Epic Gamesが楽曲販売プラットフォームBandcampを買収、音楽分野へ進出

ハッピーBandcamp(バンドキャンプ)ウェンズデイ。Fortnite(フォートナイト)開発元であるEpic Games(エピックゲームズ)が、Bandcampを丸ごと買収することになった。音楽配信・販売プラットフォームを提供するBandcampは、米国時間3月2日のブログ記事で買収を発表し、共同創設者兼CEOのEthan Diamond(イーサン・ダイアモンド)氏が指揮をとる独立した組織として、今後も機能し続けることを付け加えた。

「我々は、世界で最もオープンでアーティストフレンドリーなエコシステムを構築するというビジョンを共有しており、ともにアーティストが作品に対して公正な報酬を得る機会をさらに増やすことができるでしょう」とダイヤモンド氏は投稿で述べている。

今回の買収では、Bandcampのマーケットプレイス、コミュニティ、エディトリアル製品であるThe Dailyは独立した組織として引き続き運営されるなど、業務は比較的いつもどおりに続くアプローチがとられている。また、同社が毎月第一金曜日に行ってきたBandcamp Friday(バンドキャンプ・フライデー)も予定通り継続するとしている。Bandcamp Fridayは、コロナ禍でコンサートツアーが中止され、多くのミュージシャンが生活を維持するのに苦労している中、購入額から通常Bandcampが差し引く手数料を受け取ることなく、その分もアーティストやレーベルに還元するという毎月恒例のイベントで、非常に人気がある。

「2008年の設立以来、当社は音楽が持つ癒しの力を広め、ファンからの直接的な支援によってアーティストが成功するコミュニティを構築するというミッションを追求してきました」とダイアモンド氏は続けた。「そのシンプルな発想が功を奏し、アーティストやレーベルへの支払いは10億ドル(約1155億円)に迫る勢いです」。

確かにテーマからすると奇妙な買収だ。しかし、Epicは近年、Fortniteの熱狂的な人気のおかげで、大量の資金を手に入れ、買収に明け暮れている。一方、パンデミックによって、多くのミュージシャンが自分の作品と、それを世に送り出すためのプラットフォームとの関係を見直す必要に迫られている。Bandcampは、Spotify(スポティファイ)のような巨大サービスに対して、はるかにミュージシャンフレンドリーなサービスと位置づけで、ストリーミングコンサートなどを提供サービスに追加している。

EpicのVPであるSteve Allison(スティーブ・アリソン)氏は、別のブログ投稿でこう述べている。「Epic GamesにBandcampのチームを迎えることができ、これ以上ないほどうれしく思っています。Bandcampは、新進気鋭のアーティストが、ファンの直接的なサポートによって成功できるようなすばらしいコミュニティとビジネスを構築しており、音楽界で最高レベルの収益モデルと条件を備えています。これは、あらゆるメディアでクリエイターを支援し、ファンと直接つながることを可能にするというEpicのアプローチと良く調和しています」。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Den Nakano)

音楽は2020年を良いものにしてくれたが、私たちはミュージシャンを幸せにしていない

音楽が命綱だった年に、恩返しをしよう。

「Are you okay?」(大丈夫ですか?)

その問いかけに、私は良い答えを持ち合わせていない。私がアルゴリズムの問いかけに対して答えようとしていること(Puddingサイト)は承知しているし、違うバンドに入れ替えて誰に対しても同じ質問をしていることも知っているが、その質問の重みが和らぐことはない。私が?私たちが?誰もが?

実際にここで尋ねられているのは、Waxahatchee(ワクサハッチー)のことだ。今年はワクサハッチーをたくさん聴いた。ワクサハッチーは良い。ワクサハッチープロジェクトのアルバム「Saint Cloud」(セイント・クラウドは、今年私が一番気に入ったアルバムの1つだ。私にとって、(ワクサハッチーの)Katie Crutchfield(ケイティ・クラッチフィールド)氏の音楽は、エリオット・スミス氏やレナード・コーエン氏の音楽の中には見出すことができないものだ。まあこの記事で私のSpotify(スポティファイ)ソーシャルフィード上の好みのバンドを紹介しようというわけではない。

今週のSpotifyの熱いAIの動きは、音楽ファンにとって面白いものとなっている。それはまた、より大きな真実をあぶり出しているかもしれない。Spotifyが毎年恒例の「今年のまとめ」を繰り出してくる中で、少なくとも私たちは今年の過ごし方に思いを馳せたはずだ。

この史上最悪の年にふさわしいサントラは何だろう?世界が燃えているときに、私たちは何を聞くのか?2009年に、CNNの元インターンが偶然アーカイブのビデオテープを見つけた。そのタイトルは「ターナー・ドゥームズデイ・ビデオ」(ターナー最後の審判ビデオ)というものだ。(JALOPNIKサイト)この1分間のビデオには、沈没したタイタニック号で最後に演奏されとされる「Nearer My God To Thee」(主よ御許に近づかん)を演奏する楽団が登場する。そのビデオには「世界の終わりが明らかになるまで公開しないこと」と明記されていた。

土壇場でのサプライズがない限り、2020年は完全な黙示録からはほど遠い状況で終えることができそうだ(おそらく)。しかし私にとって、Spotifyの年間まとめはこの大変な一年を証言するものだ。それはちょうどパンデミックがニューヨークのクイーンのわたしの家を襲撃して、3月の後半から4月にかけて私のApple Watchのエクササイズ記録がゼロとなり、自分自身の健康問題に対処していたことと同じだ。

これまでの12カ月の私の聴き方の習慣がまとめ上げられた内容が、音楽との付き合いも不可能になるのではと思わせた長い時間の証言として、機械から流れ出てくる。歌詞を聞き咀嚼することに疲れを感じるようになったとき、アンビエント音楽とポストロックが再び私を捉えていた。そして、いくつかのお気に入りのトラックを、取り憑かれたように繰り返し聴き続けたことがあるのは、私だけではないと確信している。

こうやって振り返ることは、多くの人にとって過去最悪になったこの一年の中で、聴いた音楽が果たした役割を思い出すのに役立つ。2020年は音楽が私の命を救ってくれたと言ったら言い過ぎだが、あまりにも多かった感情面への打撃の一部を確実に和らげてくれた。

神経学者だった故オリバー・サックス氏は「音楽は、憂鬱から救い出したり、涙を流させたりすることができます。それは治療であり、強壮剤であり、耳のためのオレンジジュースなのです」と書いている。「しかし、私が担当した神経症患者の多くにとって、音楽とはそれ以上のものなのです。それは、たとえ他の治療が効果がないときにさえ、動きや、発話や、生活そのものに影響を及ぼすことができるのです。彼らにとって音楽は贅沢品ではなく必需品なのです」。

ルイ・アームストロング氏の言い方はさらに簡潔だ「音楽は人生そのものさ」。

残酷な皮肉は、音楽が多くの人にとって重要な意味を持つこの年に、ほとんどのミュージシャンが生活費を稼ぐのに苦労しているということだ。もちろん今年苦労しているのは音楽の分野だけではないが、ストリーミング収入がミュージシャンのレコード売上に比べてわずかなものに過ぎず、大物を除けばツアーが最も重要な収入源となっている時代には、彼らの苦境は顕著だ。この10ヶ月間、それらはすべて干上がっていた。

「パンデミックはライブ・ミュージック業界を完全に崩壊させました」とWilco(ウィルコ)のフロントマンであるJeff Tweedy(ジェフ・トゥイーディ)氏は最近のインタビューで述べている(ウォール・ストリート・ジャーナル記事)。「この1年はまったく収入がない状態が続いています」。

5月に行われた音楽家ユニオンの調査(NME記事)によれば、ミュージシャンの19%が新型コロナウィルスの影響でキャリアを諦めることになるかもしれないと答えている。それから7カ月が経った今、その数字はおそらく楽観的だったのではないかと考えられている。

トゥイーディ氏は付け加える「演奏できる場所はみつかるでしょう。しかし見える風景は全く異なるものになる筈です。多くの小さなビジネスやレストランと同じように、気軽に寛げる音楽会場の多くがなくなるのではないかと想像しています」。

関連記事:音楽配信のBandcampが手数料免除の「Bandcamp Friday」を2021年5月まで延長

音楽配信のBandcamp(バンドキャンプ)は多くの人にとっての道標となっている。同サービスの、手数料を免除した「Bandcamp Fridays」(バンドキャンプ・フライディズ)は、現時点までに4000万ドル(約41億4000万円)の売上を達成している。同サイトは、少なくとも来年5月までは同機能の提供を継続することを約束している。

今年の苦境は、ストリーミングの印税をめぐる懸念を浮き彫りにすることになった。Spotifyがこの話題の焦点となっているのは当然のことだが、一方で同社はポッドキャスト番組を強化するためにこれまで数億ドル(数百億円)を費やしてきた。7月にCEOのDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は「過去に成功していても、将来的にはうまくいかないアーティストもいるかもしれません。3~4年に一度レコーディングを行えば十分という時代ではありませんから」と、彼にとって何の得にもならない発言をした。

関連記事:Justice at Spotify demands better compensation and increased transparency for musicians(未訳記事)

Justice at Spotify(ジャスティス・アット・スポティファイ、Spotifyに公正な収入分配を求める運動)の代表であるDamon Kurkowski(デイモン・クルコウスキー)氏は、10月に以下のように私に語った「業界の特定の一部からの反応は、私たちの予想通り冷たいものでした。要するに『君たちは単なるミュージシャンで商売のことがわかっちゃいない』ということです。それに対して私が言いたいのは『私たちが注意を呼びかけている問題は、まさにミュージシャンがそうした会話から取り残されている』ということなのです。ストリーミングビジネスは私たちの仕事の上に成り立っているのにもかかわらず、支払いと相談が来るのはいつでも最後になっているのです」。

音楽で生き抜くための苦労は、もちろん目新しい話ではない。ジャズの天才セロニアス・モンクには、パノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター男爵夫人(Baroness Pannonica de Koenigswarter)というパトロンがいたことは良く知られている。しかし、これまでミュージシャンたちを助けられなかったからといって、この先上手くやれないわけでも、上手くやらなくて良いわけでもない。

私は大丈夫だろうか?まだよくわからないが、音楽を聴くことは役に立ちそうだ。

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タグ:SpotifyBandcamp

画像クレジット:Jon Feingersh Photography Inc / Getty Images

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(翻訳:sako)

音楽配信サービスのBandcampが手数料免除の「バンドキャンプフライデー」を2020年5月まで延長

この8カ月あまり、ミュージシャンは非常に困難な時期を過ごしている。ツアーは中止になりストリーミングサービスからはごくわずかな報酬しか得られず、多くのアーティストの生活が完全に崩壊している。しかし、2020年3月以降、Bandcamp(バンドキャンプ)は多くのミュージシャンにとって貴重な道しるべとなっている。

毎月第1金曜日、同サービスは手数料を免除してアーティストやレコード会社が利益を増やす機会を提供している。これまで9回の金曜日で、このサービスから4000万ドル(約41億4000万円)が生まれ、80万人近くがその日に楽曲を購入した。アーティストは平均して売上の93%を受け取る(残りは支払手数料)。通常は82%だ。

ワクチンの登場は希望の理由の1つであるものの、困難を脱していないことは明らかだ。これを踏まえ、同サービスはBandcamp Fridayを少なくとも2021年5月まで延長することを発表した。具体的には2月5日、3月5日、4月2日、5月7日があてはまる。

他のオンラインサービスはあまり積極的ではない。2020年7月にSpotify(スポティファイ)のCEOであるDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は「以前活躍していたアーティストが今後の状況下で活躍するとは限りません。3〜4年に1度レコードを出せば十分という時代ではありませんから」とメディアに語っている。

音楽印税支払いをめぐる批判をよそに、Spotifyは数億ドル(数百億円)を費やしてポッドキャスティングの独占コンテンツのライブラリーを増強した。

関連記事:Bandcampのリモート音楽ライブはチケット収入の大半がミュージシャンのものに

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タグ:Bandcamp音楽

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Bandcampのリモート音楽ライブはチケット収入の大半がミュージシャンのものに

ミュージシャンの人生も楽じゃない。ここ半年ほどは特に厳しい。スターと呼ばれるような人たち以外は、ライブやコンサートが主な収入源だが、いまではそれもできない。当分、できそうもない。

Bandcampは、ストリーミングの売上からわずかな金額を得ているような多くのアーティストにとって救世主のような存在だ。中でも人気の高いBandcamp Fridaysでは、毎月1週間の料金を設定している。​ミュージシャンがファンに遠隔演奏を提供する方法を模索している現在、​Bandcampはライブストリーミングをスタートさせる(Bandcampリリース)。

​Bandcampによるストリーミングサービスの提供は、十分に条件が整っている。まず1つには、同社はそのための好意を得ていること。もう1つは既存サービスとの統合により、ファンはコンサートの予定を通知を受けることができること。そしてライブの間、ミュージシャンのグッズが紹介され、演奏を楽しみながら購入することもできる。

セットアップの手順も非常に簡単で、ステージの上でアーティストがちょっとトークをしたくなったらオプションでチャットも用意されている。正直なところ最も魅力的なのは、経費が安上がりなことだろう。​ミュージシャンは自分たちで料金を設定するため、よくあるびっくりするような料金になることもない。Bandcampが受け取るのは10%だけで、しかも2021年3月まで無料だ。

​BandcampにはすでにClap Your Hands Say Yeah、Pedro the Lion、Cloud Nothingsといった有名インディーズバンドを起用している。​ストリーミング機能は米国時間11月17日から一般ユーザーに提供されている。

関連記事:Bandcampがアーティストを支援するイベントを継続開催

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タグ:Bandcamp音楽

画像クレジット:Bandcamp

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(翻訳:iwatani、a..k.a. hiwa