ドイツのDelivery HeroがGlovoの中南米フードデリバリー事業を280億円超で買収、8カ国でサービス拡充を進める

利益率の低いフードデリバリー業界でのさらなる統合が発表された。ドイツ・ベルリンを拠点とするDelivery Hero(デリバリーヒーロー)は、スペインのオンデマンドデリバリーアプリ「Glovo」の中南米事業を買収すると発表した。同社は9月16日、最大2億3000万ユーロ(約282億円)を支払って8つの市場でのサービス展開を始める。

同社は、数週間以内に取引を完了する見込みであると述べており、この取引はGlorovoが事業を展開しているラテンアメリカのすべての国、すなわちアルゼンチン、ペルー、エクアドル、パナマ、コスタリカ、ホンジュラス、グアテマラ、ドミニカ共和国の8カ国だ。

Glovoは今年の初めに、ラテンアメリカの2つの市場からすでに撤退していたが、当時は「配送業者のトップ2社の中で地位を確立できる市場に集中している」と説明していた。なお、同時に中東からも撤退している。

Delivery Heroにラテンアメリカ地域の事業が移管されることで、同社は14の市場を持つち、南欧と東欧にさらに力を入れることになる。利益率の低い配送業界で収益性に疑問を感じていることを考えると、この動きは大きな驚きではないだろう。

昨年12月にGlovoは、「1年以上の時間をかけて」収益性を達成しようとしていることに焦点を当てていると述べていた。しかしそれは、本質的には競合他社との競争に勝ち、運営している場所で支配的なプラットフォームになることを意味し、ユニットの経済性が積み重なっている都市でのみ運営することを意味する。

Globoの共同創業者は「2020年はラテンアメリカの事業が黒字になると予想している」と語っていたが。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が業績を追い込んだのかもしれない。

さらにソフトバンクの数十億ドルとの戦いもある。日本のハイテク投資家であるソフトバンクは中南米を対象とした20億ドル(約2090億円)のファンドを保有しており、オンデマンド配信のスタートアップにも複数の投資を行っている。この地域で競争するためのコストが上昇している可能性が高く、収益性を追求するGlovoの後押しにはならなかった。

Glovoで最高経営責任者(CEO)を務めるのOscar Pierre(オスカー・ピエール)氏は今回の売却について「長期的に持続可能な事業を構築し、当社独自のマルチカテゴリー製品を顧客に提供し続けることができる主要市場に集中することが重要だと考えています」と述べている。「今回の取引により、当社がすでに非常に強みを持つ市場でのプレゼンスを強化すると同時に、大きな成長の可能性と機会がある新しい市場に投資することが可能になります。Delivery Heroは、ラテンアメリカで築いてきたビジネスを次のレベルに持っていくための最高のパートナーだと確信しています。彼らには、この地域をリードするプレイヤーになるために必要なものがすべてがそろっています」と同氏は付け加えた。

今回の売却は、Delivery Heroがラテンアメリカのフットプリントに新たに5つの市場を追加することを意味するだけでなく、これまで2社が直接競合していた、アルゼンチン、パナマ、ドミニカ共和国の3つの市場の競合相手を排除されることを意味する。

これらの重複する3つの市場では、取引の完了と同時にGlovoの事業を直接引き継ぐことになる。ただし、Glovoは2021年3月まで他の事業を継続して運営する。

なおこの取引は、一定の条件を満たし、関連する規制当局の承認を得ることを条件としている。

Delivery HeroのCEO兼共同創業者であるNiklas Östberg(ニクラス・エストバーグ)氏は声明で「ラテンアメリカはフードデリバリー事業にとって『例外的な成長の可能性』がある」と述べている。我々はわずか2年前に、地元ドイツでの事業を競合のTakeaway.comに事業を売却したばかりです。だから、フードデリバリーの分野は、プレイヤーがポジションを競い、彼らが望む収益性を得ることが重要なのです。

同氏はx「ラテンアメリカは、オンライン配信の可能性が非常に高い地域です。Glovoの現地法人を買収することで、革新を推進し、顧客満足度を継続的に向上させ、地域の現地ベンダーをサポートするための取り組みを強化する機会が得られます。当社は長年にわたりGlovoと密接に協力しており、彼らのラテンアメリカでのサービスを当社のグローバルネットワークに組み込んでいることを誇りに思っています。」と語った。

ちなみにDelivery Heroは、食料品配達の分野にも進出しており、8月にはドバイに拠点を置くInstaShopを買収済みだ。新型コロナウイルスの危機の間、ユーザーは通常よりも自宅にいる時間が長いことに気付いたため、食料品の配達は有望視されている。

Glovoはまた、自分自身を「食品配達以上のもの」とうたっている。アプリ内のボタンで、ユーザーは「何でも」の配達を要求できる。もしくは、少なくともその宅配業者がバイクや原付で管理できるものを。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

米国の料理配達スタートアップGrubhub買収を巡り、本命のUberに加えて欧州2社が名乗り

米国の料理配達スタートアップのGrubhubの買収を巡って「これまで本命とされていたUberに対抗して米国進出を図る有力なヨーロッパ企業2社が名乗りを上げた」とCNBCが報じた。参戦したのは、TakeawayがJust Eatを買収して誕生(Iindependent記事)したJust Eat TakeawayとDelivery Heroだ。

名乗りを上げた2社は米国市場への大々的参入を図っているヨーロッパ企業だ。Just Eat Takeawayは英国とオランダを本拠とし、Delivery Heroはドイツ企業となる。Crunchbaseによれば、Just Eat Takeawayは双方合計で10億ドル(約1096億円、両社は現在単一企業となっている)を調達し、Delivery Heroも数十億ドルの資金を集めている(Crunchbase記事)。

提示金額は今のところ不明だが、株式市場は「両社はかなりの額を払う用意があるはず」と楽観的に想定している。 Uber以外に有力な買収提案があったらしいという情報にGrubhubの株価は急上昇し7%アップで引けた。

競争になれば、当然Grubhubの買収価格は上がる。UberとGrubhubは後者の適切な買収価格を巡って折衝を重ねている(MarketWatch記事)と報じられている。 UberのUber Eatsは米国の料理宅配市場ではGrubhubの最大のライバルだ。それだけにUberのビジネスにとってはGrububの買収は魅力的かつ重要だ。Uberが最大のライバルの1つを買収し、そのシェアを自分のものにできれば、主要事業の配車サービス以上のキャッシュをフードデリバリーから得られる可能性が出てくる。Uberの累積赤字を減らすことに役立つかもしれない。

今後どれほどのレストランが、フードデリバリー業者や総合的サービスを提供するフードアグリゲーターを利用するようになるのかは明らかでない。

しかし米国のフードデリバリー市場の主導権を巡る戦いはまだ当分決着がつきそうにないことだけははっきりしてきた。もしヨーロッパ生まれの2社のどちらかがGrubhubの買収に成功した場合、飲食店のキッチンから消費者の家に料理を運ぶ役割を得るための競争に新たな燃料が投下されることになるだろう。Uber EatsのライバルであるGrubhub(とそれを買収した企業)に加えて、地域のロジスティクス全般を担当するPostmates、ソフトバンクが出資するドア・ツー・ドア配送のDoorDashなども巻き込んだ激しい争いになりそうだ。

Grubhubがヨーロッパ企業に買収された場合、潤沢なキャッシュによって新たに活力を得た同社との戦いはUberにとって非常に高くつくものになる。そうした事態を避けるために、Uberは提示する買収金額を渋々引き上げることになるかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Skypeの共同開発者やNokiaのチェアマンも注目するするフードデリバリー・サービス

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編集部注:本稿はテルアビブ在住でスタートアップの取材などを行なっているDennis Mitznerによる。

フードデリバリーの分野には豊富な資金をもった巨人たちが既に参入しているように思える。しかしそんな中にあってもヘルシンキに拠点をおきフードデリバリー・サービスを手がけるWoltが、有名所から1100万ドルもの資金調達に成功した。Woltからのアナウンスによれば、出資したのはSkypeのファウンダーやNokiaのチェアマンなどであるとのこと。

「現在、北欧およびバルト海地域でサービス範囲を拡大しているところです。調達した資金は、新規サービス拠点および既存サービス拠点での人材確保のために使う考えです。さらには本部にて製品開発も行なっていきたいと思っています」とWoltのCOO兼共同ファウンダーであるJuhani Mykkänenは言っている。

今回の出資をリードしたのはEQT Venturesで、Skype、Ilkka Paananenを起業し、SupercellのCEOを務める著名投資家のニクラス・ゼンストローム(Niklas Zennström)も出資している。さらにはノキアのチェアマンであるRisto Siilasmaaも、前回に続き出資を行なっている。

今回の資金調達に伴い、Booking.comの前CEOであるKees Koolenが取締役に加わることともなった。

今回の資金調達の結果、Woltの調達額は1400万ドルとなった。

ちなみに前回のラウンドではInventure、Lifeline Ventures、Pii Ketvel、Supercellの共同ファウンダーであるVisa Forsten、および不動産王でフィンランド屈指の富豪であるPoju Zabludowiczなどが出資を行なっている。

フードデリバリーのヒートアップはこれからだ?!

Woltが行うフードデリバリー・サービス界には30億ドルの市場評価をうけるDelivery HeroJust EatTake Eat EasyDeliverooGrubhubSeamless、およびFoodoraなどが参入している。

「世界をみれば、もっとたくさんの有力サービスがあるのでしょう。ただ、私たちのサービスにおける最大のライバルは街角のコンビニエンスストアだと考えています。人々も街角に何でも揃う店があることを当然だと考えて行動しています。フード関連サービスの(アメリカにおける)デジタル化率は0.5%程度で、宅配ピザ以外の成功事例というものがまだ出てきていないように思うのです。そこにチャンスが眠っているはずだと考えています」と、WoltのCEO兼共同ファウンダーであるMiki Kuusiは述べている。

確かにここにあるチャンスに注目する人は少なくないようだ。たとえば4月にはAlibabaは中国でフードデリバリー・サービスを手がけるEle.meに対し、9億ドルの出資を行なっている。ロンドンでオンデマンドデリバリーのサービスを行うJinnも750万ドルを調達している。3月にもフランスを拠点にデリバリーサービスを行うFrichtiが1340万ドルを調達して、サービス範囲拡大のためのインフラ整備を行なっている。

このような状況を考えてみると、数多くのライバルたちがWoltを待ち受けている状況だということができる。ただ人口こそ540万ほどと少ないものの、フィンランド内でかなりの市場シェアを握っている点には期待できるようだ。

「登録利用者は10万人で、提携レストランは450軒というのが現状です」とMykkänenは言っている。

フィンランドのように、極北の寒い地域にあっては、確かにデリバリーサービスは多くの人に受け入れられることだろう。冬も長く、外を出歩くのは大変なことだ。

アメリカについてみれば、食品の持ち帰りおよびデリバリー市場は700億ドル規模となっている。しかしオンラインでの規模を見ると90億ドルという状況だ。

ちなみにWoltも他のデリバリーサービス同様に、手数料で収益をあげるモデルを採用している。

Mykkänen曰く「持ち帰りについては少額の、そしてデリバリーについては少し高めの割合を店舗からもらうようになっています。売れたときのみの課金で、月額の利用料や入会金などはありません。利用者の方については、サービスはすべて無料でご利用いただけます。サービスを利用することにより、実際の店舗の価格よりも高額になるようなこともありません」。

資金調達を報告した際の話によれば、Woltは32軒のレストランと提携して、ストックホルムでもサービスを提供する旨がアナウンスされた。Woltにとって、ストックホルムがフィンランド国外での最初の拠点となるわけだ。

「ストックホルムにも優秀な人材が揃いました。北欧の他の地域でも人材を獲得してサービスを展開していきたいと考えています。これからの私たちの成長にぜひご注目ください」とKuusiは述べていた。

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(翻訳:Maeda, H