマシンはGoogleのクラウドに直接接続されるわけではないが、Googleがすべてのソフトウェアを管理し、IT部門がクラウドとオンプレミスのリソースを一元的に管理する方法を提供するというところも興味深い点だ。これについては後述する。

ホスティングソリューションの目的は、コンテナとKubernetes、または仮想マシンを使用した、一貫性のある最新のコンピューティングアプローチだ。Googleは安全なダウンロードサイトを通じてアップデートを提供しており、顧客は自分でチェックすることも、サードパーティベンダーにすべてを任せることもできる。

このアプローチを支えているのは、数年前に発表した制御ソフトウェアであるAnthosだ。Anthosを使用することで、顧客は、オンプレミス、データセンター、パブリッククラウドなど、それがMicrosoft(マイクロソフト)やAmazonのような競合他社のクラウドでも、ソフトウェアがある場所でコントロールし、管理することができる。

Google Cloudハイブリッド・ポートフォリオ・アーキテクチャ図(画像クレジット:Google Cloud)

このようなアプローチは、Googleがハイブリッドの市場機会を利用して、クラウドの中で独自のシェアを開拓しようとしていることを示している。この分野はMicrosoftやIBMも開拓しようとしているが、Anthosを使ってすべてをつなぎ合わせながら、このような包括的なプラットフォームアプローチをとることで、とりわけ特定のワークロードをクラウドに移行できないような固有の要件を持つ企業において、Googleが支持される可能性がある。

Googleは、8月に発表された最新の四半期報告書において、クラウドインフラストラクチャ市場のシェアが初めて10%に達し、54%という活発な成長率を示した。市場シェアが33%のAmazonや20%のMicrosoftにはまだ遠く及ばないものの、少しずつ勢いを増してきていることがうかがえる。

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画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

Googleが仮想マシンをAnthosクラウドに移行させるテクノロジーを公開

Googleは11月20日からロンドンで開催されているCloud Nextカンファレンスで、エンタープライズコンピューティングのAnthosプラットフォームへの移行を助けるための重要なアップデートをいくつか発表した。また各種Cloud Codeツールも一般に公開された。これらはGoogle CloudないしKubernetesクラスターをサポートする環境で作動するモダンアプリケーションを構築するために役立つという。

モダンアプリケーションの開発、移行プラットフォームであるAnthosは、最近Googleがスタートさせたサービスの中で最も重要なものだろう。これはGoogleのエンタープライズビジネスをGoogle Cloudの外、つまりクライアント企業のデータセンターにに拡張するものだ。やがてエッジコンピューティングにもAnthosプラットフォームが浸透していくことになりそうだ。

20日のイベンドでGoogleはAnthos MigrateをベータからGA(一般公開)に移行させた。簡単に言えば、Migrateはエンタープライズが既存のVMベースの処理をコンテナ化するツールだ。オンプレミス、AWS、 Azure 、Google自身のCompute Engineなどすべてのワークロードはコンテナ化され、容易にAnthos GKE、Kubernetesをサポートする環境で作動するようになる。

取材に対し、Googleのプロダクト・マネジメント担当のバイスプレジデントであるJennifer Lin(ジェニファー・リン)氏は「Anthos Migrateはカスタマーの期待に答えて画期的な進歩をもたらすツールだ。既存の仮想マシンを維持しつつ、Kubernetesの利点をフルに活かせる。カスタマーは当初からすべての業務をクラウド・ネーティブのコンテナで処理できるとは限らない。カスタマーにとって重要なのはオペレーションのパラダイムの一貫性と継続性だ」と語った。

Anthos自体についてリン氏は「Googleは有望な手応えを感じている」と述べた。Googleはいくつかのクライアント企業のユースケースを紹介したが、その中にはドイツの空気圧縮機の大手、Kaeser Kompressorenやトルコの銀行、Denizbankが含まれていた。

リン氏によれば、多くの金融機関がAnthosプラットフォームに関心を示しているという。「データ駆動型アプリケーションでは複雑な処理が多数必要とされる。Kubernetesはこのような場合にうってつけだ。つまりデータ駆動型業務では分散した複数のデータベース、ウェブサイト、モバイル・デバイスからの入力を処理しなけれならない。多様なデータセットを対象にしなければならないため、単一のアプリケーションでは処理できないのが普通だ。しかも分析結果はリアルタイムで求められる。成果物はウェブブラウザやモバイルアプリで表示できなければならない。しかしこうした作業はGoogleの得意とするところだ」。

さらに今回のイベントでCloud Codeのベータ版が外れて一般公開された。 これはVisual Studio CodeやIntelliJなどのIDE向けのGoogleのエクステンションで、でロッパーがクラウドネーティブのアプリをコーディング、デバッグ、デプロイするのを効率化する。もちろん最終的な狙いはコンテナをビルドすることを助け、Kubernetesで利用できるようにすることだ。.

一般公開されたツールにはApigeeハイブリッドも加わった。 これはデベロッパー、オペレーターがAPIのトラフィックを管理することを助ける。 APIのホスティングにオンプレミス、クラウド、マルチクラウド、ハイブリッドを選択できるという。最近のエンタープライズではこのような複数の環境を利用することが珍しくなくなっている。これによりApigeeのAPIランタイムをハイブリッド環境で利用することも簡単になる。その場合でもApigeeクラウド上のモニター、分析ツールはフルに利用できるしAnthosにデプロイすることも可能だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Google Cloud Next 2019の重要発表トップ6まとめ

Googleのクラウドデベロッパー向けカンファレンス、Cloud Next 19はサンフランシスコで開催中だが、プロダクトの発表は出揃ったようだ。以下にもっとも重要と思われる6項目をまとめてみた。

Anthos

これは一体何?
AnthosはGoogle Cloud Services Platformに与えられた新しい名称だ。 エンタープライズ企業がコンピューティングリソースの管理や料金の積算、支払いといったわずらわしい業務の処理もすべて任せるプライベートデータセンターとしてとしてGoogle Cloudを利用する場合、 Anthosがそのプラットフォームの名前となる。

しかもAnthosはAmazonのAWSやMicrosoftのAzureといったライバルのクラウドもサポートに含める。これにより他のクラウドを利用している企業もGoogleを単一のクラウドの窓口とすることができる。つまりAnthosを使えばGoogle以外のクラウドに自社のプリケーションをデプロイしたり管理したりできる。クラウドのダッシュボードが単一となるだけでなく、料金もAnthosがまとめて計算し、請求する。こうしたことが可能になるは、予想通り、コンテナーとKubernetesの威力だという。

どこが重要なのか?
Googleのような巨大クラウドの運営者がライバルのクラウドをサポート対象に含めるというのは異例中の異例だ。ライバルのクラウドで実行されたコンピューティング料金はライバルに流れてしまう。しかしGoogleは「これは顧客の要望に基づくもので重要な問題を解決する」と主張する。GoogleはAWSやAzureを追う立場にあり、先行ライバルに対してはっきりした差別化を図る必要があった。優位にあるAWSやAzureが今後Googleのアプローチを採用する可能性は低いが、そうなればユーザーの利便性は大きく高まるだろう。

Google Cloudがオープンソース各社と提携

これは一体何?
Googleはオープンソースプロジェトのトップ企業多数と提携し、Googleクラウドのサービスjの一部として利用できるようにした。発表されたパートナーはConfluent、DataStax、Elastic、InfluxData、MongoDB、Neo4j、Redis Labsだ。提携はさらに拡大するものと見られる。

どこが重要なのか?
すでにこうしたオープンソースプロジェクトの製品を利用しているエンタープライズにとって大きな朗報であり、Google Cloudのセールスポイントとなるだろうこうしたオープンソースプロダクトのカスタマーサポートや利用コストの支払いなども上で紹介したAnthosプラットフォームが単一の窓口となる。実際の内容はかなり複雑だが、今回のカンファレンスでGoogleがオープンソース化を鮮明にしたことがはっきりした。これはAWSのクローズドなアプローチとは対照的だ。オープンソース各社はAWSが「オープンソースを利用するだけでまったく貢献しようとしない」として反発を強めている。

