オフライン広告プラットフォーム「Bizpa」が正式版を提供開始、検索、見積もり、発注をワンストップで

ビズパは8月4日、全国のオフライン広告商品の検索から発注までをワンストップで行えるプラットフォーム「Bizpa」を正式版として提供することを明らかにした。2019年11月からベータ版をしており、取り扱い広告商品は700媒体、27,000点を超えている。具体的な広告媒体は、屋外の看板やデジタルサイネージ、紙媒体や店舗内ポスター、交通広告などのオフライン広告。10万円以下の広告商品が80%以上で、主な顧客や中小企業やスタートアップ企業とのこと。

Bizpaこれまでオフライン広告は、実際の掲載料が不明瞭だったり、デジタルサイネージの場合は掲出する時間や期間で掲載料に大きな差があるなど適正価格を知ることが難しかったほか、電話やFAXを使った在庫確認や見積書取り寄せ、発注などの業務も付随していた。Bizpaはこれらをまとめて解決するSaaSだ。

同社は今後は、取扱商品の拡充やプラットフォームのシステム強化を進めていく。具体的には、広告媒体のデータ充実、マッチング精度向上、クリエイティブ補助機能などを実装する予定だ。また商品数は、2020年内に4万点、2021年内に10万円を掲載を目指す。

同社は、2018年12月設立のスタートアップ。代表取締役兼CEOの石井俊之氏は、2006年に東証マザーズ上場、2016年に東証一部に上場したラクーン(現・ラクーンホールディングス)の創業メンバーの一人(ラクーンの創業は1993年、会社設立は1995年)。取締役副社長として執行部門を統括し、B2Bマーケットプレイス事業、B2B決済事業、子会社社長などを歴任した人物だ。

2万種類以上のオフライン広告商品を検索・発注できる「Bizpa」が5000万円を調達

様々な広告媒体の中でも、インターネット広告はここ十数年で大きな進化を遂げながらその勢力を拡大してきた。ユーザーの属性や興味関心、ネット上での行動を軸に細かくターゲティングができ、データを見ながらの効果検証もしやすい。加えて小ロットから注文でき、出稿までの作業もオンライン上でスピーディーに完結するものが多い。

一方で屋外看板やフリーペーパー、店舗内といったオフライン広告はどうだろうか。情報がいくつもの場所に散らばっていたり、価格相場が可視化されていなかったりと広告主側にとっては非効率かつ不透明な側面が多いのが現状だ。要はネット広告に比べるとレガシーな市場であると同時に、まだまだ改善できる余地が残されている領域だと考えることもできる。

そんな「オフライン広告市場のアップデート」に取り組むのが、2018年12月創業のビズパだ。同社では2019年11月より、オフライン広告商品の比較・検討から掲載までの工程を一元管理できる「Bizpa」のベータ版を運営している。こ

今後は夏に正式版のローンチを予定しているほか、最適な広告商品をマッチングする機能の導入などプロダクトのさらなる進化を目指し事業を加速させる計画。そのための軍資金として、ビズパでは本日4月24日にCoral Capitalとラクーンホールディングス代表取締役社長の小方功氏からシードラウンドで5000万円を調達したことを明らかにした。

きっかけは前職時代に感じた「オフライン広告の課題」

Bizpaのアイデアは、石井氏自身が前職のラクーンホールディングス時代に感じたオフライン広告の課題から生まれたものだ。

石井氏は2000年に同社の創業メンバーとして入社し、取締役副社長として執行部門を統括。B2Bマーケットプレイス「スーパーデリバリー」やB2B決済サービス「Paid」などの立ち上げに携わるなど、同社の事業拡大や上場に貢献してきた。

石井氏によると前職時代にネット広告の限界を感じ、オフライン広告に取り組むために予算を準備していたそう。ただ、結果的にオフライン広告を出稿するには至らなかったという。

「ネット広告では同じ人に同じ広告が何度も表示され、ブランドイメージの毀損や費用対効果の観点で課題がある。そこでオフライン広告にもチャレンジしようと考えたが、そもそも自分たちにあった広告媒体を探すのが難しく、一方で代理店に頼んでも価格設定が高めでスモールスタートがしづらかった。出稿までの工程も非効率で、結果的に断念してしまった」

「代理店を中心にマーケットが構成されているため労働集約型の側面も多く、どうしても利益率の高い高価格の広告媒体や注文金額が大きい大企業がメインのターゲットになる。もちろんそれも必要な仕組みではあるが、そのレガシーな部分を取り除くことで、中小企業を始め誰でも簡単にオフライン広告を出稿できる環境を作れるのではないかと考えたのがBizpaを作ったきっかけだ」(石井氏)

そこでBizpaではプラットフォーム上にさまざまなオフライン広告商品を取り揃え、広告主が自分に合ったものを探して発注できる仕組みを作った。

現在は東京を軸とした関東エリアを中心に300媒体・2万4000種類以上の広告商品を掲載。街中の看板やデジタルサイネージから、フリーペーパーなどの紙媒体、大型書店の店内、漫画喫茶のブースなどその種類は多岐にわたる。

これまではWeb上に載っていなかったものや、Web上では埋もれてしまっていてたどり着くのが困難だった広告商品へアクセスできるようにしたのがBizpaの大きな特徴だ。

葛飾にあるプログラミング教室が地域限定のフリーペーパーに広告を出すことで効果的な宣伝に繋がった事例や、トラックドライバーの集客や求人を手がける会社がドライバーの利用者が多いサービスエリアのシャワーブースに広告を出稿した事例など、ユニークなマッチングが生まれてきているという。

小ロットから注文可能、広告掲載までの作業を一元管理

BizpaではECのような感覚で広告商品を物色しながら気になるものをカートに入れて購入し、その後のクリエイティブの入稿までをサービス上で行う。オフライン広告の発注に関する仕組みをワンストップで提供しているため、広告主にとっては一箇所で作業が済み効率が良い。

またそれらの広告を小ロットから試せるのもポイント。全体の約90%が20万円以下の商品となっているため、限られた予算の中で複数の媒体やクリエイティブをテストすることも可能だ。

「ネット広告の場合、まずは軽く試して、ABテストなどもしながら最適な形を検証できる。でもこれまでのオフライン広告は1回100万のように、一発勝負になりがちなものが多かった。それが仮に10万円から試せるようになると、予算の限られた企業でもスモールスタートすることができるし、複数パターンをテストすることもできる」(石井氏)

Bizpaを使うメリットがあるのは媒体側も同様だ。単価が安い商品の場合などは代理店が積極的に販売してくれないケースも多く、自ら集客チャネルを開拓しなければならなくなる。ただ自分たちにあったチャネルを見つけてくるのも簡単ではなく、結果的に埋もれしまって本来の価値を発揮できないでいる広告媒体も少ないないという。

そういった媒体にとってはBizpaは新しい集客チャネルとして機能する。しかも営業マンを増やさずとも使えるチャネルだ。

データ活用で最適なオフライン広告媒体が発見できるサービスへ

ベータ版ローンチから約5ヶ月、現在Bizpaには300媒体・2万4000種類以上の広告が集まり、広告掲載に関心を持つ数百の事業者が登録している。今後はベータ版期間に得られたフィードバックなどを基にプロダクトを改善しながら、今夏を目処に正式版をローンチする計画だ。

石井氏の話を聞く限り、これからのBizpaにおいては「ワンストップ」と「最適なマッチング」がキーワードになるだろう。

現在も注文から掲載までの作業をサービス上で完結できる仕様にはなっているものの、広告デザイン自体は広告主が自分たちで用意する必要がある。これが「オフライン広告をやったことのない人にとってはボトルネックになりうる」ため、デザイナーや制作会社とタッグを組み、クリエイティブの制作も含めてBizpa上でワンストップできる仕組みを検討しているという。

そしてもう1つのポイントが最適なマッチングだ。たくさんの広告商品が掲載されていたとしても、自分に合ったものが見つからなければ広告主にとって価値のあるサービスとは言えない。またBizpaの収益源はマッチング時の手数料のため、マッチング件数が増えていかなければ同社のビジネスもスケールしないことになる。

これについては各広告媒体・商品に対して「いかに属性データを持たせるか」が鍵になってくるとのこと。たとえば屋外の看板の場合、どんな人がそこを通るのか、近くには何があるのか、通行量はどのくらいかといったデータがわかれば、それを基に今まで起きなかったマッチングを実現できるという。

上述したトラックドライバーに訴求したい会社とドライバーがよく使うサービスエリアのシャワーブース広告をマッチングした事例のように、今まではその価値が埋もれがちだった広告媒体がどんどん発掘されていく可能性もあるだろう。

「近接データはGoogleマップなど見ればわかるし、地域ごとの世帯のデータや携帯の位置空間情報なども販売されている。昔に比べると属性データも取りやすくなっていて、今までわからなかったものがわかるようになってきた。それらのデータを活用した上で企業のニーズと最適にマッチングする仕組み作りに力を入れていく」

「テクノロジーやプラットフォームの思想を取り入れることで、オフライン広告をもっと良くしていける感覚がある。そういった意味ではディスラプトやリプレイスというよりは、アップデートというイメージだ。業界を前進させられるようなチャレンジをしていきたい」(石井氏)