SuborbitalがスケーラブルなサーバーアプリケーションWebAssemblyプラットフォームで1.8億円調達

スケーラブルなサーバーアプリケーションを作るためのオープンソースのWebAssemblyプロジェクト、Atmoを提供しているSuborbitalが、Amplify Partnersがリードする160万ドル(約1億8000万円)のシードラウンドを調達したことを発表した。このラウンドには、GitHubの前CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏やAtlassianのCTOであるSri Viswanath(スリ・ヴィスワナート)氏、FastlyのCTOであるTyler McMullen(タイラー・マクマレン)氏、Goliothの創業者Jonathan Beri(ジョナサン・ベリ)氏、RapidAPIのエンジニアリング副社長Vijay Gill(ビジェイ・ギル)氏、およびCommsorの創業者であるMac Reddin(マック・レディン)氏ら、多くのエンジェル投資家が参加した。

同社はまた、Suborbital Computeの公開ベータのローンチを発表した。一見するとこれは、ややおかしなプロダクトと思えるかもしれない。SaaSのサービスがベーシックなドラッグ&ドロップによる統合を超えて、自分のプロダクトに拡張性を持たせようとすると、そういう拡張をデベロッパーがプロダクトの中に書けるためのツールが必要だ。しかしそれらのユーザーファンクションは大量のセキュリティ問題を抱えてしまう。そこでデベロッパーがSuborbital Computeを使うと、SaaSのデベロッパーはエンドユーザーに、自分独自のファンクションを書き、WebAssemblyのサンドボクシングプロパティで自分のプロダクトを拡張する能力を与える。そのプロパティはAtmosや、Suborbitalのその他のオープンソースツールのベースであり、多くのガードレールを提供する。

しかし、それは単なるスタートだ。Suborbitalは、もっと野心的なプロジェクトだ。CEOで創業者のConnor Hicks(コナー・ヒックス)氏によると、同社のミッションは「私たちが1つの産業としてのコンピュートに関して考え、それをデプロイするときの考え方そのものです」。ヒックス氏は以前、1Passwordプラットフォームのチームで仕事をし、1Psswordのコマンドラインインターフェースや、そのエンタープライズプロダクトなどのツールを作っていた。その後は同社のエンタープライズプロダクトのR&Dのトップになったが、そこで彼はサイドプロジェクトとして、最初はDockeをベースとする「分散ファンクション・アズ・ア・サービス」のシステムを作っていた。しかし、Dockerではあまりに遅いため、WebAssemlyに移行した。しかし、それによって彼は、予想以上の複雑性に遭遇した。その大部分は、それが動くためのグルーコードを全部自分で書くことだった。でも、ほぼ2年前にやっと、すべてが順調に動き出した。

「そこで、そのときやってたことをもっと真剣に考えるようになり、時間も割くようになって、そこから出てきたものが、WebAssemblyのファンクションのスケジューラー、今日のReactrプロジェクトだでした」とヒックス氏は説明する。ReactrはGoのライブラリだったが、多くの人は純粋なWebAssemblyのサービスの方に関心を持った。そしてそれが今のAtmoプロジェクトになり、Suborbitalの中核的プロダクトになった。

「Atmoと名づけた大きな実験は、『宣言的に書かれているウェブサーバーのアプリケーションを、ユーザーがボイラープレートをまったく書かずに動かすにはどうするか』というテーマでした。そこで宣言的な記述と大量のファンクションでWebAssemblyをコンパイルして、このウェブサービスをビルドして動かすやり方、そのセキュリティ、自動的な高速化、そしてユーザーの手作業による配管工事の不要化、等々がわかってきました」とヒックス氏の説明する。

AtmoでSuborbitalは、サーバーサイドのWebAssemblyに賭け、デベロッパーはRustやSwiftやWebAssemblyなどの言語でコードを書ける。それらはWebAssemblyにコンパイルされ、Atmoがデプロイし管理して、サンドボックス化された環境で動く。Atmoの核は、WebAssemblyのモジュールを動かすスケジューラーであり、しかもネイティブに近いパフォーマンスを約束している。

ヒックス氏が考える今後の姿は、多くのアプリケーション、中でも特にエッジのアプリケーションのデプロイで、このやり方がコンテナの役割に挑戦することだ。「リソースに制約のあるエッジの小さな環境では、ベアメタル上のWebAssemblyがコンテナの必要性のかなりの部分を置き換えてしまうのではないか、と彼はいう。

しかし、なぜ今どきこんなニッチのプロダクトをローンチするのか?「Atmo Pro」のようなものの方が、もっと妥当ではなかったか?しかしヒックス氏の主張では、それはまだ早いという。考え方そのものがまだとても若いので、マーケットの状況はまだそれに対して熟していない。

「Atmoサービスをホストすればお金になるほど、広く普及してはいません。Atomのホスティングや、有料のプロバージョンで儲けるなんて不可能だと気づいた以来、私は『多くの人がお金を払ってでも購入したいと思うような、実際にビジネスを構築できるものは何か?』と自問しています」とヒックス氏はいう。

ヒックス氏によると、現在、チームは4名だがすでにパートナー探しを始めている。ただし2022年は、インフラストラクチャを大きくして、オペレーションの能力を上げることが先決だという。

画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オフィスでの新型コロナ感染リスク率を表示するATMOの空気モニタリングデバイス

2015年、TechCrunchは電子機器の見本市であるCESで発表されたのち、数々の賞を受賞した小型で革新的なポータブル大気質モニター「Atmotube(アトモチューブ)」を紹介した

Vera Kozyr(ヴェラ・コザー)氏が共同で設立したATMOは、企業向けの室内空気環境モニタリングシステム「Atmocube(アトモキューブ)」を発表した。Atmocubeは、オフィス内の空気環境が極めて重要となるポストCOVID時代に向けられており、小型で持ち運びができる以前の製品(この製品もまだ販売されてはいる)と異なり、目立つことでオフィスワーカーに良い空気環境であると安心感が与えられるようにもなっている。

その鍵となるのが、さまざまな指標とともに「Atmocube」の画面に表示される二酸化炭素レベルの測定値だ。

このデバイスには最大14個のセンサーが搭載されており、CO2、ホルムアルデヒド、PM1(空気中の小さな粒子)、PM2.5、オゾンなどの各種環境パラメータや相対湿度、温度、気圧、環境騒音、光量、色温度などを測定する。

ATMOによると、この新デバイスは、粒子状物質、湿度、CO2のレベルに基づいて、ウイルスの空気感染スコアを計算し、閉ざされた空間でウイルス疾患が感染する確率を推定する「スコア」を導き出すという。もちろん、これを検証するには独立したテストが必要だが、WHOが新型コロナウイルスは換気の悪い、あるいは混雑した室内環境で感染する可能性があると勧告しているのは事実だ。

「大気汚染は、気づかないうちに自分自身や健康に影響を及ぼすので危険です。私たちは、人々が自分の吸い込んでいるものを知り、その結果として変化を起こす助けになることを目指しています。企業がオフィスに戻る際には、室内の空気環境に関する情報を透明化し、従業員がその情報にアクセスできるようにするツールが必要です。多くの空気環境モニターは隠されることを前提に設計されています。そこで私たちは暖房、換気、および空調のパフォーマンス(HVAC)の安全性を強調する、より透明性の高いインターフェースを備えたデバイスを作り、オフィスにいる人々とビルのオーナーの間に信頼関係を築くことを目指しました」とコザー氏はいう。

この分野には、AirThingsAwair OmniKaiterraなどが参入しており、ATMOだけが唯一のプレイヤーではない。

関連記事:オフィスの新型コロナ対策を支援する空気品質監視プラットフォームのOpenSensorsが4.1億円調達

画像クレジット:Atmocube

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

気象災害に備える企業にAIを組み合わせた天気予報分析を提供するAtom

「地球上のほぼすべてのビジネスは天候の影響を受けています」と、投資家で連続起業家のAlexander Levy(アレクサンダー・レビー)氏はいう。同氏の最新の会社は、新しい天気予報スタートアップのAtmoだ。

2020年初めにY Combinatorを卒業した同社は、予測ソフトウェアのためにSignia Venture PartnersとSound Venturesから200万ドル(約2億800万円)を調達した。時にビジネスでは、ボブ・ディランの歌とは違って、風向きを知るために天気予報士が必要になることもあるからだ。

Atmoは元Google Xの社員で、Project Loon(プロジェクト・ルーン)に携わっていたJohan Mathe(ヨハン・マテ)氏によって設立された。Project Loonとは、新興国市場でワイヤレスネットワークを構築するために、気球を使ったインターネット接続を提供することに注力した事業部門だ。

「私は天候に取り組むことに多くの時間を費やしました」とマテ氏はいう。彼の仕事は、様々な地域で気球をナビゲートする方法を見つけることだった。そのナビゲーションの多くは、気象パターンによって複雑だった、と彼は語った。

「天候と膨大な量のデータが非常に複雑に絡み合う中で、私はそれを構築しなければなりませんでした」と、マテ氏はいう。「そこで私は考えたのです、天気とAIの交差点を、もっと誰もが利用できるようにするために、何かを構築しなければならないと」。

これが4年間におよぶ旅の始まりだった。やがてそれは、Atmo (以前はFroglabs.aiとして知られていた)というカリフォルニア州バークレーを拠点とするスタートアップに結実した。同社は現在、再生可能エネルギーからアイスクリームショップまで、さまざまなビジネスに天気予報分析を提供している。

創薬会社Atomwiseの共同創業者であるレビー氏は、マテ氏を社会的に知っており、彼の会社がまだアイデアだけの時に最初に投資した。しかし、気象データに価値を見出したレビー氏は、投資家やアドバイザーから共同創業者へと跳躍することにした。

現在、マテ氏とレビー氏そして最高技術責任者のJeremy Lequeux(ジェレミー・ルキュー)氏は、バークレーにあるレビー氏の家で、ソフトウェアを開発し、会社を次のレベルに引き上げるために働いている。

そして最近の出来事が同社のサービスの必要性を十分に明らかにしている。全米海洋大気庁がまとめたデータによると、2019年以降、気候関連の出来事は米国におよそ890億ドル(約9兆2500億円)ものコストをかけているという。

「すべてのビジネスは、天候に左右されます」とレビー氏はいう。「たとえばアイスクリームを販売する場所について考えてみましょう。気温が1度、高くなるか低くなるかによって、売り上げは10%も影響を受けます。私たちは汎用的な予測システムの作成に向けて取り組んできましたが、気象データを使用する一方で、世界中から集めた過去の天気のデータも用います。この2つを比較して、主要なビジネス指標のすべてが天候によってどのように影響を受けるかを分析します」。

レビー氏によると、同社はすでに、再生可能エネルギーやeコマース、物流業界の20億ドル(約2000億円)規模の企業を含む半ダースほどの顧客を抱えているという。

「私たちが取り組んでいる分野の1つに、リスクと異常気象があります。たとえばほとんど人間が介入できない異常気象を、どうやって予測するのかということです」とレビー氏はいう。「私たちは、このような予測を、比較的正常な状態にあるときに最適化する方法とは切り離して行っています」。

このような異常気象が増えるにつれ、需要は増加する一方だ。政府や企業はこれらの破局的な状況に耐え、適応する能力を向上させる方法を模索しているからだ。

「ニーズはあります。最近では、誰もがレジリエンス(回復力)について話しているからです」とレビー氏は語る。「Atmoは、現在そんな問題について不安を抱えている大企業に、これらの洞察を提供する会社だと、私は考えています」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Atmo天気Y Combinator資金調達

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)