Google AIプラットフォーム

これは一体何?
Googleは自社の強力なAIがAWSやAzureなどのクラウドと競争する上でセールスポイントとなると考えている。Googleはすでにデベロッパーやデータサイエンティストなどに向けて各種のAIツールを提供している。たとえばAutoMLは、その名のとおり、与えられたデータから自動的に機械学習モデルを生成するサービスだ。利用するために計算機科学の博士号は必要ない。新しいAIプラットフォームはエンタープライズの業務に全面的なソリューションを与えることができるさらに高度なサービスをデベロッパー向けに提供する。これは元データの整理からモデル化、学習、アプリ作成までサポートする。このプラットフォームには簡単に利用できるテンプレートモデルがいくつか用意される。

どこが重要なのか?
AI(機械学習を含む)は現在の主要クラウド事業者全員が取り組んでいるホットな課題だ。しかしユーザーが実際に業務に適用しようとすると改善を要する点がまだ多い。とくに元データからアプリケーションまでエンドツーエンドでソリューションを提供できるというのは明らかに大きな進歩だ。これにより機械学習の利用が拡大することが期待できる。

Androidスマートフォンがセキュリティーキーになる

これは一体何?
ドングルを接続したりマニュアルでセキュリティー数字を打ち込んだりせずにAndroid 7以降のスマートフォンを持っていれば自動的な2要素認証によるサービスへのログインが可能になる。ユーザーはGoogleアカウントからBluetoothを有効にしておく必要がある。今のところこの機能はChromeのみサポートしているが、Googleはこの機能を他のブラウザやモバイルOSがサポートすることを期待している。Googleではユーザーが(残念ながら起こりうる可能性だ)スマートフォンを紛失したときのために、これまで通り、プリントアウトできるセキュリティーキーが使えるとしている。

どこが重要なのか?
2要素認証は単なるパスワードによる認証より安全性が格段に高い。しかし2要素認証であってもユーザーを偽サイトに誘導するフィッシング攻撃で破られる可能性があった。しかし今回の新しい自動2要素認証システムは正規のサイトかどうかを判別する。またユーザーの煩わしさも大きく軽減される。Googleではこれにより2要素認証の普及が進むことを期待している。

Google Cloud Code

これは一体何?
Cloud CodeはIntelliJやVS CodeのようなポピュラーなIDEで利用できる一連のプラグインだ。これは開発作業でローカルとクラウドを往復したり、必要なツールを別途探したりする必要をなくしてデベロッパーにクラウドネイティブな開発環境を提供することが狙いだ。Cloud Codeを利用すれば、デベロッパーはこれまでのローカルの開発と同様にコードを書くだけで自動的にクラウドで実行可能なパッケージが生成される。これはKubernetesクラスターに送りこんでテストしたり、業務に利用したりできる。

どこが重要なのか?
クラウドネイティブなアプリを書くのは複雑な作業で、特に適切なコンフィグレーションファイルを書くのが難しかった。Cloud Codeはデベロッパーの負担を軽減するのが狙いだ。これによりクラウドが企業コンピューティングのインフラとなることが促進されるはずだ。

Google Cloudはリテラーをターゲットに据えた

これは一体何?
今回、通販など小売業を対象としてバーティカルソリューションが発表された。Googleはリテラーをクラウドコンピューティングのターゲットに加えた。それだけ聞けば「当たり前だろう」と思う読者も多いだろうが、Google Cloudではリテラーがすぐに使えるパッケージを今後強化していくという。

どこが重要なのか?
Google Cloudの新CEOのThomas Kurian氏によれば、カスタマーは現在使用中の業種に特有なツールをそのままクラウドでも利用したいと強く要望しているという。リテラー向けパッケージは(ヘルスケア分野もそうかもしれないが)業種に特化した初めてのクラウドソリューションとなる。カバーされる業種は今後されに拡大される予定であり、クラウドプラットフォームの重要な柱に成長させていくという。

記事の背景
TechCrunchはGoogle Cloudの新しいCEOのThomas Kurian氏に独占インタビューするチャンスがあった。我々は各種の発表の背景やGoogle Cloudが目指す方向について参考となる話を聞くことができた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook