新型コロナウイルス感染流行の影響で学校が閉鎖され、初等教育への深刻な被害が懸念される中、この分野に続々とEdTech(教育テクノロジー)企業が参入してくるのは当然と言える。しかし、それは同時に、初等教育の惨状を浮き彫りにするものでもある。World Bank(世界銀行)によると、全世界で約4000万人の教師が教育現場から離れているという。15億人の初等教育課程にある子どもたちのうち、質の高い教育を受けられる子どもはごくわずかであり、世界には約5800万人の初等教育を受けられない子どもたちがいて、そのほとんどが女児である。
だから、このような幼少期にオンラインで教育を受けられる機会を広げ、状況を変えることは非常に大きな意味がある。なぜなら、オンラインではクラスの人数を減らし、授業の質を向上させることが可能だからだ。
これが、自ら「デジタル初等教育エコシステム」を謳うbina(ビナ)という企業の元になる考え方だ。ドイツのベルリンを拠点とする同社はこの度、4歳から12歳までの児童にオンライン教育を行うことを目的に、140万ドル(約1億5300万円)の資金を調達した。
今回の資金調達ラウンドは、日本の億万長者の1人である孫泰蔵氏が主導した。他の投資家やアドバイザーには、分散型プロトコルのPolkadot(ポルカドット)を開発したParity Technologies(パリティ・テクノロジーズ)の創業者Jutta Steiner(ユッタ・シュタイナー)氏や、英国の元教育大臣のLord Jim Knight(ジム・ナイト卿)などが名を連ねている。
Binaの特長は、6人という非常に少人数のオンラインクラスの規模(経済協力開発機構のデータによる世界平均の3分の1)であることだ。
さらに同社は、国際標準をカバーする「適応性の高い学習方針」、8年以上のデジタル教育経験を持つ教師、データに基づいた教育的アプローチの決定などを誇る。
binaの創業者でCEOを務めるNoam Gerstein(ノーム・ガーシュタイン )氏は次のように述べている。「私は世界中の生徒、教師、保護者に長年インタビューしてきましたが、新しいシステムのデザインが必要であることは明らかです。当社の創業家とともに、私たちはすべての子どもが質の高い教育を受けることができ、教育者のスキルが評価され、それを継続的に発達させることができ、親が仕事と家庭生活のどちらかを選ぶ必要のない世界を築いていきます」。
また、ガーシュタイン氏によれば、同社は学校とともに成長する児童に、会社の株式(RSU)を付与しているという。現在は中央ヨーロッパ時間の英語を話す児童向けに授業を提供しているbina Schoolは、政府、NGO、学校組織向けのSaaS製品を計画している。
「私たちは現在、Outschool(アウトスクール)、Pearson Online Academy(ピアソン・オンライン・アカデミー)、Primer(プライマー)、Prisma(プリズマ)といった企業と競合しています」とガーシュタイン氏は電話で話してくれた。「これらの大手企業とは2020年からの第1段階で競合しています。しかし、私たちは戦略を2つの段階に分けて構築しています。第1段階は実際にスクールを構築し、それを『実験的』スクールとして運営すること。そして第2段階は、私たちが『サービスとしてのbina』と呼んでいるもので、SaaS、つまり『サービスとしてのスクール』です。これはNGOや政府と協力して、授業システムや教師の認定、トレーニング、ライセンス供与を行うというものです。この2つ目の部分では、私たちは実際に大規模な学校認可システムと競合するわけです」。
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カテゴリー:EdTech
タグ:bina、ベルリン、子ども、教育、資金調達
画像クレジット:bina team
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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)