航空宇宙、自動車、医療、防衛向け産業用3Dプリンター企業ExOneをDesktop Metalが約635億円で買収

Desktop Metal(デスクトップ・メタル)は、先に行われた決算説明会の中で、ExOne(エクスワン)の買収計画を発表した。ペンシルバニア州に本社を置くExOneは、航空宇宙、自動車、医療、防衛などの産業向けにさまざまな業務用3Dプリンターを製造している会社だ。TechCrunchの最近の記事では、同社の移動式3Dプリント工場について紹介した。これは要するに、輸送用コンテナの内部に作られた移動可能な積層造形拠点である。

2月の記事で書いたように、ExOneは米国防総省から160万ドル(約1億7700万円)の助成金を受け、このシステムを現場に投入することを目指している。それぞれのユニットの中には、コンピューター制御の3Dスキャニングステーションの他、金属およびセラミック用3Dプリンター、硬化炉、繊維強化プラスチック用3Dプリンター、圧縮成形ステーションといったさまざまな耐久性の高い産業用機械が設置されている。

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「この2年間は、当社の技術を政府系機関の用途に提供することに力を注いできました。国防総省、NASA、環境省などです」と、ExOneのCEOであるJohn Hartner(ジョン・ハートナー)氏は、このニュースが報道された際にTechCrunchに語った。「サプライチェーンの分断や製造業の分散化について論じられることがありますが、我々が手がけているのは、分散して前方展開が可能になるというものです。それが必要とされる状況とは、緊急事態や、人道的な任務、あるいは戦闘の最前線などが考えられます」。

買収額は5億7500万ドル(約635億円)で、Desktop MetalがExOneの全株式を取得する。

「ExOneをDMファミリーに迎え入れ、大量生産向けの最先端の積層造形ポートフォリオを構築できることに、私たちは興奮しています」と、Desktop MetalのCEOであるRic Fulop(リック・フロップ)氏は、リリースで述べている。「今回の買収により、両社の補完的な技術と市場開拓の努力が継続的な成長を可能にし、お客様により多くの選択肢を提供できるようになると確信しています。この交流は、積層造形2.0の導入を加速するという我々のビジョンを実現するための大きな一歩となります」。

Desktop Metalは、2020年8月にSPAC(特別買収目的会社)を介して上場する計画を発表して以来、3Dプリントのポートフォリオを拡大するための買収を積極的に進めてきた。2021年1月にはドイツのEnvisionTEC(エンビジョンテック)を3億ドル(約330億円)で買収している。

ハートナー氏は今回の発表において「大量生産における積層造形という共通のビジョンを通じて、より持続可能な未来を実現するために、Desktop Metalと力を合わせていけることをうれしく思います」と述べている。「両社の補完的なプラットフォームは、顧客へのサービスを向上させ、環境に優しい技術の採用を促進し、株主価値の向上につながると、私たちは確信しています。最も重要なことは、我々の技術が、世界を改善できるほどの意義ある生産規模で、重要な革新の推進に役立つということです」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Desktop Metal3DプリンターExOne買収

画像クレジット:ExOne

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

3DプリントのDesktop Metalが「健康」にフォーカスする事業を開始

3Dプリントの未来は大量生産かもしれないが、健康関連製品はまさに現在のトピックだ。歯列矯正から人工関節まで、医療ニーズはまさに積層造形のスイートスポットといえる。プロトタイピングは上限のあるカテゴリーだが、真の大量生産はこれらのシステムでまだ不可能な領域である。医療・歯科分野はより大きな市場でありながら、カスタマイズが必要な分野でもある。

米国時間3月15日にDesktop Metalは、医療関連製品に特化した事業であるDesktop Healthのローンチを発表した。このビジネスにはバインダージェッティング、3Dバイオプリンティングおよび各種材料などを含むさまざまな技術が含まれている。

画像クレジット:Desktop Health

「現在、世界では毎年850億ドル(約9兆3000億円)を超える医療用および歯科用インプラントが製造されています」とDesktop MetalのRic Fulop(リック・フロップ)CEOはリリース文で述べている。「2010年代の終わりまでにこれらの部品の大部分が印刷され、患者に合わせて作られるようになると考えており、この市場はDesktop Metalにとって重要な機会になると考えています」。

歯科 / 歯科矯正(リテーナーやインビザラインスタイルの歯列矯正など)は依然として最優先課題であるが、現在および将来の用途はそれだけではない。将来の事業としては組織や移植片のプリントなどが含まれており、Desktop Metalはこのプロセスがどのように成長するかを検討している。

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同部門を率いるのは、Michael Mazen Jafar(マイケル・マゼン・ジャファル)氏だ。Evolusの元COOであるジャファル氏はCEOとして参加する。「Desktop Healthは革新的な技術と科学的根拠に基づいたソリューションにより、患者がパーソナライズされたヘルスケアを体験する方法を変えることを使命としています」とリリースで述べている。

Desktop Healthは2020年8月にSPACを通じて上場する計画を発表した。また2021年1月にはEnvisionTECを3億ドル(約330億円)で買収している。EnvisionTECはドイツの企業で、歯科用の重要な新技術であるフォトポリマープリンティングを専門としている。同社はSmile Direct Clubを含む1000社の歯科関連顧客を有しており、その中には新部門の重要な基盤となるSmile Direct Clubも含まれている。

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タグ:Desktop Metal3Dプリント

画像クレジット:Desktop Health

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

金属3DプリントのDesktop Metalが同業で3Dプリントで入れ歯などを作るEnvisionTECを312億円で買収

金属3Dプリンターで知られるDesktop Metal(デスクトップ・メタル)が米国時間1月15日、同業の3Dプリント企業であるEnvisionTEC買収の意向を発表した。2002年にドイツで設立されたEnvisionTEC社は、フォトポリマー付加製造に特化しており、その技術はDesktop Metal社の既存のポートフォリオよりも、3Dプリント界の寵児であるCarbon社などと直接競合するものとなる。

今回の取引は、2020年8月にDesktop Metal社がSPACの合併トレンドの一部として株式公開に踏み切ったことに続く動きだ。これに先立ち、Desktop Metalは4億3000万ドル(約446億5000万円)の投資をきっかけにユニコーンの地位に急浮上しており、自己資金には事欠かなかった。同社は、現金と株式の組み合わせで3億ドル(約311億5000万円)を投じてEnvisionTECを買収する予定だという。

Desktop Metalがこれにより成長する可能性は大きい。EnvisionTECには190種類以上の材料に印刷できる基礎技術があるが、かたやDesktop Metalには、EnvisionTECがこれまでに構築してきたものを超えて、その技術をスケールアップさせるためのリソースがある。

このパズルの中で、デンタル分野がかなり巨大なピースであることは明らかだ。歯科用アプリケーションはこの種の大量3Dプリントの最も明確で即効性のある使用例の1つであり、実際、同社はすでに歯科分野で、Smile Direct Club(スマイルダイレクトクラブ)のような企業を含む約1000社の顧客を抱えている。新型コロナウィルスが大流行した中、同社はEnvision Oneデンタル3Dプリンターの出荷台数を前年の3倍に増やした。

Desktop Metal社のCEOであるRic Fulop(リック・フロップ)氏はTechCrunchに「これは、レストレーションから即日のフルアーチインプラントまで、あらゆるものに使用されます」と語っている。「通常、入れ歯を手に入れようとすると、インプラントデンチャー(インプラント義歯)には3週間待たなければなりません。この製品はそれを即日で行うことができる初めてのソリューションです。しかも手頃な価格で」。

このニュースに続いて発表されたプレスリリースによると、他の既存の顧客にはFord(フォード)やHasbroなどが含まれている。フロップ氏によると、買収は今四半期中に完了される予定だが、買収後もEnvisionTECは独自の部門として運営を続けるという。

「我々は、彼らの販売チャネルにてこ入れしていくことができるます」とフロップ氏は語る。「その既存の能力を拡大し、当社のチャネルを利用して金属からコンポジット、バイオマテリアル、さらにはフォトポリマー印刷に至るまでのフルソリューションを提供するためのツールとなり、(EnvisionTECを)後押しできることを楽しみにしています」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Desktop MetalEnvisionTEC買収

画像クレジット:EnvisionTEC

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(翻訳:Nakazato)

金属3DプリントのDesktop Metalはまさに「金のプリンター」、Kleinerのリターンは投資額の10倍

「金属をプリントする」技術を携えたDesktop Metal(デスクトップ・メタル)は、ひさしぶりにボストンから現れたおもしろいスタートアップだ。3Dプリント市場で大成長する可能性がある。通常3Dプリントでは柔軟性のあるポリマーが材料に使われるため、プリンターが「印刷」できる材料によって、製品のタイプが限られてしまう。なので、数週間前にこの会社がSPAC(特別目的買収会社)の目に留まったのは、ごく自然なことだった。すべてが順調にいけば、2020年末には株式が公開される。

米国時間9月14日朝、Trine(トライン)というSPACとこのスタートアップは、最新の財務と株主に関する報告書を米証券取引委員会(SEC)に提出したが、その内容から大成功を手にするベンチャー投資会社はどこなのかが見えてくる。

まず、2015年のシリーズA以降のDesktop Metalの第一優先株の価格を見てみよう。シリーズA当時は0.53ドルだったが、2019年のシリーズEで販売した株価は10ドルをやや上回るなど、この5年間で急上昇している。

Desktop Metalの株価。

提出された資料(SECサイト)によれば、Desktop Metalの大口の投資会社は、17.66%を所有するNEA、11.59%のLux、11.10%のKleiner、8.89%のGV(元Google Venturs)、6.96%のNorthern Trust、5.89%のKDT(Koch Industriesの子会社)となっている。

Desktop Metalの評価額は、SPACの総合評価額25億ドル(約2630億円)のうちの18億3000万ドル(約1895億円)。この2つの数値の差は、SPACが保有する株式3億500万ドル(約316億円)と、買収の一環として実施される同社への民間投資と手数料やその他の補助的融資を合わせた2億7500万ドル(約290億円)から生じている。

リターンの期待度という面から見るとどうだろう?その提出書類によれば、Desktop Metalは6回のラウンド(シリーズAからシリーズEおよびE-1)で、トータル4億3800万ドル(約460億円)の資本金を調達している。この数値を使った簡単な計算で、個々のファンドが投資会社にどれほどのリターンを提供できたかを大まかに推測できる。

Desktop Metalへの投資額。

投資額の何倍戻ったかという観点で見れば、最大の勝利者はKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)だ。Desktop Metalへの投資総額のおよそ10倍のリターンを獲得した。KlienerはシリーズAの5分の1を提供している。およそ300万ドル(約3億1600万円)だ。シリーズBでは、投資額はおよそ1300万ドル(約13億7000万円)に増強された。その後のラウンドでは、次第に比率が下がってゆく。2040万ドル(約21億5000万円)という投資額の比率が、昔に遡るほど大きくなっているところを見ると、それがリターンの倍率を押し上げていることがわかる。

NEAは、おそらくその資本規模の大きさからすべてのラウンドを通して一定した投資を行っており、最終的な投資額はおよそ5700万ドル(約60億円)にのぼる。シードプログラムから参加し、シリーズAの投資割合は43%としている。NEAは継続してDesktop Metalのすべての成長ラウンドに巨額を投じてきた。最終的なNEAのリターンの倍率は、およそ5.67倍と算出される。

最後に、初期ステージの投資会社の間ではLux(ラックス)が5.31倍を守った。同社も同様に、すべてのラウンドに資金を提供している。ただし、NEAほど積極的ではない。最終的にDesktop Metalに投じた資金は4000万ドル(約42億円)となった。

成長投資企業を目指すGVはシリーズCから参加し、その後のラウンドを通じておよそ6500万ドル(約68億5000万円)を投資。リターンの倍率は2.5倍となっている。Northern Trust(ノーザン・トラスト)はシリーズDからの参加で、リターンの倍率は1.6倍。KDT of Koch Industries(コッチ・インダストリーズ)のKDTの場合は、そのメザニンファイナンスの注入によるリターンが1.44倍という結果になった。

これらの投資会社は、みなSECの基準による5%以上の所有権を持つ者たちだ。4億3800万ドル(約460億円)というDesktop Metalの調達額の中には、資本政策表には公開されていない1億ドル(約105億円)があるため、他にも巨額のリターンを獲得しながシェアの公開義務のないベンチャー投資家がいるようだ。またここでは、これらのベンチャー投資会社が所有する少数の普通株による出資金は計算に入れていない。リターンの倍率に影響するほどの大きな額ではないからだ。

ほんの5年間で評価額を急増させたDesktop Metalは、これらの投資会社に投資に対する確かな内部利益率を与えることになる。

Desktop MetalがSPACを通じて株式公開を行えば、これらすべての投資会社には株式を売却するか、そのまま持ち続けるかの選択肢が与えられる。もしDesktop Metalの株式を持ち続け、同社の業績が順調に伸びれば、株価は劇的に上昇してリターンはさらに押し上げられる可能性がある。もちろん、その逆もあり得る。株式公開をした企業にはエグジットするか、するならいつかを決める自由がある。そしてその判断が、リミテッドパートナーたちの最終的なリターンの額を決めることになる。

だが今のところこれは、ベンチャー投資会社たちが、今回の取引でどれだけ成功できるかを確かめる指標として有効に使える。おそらく彼らは、その3Dプリンターで黄金をプリントできるようになるだろう。

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カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:Desktop Metal 3Dプリント SPAC

画像クレジット:Pier Marco Tacca / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)