著作権問題に積極的に取り組むTwitch、インディーズ音楽ライセンス団体Merlinと提携

Twitch(ツイッチ)は、インディーズ系デジタル音楽ライセンスグループのMerlin(マーリン)とパートナーシップを結ぶ。Amazon(アマゾン)傘下のライブストリーミングプラットフォームであるTwitchがレコード業界と密接に連携するための最新の取り組みだ。

この契約は、Merlinのインディーズ系アーティストがTwitchのライブストリーミングエコシステムをどのように活用できるか、ひいてはそうしたアーティストが、ゲーム以外のコンテンツにさらに進出するというTwitchのビジョンをどのように強化するかを強調している。

MerlinとTwitchは、提携によって「世界中のライブ体験が解放され」、Twitchのミュージシャン向けインキュベーター「The Collective」などを通じて、Merlinのメンバーに新しいマーケティングチャネルが開かれることになる、と述べている。

Merlinは、Anjunabeats、Armada Music、Beggars Group、Empire、MNRK Music Group、Epitaph Records、Lex Records、Mad Decent、Secret City、Sub Popなど世界の数万ものインディーズレーベルを代表している。

ここ数カ月でTwitchは、著作権執行に対する同社の甘いアプローチを批判していた大手レコード会社数社との関係を強固なものにしている。無策という評判が広まった後、Twitchは方向転換し、ライブストリームでライセンス許可されていない音楽を再生するユーザーを厳しく取り締まっている。

Twitchは現在、完全な音楽ライセンス契約には至らないものの、予備的な契約を締結して中間的な立場を模索しているようだ。両社は、この提携の金銭条件については明らかにしなかった。

MerlinのCEO、Jeremy Sirota(ジェレミー・シロタ)氏はTechCrunchに「Merlinと当社のメンバーは、Twitchとこのパートナーシップを締結し、我々の関係を発展させることに興奮しています。どんなパートナーシップにも出発点があり、TwitchとMerlinのメンバー、そのアーティストの間に長く実りある関係を築くことを楽しみにしています」と述べた。

パンデミック発生に伴い、多くのDJやミュージシャンがオーディエンスを構築し、引きつけるためにTwitchに目を向けた。両社は、今回の契約により、アーティストがTwitchで成長するための新たな道が開かれ、プラットフォーム上で「献身的なサポート」を提供することになると指摘した。

「Merlinとの提携により、Merlinの会員であるインディーズ系アーティストに、献身的で熱心なTwitchコミュニティへの参入の道が開かれます」と、Twitchの音楽部門責任者Tracy Chan(トレイシー・チャン)氏は声明で述べた。

AmazonとUniversal Music((ユニバーサルミュージック)は1月24日の週に、Amazon MusicのユーザーがUniversalの膨大なカタログでより多くのHD音楽にアクセスできるようにする契約を発表した。この契約の一環として、TwitchはUniversalと協力し、同社のアーティストにファンと関わる「商業的機会」を提供するとともに、Twitchプラットフォーム上にアーティストとレーベルのチャンネルを開設する。

Twitchは2021年9月にもWarner Music Group(ワーナーミュージックグループ)と同様の契約を結び、Warnerやその他の音楽権利者に、ライセンスを受けていない音楽を共有するストリームに対処する新しいシステムも提供すると発表している。今のところ、TwitchとMerlin、Warner、Universalとの契約は、クリエイターが利用できるライセンス音楽のカタログを広げてはいないが、そうした踏み込んだ動きはより深い関係への道を開く可能性がある。

2年前、Twitchはストリーマーがライセンス供与された音楽を見つけるのを助けるSoundtrackというツールを立ち上げたが、当時は主要レコードレーベルとの関係がまったくなかった。このツールは、ストリーマーを限られた数のライセンス供与楽曲に誘導し、ミュートあるいは削除されたVOD(ビデオオンデマンド)アーカイブ、未認可のオーディオを使用したユーザーのアカウントに対する警告などの事例を減らすように設計されている。

2020年以降、Twitchはクリエイターのストリームに無許可の音楽が現れると、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく取り締まりを行ってきた。同社の対応に関しては、警告なしに突然アーカイブされた動画を削除したTwitchにストリーマーが反発しており、論争の的になっている。2020年後半、このようなDMCAの取り締まりを受けたTwitchのストリーマーたちは、通知を受けた後、どのコンテンツが音楽ライセンス規則に抵触した可能性があるかを特定する方法がないと不満を述べていた。

この積極的な姿勢は、音楽業界の主要プレイヤーからの圧力の高まりに対応するものだった。アメリカレコード協会(RIAA)のCEOであるMitch Glazier(ミッチ・グレイザー)氏は2020年に、Twitchとメジャーレーベルの緊張が高まる中「Twitchは、同じユーザーが繰り返し法律に違反していることに目をつぶり続け、一方で録音音楽の大量の無断使用による収益を懐に入れている」と指摘した。

Twitchは2021年9月に、全米音楽出版社協会(NMPA)と協定を結び、権利を所有していない音楽を意図的に使用していないストリーマーを報告するための「より柔軟で寛容な」システムを確立し、代わりにコンサートのライブ配信のような「明白な」違反に重点を置いた。新システムでは、ストリーマーは不注意による違反でアカウントレベルの制裁を受ける前に警告を受ける。

画像クレジット:MARTIN BUREAU / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

試験監督ソフトのProctorioを大学生が提訴「批判を抑えるために著作権法を乱用した」

米国のある大学生が、試験監督ソフトウェアをてがけるProctorio(プロクトリオ)を提訴した。同社が批判に対する「不愉快な活動」を鎮めるために、著作権法を乱用して同社製品に批判的なツイートを削除したと告発している。

電子フロンティア財団(EFF)は、このマイアミ大学の学生でセキュリティ研究も行っているErik Johnson(エリック・ジョンソン)氏の代理人として訴訟を起こし、Proctorioが「DMCAを不当利用してジョンソン氏のコメントを弱体化させた」と非難した。

Proctorioは、ジョンソン氏のツイート3件が同社の著作権を侵害しているとして、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき削除要請を通知。これを受けてTwitter(ツイッター)はそれらのツイートを非表示にした。

新型コロナウイルス感染流行が拡大する中、学校や大学では学生の試験をリモートで行い、そのバーチャルな監督として試験監督ソフトウェアを用いるケースが増えている。学生は学校が選んだ試験監督ソフトウェアをインストールし、PCのマイクやウェブカメラへのアクセスを許可しなければならない。学校側は、この試験監督ソフトを通じて、学生の不正行為の可能性を発見することが可能になる。しかし、有色人種の学生からは、このソフトウェアが白人以外の顔をきちんと認識できないことについて不満が出ている。また、このソフトウェアには高速インターネットアクセスが必要だが、低所得者層の家庭にはそれがないことも多い。これらのチェックに失敗すると、その学生は試験に落ちてしまうこともある。

このようにソフトウェアが不正を防ぐための監視を行っているにもかかわらず、Viceは2021年3月、Proctorioが監視している試験で簡単に不正行為を行う学生がいると報じた。いくつかの学校では、プライバシーの問題を理由に、Proctorioやその他の試験監督ソフトウェアの使用を禁止または中止している。

Proctorioの試験監視ソフトウェアはChromeの拡張機能であり、一般的なデスクトップ用ソフトウェアとは違って、バグや欠陥がないか、簡単にダウンロードしてソースコードを調べることができる。ジョンソン氏は、このソフトが不正行為の兆候を検出した場合、どのような状況で学生のテストが終了するのか、疑わしい目の動きや異常なマウスクリックをどのように監視しているのかなど、コードを調査して発見した内容をツイートした。

これらのジョンソン氏のツイートには、このChrome拡張機能のソースコードの一部が公開されているPastebin(ペーストビン)へのリンクが含まれていた。

Proctorioは当時、ジョンソン氏が「Proctorioのソフトウェアコードの抜粋をコピーして自身のTwitterアカウントに投稿した」ことで、同社の権利を侵害したと、危機管理会社のEdelman(エデルマン)を通じて主張。しかし、Twitterは、Proctorioの削除要請が「不完全」であると判断し、ジョンソン氏のツイートを復活させた

「ソフトウェア企業は、自社に対する批判者を弱体化させるために著作権法を乱用することはできません」と、EFFのスタッフ弁護士であるCara Gagliano(カーラ・ガグリアーノ)氏は述べている。「自分の研究を説明したり、批判的なコメントを裏づけるためにコードの一部を使用することは、書評で本を引用することと何ら変わりません」。

訴状では、Proctorioの「根拠のないDMCA削除要請のパターン」が「自分の研究結果を報告することでさらなる嫌がらせを受けるのではないか」という不安を抱かせ、ジョンソン氏のセキュリティ研究活動に萎縮効果を与えたと主張している。

「著作権所有者は、批判者が著作権侵害をしていると虚偽の告発をした場合、特にその目的が脅迫や弱体化であることが明らかな場合には、責任を問われるべきです」と、ガグリアーノ氏は述べている。「私たちは、ジョンソン氏が自身のコメントを裏づけるためにコードの抜粋やスクリーンショットを使用したことに対する、さらなる法的脅迫や削除要請を防ぐため、侵害はないという宣言的判決を裁判所に求めています」。

