eコマースEtsyが英Depopに続き「ブラジルのEtsy」ことElo7を約240億円で買収

若いユーザーをターゲットにしたソーシャル販売に足を踏み入れ、そして欧州での事業を本格的に拡大するためのDepop買収という巨額の取引に続き、Etsy(エッツィー)はまたもリーチを拡大する大きな取引を明らかにした。今回の対象は南米だ。EtsyはElo7を2億1700万ドル(約240億円)で買収すると発表した。Elo7はクラフトクリエイターに人気のマーケットプレイスで「ブラジルのEtsy」と言われている。

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Etsyはすでにブラジルで事業を展開しているが、ブラジルで最も大きな10のeコマースサイトの1つであるElo7はアクティブバイヤー190万人、アクティブセラー5万6000人、そして販売アイテム800万点を擁し、Etsyはブラジルでプレゼンスを大幅に高めることになる。

Depop(Etsyに16億ドル[約1770億円]で買収された)とReverb(Etsyが2016年に買収した楽器マーケット)と同様、Elo7は独立ブランドを維持し、現在の経営陣がブラジル・サンパウロの本社で指揮を取る。

今回のElo7買収はEtsyのCEOであるJosh Silverman(ジョッシュ・シルバーマン)氏が描く統合のシナリオを強調するものだ。シルバーマン氏はeコマース業界に長く身を置き、買収全盛期だった頃のeBayにも在籍した。

「Elo7は『ブラジルのEtsy』であり、目的やビジネスモデルは当社のものと似ています」とシルバーマン氏は声明文で述べた。「最近のDepop買収合意に続き、ユニークなマーケットプレイスをまた1つEtsyファミリーに持ってくることに胸躍らせています。この取引は当社にとって南米における足掛かりとなります。現在Etsyは南米でそれほど大きな顧客ベースを持っておらず、浸透が不十分なeコマース地域です。Elo7の優秀な経営陣と従業員をEtsyファミリーに迎え入れることを楽しみにしています」。

よりアグレッシブな成長モードに向かっているEtsyにとって興味深い動きだ。eコマース業界ではこれまで、企業はオーガニックではない形、特に同じ業界の企業あるいは新しく参入したい分野の企業の買収を通じて事業を拡大してきた。この手法はeBay、Amazon、Groupon、その他多くの企業がとってきたものだ。

おそらくeコマースが成熟してきたためかもしれないが、Amazonは巨大になりすぎて参入障壁が高くなっている。そしてそうしたモデルの「クローン」と呼べる企業に貼られた負のレッテルのようなものを世界のあちこちで目にするようになっている。

そのため、Etsyがこのケースにまさしく当てはまる買収を行うというのは興味深い。発表では、2社の事業モデルのシナジーによって囲い込みが簡単なものになると指摘した。これはElo7によって強調されるものでもある。Elo7はこれまでにAccel、Monashes、Insight Partnersといった投資家から1800万ドル(約20億円)を調達した。

「Etsyは我々にとって常にインスピレーションであり、参考にするものでもありました。EtsyのミッションやカルチャーはElo7のものとかなり近く、Etsyの一部として成長に向けた旅を続けることに興奮しています」とElo7で長らくCEOを務めてきたCarlos Curioni(カルロス・クリオニ)氏は述べた。「Elo7のマーケットプレイス、コミュニティ、チームがブラジルにおける我々の最大限の可能性を十分に引き出すために、Etsyのプロダクトやマーケティングの専門性を活用することを楽しみにしています」。

ブラジルはオーガニックでない買収戦略を展開するのに真に主要なマーケットだ。同国は人口、購買力、デジタルデバイス浸透度合い(特にスマートフォン)において世界で最も大きなeコマースマーケットの1つだ。多くの成熟したマーケットではeコマース成長は停滞に直面していて(パンデミックによる2020年の44%成長を除く)、米国のeコマース成長は15%程度とパンデミック前に比べて緩やかだが、ブラジルのeコマースは活況を呈している。浸透率はまだ低く、成長要因はそろっている。Etsyは2024年までにブラジルのeコマースが26%成長すると予想する数字を引用している。

「最近のDepop買収取引に続き、Elo7の買収を発表できることをうれしく思います。いずれもEtsyの資本活用のための高いハードルをクリアするエキサイティングな会社です」と同社のCFO、Rachel Glaser(レイチェル・グレイザー)氏は声明文で述べた。「当社の基幹事業Etsy.comマーケットプレイスの成長を引き続き促進するのに加え、DepopとElo7をEtsyファミリーに統合することに注力しています。Reverb、Depop、そしてElo7は今後も才能ある権限を委ねられた経営陣によって運営され、価値創出を加速させる方法でブランドにまたがる主要な機能をつなげ、個々の合計より全体の価値を高めます」。

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タグ:Etsy買収ネットショッピングブラジル

画像クレジット:Philippe Perreaux / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

eコマースEtsyが中古品も扱う英国のZ世代向けマーケットプレイスDepopを約1780億円で買収

eコマース業界におけるかなり大きなニュースが6月2日、欧州から届いた。手芸クリエイターやスタイルに関心のある人がさまざまなアイテムを発見したり購入したりできる、ニューヨーク拠点のマーケットプレイスEtsy(エッツイ)が、ソーシャルショッピングという新たなアプローチでミレニアル世代とZ世代の消費者をターゲットにしているロンドン拠点のマーケットプレイスDepop(デポップ)を買収すると発表した。買収額は16億2500万ドル(約1780億円)で、Etsyは大半をキャッシュで支払う取引だとしている

わずかな差で、今回の取引はEtsyにとってこれまでで最大の買収ではない。同社はこの他に7件の買収を行ったが、ほとんどが10億ドル(約1095億円)以下だった。とはいえ、欧州のeコマースにとっては大きな買収で、ビジネスモデルの中でも特に若い、そして、あるいはよりクリエイティブなユーザーをターゲットとしているコマースモデルを構築している企業にとってはかなり心強いものだ。

Depopのユーザーの90%ほどが26歳以下で、EtsyはDepopのそうした若い人々やそのコミュニティにアクセスする大きな機会を手にするが、Depopはより多くのコンテンツや若い買い物客をEtsyに持ってくる橋渡しのように機能しそうだ。Etsyは若い人に目を向け始めたが、かなりの数の若くないユーザーも抱えている。同社は上場企業であり、直近の時価総額は200億ドル(約2兆2000億円)を超えている

Depopが最後に資金調達したのは2019年のようで(6200万ドル、約68億円のラウンド)、ユーザー1300万人を抱えて米国で急成長中と当時は絶好調だった。それから約2年、同社のユーザー数は2100万人を超え、その多くはスタイリストやデザイナー、アーティスト、コレクター、ビンテージ販売者などで、米国(Etsy最大のマーケットだ)とホームマーケットである英国(こちらもEtsyの大きなマーケットだ)でかなりのユーザーを抱えている。

Etsyにとってこれはボリュームゲームだが、必ずしも最初から利益をともなうわけではない。2020年のDepopの流通総額は6億5000万ドル(約712億円)だったが、売上高はわずか7000万ドル(約77億円)で、いずれも前年は100%増だった。

ただし、Etsyが自社の成長についてのとらえ方、特に衣服、家庭用品、そして消費財の買い物という分野における反Amazonという点で、Depopの精神は有望だ。Depopはまた現代の風潮にもぴったり合っている。2020年はeコマースが急成長したばかりでなく、人々が地元で買い物したり個人をサポートしたりし、またこれまでよりも中古品を買うようになった結果、零細事業や家内工業が繁盛した。Depopが強みを持っている分野だ。

「Z世代にとっての再販のホームだと我々が信じているDepopがEtsyファミリーに加わることに胸躍らせています。Depopは活気がある二面性のあるマーケットプレイスで、情熱的なコミュニティ、高度に差別化されたユニークなアイテムの提供をともなっています。そして我々はさらなる展開の大きな可能性を確信しています」とEtsyのCEOであるJosh Silverman(ジョッシュ・シルバーマン)氏は声明文で述べた。「Depopのワールドクラスの経営陣と従業員はこのコミュニティを育て、EtsyのDNAそしてKeeping Commerce Humanというミッションとよく一致している方法でオーガニックで正真正銘の成長を推進するというすばらしい仕事を成し遂げました。我々は専門性を共有するすばらしい機会、それぞれに異なる巨大な「ハウス・オブ・ブランド」ポートフォリオ、そしてかなり特別なeコマースブランドになる成長シナジーを目にしています」。

シルバーマン氏はeBayで何年もShopping.comを率いた経歴を持ち、これはEtsyの成長を今後どのようにとらえるか考えるときに考慮するに値するものだ。

DepopのCEOであるMaria Raga(マリア・ラガ)氏は次のように述べた。「我々はDepopを次世代がユニークなファッションを見つけるために訪れ、買い物方法を変えるコミュニティの一部になる場所にするというすばらしい旅をしています。当社のコミュニティは新たなトレンドを確立し、古いものから新しいものをつくることで新しいファッションシステムを創造する人によって構成されています。彼らは衣服のためにDepopにやって来ますが、カルチャーのためにとどまります。当社はいま、Etsyファミリーの一員としてジョッシュと彼のチームの専門性、Depopのものと一致する価値観を持つ大企業のリソースの恩恵を受けながら、エキサイティングな躍進を遂げようとしています」。

米国と英国の当局の承認やクロージング条件次第ではあるが、買収は2021年第3四半期に完了する見込みで、取引完了後はEtsy、そして2019年に買収された楽器マーケットプレイスReverbとともにDepopは別のブランドとして運営されるとEtsyは話した。

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画像クレジット:Paul Zimmerman / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi