排泄予知デバイスの「DFree」が新たに5億円を調達、フランスへの海外進出も

排泄予知ウェアラブルデバイス「DFree」を開発するトリプル・ダブリュー・ジャパン(以下、TripleW)は11月6日、ニッセイ・キャピタルと鴻海ベンチャー投資のパートナーファンドである「2020」から総額5億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2018年度中に10億規模のシリーズBを予定しているが、今回はそれに先立つプレシリーズBとして、既存株主からの機動的な資金調達として行った。なお、今回の資金調達は第三者割当増資ではなく、新株予約権の発行によるものである。

TripleWは、介護の現場で利用される排泄予知ウェアラブルデバイスのDFreeの開発・販売を行う日本のスタートアップだ。

介護施設などの現場では、例えば3時間おきにトイレに連れて行くようなかたちで排泄ケアが行なわれているそうだ。それだけでも大きな労力だが、当然その人によってはその定時誘導のタイミングで上手く排泄ができなかったり、逆に被介護者自身が不安になって必要以上にナースコールを鳴らしてしまうというような問題がある。

DFreeはそのような問題を解決するために生まれたデバイスだ。DFreeは、古くから妊娠診断などでも利用されていた超音波で膀胱の膨張度を計測。それによって排尿のタイミングが近いのか、そうでないのかを判断する。デバイスが排尿を予知すれば、それをBluetoothを通して介護士がもつスマートフォンなどに通知するという仕組みだ。

介護の現場ではたびたび人材不足だと言われているが、時間のかかる排泄ケアをより効率化することで現場の負担を解消することを目指す。

ちなみに、国もこの排泄ケアの重要性を認識している。厚生労働省は2017年10月に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂し、新たに6分野13項目が重点分野として定めた。そして、その中の「排泄支援」の分野において「ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器」という項目が新たに追加されている。

DFreeは2017年春から介護施設向けへの販売を開始。これまでに150の施設に導入され、フランスでもパイロット導入が始まっているという。同社はデバイス単体を販売するのではなくログ記録システムまで含めたパッケージとして提供し、月額料金は1台あたり1万円からだ。

同社は今回の資金調達により、これまでの介護施設向けのビジネスに加えて在宅介護での利用を想定したC向けビジネスの実証実験に力を入れる。また、前述したようにフランスを含むヨーロッパ地域への海外進出にも注力していくそうだ。アメリカではなくヨーロッパを選んだのは、日本と同じように介護保険制度が整っているという理由からだという。

また、超音波を利用して内臓を調べるというDFreeの技術を腸にも適用することで、これまでの「排尿予知」に加えて排便予知サービスも実現可能だ。同社はその研究開発にも力を入れていく。

これまでに同社は2016年2月に1.2億円同年5月には5億円の資金調達をそれぞれ実施している。

排泄予知ウェアラブル「D Free」が1.2億円を追加調達、まじめに市場開拓中

「うんこが漏れない世界を」と週刊アスキーがネタっぽく伝えたこともあって、単なるおもしろ系デバイスと思った人もいるかもしれないが、排泄予知ウェアラブルデバイス「DFree」が着実に実用化に向けた開発を進めているようだ。

DFreeを開発するスタートアップ企業のTriple Wは今日、総額1.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の資金調達はハックベンチャーズから5000万円を第三者割当増資で、そして国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から最大7000万円の助成金交付を受ける形だ。NEDOの交付金というのは2016年2月までの期限付きで、研究開発や事業化のための検証に必要な部材、人件費、家賃などが対象に支払われるもの。Triple Wは2015年4月にもニッセイ・キャピタルから7700万円の資金調達を実施していて、合計約2億円の資金を調達していることになる。

介護施設での排尿ケア業務の効率化

DFreeは超音波で直腸や膀胱に貯まった便や尿の量を検知するデバイスだ。排便・排尿予測の両方にニーズがあり得るが、排便よりも先に排尿タイミング予測で技術的なめどが立ったことから、Triple Wでは介護施設の排尿ケアの効率化というB向け市場に取り組んでいくという。Triple Wの小林正典氏によれば、排便に比べると排尿は1日6〜10回と高頻度。介護士の1日8時間の労働のうち3時間を占める場合もあるなど、介護現場ではこれが負担になっているそうだ。2015年4月から7月にかけてReadyforで実施したクラウドファンディングのキャンペーンでも介護事業者からの問い合わせが多かったのが排尿ケアだったという。

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介護施設によって違いがあるものの、例えば「3時間おきに要介護者を巡回してチェックする」というルールで排尿ケアするようなことがあるという。そして排尿に立ち会っても実際に尿が出る割合は1割程度ということも。排尿が必要なタイミングが正確に分かれば、介護士の不要な巡回をなくすことができて効率化できる。

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Triple Wでは排尿ケアのナースコールや、介護保険申請に必要な排尿ケアのログ記録というシステムまで含めたパッケージとして、介護施設へDFreeを販売をしていくという。対象となるのは全国に100万程度あると言われる介護ベッドを持つ施設で、その1割にあたる10万床への普及を目指す。

すでに3つの施設で量産化前のベータ版デバイスを利用したトライアルを始めている。「寝たきりなのか自律的に排尿ができるのかなどケースによってデバイスの利用方法も変わってくる」(小林氏)といい、トライアルの中で現場ニーズをつかみつつ改善と開発を進めている。

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日本のおむつは600ml程度は不快感なく尿を保持できるほど性能が良いが、現在は無駄に捨てられているおむつが多いそう。Triple Wの小林氏によれば大人用おむつは年間2000億円規模の市場で、この半分が介護施設向け。もし仮に、その半分の500億円程度をDFreeで削減できるとすれば、差額のいくらかを月額課金で売上にできるだろうとソロバンをはじく。

ところで、超音波を使って体内の3Dイメージを得るというのは以前から胎児向けなどであるし、原理的に画期的なところはない。なぜ今までDFreeのようなデバイスがなかったのだろうか?

「着目した人がいなかった、というのがまずあります。これまでにも医療用で1000万円と高価なものなら超音波診断機というのはありました」と小林氏。残尿量を計測するデバイスとして、例えば「ゆりりん」という製品もあるが24万円と高価。DFreeは数万円の前半、Readyforのキャンペーンでは2万4000円という値付だった。これは既存製品の区分が「医療機器」で、認証や開発に必要な要件やコストが違うからだという。DFreeは診断も予防もしないため医療機器ではなく、その分機能も絞っている。デバイス単体ではなく、ニーズに合わせた管理システムも含めたパッケージとして提供していくというのも違いだろう。

Triple Wは2015年2月創業。現在フルタイムで3人、外部を入れると10人のエンジニアがいる。拠点は東京とシリコンバレーにあるが、当面は日本でビジネスを作り、その後はアメリカ、中国、欧州へ進出する計画という。2020年には1兆4000億円になるという大人向けおむつのグローバル市場のうち9割が日本を含むことの4地域で占めるそうだ。