元請け建設企業の資金管理と決済サービスを提供するニューオーリンズのLevelsetのCEO Scott Wolfe(スコット・ウルフ)氏はそれまで、自分は食料品のビジネスをやるんだ、といつも思っていた。
彼の家族はニューオーリンズ界隈で食料雑貨店を何店舗か所有し、彼もその家族経営を継ぐと思っていた矢先、ハリケーン・カトリーナが襲った。
ファミリービジネスは大きな被害を受けたが、その一方で、土地や店舗などを開発する建設業に大きなチャンスがあった。1年も経たないうちに、ウルフ氏は事業の方向を災害復旧のための修理や新築に変え、建設業界で旗揚げすることになった。
そしてその際、ウルフ氏は1つの建設プロジェクトに関わってくる何百という建設関連中小企業のキャッシュフローと決済を管理する、ソフトウェアサービスのニーズも目にした。
そこで彼は、Levelsetを立ち上げた。
同社はこのほど、Horizons Venturesからの3000万ドル(約33億円)の資金調達を完了した。Horizonsは、世界的な大富豪である香港のLi Ka-shing(リ・カシン)氏の投資部門だ。
HorizonsのアドバイザーBart Swanson(バート・スワンソン)氏が、ニューオーリンズのテュレーン大学のエコシステム周辺に投資している共通の友人を介してLevelsetを知った時、彼はたちまち、こいつはHorizonsの投資委員会が理解してもらえる機会だ、と感じた。
スワンソン氏は 「これはグローバルな問題だ。建設企業の64%は、最初の5年以内に倒産する。助けを求める場所が、どこにもないからだ。特に困るのが、決済の遅滞や不能だ」という。
ウルフ氏によると、今ではLevelsetが課金と決済をデジタル化を担い、求職サイトで仕事を求めている個人や零細企業の評価をする。それにより、その建設プロジェクトが求めている職種を正確に見つけることができる。
さらにウルフ氏は「現場には常に大金が投じられているが、対照的に投資がほとんどないのが、オフィスで生じている楽屋裏のあれこれだ。しかし、現場に落ちている情報を拾い上げてそれをお金に変えることができるのは、経理や管理部門の人たちだ」という。
リ氏が抱える不動産開発企業、Cheung Kong Holdings(長江実業)などにとって、上記のようなLevelsetのソフトウェアの契約は大きな利益の機会だ。建設業界は、決済を迅速に処理するソフトウェアやサービスを欠いた零細企業の集団に支えられている。ペーパーワークによって失われる時間がプロジェクトに遅れをもたらし、結果的に元請けが負担する費用が増える。
このHorizonsのラウンドには、S3 VenturesやOperating Venture Capital、Altos VenturesそしてBrick & Mortar VenturesのDarren Bechtel(ダレン・ベクテル)氏が参加した。今回の投資により、スワンソン氏がLevelsetの取締役会に席を得る。
LevelsetとT-Sheets by Quickbooksが行なった最近の調査によると、半数以上の元請け企業が決済が遅れがちと回答し、キャッシュフロー(資金繰り)に大きな困難を抱えている。そして75%以上が、決済処理の透明性を求めている。確かに、大手会計事務所PWCが行なった運転資本に関する調査でも、建設企業の決済速度は全業種中で最遅である(83日以上)。
ウルフ氏は次のように声明している。「決済に要する努力と、元請けが背負うキャッシュフローのストレスは膨大である。この世界最大の産業は、大量の中小企業で満ち溢れており、彼らが我々の経済を支えている。従って、彼らがお金の心配なしで仕事できることは、経済全体にとって極めて重要である」