炭素排出をなくし、地球に少し休ませる技術に投資するEIPの新ファンド

「Deep Decarbonization Frontier Fund(ディープ・ディカーボナイゼーション・フロンティア・ファンド)」というキャッチーな別名をもつ、Energy Impact Partners(EIP、エネルギー・インパクト・パートナーズ)は、3億5千万ドル(約401億円)のファンドに対して2億ドル(約229億円)分の出資枠を獲得し、世界を持続可能な未来に移行させるというコミットメントを倍増させた。このファンドは、温室効果ガス排出量ゼロへの移行を加速させるアーリーステージの技術を対象としている。

このFrontier Fundは、脱炭素社会の実現に向けた投資家の新たな関心と、ゼロカーボンエネルギー、製品、商品に対する需要の高まりという2つの原則のもとに設立された。

Frontier FundのパートナーであるShayle Kann(シェイエル・カン)氏は「私たちは、気候変動に関する技術で大きな問題に挑戦する大胆な起業家を求めています」と述べている。「この6年間で、私たちは大規模で成熟した、技術的に複雑な産業においてイノベーションを推進するためのエコシステムとプロセスを構築してきました。脱炭素化の推進以外でこのようなスキルが最も求められる場所は他にありません」。と述べる。

Frontier Fundは、発電から肥料生産までの脱炭素化に取り組むスタートアップ企業への投資を始め、すでに資金展開を開始している。数日分のエネルギー貯蔵を安価にするForm Energy(フォーム・エナジー)、再生可能エネルギーによる工業規模の水素製造を推進するElectric Hydrogen(エレクトリック・ハイドロジェン)、ゼロエミッションの窒素肥料を製造するNitricity(ニトリシティー)、ゼロカーボンセメントのSublime Systems(サブライム・システムズ)などがその例として挙げられている。

「EIPが2016年に設立されて以来、『クライメートテック』と呼ばれるようになる前から、クライメートテックに投資してきました。これは荒野の時代で、『ポスト・クリーン・テック』とか『プレ・クライメート・テック』とも言えました。私たちはそれをさまざまな呼び方で呼んでいたのです」とカン氏はいう。「今、市場に到来しているイノベーションの大波は、新しいテクノロジー、新しいサービス、新しいビジネスモデルに至るまで、脱炭素化が必要な経済のさまざまな分野を脱炭素化するための方法を軸にしたものばかりです。クライメートテクノロジーは、非常に圧倒的であると同時に、非常にエキサイティングなものです。セクターを超えた包括的な挑戦なのです。この命題における最初の核となる部分は、イノベーションの波が来ているということです。もう1つは、今世紀半ばあるいはそれ以前に温室効果ガスの排出を正味ゼロにする必要性が認識されつつあり、現在の状況からその最終目標まで長い道のりがあるという事実によって、これらのソリューションの市場への導入が加速されるということです。そのため、企業、消費者、投資家、支持者、その他すべての利害関係者から、あらゆる種類の新しいソリューションに対する需要が高まっています。この2つのことが、私たちを気候変動技術への道のりにおいて強気にさせてくれているのです」と語った。

画像クレジット:Shayle Kann

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Energy Impact Partnersが気候変動対策関連企業の指標を作成、NASDAQ総合を大幅に上回る

気候変動に焦点を当てた企業が公開市場に溢れている中、誰が何をしているのか、どこで取引されているのか、どのように業績を上げているのか、把握するのは難しくなっている。そこでEnergy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ)は、持続可能性やエネルギー効率、温室効果ガス排出量の削減に注力しているハイテク企業を追跡するインデックスを設定した。

世界最大級のエネルギー消費者や電力会社を投資家に持つ同社は、過去数カ月間、公開市場で取引されている代表的な気候変動対策技術を対象としたインデックスの設定に取り組んできた。その結果、これらの企業が市場全体と比較して大きなリターンを上げていることが判明した。

2020年に入ってから、EIP Climate Index(EPI環境指標)はNASDAQ(NASDAQ総合指数)を約2.8倍上回っており、NASDAQ総合の45%に対し、127%の上昇となっている。リストに掲載されている企業27社のうち約20社が公開後1年未満の新規上場で、その間にNASDAQ総合を上回った。中でも約16社は、その間に100%以上の上昇を見せている。それは、この指数全体が1月のピーク時から約20%下がった状況になっても変わらない。

このインデックスは、実際には株式投資のためではなく、何よりも教育的なツールとして考えられたものだが、気候関連のソリューションに取り組んでいる企業の幅広さと、これらの企業を支援したいという公開市場の投資家の圧倒的な意欲がそこには示されている。

「SPACに限らず、公開市場における気候変動関連技術の動向は、本当に信じられないほど好調です」と、Energy Impact PartnersのパートナーであるShayle Kann(シャイル・カン)氏は述べている。「この気候変動技術インデックスを作成した動機の1つは、どれだけ多様な企業を集められるかを、確認することでした」。

EIPのインデックスには、持続可能性の観点から注目を集めるBeyond Meat(ビヨンド・ミート)のような企業や、水素燃料電池のBallard Power(バラード・パワー)やBloom Energy(ブルーム・エナジー)のように、やや歴史が長い企業も含まれている。このインデックスに含まれる企業は、電力貯蔵、再生可能エネルギーの生産、電気自動車の充電とインフラ、代替タンパク質の提供など多岐にわたる。

「考え方としては、このような企業をすべて含めた場合、全体のパフォーマンスはどうかということでした。私たちはこのインデックスを作成し、包括的なものにしようとしました。その結果、市場全体を劇的に上回ることになったのです」。

EIPのリストは情報提供を目的としているが、誰かがこのインデックスを利用して、この業界のETF(上場投資信託)を作らない理由はない。現在市場にあるETFのほとんどは、エネルギー生産やインフラに焦点を絞ったものだが、EIPのインデックスは、気候変動の影響を緩和し、温室効果ガスの排出を削減することに焦点を当てた企業の幅広い多様性を追う初めての指標となる可能性が高い。

Desktop Metal(デスクトップ・メタル)のような3Dプリント(積層造形)の会社もあるが、カン氏によると、同社の技術には多大な気候変動要素が含まれているという。

「積層造形技術は、廃棄物の削減、輸送の削減、製造工程の電化など、かなり強力な気候変動対策になります」と、カン氏は語った。

また、この指標は、初期段階の個人投資家が注目するためのシグナルでもあるとカン氏はいう。

「公開市場への道筋が広がります。ここで株価が上昇する企業がわかります。これが我々やベンチャーキャピタルの世界にいるすべての人に示唆するのは、この指標が好調なときには、イグジットまでの道筋が好転するということです」と、同氏は述べている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Energy Impact Partners気候変動持続可能性二酸化炭素燃料電池3Dプリント

画像クレジット:Energy Impact Partners

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)