退職金小切手が給与計算アプリに表示され、Better.com従業員は自らのレイオフを知る

デジタル住宅ローンの貸し手であるBetter.com(ベタードットコム)の大量解雇が始まったと同社の従業員やその他の関係者が報じており、影響を受けた従業員は、同社の給与計算アプリであるWorkdayのアカウントに退職金小切手が表示されているのを見てそのことを知ったという。

このレイオフは米国時間3月9日に発表される予定だったが、ある従業員(反響を恐れて匿名を希望)はTechCrunchに「会社が誤って退職金の給与明細を早く出してしまいました」と語った。Better.comの幹部は、3月8日にレイオフを計画していたそうだが、最初の日付のニュースが漏れたときに、その日付を3月9日に移動させたと伝えられている。

どうやら、幹部たちは自分たちのミスに気づくと、何人かの人々のWorkdayアカウントから小切手を削除したようだ。その従業員によると、退職金の小切手は、会社から何の連絡もなく届いたという。

その従業員は次のように語る。

レイオフが始まりました。それぞれのタイムゾーンの午前12時付で、退職金がWorkdayアプリ(給与計算)に表示されています。メールも電話も何もありません。これは、うんざりするほどひどい対応でした。

この従業員は、人員削減が行われることを予感していたが、次のように付け加えた。「経営陣は完全に沈黙を貫いており、レイオフに関して何も認めませんでした。今も認めていません」。

米国とインドにいる同社の8000人の従業員のうち、推定3000人が解雇されることになる。TechCrunchは、影響を受ける人数は4000人、つまり会社の半分になると聞いていた。しかし、Better.comの広報担当者によると、結局この数字は「3000人強」となったそうだ。同担当者は8日午後にこの数字を確認し、CFOのKevin Ryan(ケビン・ライアン)氏が給与計算の不手際の後にこの件で最終的に社員に送った電子メールのリンクを共有した。

ライアン氏はその従業員への電子メールの中で、同社が「金利環境と借り換え市場の変動に適応しなければならなかった」と書いている。

さらに「残念なことに、それは私たちがさらに事業を合理化し、米国とインドの両方で従業員を大幅に削減するという厳しいステップを踏まなければならないことを意味します」と付け加えている。

また、ライアン氏は、既存の非競争規定は強要しないが、非開示規定は引き続き有効であるとも述べている。

「この数カ月は決して楽なものではありませんでしたが、Betterチームのメンバーのみなさんの努力と集中に心から感謝します」と付け加えた。「私たちが最も強くなるのはこれからです」と書いている。

このメッセージが、12月初旬のZoom会議で900人の従業員を解雇し、多くの人が冷淡で無慈悲だと考えたVishal Garg(ヴィシャール・ガルグ)CEOではなく、ライアン氏から発信されたことが注目される。このビデオは世界中で拡散され、ガルグ氏は従業員への通知の仕方だけでなく、従業員のいう暴言についても中傷を受けた。

同社の従業員によると「現在の市場の状況」からBetter.comが「大量解雇に至る」と通知するメールが3月9日の朝に送信される予定だった。そして、その朝の後、残ったメンバーの管理を引き継ぐことができるよう「解雇を免れたマネージャー」に対して、影響を受けるマネージャーの電子メールが送られた。そして、影響を受ける従業員には、電子メールで通知されることになった。その後すぐに、解雇を免れた人たちのために全員参加のミーティングが計画された。

解雇された人には、個人メールに会社の備品の返却方法を記したメールが送られることになっている。

影響を受ける従業員の大半は、営業とオペレーションに従事していた人たちと言われており、特に、借り換えチームのほとんどが手放されることになる。従業員はTechCrunchに、レイオフ候補者のリストはここ数週間で出回ったが、具体的な従業員はここ数日で最終決定され、主に「ビジネスニーズと11月〜1月のパフォーマンス」に基づいて決定されたと語っている。

退職金は60日から80日分相当だと言われている。

従業員や投資家を侮辱し、前述のように暴言を吐いたとされるCEO兼共同創業者のガルグ氏の横暴が、今回の決定に一役買ったと思われる。金利市場が大きく変化する中、Better.comはより「購入」ビジネス、つまり新規融資の手助けをするビジネスに移行せざるを得なくなった。その評判が落ちたことで、Better.comは新規顧客の獲得がより困難になったようだ。

マクロ経済的な要因も、同社のビジネスにマイナスの影響を与えた。金利が上昇し、再融資の需要が大きく落ち込んだことが、12月の最初のレイオフにつながった。金利は上昇を続けている。インフレ率の上昇は、問題を解決していない。

TechCrunchは月曜日に、準備が行われていると2月中旬に聞いた後、今週行われると報じていた。

12月に行われた当初のレイオフのやり方は、同社のコミュニケーション担当副社長のPatrick Lenihan(パトリック・レニハン)氏、広報担当のTanya Gillogley(ターニャ・ギログリー)氏、マーケティング担当のMelanie Hahn(メラニー・ハーン)氏の辞任など、一連の事態を引き起こした。彼らの退社は、今後数カ月にわたって行われる多くの幹部の退社の第一号となった。ガルグ氏はその後、1カ月の「休養」に入る前に、大量解雇を「不手際」として「謝罪」した。

同社は2016年の創業以来、9億ドル(約1000億円)強を調達しており、そのうち5億ドル(約579億円)は2021年4月のラウンドでSoftBank(ソフトバンク)から調達したもので、Better.comの評価額は60億ドル(約6950億円)だった。第1次レイオフが発表される直前の2021年11月30日、CFOのケビン・ライアン氏は社内メールで、Better.comのバランスシートが週明けには10億ドル(約1158億円)になると述べていた。

編集部注:この記事は公開後に更新され、さらなる詳細が追加されました。Natasha Mascarenhasが寄稿しています。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

住宅ローンBetter.comのCEOが大量レイオフの「失態」を現役社員に謝罪、SPACは延期に

Better.com(ベター・ドットコム)のCEOであるVishal Garg(ヴィシャール・ガーグ)氏は、明らかに自分が誤ったことをしたと認識しているようだ(まるで否定的な報道の嵐がその十分な証拠ではなかったかのように)。

米国時間12月8日、現従業員に宛てた手紙が、Betterの確認済みの従業員によってBlind(ブラインド)にリークされた。その手紙の中で、先にニュースとなった、ガーグ氏が(不適切に)行ったレイオフに関して謝罪し、こう書いている「私は、今回のレイオフの影響を受けた人たちや彼らの同社への貢献に対して、適切な敬意と感謝を示すことができませんでした。レイオフを決定したのは私ですが、その遂行を私は誤りました。それにより、みなさんに恥をかかせてしまいました」。

彼自身も恥をかいたという人もいるかもしれない。複数の関係者によると、影響を受けた従業員の中には、同社のダイバーシティ&インクルージョンチームも含まれているそうだ。

12月8日未明、同社の内部事情に詳しい関係者がTechCrunchに語ったところによると、同社のコミュニケーション担当副社長のPatrick Lenihan(パトリック・レニハン)氏、広報担当部長のTanya Gillogley(ターニャ・ギログリー)氏、マーケティング担当部長のMelanie Hahn(メラニー・ハーン)の3名が辞表を提出したとのことだ。また、Insider(インサイダー)も同じくこのニュースを報じている。

TechCrunchが最初に報じたように、CEO兼共同創業者であるヴィシャール・ガーグ氏が約900人のレイオフを実行したことによる影響は、Zoom上で処理されたという批判から、ガーグ氏の不誠実さへの非難まで、広範囲に及んでいる。このビデオに関するミームはTikTokにまで波及し、世界中の人々がガーグ氏の行動をこきおろしている。

先週の動きは、デジタル住宅ローンの貸し手である同社が、ブランクチェックカンパニー(白地小切手会社)のAurora Acquisition Corp.(オーロラ・アクイジション・コーポ)やSoftBank(ソフトバンク)とのSPAC(特別買収目的会社)契約の修正として、約7億5000万ドル(約853億円)の現金注入を受けたと発表した後、すぐに1万人の従業員の約9%をレイオフしたことによるものだ。同社は、69億ドル(約7800億円)の評価額で上場する見込みだ。

Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたところによると、同社は当初、2021年の第4四半期にクローズすると予想されていたSPACを(当然のことながら)延期することになったという。

また、ガーグ氏は今週のFortune(フォーチュン)誌に対して、同社がレイオフした「少なくとも250人」のスタッフが1日2時間しか働かずに会社や顧客から金を盗んだとして非難したことを認めた。ガーグ氏は、レイオフを発表してから間もなく、ライブストリーミングによるタウンホールでスピーチを行った。Insiderにリークされた会議の記録によると、彼は「ぜい肉を落として競争力をつけた、ハングリーな労働力」を目指す「Better 2.0」と呼ばれるビジョンを打ち出したという。

TechCrunchは、Better.comにコメントを求めたが、本稿執筆時点ではまだ回答は得られていない。また、退職したとされる従業員も、コメントを求められても応じていない。

SoftBankが支援するプロップテックで、公開デビューを前にトップが退職したのはBetter.comだけではない。2019年にもInsiderは、社内での不満やIPO計画をめぐる不確実性が報じられるなか、WeWork(ウィワーク)の十数人のトップが同社を去ったと報じた。

現時点で私たち全員が考えているのは、投資家や役員がガーグ氏のこの種の行動を容認するのか、それともAdam Neumann(アダム・ノイマン)氏のように追い出されるのかということだ。

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ガーグ氏があまりいい人ではないという評判は、2020年、Forbesがガーグ氏から社員に送られたメールの内容を明らかにした時にさかのぼる。「やぁ、 優秀なチームよ、目覚めなさい。あなたたちはあまりにも遅い。あなたたちは馬鹿なイルカの集団で、【略】馬鹿なイルカは網にかかってサメに食べられてしまう。だから、やめなさい。やめなさい。今すぐやめなさい。あなたは私に恥をかかせている」。

同じForbesの記事によると、ガーグ氏はPIMCO(ピムコ)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)などから「過去の2つの事業における不適切で詐欺的な活動」や「数千万ドル(数十億円)の不正流用」などの理由で、多くの訴訟を起こされていたことが明らかになっている。

最近の借り換え件数の減少は、Better.comが従業員の一部をレイオフすることを決定した要因であると考えられている。

2020年4月、同社は、歴史的な低金利の住宅ローンに直面して住宅の借り換えを求める人が増えていることから「人員を積極的に採用する」と述べていた。当時、私はCrunchbase News(クランチベース・ニュース)で、ガーグ氏から社員への内部メモにより、住宅ローン融資のスタートアップが「より多くの住宅所有者がオンラインに移行してきている」というニーズに応えるため、全体として2020年に約1000人の雇用を検討しているということが明らかになったと報告していた。

画像クレジット:Better.com / Instagram

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

市場の懸念、嫌悪、魅力的な企業向けギフト

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

親愛なるみなさん、今回は3つのテーマを取り上げる。1つ目は懸念、つまり市場の懸念だ。2つ目は嫌悪、ある特定の企業ニュースに対する私の直感的な反応だ。そして最後に企業ギフト、魅力的なスタートアップ戦争へ飛び込む。では始めよう!

懸念

電子署名企業のDocuSign(ドキュサイン)は、先週金曜日に株価が40%以上下落して、大きな打撃を受けた。これは、詐欺やその他の企業の不正事例を除けば、私が今まで見た中で最悪の業績報告後の株価変動だ。

何が起きたのだろう?DocuSignは、直近の四半期(2022年度第3四半期)には収益予想を上回っていた。しかし、同社の請求額(将来の収益を表す)は、予想を大幅に下回った。同社のCEOであるDan Springer(ダン・スプリンガー)氏は、投資家向けの手紙の中で次のように述べている。

成長が6四半期の間加速した後、お客様はかつての正常な購入パターンに戻り、その結果、請求額は前年比で28%増加しました。

スプリンガー氏は、市場が過剰反応していると考えており、来週DocuSign株を購入する予定だ。市場は、DocuSignがより普通の成長へ回帰したと思われるものを、あまりにも重視しているのだろうか?

そうでないかもしれない。これが起きてから、私は仲間たち(その中には仕事の場で私の正気を保ってくれる友人のロン・ミラー記者もいる)と、私たちが見ている現象はウォール街の焦りなのか、それとも別のものなのかを語ってきた。私は後者(別のもの)に傾いている。

Yahoo Financeのデータによれば、DocuSignは大幅な下落の後でも約270億ドル(約3兆円)の価値がある。あるいは、現在のランレートの約12.4倍だ。将来の収益の減速について強いヒントを示す公開テクノロジー企業に対して、椅子から立ち上がってそれは低すぎるというのは誰なのだろうか?

実際そういう人は多い、しかしそれは一般にSaaSの勢いが長い間非常に強かったためなのだ。それほど昔の話ではない。DocuSignが請求額の成長が28%だと公表したあとで、ランレートの12.4倍という評価額は、それほど良くはないとしてもまずまずの数字だ。以前の成長状態に戻るのは許されない話なのだろか?

懸念。それが、ソフトウェア会社の間で複数の収縮が見られる場合に、私が味わうことを予想する感覚だ。非公開市場における非常に多くの賭けは、公開企業の評価額が高いままであるという期待に頼ってきた。しかし、先週のような一般的なハイテク株にとって最悪な数字が出現すると、ハイテク業界に対する風潮は、100%のリスク偏重から、よりバランスの取れたものへとついにシフトする可能性がある。

嫌悪

Better.com(ベタードットコム)は、SPACデビューで7億5000万ドル(約846億円)を手に入れ、事業のために十分な資金を得た。そして、従業員の一部を解雇した。あるオンラインコールでCEOは、解雇されるスタッフは15%だと述べた。一方Better自身は、その数は実際には9%だと主張している。CEOがメモを読みながら、レイオフを通知するためにそのオンラインコールを行っているというなら、その数字の食い違いは問題だ。彼が決定を下したのなら、数字を間違えたりするだろうか?

とにかく、ここに労働者の多くを解雇しないですむ方法のレッスンがある。

(このバージョンが取り消された場合に備えて、ビデオのコピーを保存している)。

忘れてはならないこと。職場は自分の家庭ではないということ。労働者としてのあなたは、会社が利用して利益を引き出したい資産に過ぎないのだ!

企業向けギフト

時計を2020年初頭に戻そう。その年の2月、パンデミックが発生する直前に、私はSendoso(センドソー)の4000万ドル(約45億1000万円)のシリーズBを取り上げた。同社は企業ギフトの分野を扱う企業で、それ以降1億ドル(約112億8000万円)のシリーズC調達を行っている

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これとは別に、私が知っている投資家が、Sendosoと同じ市場の別のプレイヤーであるPostal.io(または単にPostal)を私に紹介した。この2つの企業は、現在および潜在的な顧客市場におけるギフトでシェアを競い合っている。つまり巨大な市場なのだ。

通常版のExchangeをよく読む読者は、最近この話題に触れていなかったのではないかと思っているかもしれない。実は取り上げている!9月には、Disruptの直前に、Postalとその進捗状況をお知らせした。

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しかし、私はそれ以降、PostalとSendosoからいくつかの成長指標を抽出して、この分野の継続的なカバレッジに追加したいと思った。なぜこれを気にかけるのか?なぜならこの分野は、OKRソフトウェアや即時食料品配達市場に似ているため、追跡する価値のある興味深いスタートアップクラスターがある。

たとえばSendosoとPostalは、Alyce(アリス)やReachdesk(リーチデスク)と競合する。オンラインからオフラインへの市場チャネルに対して、多くのスタートアップ活動が集まっている。そして、市場は複数のプレイヤーが同時に成長できるくらい十分に大きいのだ。たとえばSendosoは、Coresight(コアサイト)を引用して「米国の企業向けギフト市場は2021年末までに2420億ドル(約27兆3000億円)に達すると予測されている」とThe Exchangeに語った。

Postalはメトリクスで最も突出していて、過去5四半期連続で70%のサブスクリプション収益の伸びが見られたことを公表している。また顧客数が35から286に増加したため、GMV(流通取引総額)の規模は2020年第3四半期から2021年第3四半期にかけて3765%に増加した。それが理由で、同社は9月に資金を調達することに成功できたと私たちは考えている。

Sendosoの最近のパフォーマンスに関しての数字は、より控えめ目なものだった。スタートアップは2019年に330%成長したことを思い出して欲しい。しかしその最近の結果に関しては数字を公開するつもりはないようだ。その代わりに、Sendosoによれば、現在900の顧客(詳細にいうならそれらの企業の中にさらに2万件超えのアカウント)を持ち「北米、ヨーロッパ、アジアの倉庫から165か国以上で300万以上の出荷を行った」という。

AlyceならびにReachdeskからは、この記事の公開に間に合うようには新しい数字を得ることができなかった。もし彼らに数字を共有して貰えた場合は来週お知らせする。