EFFは、これが批判に対応するためにProctorioが広く用いている手法の1つであると主張している。2020年、ProctorioのCEOであるMike Olsen(マイク・オルセン)氏は、学生のプライベートなチャットログを許可なくRedditに掲載した。この事件の後、オルセン氏は自分のTwitterアカウントを非公開にしている。また、Proctorioはブリティッシュ・コロンビア大学の学習技術専門家であるIan Linkletter(イアン・リンクレター)氏が、同社の試験監督ソフトウェアを批判するツイートを投稿したとして提訴している。

今回の訴訟はProctorioの本社があるアリゾナ州で行われている。Proctorioのマイク・オルセンCEOは、コメントの要請に応じていない。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Proctoriomデジタルミレニアム著作権法(DMCA)裁判Twitterプライバシー

画像クレジット:Alex Edelman / AFP / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AppleがバーチャルiPhone「Corellium」を訴えた裁判で一部敗訴

2019年8月、Apple(アップル)はバーチャルソフトウェア企業のCorellium(コアリウム)を著作権侵害で訴え、後に、同社製品がDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に違反しているという主張を付け加えた。

DMCAに関する主張はこれから法廷で決着する必要があるが、フロリダ州裁判所はAppleの著作権侵害の主張を退けた。

さて、Corelliumとは何か?かなり端折っていえば、Corelliumはセキュリティ研究者がブラウザ上でバーチャル化されたARM端末(iOS端末を含む)を立ち上げ、内部を「詳しく」調べることで潜在的セキュリティバグを発見するためのツールだ。2019年に私は以下のように書いている

Corelliumは、たとえばセキュリティ研究者がシミュレートされたiPhoneをすばやく立ち上げ、バグを探すために利用できる。もしバグが見つかれば、iOSの以前のバージョンを立ち上げて、そのバグがいつから存在していたかをすぐに確認できる。仮にバグがバーチャルiOSを「文鎮化」したとしても、ブートし直すだけでいいので、新しいiPhoneを入手する必要はない。バーチャル化デバイスは一時停止させることができるため、研究者は任意の瞬間に正確な状態を観察することが可能になる。

Washington Postによると、Rodney Smith(ロドニー・スミス)判事は米国時間12月29日の訴訟一覧表に次のように書いた。

証拠を確認した結果、裁判所は誠実かつ公正な利用の欠陥を発見しなかった。さらに必要な要因を検討した結果、Corelliumは公正使用を達成する義務を果たしていたことを裁判所は認めた。よって同社によるCorellium製品に関連するiOSの利用は許容される。以上を踏まえ、Appleによる著作権侵害訴訟の略式判決をCorelliumに与える。

スミス判事はCorelliumに以下の行為を許可した。「1.  実行プロセスの監視と停止、2. カーネルの改変、3. システムコール監視ツールであるCoreTraceの使用、4. アプリブラウザーおよびファイルブラウザーの使用、5. ライブスナップショットの撮影」を、同製品が「iOSの単なる再パッケージバージョンではなく」公正使用であることの証拠として行うこと。

さらにスミス判事は、この訴訟はAppleがCorelliumの買収を考えた後に起こされたことを繰り返し摘した。

2018年1月から2018年夏の間に、両社はAppleによるCorellium買収の可能性に関する会議を複数回行なった。期間中、両社は対面および電話で顔を合わせた。CorelliumはAppleに対してCorellium製品を支えるテクノロジーおよび動作の仕組みを説明し、CorelliumのビジネスおよびCorellium製品を商品化する意志について検討した。

そして、

もしAppleがCorellium製品を買収していれば、同製品は社内の試験および検証(システムの脆弱性や端末の機能の検証)に使用されただろう。

この判決は著作権に関するAppleの主張を一蹴するものだが(上訴の可能性はある)、DMCAに関してそのような迅速な裁定はなかった。AppleはCorelliumがシステム内蔵の認証およびセキュリティ検査を回避していると主張しているのに対し、Corelliumはそれらはハードウェアレベルで実装されており、彼らが扱っているファームウェア(iOS IPSWファイル)は「非暗号化、非保護、非ロック状態で開放されており、一般人によるアクセス、コピー、編集、配布、実行、および表示が可能である」と主張している。

関連記事:アップルがバーチャルiPhoneのCorelliumを提訴

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleCorelliumDMCA裁判

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook