飲食店の無断キャンセルや後払のリスクを保証するGardiaが伊藤忠商事の子会社に

Gardiaは12月16日、伊藤忠商事の連結子会社になったことを発表した。具体的には、同社の発行済み株式の90%を保有するフリークアウト・ホールディングスが、伊藤忠商事に株式譲渡したことにより親会社が変わる。

Gardiaは、飲食店や宿泊施設における「予約の無断キャンセル」(No Show)に対するリスク保証や、サブスクリプション型サービス提供事業者へのリスク保証サービスなどを提供してきた、2017年設立のスタートアップ。最近では、スマートフォンなどを使って決済できるVisaプリペイドカード「バンドルカード」の後払い決済事業者として、与信から決済、回収、保証までのサービスをワンストップで提供している。売上高は設立2期目で10億円超に達しているという。

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伊藤忠が親会社になった背景は、Gardiaの主力事業であるリスク保証サービスを支えるプラットフォーマーおよび損害保険会社との連携強化、後払い決済サービスの基盤となる豊富な資金力、グローバル展開におけるネットワークが不可欠という判断によるもの。

なお、ネット広告事業などを手掛けるフリークアウト・ホールディングスは、伊藤忠から出資を受けており、これまでも共同でデータを活用したマーケティング事業を進めていた。今回のGardiaの株式譲渡は、両社の提携関係から生まれたものと考えられる。

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Gardia(ガルディア)は6月12日、バンクが始めた新しい決済手段「モノ払い」に対する、独自の与信審査サービスと債務不履行リスクに対する保証サービスを提供開始した。

Gardiaは、飲食店などでの予約に対する無断キャンセルや代金後払いなどのリスク保証サービスを展開している2017年設立のスタートアップ。光本勇介氏が率いるバンクは、品物の写真を撮るだけで査定額が即時算出されて現金化できる「CASH」、航空券やホテル宿泊などの費用で後払いで旅行に行ける「TRAVEL Now」などのサービスを展開している。

今回バンクが始める新決済手段「モノ払い」とは、購入したい商品の決済時に現金やクレジットカードではなく、手元にある品物を使って決済できる。前述のCASHのシステムが利用されており、手元にある商品の写真を撮れば査定額が判明するので、その査定額ぶんで新しい買い物ができるという仕組みだ。

本日から、エボラブルアジアが運営する総合旅行プラットフォーム「エアトリ」と、nano・universe(ナノ・ユニバース)が運営するオンラインストアで「モノ払い」を利用できる。

新興サービスのリスクを支えるGardiaが食べログで無断キャンセル保証を開始

これまでにTechCrunch Japanで取り上げたことがある以下のサービスには、ある共通点がある。何だかお分かりになるだろうか?

アイテム買い取り「CASH」、宿泊権利売買の「Cansell」、チャージ式Visaプリペイドカード「バンドルカード」、後払い専用旅行アプリ「TRAVEL Now」、LINEで旅行予約ができる「ズボラ旅」、オンラインプログラミング教室「TechAcademy」……。

これらのサービスはいずれも、リスク保証会社Gardiaのサービスを利用しているのだ。

11月20日、新たにGardiaと提携したのは、レストラン検索・予約サイト「食べログ」のカカクコム。Gardiaが展開する「No Show(無断キャンセル)保証サービス」の提供を受け、食べログでは「食べログ店舗会員サービス」を利用する飲食店を対象に、「ネット予約無断キャンセル保証サービス」をスタートした。対象店舗は、予約客の無断キャンセル時に受けた金銭的被害を保証されるようになる。保証に関する手続きについては、Gardiaと食べログが飲食店を共同でフォローする体制を組むという。

No Show保証サービスはGardia設立当初の2017年10月から提供されているサービスだ。飲食店のほか、ホテルなどの宿泊施設や美容院など、予約が発生するすべてのサービスに対して、保証サービスを提供。予約客の無断キャンセルによるNo Show被害に対して、店舗へ原則として100%の被害金額を保証する。

食べログのほかに、前述したCansellや、グルメ情報&予約サイト「favy」、飲食店向け予約台帳システム「ebica」などもGardiaと提携し、No Show保証サービスを利用。11月15日には導入事業者数が5000店舗を突破したことを発表している。

飲食店向けのNo Show対策サービスは、Gardiaの保証サービスだけではない。予約台帳システムのトレタは無断キャンセルに対する「お見舞金サービス」を提供するほか、11月1日に予約トラブル防止アプリ「トレテル」をローンチ。電話での予約客にもキャンセルポリシーを明示する仕組みを提供する。また予約顧客管理システム「TableSolution」を提供するTableCheck(旧ベスパー)も「キャンセルプロテクション」を提供。11月2日にはトレタと同様に、電話予約向けのサービスを発表している。

こうしたNo Show対策の動きは、経済産業省の音頭で「No Show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」がまとめられたこともあり、活発になっている。この対策レポート発表を受けて、11月1日には「無断キャンセル対策推進協議会」が設立され、トレタ、favy、ブライトテーブル、ポケットコンシェルジュ、USEN Mediaの5社が賛同企業として参画している。

こうした動きの中で、Gardia代表取締役社長の小山裕氏は「飲食・宿泊での無断キャンセル、No Showへの対策として、保証、つまり被害をお金で解決するというNo Show保証は、世界的にもないのではないか」と自社サービスの特性について述べている。

「民法上の“保証”の概念は新しくはない。これをオンライン予約やサブスクリプションなどの新しく現れたサービスに当てはめて、適用できるようにしようというのが、No Show保証をはじめとしたGardiaのリスク保証サービスだ」(小山氏)

小山氏は「Gardiaの思想の根本は、キャンセルや持ち逃げ、踏み倒しなどの不正による被害を是正したい、ということ」と語る。そこで、Gardiaでは「被害が起きてからの保証もそうだが、被害が起きる前の時点での与信や不正検知などの機能、判断軸もパートナーにリアルタイムに提供している」という。

「どんな与信や不正検知も、100%を保証することはできない。そこで判断から漏れて起こった不正に対しては、Gardiaで保証しますよ、という形を取っている。つまり不正が起こる入口と起こった事後の2面で、防止と保証という形で被害に対する課題解決を行っている」(小山氏)

「リスク保証は必要なサービス。誰かがやらなければ」

クレジットカードの不正利用では、カード会員である個人は手厚く保護されているのに対し、EC店舗などの加盟店への手当ては、以前は不十分だった。店がいったん商品を発送した後で不正が発覚した場合、商品は戻ってこないが、カード会社から売上は取り消される(チャージバック)。

小山氏は2012年、決済に特化した保証事業会社に創業メンバーとして参画。そこで、チャージバックで加盟店が被る損害を解決したいと、チャージバック保証サービスを開発・ローンチした。そして5年間、このチャージバック保証に携わった後、2017年10月にGardiaを設立している。

「当時、決済以外の分野で第2・第3の事業として考えていたリスク保証を今、Gardiaでサービス化している。リスク保証は必要なサービス。誰かがやらなければならない。そう考えていたところに、フリークアウトの佐藤(裕介)氏との出会いもあって、会社を設立することになった」(小山氏)

Gardia代表取締役社長の小山裕氏

Gardiaは、No Show以外でも、冒頭に上げたようなサブスクリプションや即現金化サービス、後払いサービスなどにも対応。こう言っては失礼だが、ぱっと見た感じ“ビジネスとして成り立つのかな”と思うような、大胆で新規性の高いビジネスにまつわるリスクを中心に、保証を提供している。

小山氏は「世の中がUXを重視するようになってきている。ネットサービスやSNSの発達によるユーザーの変化もあって、“かんたん”に“今すぐ”使いたい、予約したいというニーズが強くなっている」とこうした新サービスの傾向を分析する。

そして「UXを重視し、サービスをかんたんにすることは、企業にとってはリスクが相対的に上がるということ。こうしたビジネスのトレンドに内在するリスクを何とかしたい」と語っていた。

アプリで作れるVisaプリペイドカード「バンドルカード」に後払い式「ポチッと」チャージ機能追加

スマホアプリからチャージ式のVisaプリペイドカードが発行できる「バンドルカード」。4月17日、カンムが提供するこのサービスに、カードへのチャージが後払いでできる「『ポチッと』チャージ」が新機能として追加された。

バンドルカードは、生年月日と電話番号さえアプリに登録すれば、誰でも“最速1分で”ネット決済専用のバーチャルカードが作れるサービスとして2016年7月に発表された。当初はiPhone版のみ、同年冬にAndroid版もリリースされた。クレジットカードと違って先にチャージを行うため、与信審査が不要。10代の学生や主婦、高齢者でもすぐにカードが発行できて、ネットでの買い物に使うことができる。また希望者は、リアル店舗で使えるプラスチックのカードを持つことも可能だ。

クレジットカードの加盟店で使えるプリペイドカードは「au WALLET」(Master)や「ソフトバンクカード」(Visa)、「LINE Payカード」(JCB)などの登場で知られるようになり、利用が広がっている。一方で「チャージが面倒という点がプリペイドタイプのカードの課題だ」とカンム代表取締役の八巻渉氏は言う。

「『1分でカードが作れる』とは言うものの、バンドルカードはチャージをしなければ使うことはできない。コンビニに行かなければチャージできない、という面倒さが、カードの発行や利用のハードルとなっている」(八巻氏)

そのハードルを取り払うために導入されたのが、今回の「ポチッと」チャージだ。バンドルカードアプリで生年月日・電話番号に加えて氏名とメールアドレスを登録することで、1回あたり最大2万円までならその場でチャージが完了。チャージした金額に手数料を加えた額を、後からコンビニやATMなどで払う、後払い方式のチャージサービスである。

「ポチッと」チャージの導入により、バンドルカード新規発行からチャージまでが180秒で完了するようになると八巻氏は話す。

「EC市場の伸びにより、カードでの支払いの機会は増えているが、20代の男性の75%はクレジットカードを持っていない。またクレジットカードを持っていても、あまり使わないという人も多く、日本のクレジットカード利用率は実は半分以下という調査もある。その理由は『使い過ぎが気になる』『セキュリティなど安全性に不安がある』など『クレジットカードは怖い』という認識から来ているものだ」(八巻氏)

八巻氏は「プリペイドタイプのカードなら、使い過ぎの心配がない。また支払いに利用するとアプリでプッシュ通知が来る仕組みにすることで、金額の管理も簡単になるし、他人に使われてもすぐに分かり、キャンセルや利用停止の届け出もすばやくできる」とバンドルカードのメリットを述べる。

さらに「ポチッと」チャージ導入により、シンプルな決済体験の提供と、日常で少し足りないお金のニーズを満たすことによる経済活性化への貢献を実現したい、と八巻氏は言う。

「バンドルカードの20〜34歳までのユーザーに調査を行ったところ、回答者の約6割が『月に自由に使えるお金は3万円以下』、そのうちの4割が『自由に使えるお金が足りていない』と回答している。足りない金額は2万円以下という少額ニーズが大半だ。このことから、2万円以下の足りないお金のニーズを即満たすことに意義があると考えた」(八巻氏)

また日本の最低賃金の平均は848円に上がり、失業率も3%を切る状況となっていることに触れ、八巻氏は「ほとんどの人が1日8時間、3日働けば2万円強のお金を手に入れることができるのが、今の日本の環境。『タイムセールで見つけた服を今買いたい』とか『すぐ売り切れるチケットや限定品を手に入れたい』といったニーズに対して、『ポチッと』チャージで背中を押すことで、お金の流れを健康的にして、経済の活性化に貢献することができると考える」と話している。

「ポチッと」チャージの手数料は、1万円までのチャージで500円、1万1000円から2万円までのチャージで800円。チャージした翌月末までにコンビニやATM、ネットバンキングで支払う必要がある。

「ポチッと」チャージの決済部分を提供するのは、フリークアウト・ホールディングスグループ傘下のリスク保証サービス企業、Gardiaだ。カンムは既に4億円の出資を受けているフリークアウト・ホールディングスと、1月31日に包括的資本・業務提携を締結。その際に業務提携内容のひとつとして「Gardiaによるカンムの事業にともなうリスクの保証」が挙げられていた。

(ちなみに同じ1月31日に経営統合が発表された、オンライン決済サービスのコイニーとオンラインストア運営のストアーズ・ドット・ジェイピー(旧ブラケット)の持株会社ヘイとも、フリークアウト・ホールディングスは資本業務提携を実施。フリークアウト、カンム、ヘイの3者でFinTechサービスに取り組むことを決めている)

Gardiaはカンムから手数料を受け取って、後払いのための与信・決済機能を提供する。バンドルカードでは、これまでにもNTT docomoやソフトバンク、ワイモバイルなどの携帯キャリア決済でチャージする手段を備えているが、これらキャリアと同じ立ち位置にGardiaが新たに加わる形となる。

Gardiaでは、同社の展開する保証サービスにまつわるデータが蓄積される中で、さまざまな傾向を分析し、新しい与信・決済システムの構築につなげることを目指している。「ポチッと」チャージでカンムと連携することで、その流れを加速させたい考えだ。

写真左からカンム取締役COO 竹谷直彦氏、代表取締役社長 八巻渉氏、Gardia代表取締役社長 小山裕氏

カンムは、4月現在で40万強のバンドルカードのダウンロード数を、2018年中に150万に伸ばすことを目指すとしている。

八巻氏は「長期的には、スマホ上のペイメント普及による『お財布2.0』を目指す」と語る。「アメリカの支払いでの現金比率は16.7%。また北京のコンビニでの支払いデータなのでバイアスはあるかもしれないが、中国ではAlipayやWeChat Payなどのスマートペイメントが普及しており、現金比率は11%となっている。一方、日本の現金での支払い比率は51.9%と過半数。まだまだスマートペイメントの伸びしろはある」(八巻氏)

「『お財布2.0』にはスマホ決済、個人間送金、信用保証の3つの領域があるが、カンムではたまったユーザーデータを活用し、信用保証の仕組みを提供していきたい」と八巻氏は将来の展望について述べている。