また、OKRスタートアップ市場のように、より大きなテーマにはバリエーションが付きものだ。企業向けギフトの場合、Postalはよりデジタルなサービスを構築し、商品会社と購入者を結び付けている。一方、Sendosoは、独自の物理的なアイテム集約場所を含む実世界でのフットプリントが大きくなっている。私たちは、ビジネスケースがリアルタイムで競い合うのが大好きだ。

ただし、激しい競争が起きると、すべての関係者が無傷のままとはいかないということは忘れないように。OKR市場を見ると、Koan(コウアン)は次の資金調達のマイルストーンに到達できず、Microsoft(マイクロソフト)はスタートアップ企業の1つをすくい上げた。即時食料品配達市場では、1520がちょうど破綻したところだ。SendosoやPostalが現金を使い果たす危機にさらされているわけではないが、もしその市場の中で統合の動きが出てきたとしたら興味深いだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ソフトバンクによるBetter.comへの約548億円出資で住宅ローン業界の魅力が証明された

デジタル住宅ローン融資のBetter.com(ベター)は、日本の投資コングロマリットであるSoftBank(ソフトバンク)から5億ドル(約548億円)の資金調達を行い、同社の価値を60億ドル(約6571億円)とした。

この資金調達はいくつかの理由で注目されている。まず、同社の60億ドルという新たな評価額は、2020年11月にシリーズD投資ラウンドで2億ドル(約219億円)を調達した際の評価額40億ドル(約4381億円)から50%アップしていること。2019年8月のシリーズCラウンドで資金調達した当時の6億ドル(約657億円)という評価額からは10倍にもなっている。

2つ目の理由としては、伝統的に「魅力的ではない」業界で、長い間分裂を必要としてきた住宅ローンが、公式にホットであるとさらに証明されたということだ。ソフトバンクが投資すれば、間違いなく人々は注目する。

新型コロナウイルスの大流行と過去最低水準の住宅ローン金利は、誰も予想しなかった方法でオンライン住宅ローン融資の分野を加速させた。これにベンチャー投資における全体的な熱気が合わされば、Better.comがわずか数カ月の間に7億ドル(約767億円)を調達したことも大きな驚きは与えない。

今回の投資によって、2014年の創業以来、Better.comが調達した資金総額は9億ドル(約986億円)を超えた。ソフトバンク以外の支援者には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、American Express(アメリカン・エキスプレス)、Activant Capital(アクティバント・キャピタル)、Citi(シティ)などが含まれている。

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)によると、ソフトバンクはBetterの既存の投資家から株式を購入し、同社創業者でCEOのVishal Garg(ヴィシャル・ガーグ)氏に、同社に投資する「熱心さの表れ」として、すべての議決権を与えることで合意したという。

2020年10月に開催されたバーチャルイベント「LendIt Fintech(レンディット・フィンテック)USA 2020」で筆者が行った個別インタビューの中で、ガーグ氏は「IPOは間違いなく実現する」と語っていた。

「適切な時にやるつもりです」と、彼は言った。「米国資本主義の核となる信条の1つは、ある会社の顧客がその会社の株を買えるということです」。

そして2021年2月には、Betterが米国での新規株式公開に向けて、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)と Bank of America Corp(バンク・オブ・アメリカ)を起用したと、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じた。IPOの前に多額の資金を調達することは珍しいことではない。例えば、後払いや分割払いによる決済サービスを提供するフィンテック企業のAffirm(アファーム)は2020年それを行った

2020年10月にヴァーグ氏が筆者に語ったところによると、新型コロナウイルス感染流行前のBetterは月に約12億ドル(約1315億円)のローンを処理していたが、2020年10月の時点では月に25億ドル(約2739億円)以上の資金を調達し、スタッフも1500人から世界中で約4000人に増えていたという。

「新型コロナウイルス感染拡大が始まったとき、私たちの収益は月に5000万ドル(約54億8000万円)にも満たないものでした。今はその2.5倍です」と、当時ヴァーグ氏は語っていた。

その後、この数字はさらに上昇している。同社の広報担当者によると、Better.comは2021年の第1四半期だけで140億ドル(約1兆5300億円)のローンを提供し、現在は月に40億ドル(約4380億円)以上のローンを提供しているとのこと。ちなみに、同社が2020年の全期間で提供したローンの総額は、250億ドル(約2兆7400億円)だった。また、現在の従業員数は6000人で、2020年10月からさらに2000人増加しているという。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Better.comソフトバンクグループ資金調達ローン不動産

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)