エネチェンジがLooopと共同で海外特化の脱炭素エネルギーファンド設立、1000億規模の投資目指す

テクノロジーを活用したエネルギー関連の事業を手がけるENECHANGE(エネチェンジ)は4月21日、太陽光発電システムや電力小売り事業を展開するLooopと共同で海外特化の海外特化型の脱炭素エネルギーファンド「JAPAN ENERGY ファンド」を設立したことを明らかにした。

同ファンドは脱炭素・ESG投資を実施する国内外の投資家の協力を受けながら、投資総額1000億円規模を目指す計画。2019年12月に組成した第1号ファンドでは1億米ドル(110億円規模)での展開を予定していて、運営はENECHANGEとLooopがJapan Energy Capitalを介して共同で行う。LPには2社に加えて大和エナジー・インフラ、北陸電力が参画を決めた。

ENECHANGEとしてはデータ解析技術を持つエネルギーテック企業として、海外の再生可能エネルギー領域により深く進出していく計画だ。

ENECHANGE代表取締役会長兼CEOの城口洋平氏によると、今回のファンドは「日本企業による海外への脱炭素エネルギー投資促進」を通じて、持続可能な社会の実現へ向けた取り組みを推進するのが目的だ。

特にエマージング諸国(新興国)は先進国と比べてプレイヤーが少なく、テクノロジーの活用によって発電量や収益性向上を見込める余地も大きい。そのような背景からトルコやヨルダンなど新興国での展開を中心としたファンドの立ち上げを決めたようだ。

本ファンドは具体的に2つのプロジェクトで構成される。1つが新興国の再生可能エネルギー事業へ投資をする「JEF Renewables」。もう1つが電力ビジネスの先進国である欧米諸国などに拠点を置くエネルギー系スタートアップへ投資する「JEF Ventures」だ。

メインとなるのは前者。エネルギー自給率が低く再生可能エネルギーによるインフラ開発の必要性が高い新興国で稼働中の再生可能エネルギー発電所(太陽光発電所など)に対し、日本政府や現地政府、地元事業者と連携して投資をする。

城口氏によると新興国の発電所に関しては運営や管理が不十分なことから、発電量や収益性などの観点で本来のポテンシャルを発揮できていないところも多いそう。そこにENECHANGEグループが培ってきたデータ解析技術や設備保守点検ノウハウを取り入れバリューアップを行い、売電や再販売によって収益をあげる。

イメージとしては不動産の二次流通に考え方が近く、仕入れてきた中古不動産をリノベーションしてより高い価格で販売するようなものだという。

「センサーを設置してパネルやインバーターなどのデータをリアルタイムで取得し、発電量や日射量、パネル温度などを緻密に解析すると、本来はもっと効率的に運用できる可能性を秘めた発電所がわかる。イギリスやドイツなど一部の先進国ではこのような取り組みが進んでいるが、新興国はまだまだ水準が低い。AIやデータ解析技術を使うことで改善できる余地が大きい」(城口氏)

1号投資案件としてはトルコの太陽光発電所に対して約1000万米ドル(約11億円)を出資し、共同運営権を取得する。この発電所も東京ドーム数個分の大きさのため、人力でくまなく状況をチェックするのは極めて難しく、そこにテクノロジーを活かせるという。

これまでENECHANGEではグループ会社であるSMAP ENERGYの技術を用いてスマートメーターの解析に力を入れてきたが、電力分野においては電力の消費側だけでなく、発電側にもデータを活用できるチャンスがあり市場も大きい。同社としてはその市場に進出していきたいという考えもあるようだ。

「再生可能エネルギー領域ではもともと二次流通市場が存在していなかったところから、徐々にグローバルで市場ができ始めている状況。日本では固定価格買取制度(FIT)があるため現時点で大きな市場ではないものの、2030年代から広がっていくと考えられる。ゆくゆくは日本での事業展開も視野に入れながら事業を作っていきたい」(城口氏)

上述した通りJAPAN ENERGYファンドでは先端技術を有する海外スタートアップへの投資も並行して実施して行く計画。こちらではENECHANGEが運営する欧州エネルギーベンチャー開拓プログラム「Japan Energy Challenge」と連携し、脱炭素技術に関して先行する有望なスタートアップへの投資を通じて、日本国内での脱炭素化に繋がるオープンイノベーションの実現を目指すという。

“エネルギー革命”を推進するエネチェンジに昭和シェルや住商らが7億円を出資、連携強化でさらなる事業成長へ

エネルギー関連の事業を複数手がけるENECHANGE(エネチェンジ)は10月24日、昭和シェル石油や住友商事ら7社が同社に総額約7億円分の資本参加をしたことを明らかにした。

今回の資本参加は普段TechCrunchで紹介することの多い第三者割当増資によるものではなく、既存株主(VC)が所有する株式の一部を下記の7社が買い取った形。これらの会社とは業務提携も実施しているという。

  • 昭和シェル石油
  • 住友商事
  • 大和証券グループ
  • 東京ガス
  • 北陸電力
  • Looop
  • SK GAS Co. Ltd.(韓国)

これまでENECHANGEでは2015年5月にエプコやB Dash Venturesから、同年12月に日立製作所と環境エネルギー投資から、2017年2月にオプトベンチャーズやIMJ Investment Partnersみずほキャピタルからそれぞれ資金調達を実施。VCをメインに累計で10億円以上を集めてきた。

ENECHANGE代表取締役会長の城口洋平氏いわく、今回の取り組みは「様々な事業会社とパートナーシップを結んで事業をさらに成長させることに加え、上場やその先を見据えた資本政策の一環でもある」とのこと。

その背景も含めてENECHANGEのこれまで、そして今後の方向性について城口氏に話を聞いた。

比較サイトからの脱却、デジタル化事業が成長

ENECHANGEは2015年4月に設立されたスタートアップだ(当初はエネチェンジでスタート、2018年5月に社名を英語表記に変更)。ケンブリッジ大学発で電力データ解析を専門とする研究所「ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ」がルーツになっていて、そこから電力比較サービスを切り出す形で始まった。

同社が事業領域として設定しているのは、Deregulation(自由化)、Digitalisation(デジタル化)、Decentralisation(分散化)、Decarbonisation(脱炭素化)という“エネルギーの4つのD”に関するものだ。

現在は自由化とデジタル化に関する2つの事業を運営。前者についてはエネルギーマネジメント事業として家庭向けの電力・ガス比較サービス「エネチェンジ」や、法人向け電力会社切り替えサービスの「エネチェンジBiz」が軸になる。

後者についてはエネルギーテック事業として電力・ガス小売事業者向けのマーケティング支援サービス「EMAP」やスマートメーターの解析サービス「SMAP」などを展開してきた(2017年7月に英国のスマートメーターデータ解析ベンチャーSMAP ENERGYと経営統合。なお同社も同じ母体からスピンアウトして始まった会社で、城口氏が共同創業者兼CEOを務める)。

電力・ガス小売事業者向けのマーケティング支援サービスEMAP (Energy Marketing Acceleration Platform)

もともとはエネルギーマネジメント事業の売上比率が高く、いわゆる“比較サイト運営会社”のイメージが強かったけれど、年を重ねるごとに売上におけるエネルギーテック事業の比率が上昇。2018年度の数値では、エネルギーテック事業の売上が4割を超える見込みだ。

そういった背景もあり「電気の比較サイトによる切り替え事業の一本足から脱却できてきた」(城口氏)状態だという。

また売上・利益ともに拡大していて2017年度の売上は5億円強。今年度についてはあくまで見込みであるけれど、売上は10億円を超え、通期で初の黒字化も実現できる勢いだという。

強力なパートナーを迎えてENECHANGEは第2章へ

そんな状況下において、今回新たに7社がENECHANGEの株主となった。

冒頭でも触れた通りこれまではVCからの調達がメインで事業会社は日立製作所くらいだったけれど、今回の7社は全て事業会社。それもエネルギー関連の大手企業が揃っている。

城口氏によると、エネルギーマネジメント事業が軸となっていたこれまでは事業会社ではなくVCからの調達を重視していたそう。それは電力やガス比較、切り替えサービスを運営していく上で、特定の会社の色がついてしまうのを避けていたからだ。

ただここ1〜2年ほどでエネルギーテック事業が伸び、会社としても4つのDをドメインに掲げ、自由化以外の取り組みを強化していくフェーズに変わってきた。そういった意味で城口氏は「今回の資本業務提携がENECHANGEの第2章の始まり」とも話す。

「この分野においては、ようやく大手企業と相互戦略的なパートナーシップを結べる段階まで会社を持って来ることができた。これからは強固な顧客基盤やインフラを持つ各社と連携を取りながら、今まで以上にデジタル化、分散化、脱炭素化を進めていく局面になる」(城口氏)

データ解析サービスのSMAPの一機能

たとえばSMAPを通じたスマートメーターデータの解析サービスは今後の注力ポイントのひとつ。スマートメーターの普及やデータ活用は世界的に見ても日本が進んでいる分野のため、ここで培った知見やサービスは海外にも展開できる。今回韓国のSK GASが株主に加わっているのは、アジアでの事業展開を加速させる意図もあるからだ。

また自由化に関するエネルギーマネジメント事業に関しては金融機関グループとの連携を強める計画。すでに株主であるみずほキャピタルと連携して、彼らの法人顧客に向けてエネチェンジBizの展開を進めてきた。これが上手くいっているそうで、今後も地域金融機関グループとのパートナーシップを強化して事業を加速させていきたいという。

IPOやその後を見据えてVC比率を抑える判断

第三者割当増資ではなく既存株主からの株式買取という形で新たなパートナーを迎えたのは、上場やその先を見据えた上でVCの持ち株比率を抑える意味もあるようだ。

「初期にスピード感を持って事業を成長させていくためにVCからの調達を進めると、VCの持ち株比率は当然高まる。一方で彼らが上場後に一気に放出するのがみえてしまえば、今度は上場後の株価維持が大変になってしまう。経営者として向こう10年の経営を見据えたときに、VCの持ち株比率を上げすぎると苦しくなると考えた」(城口氏)

城口氏によるとENECHANGEではVCの持ち株比率が30%を超えていたそう。この半年は今後の同社にとって戦略的なパートナーシップが重要になることや、それが事業の成長にも繋がることも踏まえて、各VCと時間をかけて話を進めてきたそうだ。

結果的には各VCから一部の株式を売ってもらうことでまとまったそう。これによって「新たにいいパートナーに加わってもらいつつ、(VCの持ち株比率が下がることで)いろいろな資本政策のオプションも残せるのではないか」(城口氏)と話す。

今年に入ってからは欧州のエネルギーテックスタートアップと日本のエネルギー企業との提携を目指すアクセラレータープログラムを始めたり、中古蓄電池ソリューション技術を展開するイギリスの「BrillPower」とタッグを組んだりと新しい取り組みも始めているENECHANGE。

今回のパートナーシップを機に、世界のエネルギー革命に向けた同社の事業はさらに加速していきそうだ。

電力スタートアップのエネチェンジが4億円を調達、提携によりスマートメーターのデータ解析も

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いよいよ4月には電力自由化がスタートし、ユーザーは自らの生活スタイルや用途にあわせて電力会社やプランを選択できるようになる。この領域に挑戦するスタートアップの1社で、電力の価格比較サイト「エネチェンジ」を手がけるエネチェンジに動きがあった。

同社は2月16日、環境エネルギー投資および日立製作所を引受先とした総額4億1850万円の資金調達を実施したことを明らかにした。あわせてケンブリッジ大学発の産学連携ベンチャーであるSMAP Energyと提携。同社の日本展開の独占利用権を取得した。

エネチェンジは2015年4月の設立。サービスローンチ時の記事でも紹介したとおりだが、エプコ代表取締役 グループCEOの岩崎辰之氏や英・ケンブリッジ大学の卒業生らで立ち上げた「Cambridge Energy Data Lab(ケンブリッジエナジーデータラボ)」からMBOしている。

価格比較サイトのエネチェンジは現在月間180万UU。「エイチ・アイ・エスや東急電鉄グループなど、生活系企業が参入するなど、予想以上に多様な事業者が集まったこともあり、当初の目標以上の注目を集めている」(エネチェンジ)という。

今後はエンドユーザー向けの価格比較サービスに加えて、SMAP Energyが持つスマートメーター解析技術をベースに、電力事業者向けのデータコンサルティング事業を強化していく。開発、営業、カスタマーサポートも強化。SMAP Energyの技術をベースにしたサービス開発なども自社で行っていく。

SMAP Energyは、ケンブリッジ大学とケンブリッジエナジーデータラボが共同で設立した産学連携ベンチャー。スマートメーターのデータの解析を行っており、現在欧州で電力会社と組み、時間別の電力使用量などをもとにした電気料金のシミュレーションなどの技術検証を進めているという。同社の共同代表にはエネチェンジ創業メンバーの1人であり、ケンブリッジ大学で電力データ解析の研究を行うミログ元代表の城口洋平氏の名前もある。なおエネチェンジいわく、スマートメーターのデータ解析に関わるベンチャーは英国はじめヨーロッパで数社あるが、alartmeがBritish Gusに買収された以外は大きく躍進している会社はない状況だそう。

今後エンドユーザーが自ら選択した電力事業者からスマートメーターを受け取り、自宅に設置することになれば、スマートメーターを通じて集められたデータはリアルタイムで解析されることになる。事業者はその計測データをもとに請求書の発行や時間帯別料金の導入、家電やIoT連携などに利用されることになりそうだ。

英国発の日本人スタートアップ・エネチェンジ、電力自由化に向けサービスを開始

エネチェンジ代表取締役の有田一平氏(右)と創業メンバーでアドバイザーの城口洋平氏(左)

エネチェンジ代表取締役の有田一平氏(右)と創業メンバーでアドバイザーの城口洋平氏(左)

先週僕は米国サンフランシスコで開催されたTechCrunchのイベント「Disrupt San Francisco 2015」に参加していた。そこで衝撃的だったことの1つは大麻に関する新メディア(ラッパーのSnoop Doggが10月に「Merry Jane」なるサイトを立ち上げる)や大麻ショップ向けのPOSシステム「Green Bits」が、そのステージで発表されていたことだ。

日本で生まれ育った僕としてはテック系のイベントでこういう話が出ること自体が驚きだが、米国では医療用に加えて娯楽用での大麻の使用を認めている州が複数存在しており、その数は増えつつあるという。その是非はさておき—1つはっきりと言えるのは、今まさに新しいマーケットが生まれており、スタートアップが活躍するチャンスがあるということだ。

では日本にはそんな新しいマーケットがあるのだろうか? 僕が最近よく聞くキーワードは2つ。2020年の東京五輪を見据えた「インバウンド」、そして2016年4月よりスタートする「電力自由化」だ。今回はその電力自由化のマーケットにチャレンジするスタートアップ、エネチェンジについて紹介する。同社は9月30日より、電力の価格比較サイト「エネチェンジ」において、専用ダイヤルでオペレーターが電力会社選択の相談・支援を行う「エネチェンジ優先予約」をスタート。電力自由化に向けてサービスを本格化する。2016年の年始にも各電力会社から価格等が発表されると見られるが、それ以降はより具体的な乗り換えプランの提案などを行う予定だ。

エネチェンジ優先予約

エネチェンジ優先予約

英国発の日本人スタートアップがそのルーツ

エネチェンジは2015年4月の設立。そのルーツは英国発のスタートアップだ。もともとは建築・エネルギー事業を手がけるJASDAQ上場のエプコの代表取締役 グループCEOの岩崎辰之氏や、英・ケンブリッジ大学の卒業生らが英国で2013年に電力関連の技術を研究する「Cambridge Energy Data Lab」を設立。そこで電力データの解析をはじめとして研究やサービス開発を進めていたが、そこから価格比較サービスを切り出す形で日本にエネチェンジを立ち上げた。

エネチェンジの代表には、同ラボの創業メンバーである有田一平氏が就任する。有田氏はJPモルガンで債権やトレーディングなどにかかわるシステムの開発に従事。その後グリーの海外向けプラットフォームの開発に携わった。

ところでこのエネチェンジ、なぜ英国発なのか? それは英国が2002年から電力自由化を進めており(ヨーロッパ各国は2008年までにすでにほとんどの国が電力を自由化している)、なおかつ経済規模が大きく、かつ地理的には島国という、日本のモデルとなる環境なのだそうだ。そこでの研究成果を日本の市場に生かす考えだ。

ミログ創業者の城口氏が創業メンバー・アドバイザーに

エネチェンジ創業メンバーの1人であり同社のアドバイザーを務めるのは、ケンブリッジ大学で電力データ解析の研究を行う城口洋平氏。同氏はかつてはAndroidのログ解析サービスを提供するミログを立ち上げた人物だ。ミログは2009年に創業したが、ユーザーの同意を得る前にデータを収集・送信するという仕様が問題となりサービスを終了。2012年に会社を解散した。城口氏はその後渡英し、現在はケンブリッジ大学で日本人唯一の電力データ研究者として活動している。

城口氏によると、英国では電力自由化に伴って、「『ライフネット生命』モデルと『ほけんの窓口』モデルの新会社が登場した」のだという。もちろん前述の2つのサービス名は例でしかないが、要は新興の電力会社と、その販売窓口が生まれたそうだ。前者は相当の資金力が必要となるし、競合となる既存の電力会社は巨大だが、後者はスタートアップでも比較的挑戦しやすいマーケット。2006年にスタートした価格比較サイト「uSwitch.com」は1億6000万ポンド(約291億円)で売却されるなど、イグジット実績も出ている。

ちなみに日本の電力市場は約7.7兆円。オール電化や電気自動車の登場を背景にしてオールドエコノミーながらまだまだ成長している領域でもある。すでに価格比較サービスの価格.comでも電力比較のサービスをスタートしているし、他にも競合サービスを準備中のスタートアップがあるとも聞いている。

エネチェンジはすでにエプコやB Dash Venturesから合計2億2000万円を調達している。今後は採用やカスタマーサポートの強化、電力自由化に関する啓蒙も含めた広報・宣伝活動などを進める。また本日より、タレントのデーブ・スペクター、京子スペクター夫妻が広報アドバイザーとして就任するという。