プライバシー重視のBraveブラウザで利用できる非トラッキングのビデオ会議ツールが一般公開

Braveは、社名と同じ「Brave」という名前のトラッキングをしないブラウザで知られるスタートアップだ。同社が提供するトラッキングをしないビデオ会議のアドオンがベータの段階を終了した。誰でもBraveブラウザからすぐにビデオ通話を開始することができる。

Brave Talkというこのツールは、2020年5月からベータテストが実施されていた。同社がTechCrunchに語ったところによると、ベータテスト期間中のDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)、つまりBraveブラウザのテストバージョンから参加したアーリーアダプターと開発者は1万4000人ほどだったという。

このBrave Talkが一般に公開された。Braveは「プライバシーを重視した」ビデオ会議としてインターネットユーザーにアピールしている。

同社は一般公開を発表するブログ記事の中で「Zoomなど多くのビデオ会議プロバイダーは、通話やメタデータ、画像をモニターしており、こうしたデータの記録はユーザーの同意なしに販売されたり共有されたりすることがあります」と書いている。

ブログ記事はさらに「Brave Talkの通話では複数レイヤーの暗号化を有効にできるので、盗み聞きしようする人がいても聞くことはできず、我々のサーバーにメタデータは保存されません。したがって、ユーザーの同意なく通話、画像、アクティビティが記録されたり共有されたりすることはまったくありません」と続く。

Brave Talkのプレミアム機能(グループ通話や通話の録画など)は月額7ドル(約770円)で利用できる。ただし1対1の通話は無料で無制限だ(AndroidとiOSのBraveアプリは今のところプレミアムにのみ対応しているが「数週間のうちに」無料版も利用できるようになる予定となっている)。

ビデオ通話はBraveブラウザから開始する必要があるが、招待される側は「モダンブラウザ」(Chrome、Firefox、Safari、Edge、Operaなど)ならどれでも参加できる。

Braveは非トラッキングの認証情報であることをZoomなどの主力ビデオ会議ソフトウェアとは異なる利点として売り込んでいるが、Brave Talkは(今のところはまだ)エンド・ツー・エンド暗号化に対応していないことには注意が必要だ。

Braveによれば、Brave Talkは8×8が手がけるオープンソースのビデオ会議プラットフォームであるJitsi as a Serviceを利用している。これはWebRTCオープンソーステクノロジーでブラウザに直接HDビデオを埋め込めるようにするものだ。

暗号化に関しては、設定で複数のレイヤーを有効にできるという。Braveは、Brave Talkの無料版でもプレミアム版でも「Videobridge暗号化」で現時点では最も強力なレベルで暗号化されると説明している。

同社の共同創業者でCEOのBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏は「この設定により、ビデオとオーディオのストリームが参加者によって生成されるキーを使って暗号化され、Videobridgeサーバーで盗み聞きが防止されます。Videobridge暗号化は『Security Options』から有効にできます」と述べている。

同氏はさらにTechCrunchに対し次のように述べた。「『エンド・ツー・エンド暗号化』という言葉がまぎらわしく大げさであると判断したため、Brave Talkではこの設定を『Videobridge暗号化』としました。ビデオ会議に参加する際に、エンド・ツー・エンド暗号化の通話はプライバシーとセキュリティの1つの側面でしかありません。暗号化を利用していても、『大手』のビデオツールの大半は、会話の参加者や開始時刻と継続時間など多くの情報に関して積極的にデータを集め保管しています」。

「Brave Talkが採用している匿名の資格情報システムにより、我々は利用者や会話の相手を知ることはできず、複数のセッションにわたって関連づけることもできません。Brave Talkはユーザーを追跡しない、プライバシー・バイ・デフォルトのツールです」とアイク氏はいう。

Videobridge暗号化とエンド・ツー・エンド暗号化の違いを明確にするために、同氏はTechCrunchに対しさらに次のように述べた。「Videobridge暗号化はオーディオとビデオをBrave、8×8、パッシブに盗み聞きしようとする人のいずれからも暗号化された状態にしていますが、我々が『Videobridge暗号化』と呼び『エンド・ツー・エンド暗号化』と呼ばない理由は、我々と8×8が協力し、会議の参加者を自動で認証してアクティブな攻撃者に対してさらに堅牢にしようとしているからです。この開発が完了すれば、自信を持って完全なエンド・ツー・エンド暗号化と言えるようになります。Zoomでは参加者がセキュリティコードを声に出して読み上げ、エンド・ツー・エンド暗号化されていることを確認しますが、こうしたプラットフォームに対して我々の圧倒的なアドバンテージになります」。

Brave Talk(以前はBrave Togetherと呼ばれていた)を試すには、通話を開始するためにまずBraveブラウザをダウンロードする必要がある。前述の通り、通話を受ける側はBraveでなくてかまわない。

アイク氏によれば、Braveの非トラッキング製品全体でMAUは3600万人を最近超えたという。これには検索エンジンとFirewall+VPNが含まれる。

関連記事
プライバシー重視ブラウザ「Brave」、非追跡型検索エンジンのベータ版をリリース
プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で
画像クレジット:Brave

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Kaori Koyama)

プライバシー重視ブラウザ「Brave」、非追跡型検索エンジンのベータ版をリリース

プライバシー重視のブラウザBraveは、数カ月間独自の検索エンジンのテスト(予約リストに登録されている[ブラウザ名がBraveだけに]勇敢な早期採用者による新興の代替インターネット検索ブラウザの品質検査)を行ってきたが、今回、Brave Searchというツールのグローバルベータ版のリリースを発表した。

Braveの非追跡型検索エンジン(独自のインデックス上に構築されており、Google検索のような監視テック製品に代わるプライバシー重視をうたっている)に興味のあるユーザーは、Braveのデスクトップ版およびモバイル版のブラウザを介して入手できる。他のブラウザでsearch.brave.comにアクセスしても入手できる。つまり、Braveブラウザに乗り換えなくても、Braveの検索エンジンを使用できる。

Brave SearchはBraveブラウザのユーザーが選択できる複数の検索オプション(Google検索エンジンを含む)の1つとして提供されているが、Braveによると、2021年後半にはBraveブラウザのデフォルトの検索エンジンにする予定だという。

3月の記事に書いたとおり、BraveはCliqz(欧州の非追跡型検索ブラウザで2020年5月に閉鎖された)に在籍していた開発者と同社のテクノロジーを買収によって取得し、彼らが開発していたTailcatと呼ばれるテクノロジーを基盤として、Brave独自の検索エンジンを作り上げた。

現在ベータのBrave Searchは、現時点で、10万人を超える早期リリース版ユーザーによってテストされたという。同社はこのマーケティング動画を作成し、Brave SearchをGoogle検索エンジンとChromeの組み合わせの代替オプションとして使用できる「すべてを含むパッケージ」であるとうたっている。

Braveの月間アクティブユーザー数は、(3月時点では2500万人だったが)最近3200万人を超えた。これには、同社のフラグシップ製品であるプライバシー重視のブラウザだけでなく、ニュースリーダー(Brave News)やFirewall+VPNサービスなど広範な製品スイートのユーザーも含まれる。

Braveは、プライバシーを重視するユーザーのコミュニティにリーチしたいと考えている企業向けに、プライバシー保護型のBrave Adsも提供している。

監視べースのビジネスモデルに対する一般市民の認識が高まるにつれ、プライバシー重視の消費者テックが何年にも渡ってその勢いを増し続けている。特定のプライバシー重視製品に注力してビジネス展開をはじめ、完全な製品スイート(ブラウザ、検索エンジン、電子メールなど)を形成するに至った企業も少なくない。こうした企業では、すべての製品を非追跡型という1つのカテゴリに属するものとして提供している。

Brave以外にも、DuckDuckGo(ダックダックゴー)は、非追跡型検索エンジンだけでなく、トラッカーブロッカーや受信箱プロテクターツールといった製品を提供しており、全体で7000万人~1億人のユーザーを獲得したと思われる。また、Proton(プロトン)はE2E暗号化メールサービスProtonMailだけでなく、クラウドカレンダーやファイルストレージ、VPNといったサービスも提供している。プロトンは最近、全世界で5000万人を超えるユーザーを獲得した。

もちろん、Apple(アップル)も例外ではない。AppleはGoogleと競合するテック大手でアドテック複合企業でもあり、ユーザーに高品質のプライバシーを約束することでハードウェアと各種サービスの売上を伸ばしている(アップルによると、2021年始めの時点で、iOSのユーザーは全世界で10億人を超えており、Apple製デバイスの台数は16億5000万台以上に達しているという)。

要するに、消費者向けプライバシーテクノロジー市場は成長しているということだ。

それでも、そのAppleでさえGoogle検索との競争は避けている。これは、Googleという巨大検索企業からユーザーを横取りしようと試みることがあまりに大きな挑戦であることを示しているのだろう(とはいえ、Appleは、Google検索エンジンのiOS端末への事前ロードを許可する代わりにGoogleから巨額の支払いを引き出している。これによってAppleは巨額の収益を得ているものの、自ら唱えている広範なプライバシー重視、ユーザー重視の約束と矛盾しており、問題を複雑にしている)。

対照的にDuckDuckGoは長年、非追跡型検索の第一線に位置しており、2014年以降黒字化を実現している。同社はもちろんAppleのような巨額の利益を出しているわけではないが、投資家がプライバシー重視検索の成長に目をつける中、最近、例外的に巨額の外部資金を調達している。

関連記事
プライバシー重視を追い風に快進撃中の検索エンジン「DuckDuckGo」がブラウザとしても使えるデスクトップアプリ開発
プライバシー重視の検索エンジン「DuckDuckGo」、カナダの年金基金VCから1000万ドルを調達

商業的な情報詮索プログラムから人個人情報を保護するという市民の欲求が拡大しているその他の兆候として、Facebook所有のWhatsAppに代わるエンド・ツー・エンド暗号化アプリの急増がある。例えばSignalは、2021年前半、広告大手であるFacebookがWhatsAppのサービス利用規約の一方的な変更を発表した後、ダンロード数が急増した。

本格的なユーザープライバシーの約束に期待を寄せる思い入れの強いユーザーのコミュニティを構築してきた有望な企業は、プライバシーへの関心が高まるたびにその波に乗る絶好の位置につけているといえる。さらには、消費者向け製品スイートを抱き合わせ販売することで、個々の製品の有用性を高めることもできる。Braveが検索に手を出す絶好のタイミングだと確信したのもそのためだ。

BraveのCEO兼共同創業者Brendan Eich(ブレンダン・アイク)氏は、今回の発表のコメントで次のように語っている。「Brave Searchは業界で最もプライバシーを重視した、なおかつ独立系の検索エンジンであり、ユーザーがテック大手の代替エンジンに求めるコントロールと信頼をもたらします。ユーザーを追跡しプロファイルを作成する古い検索エンジンや、その後に登場した独自のインデックスを持たない、古いエンジンの外観を変えただけのような検索エンジンと違って、Brave Searchはコミュニティの力を活用したインデックスで関連性の高い結果を出す新しい方法を提供すると同時に、プライバシーも保証します。数百万という人たちが監視型経済を信頼できなくなり、自身のデータを自身で管理できるソリューションを積極的に探している中、Brave Searchは今市場にある明らかな空白を埋めることができます」。

Braveは、同社の検索エンジンにライバル企業(小規模のライバルも含む)との差別化を図る機能が多数用意されていることを売りにしている。その1つが独自の検索インデックスであり、このおかげで他の検索プロバイダーに依存しないエンジンとなっている。

独自の検索インデックスがなぜそれほど重要になるのだろうか。この質問をBraveの検索最高責任者Josep M. Pujol(ジョセフ・M・プホール)氏にぶつけてみた。「検閲とバイアスが組み込まれる動機は、故意であれ、無意識であれ(こちらのほうが対処は困難ですが)たくさんあります。検索と人々がウエブにアクセスする方法の問題は、それがモノカルチャーである(ごく少数の企業に席巻されている)点です。誰もが、この状態は非常に効率的であると同時に非常に危険であることを認識しています。モノカルチャーでは、一度病害が発生するとすべての作物が駄目になる可能性があります。現在のこの状況は障害に対する耐性がなく、ユーザーでさえそのことに気づき始めています。我々にはもっと選択肢が必要です。これは、GoogleやBingを置き換えるという意味ではなく、それらの代替案を提示するという意味です。選択肢が増えれば自由度が上がり、抑制と均衡を備えた本当の競争を回復できます。

「選択肢は独立性があって初めて可能となります。というのは、もし当社が独自の検索インデックスを持っていなかったら、当社のエンジンはGoogleやBingの上に一枚皮を被せただけのものになり、ユーザーの問い合わせに対する結果もほとんど、あるいはまったく変わりません。某検索エンジンのように独自の検索インデックスを持たないエンジンを提供すると、一見選択肢が増えたように見えますが、中身は大手2社と何ら変わらないのです。コストはかかりますが、独自の検索インデックスを構築することによってのみ、真の選択肢を提供できます。そして、それはBrave Searchユーザーに限らずすべてのユーザーに利益をもたらします」。

ただし、現時点では、Braveは他の検索プロバイダーの機能に依存している部分があることを指摘しておきたい。これは、特定のクエリーや画像検索などの領域で(Braveによると、例えばMicrosoft所有のBingの結果を利用しているという)、十分に関連性の高い検索結果が得られるようにするためだ。

また、検索結果の改善と精緻化にコミュニティからの匿名のコントリビューションも利用しており、検索インデックスに関して広範な透明性という謳い文句に沿った製品にしようとしている(検索インデックスでは、結果にバイアスを生じさせる秘密の手法やアルゴリズムを使用しないという。これを実現するために、まもなくコミュニティによってキュレーションされるオープンなランキングモデルを提供して多様性を確保し、アルゴリズムによるバイアスとあからさまな検閲を防ぐという)。

透明性を上げるもう1つの手段として、Braveは、ユーザーの問い合わせが独自インデックスによって処理された割合を報告するとしており、これを「業界初の検索独立性指標」と称して宣伝している。つまり、同社独自の検索インデックスだけで得た結果の割合を表示するというものだ。

「当社はユーザープロファイルを構築しないため、この指標はユーザーのブラウザを使用してプライバシーを重視して作成されます」とBraveはプレスリリースに記している。「ユーザーはこの集計指標をチェックすることで検索結果の独立性を確認し、検索結果の作成に当社独自のインデックスが使用された程度を知ることができます。あるいは、当社独自のインデックスがまだ構築中であるためにロングテール結果の作成にサードパーティのインデックスが使用されたかどうかも確認できます」。

また同社は、Brave Searchは「通常、大半の問い合わせに答えることができ、それは高い独立性指標に反映されている」ことも付け加えた。とはいえ、たとえば画像検索を実行すると、独立性指標が頭打ちになるのがわかる(ただしBraveは、これによってユーザーの追跡が行われることはないことを確認している)。

透明性はBraveにとって重要な原則であり、 Brave Searchによるすべての検索を対象にグローバルな独立性指標も開発する予定で、これを公開することで当社が完全な独立性に向けて進んでいることを示すつもりです」。

Braveの検索結果に表示される「独立性指標」の例(画像クレジット:Brave)

収益化に関しては、まもなく、広告なしの有償バージョンと広告付きの無償バージョン(「完全な匿名」検索は保証される)の両バージョンを提供する予定だという。ただし、早期ベータ版では広告スイッチをオフにする予定はないと明言している。

「広告なしの有料検索と広告付きの無料検索の両方に各種オプションを提供する予定です」と同氏はいう。「それができたら、Braveのユーザー広告ですでに行っているように、BATで広告収入をユーザーと共有するプライバシー重視の広告を検索にも持ち込みたいと思っています」。

Brave Search検索エンジンは使用するがBraveブラウザーは使用しないユーザーには、コンテキスト広告が表示される。

「BraveブラウザーによるBrave Searchでは、オプトイン広告における強力なプライバシー保護を保証するのが標準であり、当社の支持するブランド価値です」とプホール氏は付け加え、検索のユーザーとブラウザのユーザーは同じタイプの広告ターゲティングの対象となる可能性が高いことを確認した。

まもなくリリースされる広告なしバージョンの検索エンジンの価格設定について同氏は次のように答えた。「リリース日と価格については未定ですが、広告なしの検索はお求めやすい価格にする予定です。検索と情報へのアクセスはすべての人が公正な条件で利用できる必要があると当社は考えているからです」。

最近、欧州で興味深い展開があり、Googleは、反トラスト規制当局からの圧力を受けて、Androidプラットフォームの域内ユーザーに表示される選択画面における「載りたけりゃ金を払え」式のオークションモデルを見限って、多くのライバル企業と自社ブランドのGoogle検索が掲載されたリストからデフォルトの検索エンジンを選択できるようにすることに同意した。この動きによって欧州のAndroidユーザーが選択できる代替検索エンジンの数は増えるはずだ。そうなれば、Googleの検索市場シェアが少しずつ減少する可能性がある。

関連記事:グーグルがEUの圧力を受けAndroid検索エンジンの選択画面オークションを廃止、無料化へ

Braveは以前、Googleの有償オークション形式には参加しないと語っていたが、新しいモデルが「本当に無料で参加できる」なら、今後参加する可能性はあるという。

「Googleが参加無料にするというのは、たくさんの前例があることを考えるとにわかには信じがたいのですが、このモデルが本当に参加無料で、各種契約や機密保持契約を交わす必要もないのなら、参加する可能性はあります」と同氏はいう。「結局、Brave Searchは使いたいすべての人にオープンな製品です。どのプラットフォームでもBrave Searchを選択できるよう積極的に取り組んでいきたいと考えています」。

「欧州各国にはローカライズ済みの各種ブラウザがすでに存在しているため、見込みのあるユーザーにリーチできるすべてのメディアでクラス最高のプライバシーをマーケティングすることで、Braveブラウザのシェア拡大のみに頼らず、Brave Searchの市場シェア拡大を図っていきたいと考えています」と同氏は付け加えた。

関連記事
プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で
ウェブブラウザーBraveがピア・トゥ・ピアプロトコルIPFSのネイティブサポートを追加

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Braveウェブブラウザプライバシーベータ版検索エンジン

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

Ben Gabbe via Getty Images

GoogleはChromeブラウザにおけるサードパーティCookieを段階的に廃止していく一方で、新たな広告技術「FloC(Federated Learning of Cohorts)」の導入を計画しています。これは似たブラウジング行動をした人々をグループにまとめることで(個々人のブラウジング履歴はGoogleと共有しない)関連広告を表示する技術とされています。

これはGoogleのブラウザChromeにも実装される技術であり、同じくGoogleが管理するオープンソースのエンジン「Chromium」を使う他社のブラウザにも導入される可能性があります。その1つであるマイクロソフトのEdgeがFloCを無効化しており、事実上GoogleにNOと表明していることが明らかとなりました。

Chromiumのソースコードを確認すると、FloCはデフォルトでは有効とされています。つまりMicrosoft EdgeなどChromiumベースの他社ブラウザにも、コンポーネントを明示的に無効としない限り自動的にインストールされることになります。

しかし大手コンピュータヘルプサイトBleepingComputerによると、Edgeではコマンドライン引数を使ってFloCを有効にしてもブラウザ上で使用できないとのこと。つまりMSが意図的にFloCを無効にしていると解釈できるわけです。

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

そこでMSに意図を問い合わせたところ、明確な回答は得られず、代わりに自社の広告提案PARAKEETが紹介されるに留まっています。

GoogleのFLoCに関しては「正しく実装される保証がない」として、ユーザーのプライバシーにとって重大な脅威になるとの批判が相次いでいます。Chromiumベースのブラウザ「Brave」は、「Why Brave Disables FLoC | Brave Browser」にてFloCがプライバシー保護を装いつつ、プライバシーに重大な損害を与えると指摘。また同じくChromiumベースの「Vivaldi」も「No, Google! Vivaldi users will not get FloC’ed. | Vivaldi Browser」を表明し、今まで以上にプライバシーを損なう危険なステップだと痛烈に批判しており、両社ともFloCは採用しないと明言しています。

Googleは現在、何千万人ものChromeユーザーを対象にFloCをテストしており、最終的には数十億人のChromeユーザーに展開する予定です。それに対して、Chromeには及ばないものの大きなシェアを持つMSのEdgeが実質的にNoを突きつけたことで、今後の動向に影響が及ぶのかもしれません。

(Source:BleepingComputer、Via:MSPoweruserEngadget日本版より転載)

関連記事
GoogleがCookieに代わる広告ターゲティング手段FLoCをChromeでテスト開始
プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で
マイクロソフトがXbox向けChromiumベースEdgeブラウザーのオープンテストを開始
Microsoft Edgeの起動が高速に、バーティカルタブが利用可能に
グーグルが「Cookie廃止後、それに代わる他のユーザー追跡技術を採用するつもりはない」と発言
アップルのApp Tracking Transparency機能はデフォルトで有効に、早春にiOSで実装
グーグルはCookieに代わるターゲット方式による広告収入はほぼ変わらないと主張するもプライバシー面は不透明
Vivaldiブラウザーがトラッキングブロッカーを内蔵、Android版も正式版に
グーグルはChromeでのサードパーティCookieのサポートを2年以内に段階的に廃止
米広告業界団体がCookieに代わるユーザー追跡方式を提案
MozillaがFirefoxのユーザー追跡クッキーをデフォルトで無効化

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ウェブブラウザー(用語)オープンソース / Open Source(用語)Chromium(製品)Google Chrome(製品・サービス)広告 / アドテック(用語)FLoC(製品・サービス)Brave(企業・サービス)プライバシー(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Edge(製品・サービス)

プライバシー重視のブラウザ開発Braveが独自の検索エンジンを発表、欧州版Firefoxの元開発者と技術の協力で

Mozillaの元CEOであるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏によって共同設立されたプライバシー重視のブラウザ開発企業Braveは、デスクトップとモバイル向けに独自ブランドの検索エンジンをローンチする準備を進めている。

Braveは米国時間3月3日、Cliqzアンチトラッキング検索ブラウザコンボ(現在は廃止されている)の開発チームが開発したオープンソース検索エンジンの買収を発表した。このテクノロジーは来るべきBrave Searchエンジンを支えることになるだろう。同社は「Big Tech(ビッグテック)」によるものではない検索とブラウジング体験を何百万ものユーザーに提供していく予定だ。

「今日の検索エンジンのほとんどは、ビッグテック企業の検索結果に基づいて作られています。対照的に、Tailcatの検索エンジンは完全に独立したインデックスの上に構築されており、プライバシーを犠牲にすることなく、人々が期待する品質を提供することができます」とBraveは買収発表のプレスリリースに記している。

「Tailcatは、検索結果を向上させるためにIPアドレスを収集したり、個人を特定できる情報を使用することはありません」。

Cliqzはプライバシーに重点を置いたMozillaのFirefoxブラウザのヨーロッパ版であり、同社の主要株主であるHubert Burda MediaはGoogleに代わるブラウザを開発しようと複数年にわたる取り組みを続けていたが、パンデミックで厳しい取引環境が続いたことを受け、早期撤退を余儀なくされ、2020年5月に閉鎖された。

以前のCliqz開発チームはその後Tailcatで働いていたが、買収の一環としてBraveに移った。エンジニアリングチームを率いるのはJosep M Pujol(ジョセップ・M・プジョル)博士で、同氏はBraveのPRで「ビッグテックに代わる唯一の本格的なプライベート検索 / ブラウザを開発していることに大きな興奮を感じています」 と語っている。

「Tailcatは完全に独立した検索エンジンで、独自の検索インデックスをゼロから構築します」とアイク氏はTechCrunchに語った。「Tailcat as Brave Searchは、Braveがブラウザで提供しているものと同じプライバシー保証を備えています」。

「Braveは、ビッグテックのプラットフォームに代わる初めてのプライベートブラウザ+検索機能を提供することになります。ユーザーはプライバシーを保証された閲覧と検索をシームレスに行うことができます。またBrave Searchは、その透明性により、アルゴリズムのバイアスに対処するとともに直接的な検閲を防ぎます」。

アイク氏によると、Braveが検索事業に参入したことにはプライバシーが主流になりつつあるという同社の自信を投影しているという。同氏は、過去1年間で同社のブラウザの利用が「前例のないほど」増加しており、月間アクティブユーザーは1100万人から2600万人以上に増加していることを指摘し、それは非営利のe2e暗号化メッセージングアプリSignal(Facebook傘下のWhatsAppがプライバシーポリシーの変更を発表した後、WhatsAppのビジネスアカウントを通じてFacebookとデータを共有できるようになった)の利用が2021年初めに急増したこのと似通った現象だと語った。

同氏は声明で「2021年にはビッグテックの侵入的慣行から逃れるための真のプライバシーソリューションを必要とするユーザーが増え、Braveに対する需要はさらに高まると見込んでいます」と付け加えた。「Braveのミッションはユーザーを第一にすることであり、プライバシー保護検索を当社のプラットフォームに統合することは、監視経済を促進する目的でユーザーのプライバシーが奪われることがないようにする上で必要なステップです」。

関連記事:ウェブブラウザーBraveがピア・トゥ・ピアプロトコルIPFSのネイティブサポートを追加

Brave Searchは、ユーザーがブラウザのデフォルト設定として選択できるかたちで、既存のサードパーティー(Google、Bing、Qwant、Ecosiaなど)と並んで提供される。

アイク氏はまた、将来的にはこれがデフォルトになる(ユーザーが自ら選ぶことのない)可能性もあると述べている。

「当社は引き続き、複数の代替エンジンで『オープン検索』をサポートしていきます」と同氏は述べた。「ユーザーの自由な選択は、Braveの絶対的原則ですから、Braveはユーザーのデフォルトの検索エンジンに複数の選択肢を提供し続けます。しかし当社のユーザーはBrave Searchの比類ないプライバシーを選択すると考えています。準備が整い次第、Brave SearchをBraveのデフォルトエンジンにしたいと考えています」。

Tailcatによる検索結果の品質とGoogleとの比較について尋ねたところ、アイク氏は「かなり良好です」と述べ「普及することでさらに向上していくでしょう」と付け加えた。

「Googleの『ロングテール』はどんなエンジンにとっても打ち負かすのは容易ではありませんが、一度Braveブラウザーに統合されれば、その面でも競合する計画が私たちにはあります」と彼はメールインタビューの中で語り、Googleの巨大な規模は検索のライバルにある程度の競合の機会を提供していると論じた。「Googleが後れをとっている面もあります。検索が彼らの収益の主な源であるとき、彼らが検索の革新を進めることは難しいでしょう。

「彼らは新しい技術や透明性を試す対してリスクを回避しがちですし、株主から希少な検索エンジンの検索結果ページ(SERP)領域に彼らの事業を結びつけるよう求められたり、検索エンジン最適化(SEO)を迫られたりしています」。

「検閲、コミュニティからのフィードバック、アルゴリズムの透明性などの問題については、初期段階から改善が可能であると私たちは考えています。他の検索エンジンとは異なり、大きな改善を行う唯一の方法は新たなものを構築することであり、構築から得られるノウハウを活用することであると確信しています」と同氏は続けた。「インデックスを生成する代わりにBingを使うオプションもありますが(他の検索サービスと同様に)、そうすると品質の面ではBing止まりとなります(そうした場合ユーザーは完全にBingに依存することになるでしょう)」。

Braveは晩春ないし夏までにBrave Searchの一般公開を目指しているとアイク氏は語った。早期イテレーションのテストに興味のあるユーザーは、ウェイトリストにここから登録することができる。(テスト版は「今後数週間」のうちに登場する予定である。)

Tailcatという名称は、Cliqzが閉鎖される前にブラウザに実装されていない内部プロジェクトであったため、一般にはあまり知られていないようだ。

アイク氏によると「本格的な検索エンジンの開発に向けて」Burdaで開発が続けられていたという。(2020年4月に同社がCliqzの閉鎖を発表した際、同社はCliqzのブラウザーと検索技術を閉鎖すると述べたが、同時にAIや検索のような分野の技術的な問題に取り組むために専門家チームを招集するとも表明していた)。

「CliqzはSERPベースの検索エンジンを提供していましたが、ブラウザにはまだTailcatを実装していませんでした」とアイク氏はいう。「2020年4月にCliqzが閉鎖された後も、Burdaの開発チームは、本格的な検索エンジンを開発するために、新しいプロジェクト名をTailcatとして検索技術の開発を続けていました。チームはそのミッションを継続するための長期的な拠点を求めていましたので、Braveの一員になることに大きな喜びを感じています」。

買収の金額的条件は明らかにされていないが、我々はBurdaが買収契約の一環としてBraveの株主になっていることを確認した。

「当社の技術がBraveで使用され、その結果、ブラウジングと検索の中核的なウェブ機能において、Googleに代わる真の、プライバシーに配慮した代替手段が生み出されたことを大変喜ばしく思っています」とHubert Burda MediaのCEOであるPaul-Bernhard Kallen(ポール=ベルンハルト・カレン)氏は支持声明で述べている。「Braveの株主として、私たちは今後もこのエキサイティングなプロジェクトに関わっていきます」

Braveが代替ブラウザの開発に注力し始めたのは、主に広告資金によるインターネットビジネスモデルを再考し、暗号化通貨による報酬システムを利用してコンテンツクリエーターへの支払いを行う(およびユーザーの閲覧に対しても支払いを行う)ことを意識してのことであったが、今ではプライバシー重視の「スーパーアプリ」と自らを評している。

現在、Brave Browserはプライバシー保護広告プラットフォーム(Brave Ads)とニュースリーダー(Brave Today)をバンドルしている。今後リリース予定の検索エンジン(Brave Search)、プライバシー保護ビデオ会議サービス(Brave Together)に加えて、Firewall+VPNサービスも準備中だ。

「スーパーアプリ」による統一的なブランド提案は、主流のツールとは対照的に、ユーザーにオンライン体験の真のコントロールを提供するという誓約であるといえるだろう。

関連記事:ブレンダン・アイク氏の画期的なブラウザーBraveの1.0版が登場

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Braveウェブブラウザー検索エンジンプライバシー

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

ウェブブラウザーBraveがピア・トゥ・ピアプロトコルIPFSのネイティブサポートを追加

分散型テクノロジーのコミュニティが、暗号通貨のサポートを超える技術のサポートを見つけようとしている。

米国時間1月19日、ウェブブラウザーBraveチームの発表によると、同社はProtocol Labsと協力して、同社のブラウザーにInterPlanetary File System(IPFS)のネイティブサポートを統合した。このピア・トゥ・ピアのファイル共有スタンダードは2015年にローンチし、オープンソースの支持者たちの間で支持を集めた。彼らはこのプロトコルが、企業や政府などによるウェブ上のコンテンツの取り下げを不可能にすることを称揚し、また、機能と性能がHTTPより優れていることや、オフラインのファイル閲覧性能、信頼性の高さなどを利点として挙げている。

IPFSはBitTorrentとの類似点が多く、ネットワーク上に分散する複数のユーザーがファイルをホストできる。Braveのアップデートで、このブラウザーのユーザーは「ipfs://」で始まるウェブアドレスでコンテンツにアクセスでき、また自分でもIPFSのノードをホストできる。同社によると、IPFSのサポートを加えると「インターネットの全体的なレジリエンスが向上する」という。

Braveは何でも分散化が好きな企業であるため、IPFSのホームになるかもしれない。Mozillaの共同創業者であるBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏が創業した同社のブラウザーは現在、2400万の月間アクティブユーザーがいる。Braveの最もユニークな機能が、ブロックチェーンとピア・トゥ・ピア技術をサポートしていることだ。2018年にBraveはTor Tabsのベータを発表して、分散プロトコルOnionのサポートを加えた。

また2020年はOperaブラウザーが、AndroidアプリへのIPFSの部分的サポートを発表した

テクノロジー企業が徐々に暗号通貨に自らの商機を見出そうとしていることにともない、分散化技術によりメインストリームな関心が集まっている。先週TechCrunchは、Twitterがソーシャルメディアプラットフォームのための分散化ネットワークを構築しようとしている件を取り上げた。

IPFSは、今後メジャーなブラウザーがネイティブでサポートしていくのか、その点がまだ不明だ。ユーザーがファイルの破壊や改ざんを防げるという利点は濫用の恐れがあるし、また、現状ではかなりニッチな技術だからだ。

関連記事:インターネットは過剰と過密による窒息死を防ぐためにHTTPからIPFSへ大改造すべきだ

カテゴリー:ネットサービス
タグ:BraveP2P

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa