LINE元社長・森川氏の動画メディアC CHANNEL、「黒字化はやろうと思えばすぐに」

「黒字化はやろうと思えばすぐになります。(再投資して事業を成長させるので)すぐにするつもりはありませんが」——LINE代表取締役社長の座を離れ、4月に自らスタートアップの起業家として動画プラットフォーム「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏。完成間もないオフィスで、こう語ってくれた。

森川氏の新会社C Channelは5月21日、東京・原宿にオープンしたばかりのオフィス兼スタジオで戦略発表会を開催した。冒頭のコメントは、その発表会の後の懇親会でのものだ。

女性向けメディアとの提携、同時にコンテンツも強化

まずは戦略発表会の内容から。森川氏が語ったところによると、サービス立ち上げから1カ月が経過したC CHANNELは100万ページビュー、コンテンツ(動画)数は800件、全視聴時間の合計は4300万時間。ユニークユーザー数は非公開だが、「数十万人」(森川氏)とのこと。

森川氏に100万ページビューという数字をどう評価しているのか尋ねたところ、「世の中的には決して高い数字ではない」とした上で、「動画コンテンツはこの短期間で800も集まったし、これからもっと増えると思う」と説明した。

すでに各所からC CHANNELの動画を配信して欲しいという相談があるそうで、「いろんなメディアに出ることでトータルでのブランドが作れる。縦長のモニタはすべてC CHANNELのコンテンツになっていく。将来的には(プラットフォームではなく)、ブランドを作っていきたい」とのことだった。

森川氏の言葉通り、C Channelでは積極的な提携を進めている。5月20日にはロケットベンチャーの手がける女性向けキュレーションメディア「4meee!」とのコンテンツ提携を発表。今回の発表会でも、Tokyo Girls Collectionを手がけるF1メディアとの提携が発表された。これにとどまらず、今後も広く外部との提携を進めていく予定だという。

コンテンツも引き続き強化していく。発表会では、モデル・タレントの三戸なつめさんや、カナダ生まれのモデルのテイラーさん(ようかい体操第一のYouTubeへの投稿は89万回再生だそうだ)がC CHANNELの動画投稿者である「クリッパー」として参加することが発表された。

さらにネイリストや皮膚科医師など、専門家によるワンポイントレッスン動画の配信も開始する。クリッパーとして参加を希望する女の子も増えているそうだが、現在はその枠を100人に限定して、まずは品質の担保に努めるということだった。

会場となったC Channelのオフィス

会場となったC Channelのオフィス

縦長動画とデジタルサイネージの親和性

質疑応答の場で広告のニーズについて聞いたのだが、今まで動画プラットフォームと比較して、投稿を限定してクオリティコントロールができていること、C Channelが社内で撮影から編集、配信までを実現する体制があること、そしてLINE元代表によるスタートアップという自身の話題性があることなどから、「期待され、応援されている」(森川氏)状況なのだという。具体的な社名は挙がらなかったが、すでに複数社の広告配信が決定しているそうだ。

森川氏が主張するのはデジタルサイネージとの親和性。C CHANNELでは、スマートフォンでの閲覧を想定して、縦横費で横長の動画ではなく、縦長の動画を制作している。これが駅や複合ビルの柱などに設置されるデジタルサイネージにぴったりだそうで、そのニーズは「想定以上」なんだとか。その理由は、柱のように縦長な場所に設置するサイネージは、もちろん画面も縦長だからだ。テレビでもウェブでも、基本横長の動画が求められているため、そのままサイネージで流すのは難しいのだ。

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C Channelでは以前からECなんかも展開する予定だとしているが、冒頭に紹介した森川氏のコメントは、コンテンツの多面展開、そして動画広告ですでに収益化が見えているということだろうか。

発表会の最後に森川氏はこう語った。「つい最近までは渋谷のヒカリエで仕事をしていたが、若い人のメディアを作りには文化を知らなければいけないと慣れない原宿に来た。ビルの上から見下ろすのではなく、地上で時代の流れ、最先端のはやりを勉強するためにここに来た。小さいスペースではあるが、ここから情報を発信していく」

C Channelは「女の子の自己表現の場」になる? 森川氏とアソビシステム中川氏

左から渡辺氏、森川氏、中川氏、AMIAYAの2人

 

LINEの元代表取締役社長CEOである森川亮氏が4月10日、スマートデバイス向けの動画プラットフォーム「C Channel」を立ち上げた。その詳細や、森川氏の想いについてはこちらの記事を参考にして欲しいのだけれど、今度は福岡で開催中の「B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka」のセッションの様子をご紹介する。

「LINE元社長が仕掛ける次のビジネス」と題したセッションに登壇したのは、森川氏とアソビシステム代表取締役社長の中川悠介氏。さらにクリッパー(後述)としてC Channelで活躍する双子のモデル・アーティストの「AMIAYA」がゲストとして参加した。モデレーターはB Dash Venturesの渡辺洋行氏が務めた。

C Channelは、クリッパーと呼ぶ約100人のタレントやモデルらが、ファッションやフード、トラベルといった情報を、プロが1分間に編集した動画で配信するプラットフォームだ。例えばAMIAYAの動画のサンプルは、「焼き鳥の「すみれ」でSMILE」や「桜満開の目黒川を散策♪」で見れる。

個別に取材したときにも言っていたのだが、C Channelのイメージは「ケーブルテレビが生まれたときのMTV」なのだそう。アーティストのPV自体を自分たちで作るわけではないが、自分たちでも一部のコンテンツを作ったり、強いブランドを作っていくということだ。

森川氏はスマートデバイス向けのブランド広告について強調していたが、すでに今日になって出稿希望の企業から大量に問い合わせが来ているのだそう。ただ、「大事なのは最初から儲けることではなく、まずはブランドを作ること。(出稿を)お断りしながらでも価値を高めていく」(森川氏)と語る。

C Channelに出資するほか、事業でも協力体制を作る中川氏は、今回の取り組みの背景として、「やはり今は個人がメディアになる時代。テレビや雑誌も重要なメディアだが、動画を通してモデル1人1人がメディアになる。Instagramなどを通して世界に出て行きやすい」という状況を説明する。実際、今時のタレントは自ら動画を編集し、発信している人も多いのだそう。

女の子の自己表現の場として期待

アソビシステムのタレントたちにC Channelはどのように見えているのか。中川氏は「自分で動画をアップしている子は、自分で撮り方を勉強しながら撮るし、プロが撮る場合であっても、いろんな意味で自己表現力が広がっていく」と語る。

実際、女子高生が自分で動画を撮影し、編集まで30分ほどでやってしまうなんてこともあるそう。森川氏も中川氏も「撮影からアップまでのスピードが大事」ということを語る。

クリッパーを務めるAMIAYAの2人も「リアルな女の子の『近い感じ』を見れるのは嬉しいと思う。今は自分を自分でプロデュースする時代。新しい自己表現の場所ができて嬉しい」「日本の女の子の『カワイイ』の引き出しはたくさんある。日本だけでなく海外にもファッションやスタイルを発信していきたい」なんて語っていた。