Craig Wright、「証拠は公表したくない」―オーストラリア人起業家、Bitcoinを発明したとの主張から後退

2016-05-06-bitcointug

Bitcoinの発明者、Satoshi Nakamotoは結局のところオーストラリア人起業家ではなかったようだ。Craig Wrightは「自分こそSatoshiだ」と3種類のメディアに対して主張したものの、わずか数日後に「Satoshi Nakamotoである証拠を公表するつもりはない」という 記事をブログに掲載した。

Wrightの戦術はかなり巧妙だった。自分がBitcoinを発明したという主張はGQBBCEconomistのジャーナリストに対してなされた。これを額面どおりに受け取らないメディアもあったが、いずれも伝統的な記事発表の解禁日を守らねばならない立場にあった。Wrightの主張の真偽を判断できる暗号専門家はこの件に関して蚊帳の外だった。そこで記事の大見出しはWrightにたいへん都合のよいものとなった。

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しかし Wrightの主張に対する疑問は即座に積み上がっていった。WrightがSatoshiであることを証明する証拠は皆無だった。

多くの関係者がWrightに対して「決定的な証拠を提出せよ」と迫った。幸いなことにそういう証拠は簡単に提出できるはずだった。たとえば、Satoshiのアドレスは誰でも知っている。そのアドレスからbitcoinによる送金があれば、送金者はSatoshi以外にない。SatoshiのメーリングリストからBitcoinコミュニティーに対してメールが送信されればそれは本物のSatoshiだ。

しかしWrightはそういった証拠を提出するつもりがないという。「しかしながら、今週の状況の進展により、〔Bitcoinの作者であることを証明する〕私が発明した最初期のアクセス・キーを公開する準備を進めていたが、私には〔公表する〕勇気が欠けている。私にはできない」とWrightは書いている。

ご覧のとおり、WrightはSatoshiであるという主張を文字通り取り下げたわけではない。しかしSatoshiであることを証明したくはないという。現実を直視するなら、これはWrightがSatoshiではないと言っているのに等しい。

WrightはBitcoinコミュニティーの著名人でBitcoin FoundationのトップであるGavin AndresenとJon
Matonisに密かに会って主張を伝えている。これによってWrightがSatoshiだという主張を2人が公に支持するという非常に困った状況がもたらされた。

この点ではおそらくWrightを賞賛すべきなのだろう。たとえ数時間であれ、世界中にSatoshi Nakamotoであると信じこませたというのは大したものだ。

2014年のDorin Nakamotoのときのようにロサンゼルスを横断するカーチェイスが見られなかったのは残念だ。これまでにこの人物こそSatoshiであるという数多くの理論が唱えられてきたが、長くもちこたえたものは一つもない。次に現れるSatoshiの場合もおそらく同様だろう。

グッドバイ。

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画像: Russell Werges

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

オーストラリア人起業家、Craig WrightがBitcoinの発明者、Satoshi Nakamotoなのか?

2016-05-03-craig-wright

オーストラリア人起業家、Wrightは自分がBitcoinの発明者Satoshi Nakamotoだと名乗りでた。しかしテクノロジー・コミュニティーの多くのメンバーはこのニュースに懐疑的だ。

ストーリーは説得力が薄く、「証拠」はBitcoinの発明者、Satoshiが過去にサインした開発初期の産物のひとつを利用したにすぎないと考える専門家が多い。Wrightは過去にもSatoshiではないかと指摘されたことがあったが、その時点では否定していた。

WrightはSatsoshiであるという主張を3つのメディアに対して行った。 BBCEconomist、 そしてやや異例だが男性向けライフスタイル誌のGQだ。

BBCは「〔Wrightの主張は〕誰がデジタル通貨システムの基礎となるアイディアを最初に考えついたのかという問題に関する長年の推測を一掃するものだ」とし、さらに「Bitcoinコミュニティーの著名なメンバーであり開発において中心的な役割を果たした専門家がWrightの主張が正しいと認めた。Bitcoin Foundationのチーフ・サイエンティスト、Gavin AndresenはWrigtの主張を肯定するブログ記事を公開した。またBitcoin Foundationの創立者の1人である経済学者、Jon MatonisもWrightの主張が正しいと確信している」と報じた。

しかし、Hacker NewsとRedditにはWrightの主張に疑問を投げかける証拠が数多く寄せられている。またAndresenはハックされたのではないかという疑いも出ている。

BBCとのインタビューでWrightはBitcoin開発の初期段階で利用されたデジタル鍵でメッセージに署名した。このメッセージは本物のSatoshiが作成したbitcoinブロックと不可分に結びついているという。

しかしHacker Newsの指摘によれば、Wrightが用いたサルトルのテキストは「〔過去に別人によって暗号化されたことがあるので〕blockchainのトランザクションからコピーすることが可能」であり「Wrightは現実には何ら暗号を復号した証拠を示していない。BBCはデジタル署名が真性であることを見たに過ぎない。つまりそのデジタル署名が実際に行われたのは数ヶ月、それどころか数年前かもしれない。そうでないことを証明するのは非常に難しいはずだ」という。

Hacker Newsのスレッドによれば、本物のSatoshiはBitcoinコミュニティーとの会話をこれまでもっぱらBitcoinメーリング・リストによって行ってきたという。つまりSatoshiが自分の身元を明かす気があるなら、メッセージを1通、このメーリング・リストで送りさえすればよかったはずだと指摘している。

Redditも同様に疑問を抱いている。 Satoshiが初期のBitcoinの開発者の1人でPGPのエンジニア、Hal Finney宛に送った史上初のBitcoinトランザクションを暗号化したのと同じデジタル鍵で、Wrightはジャン=ポール・サルトルの発言を暗号化してみせた。しかし用いられたテキスト中にはCraigの名前、現状、現在の日付などは含まれていない。本物のSatoshiであれば当然含めていたであろう、そうした最新のデータがまったく含まれていないことは、Wrightはデジタル鍵をなんらかの方法で入手することに成功しただけという推測を成り立たせる。

Wrightをインタビューした3つのメディアのうち、Economistだけは最終判断を保留している。

本物のSatoshi Nakamotoは100万Bitcoinを保有していると推定されている。これは4億5000万ドル(479億円)に相当する。もしWrightが実際にそれだけの額を保有しているのであれば、オーストラリアの税務当局による調査を受けることになるだろう。そうであればメディアを利用したキャンペーンは同情を呼び起こす上で有効なはずだ。

一方、懐疑派のPatrick MckenzieGithubにこの問題に関する簡単な分析を寄せ、Wrightの主張を「根拠薄弱なでっち上げであり、まともな解析には数分も耐えられない。〔Wrihgtは〕システムレベルでBitcoinの暗号化システムに精通していることを示したが、Satoshiでなければ知り得ないような非公開の情報は何一つ明かされていない」と述べている。

〔日本版〕Mckenzieは上記Githubで、Wrightが署名したサルトルのテキストはサルトルの任意の一節ではなく、過去にBitcoinで暗号化されたことがあり、データがブロックチェーンに残っているものであることを指摘している。同時に、メディアの非専門家に自分がSatoshiだと信じさせるのは「2時間の準備で足りる」が「Gavin Andresenがどうして信じてしまったのかは謎だ」とした。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+