Google Cloud Next 2019の重要発表トップ6まとめ

Googleのクラウドデベロッパー向けカンファレンス、Cloud Next 19はサンフランシスコで開催中だが、プロダクトの発表は出揃ったようだ。以下にもっとも重要と思われる6項目をまとめてみた。

Anthos

これは一体何?
AnthosはGoogle Cloud Services Platformに与えられた新しい名称だ。 エンタープライズ企業がコンピューティングリソースの管理や料金の積算、支払いといったわずらわしい業務の処理もすべて任せるプライベートデータセンターとしてとしてGoogle Cloudを利用する場合、 Anthosがそのプラットフォームの名前となる。

しかもAnthosはAmazonのAWSやMicrosoftのAzureといったライバルのクラウドもサポートに含める。これにより他のクラウドを利用している企業もGoogleを単一のクラウドの窓口とすることができる。つまりAnthosを使えばGoogle以外のクラウドに自社のプリケーションをデプロイしたり管理したりできる。クラウドのダッシュボードが単一となるだけでなく、料金もAnthosがまとめて計算し、請求する。こうしたことが可能になるは、予想通り、コンテナーとKubernetesの威力だという。

どこが重要なのか?
Googleのような巨大クラウドの運営者がライバルのクラウドをサポート対象に含めるというのは異例中の異例だ。ライバルのクラウドで実行されたコンピューティング料金はライバルに流れてしまう。しかしGoogleは「これは顧客の要望に基づくもので重要な問題を解決する」と主張する。GoogleはAWSやAzureを追う立場にあり、先行ライバルに対してはっきりした差別化を図る必要があった。優位にあるAWSやAzureが今後Googleのアプローチを採用する可能性は低いが、そうなればユーザーの利便性は大きく高まるだろう。

Google Cloudがオープンソース各社と提携

これは一体何?
Googleはオープンソースプロジェトのトップ企業多数と提携し、Googleクラウドのサービスjの一部として利用できるようにした。発表されたパートナーはConfluent、DataStax、Elastic、InfluxData、MongoDB、Neo4j、Redis Labsだ。提携はさらに拡大するものと見られる。

どこが重要なのか?
すでにこうしたオープンソースプロジェクトの製品を利用しているエンタープライズにとって大きな朗報であり、Google Cloudのセールスポイントとなるだろうこうしたオープンソースプロダクトのカスタマーサポートや利用コストの支払いなども上で紹介したAnthosプラットフォームが単一の窓口となる。実際の内容はかなり複雑だが、今回のカンファレンスでGoogleがオープンソース化を鮮明にしたことがはっきりした。これはAWSのクローズドなアプローチとは対照的だ。オープンソース各社はAWSが「オープンソースを利用するだけでまったく貢献しようとしない」として反発を強めている。

Google AIプラットフォーム

これは一体何?
Googleは自社の強力なAIがAWSやAzureなどのクラウドと競争する上でセールスポイントとなると考えている。Googleはすでにデベロッパーやデータサイエンティストなどに向けて各種のAIツールを提供している。たとえばAutoMLは、その名のとおり、与えられたデータから自動的に機械学習モデルを生成するサービスだ。利用するために計算機科学の博士号は必要ない。新しいAIプラットフォームはエンタープライズの業務に全面的なソリューションを与えることができるさらに高度なサービスをデベロッパー向けに提供する。これは元データの整理からモデル化、学習、アプリ作成までサポートする。このプラットフォームには簡単に利用できるテンプレートモデルがいくつか用意される。

どこが重要なのか?
AI(機械学習を含む)は現在の主要クラウド事業者全員が取り組んでいるホットな課題だ。しかしユーザーが実際に業務に適用しようとすると改善を要する点がまだ多い。とくに元データからアプリケーションまでエンドツーエンドでソリューションを提供できるというのは明らかに大きな進歩だ。これにより機械学習の利用が拡大することが期待できる。

Androidスマートフォンがセキュリティーキーになる

これは一体何?
ドングルを接続したりマニュアルでセキュリティー数字を打ち込んだりせずにAndroid 7以降のスマートフォンを持っていれば自動的な2要素認証によるサービスへのログインが可能になる。ユーザーはGoogleアカウントからBluetoothを有効にしておく必要がある。今のところこの機能はChromeのみサポートしているが、Googleはこの機能を他のブラウザやモバイルOSがサポートすることを期待している。Googleではユーザーが(残念ながら起こりうる可能性だ)スマートフォンを紛失したときのために、これまで通り、プリントアウトできるセキュリティーキーが使えるとしている。

どこが重要なのか?
2要素認証は単なるパスワードによる認証より安全性が格段に高い。しかし2要素認証であってもユーザーを偽サイトに誘導するフィッシング攻撃で破られる可能性があった。しかし今回の新しい自動2要素認証システムは正規のサイトかどうかを判別する。またユーザーの煩わしさも大きく軽減される。Googleではこれにより2要素認証の普及が進むことを期待している。

Google Cloud Code

これは一体何?
Cloud CodeはIntelliJやVS CodeのようなポピュラーなIDEで利用できる一連のプラグインだ。これは開発作業でローカルとクラウドを往復したり、必要なツールを別途探したりする必要をなくしてデベロッパーにクラウドネイティブな開発環境を提供することが狙いだ。Cloud Codeを利用すれば、デベロッパーはこれまでのローカルの開発と同様にコードを書くだけで自動的にクラウドで実行可能なパッケージが生成される。これはKubernetesクラスターに送りこんでテストしたり、業務に利用したりできる。

どこが重要なのか?
クラウドネイティブなアプリを書くのは複雑な作業で、特に適切なコンフィグレーションファイルを書くのが難しかった。Cloud Codeはデベロッパーの負担を軽減するのが狙いだ。これによりクラウドが企業コンピューティングのインフラとなることが促進されるはずだ。

Google Cloudはリテラーをターゲットに据えた

これは一体何?
今回、通販など小売業を対象としてバーティカルソリューションが発表された。Googleはリテラーをクラウドコンピューティングのターゲットに加えた。それだけ聞けば「当たり前だろう」と思う読者も多いだろうが、Google Cloudではリテラーがすぐに使えるパッケージを今後強化していくという。

どこが重要なのか?
Google Cloudの新CEOのThomas Kurian氏によれば、カスタマーは現在使用中の業種に特有なツールをそのままクラウドでも利用したいと強く要望しているという。リテラー向けパッケージは(ヘルスケア分野もそうかもしれないが)業種に特化した初めてのクラウドソリューションとなる。カバーされる業種は今後されに拡大される予定であり、クラウドプラットフォームの重要な柱に成長させていくという。

記事の背景
TechCrunchはGoogle Cloudの新しいCEOのThomas Kurian氏に独占インタビューするチャンスがあった。我々は各種の発表の背景やGoogle Cloudが目指す方向について参考となる話を聞くことができた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook