新興サービスのリスクを支えるGardiaが食べログで無断キャンセル保証を開始

これまでにTechCrunch Japanで取り上げたことがある以下のサービスには、ある共通点がある。何だかお分かりになるだろうか?

アイテム買い取り「CASH」、宿泊権利売買の「Cansell」、チャージ式Visaプリペイドカード「バンドルカード」、後払い専用旅行アプリ「TRAVEL Now」、LINEで旅行予約ができる「ズボラ旅」、オンラインプログラミング教室「TechAcademy」……。

これらのサービスはいずれも、リスク保証会社Gardiaのサービスを利用しているのだ。

11月20日、新たにGardiaと提携したのは、レストラン検索・予約サイト「食べログ」のカカクコム。Gardiaが展開する「No Show(無断キャンセル)保証サービス」の提供を受け、食べログでは「食べログ店舗会員サービス」を利用する飲食店を対象に、「ネット予約無断キャンセル保証サービス」をスタートした。対象店舗は、予約客の無断キャンセル時に受けた金銭的被害を保証されるようになる。保証に関する手続きについては、Gardiaと食べログが飲食店を共同でフォローする体制を組むという。

No Show保証サービスはGardia設立当初の2017年10月から提供されているサービスだ。飲食店のほか、ホテルなどの宿泊施設や美容院など、予約が発生するすべてのサービスに対して、保証サービスを提供。予約客の無断キャンセルによるNo Show被害に対して、店舗へ原則として100%の被害金額を保証する。

食べログのほかに、前述したCansellや、グルメ情報&予約サイト「favy」、飲食店向け予約台帳システム「ebica」などもGardiaと提携し、No Show保証サービスを利用。11月15日には導入事業者数が5000店舗を突破したことを発表している。

飲食店向けのNo Show対策サービスは、Gardiaの保証サービスだけではない。予約台帳システムのトレタは無断キャンセルに対する「お見舞金サービス」を提供するほか、11月1日に予約トラブル防止アプリ「トレテル」をローンチ。電話での予約客にもキャンセルポリシーを明示する仕組みを提供する。また予約顧客管理システム「TableSolution」を提供するTableCheck(旧ベスパー)も「キャンセルプロテクション」を提供。11月2日にはトレタと同様に、電話予約向けのサービスを発表している。

こうしたNo Show対策の動きは、経済産業省の音頭で「No Show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」がまとめられたこともあり、活発になっている。この対策レポート発表を受けて、11月1日には「無断キャンセル対策推進協議会」が設立され、トレタ、favy、ブライトテーブル、ポケットコンシェルジュ、USEN Mediaの5社が賛同企業として参画している。

こうした動きの中で、Gardia代表取締役社長の小山裕氏は「飲食・宿泊での無断キャンセル、No Showへの対策として、保証、つまり被害をお金で解決するというNo Show保証は、世界的にもないのではないか」と自社サービスの特性について述べている。

「民法上の“保証”の概念は新しくはない。これをオンライン予約やサブスクリプションなどの新しく現れたサービスに当てはめて、適用できるようにしようというのが、No Show保証をはじめとしたGardiaのリスク保証サービスだ」(小山氏)

小山氏は「Gardiaの思想の根本は、キャンセルや持ち逃げ、踏み倒しなどの不正による被害を是正したい、ということ」と語る。そこで、Gardiaでは「被害が起きてからの保証もそうだが、被害が起きる前の時点での与信や不正検知などの機能、判断軸もパートナーにリアルタイムに提供している」という。

「どんな与信や不正検知も、100%を保証することはできない。そこで判断から漏れて起こった不正に対しては、Gardiaで保証しますよ、という形を取っている。つまり不正が起こる入口と起こった事後の2面で、防止と保証という形で被害に対する課題解決を行っている」(小山氏)

「リスク保証は必要なサービス。誰かがやらなければ」

クレジットカードの不正利用では、カード会員である個人は手厚く保護されているのに対し、EC店舗などの加盟店への手当ては、以前は不十分だった。店がいったん商品を発送した後で不正が発覚した場合、商品は戻ってこないが、カード会社から売上は取り消される(チャージバック)。

小山氏は2012年、決済に特化した保証事業会社に創業メンバーとして参画。そこで、チャージバックで加盟店が被る損害を解決したいと、チャージバック保証サービスを開発・ローンチした。そして5年間、このチャージバック保証に携わった後、2017年10月にGardiaを設立している。

「当時、決済以外の分野で第2・第3の事業として考えていたリスク保証を今、Gardiaでサービス化している。リスク保証は必要なサービス。誰かがやらなければならない。そう考えていたところに、フリークアウトの佐藤(裕介)氏との出会いもあって、会社を設立することになった」(小山氏)

Gardia代表取締役社長の小山裕氏

Gardiaは、No Show以外でも、冒頭に上げたようなサブスクリプションや即現金化サービス、後払いサービスなどにも対応。こう言っては失礼だが、ぱっと見た感じ“ビジネスとして成り立つのかな”と思うような、大胆で新規性の高いビジネスにまつわるリスクを中心に、保証を提供している。

小山氏は「世の中がUXを重視するようになってきている。ネットサービスやSNSの発達によるユーザーの変化もあって、“かんたん”に“今すぐ”使いたい、予約したいというニーズが強くなっている」とこうした新サービスの傾向を分析する。

そして「UXを重視し、サービスをかんたんにすることは、企業にとってはリスクが相対的に上がるということ。こうしたビジネスのトレンドに内在するリスクを何とかしたい」と語っていた。

食べログ、「東京都の月間口コミ数ナンバーワン」と発表したRettyに反論

東京における月間口コミ投稿数の遷移

7月2日開催の事業戦略説明会で、「東京都において、国内最大のグルメサイトの月間口コミを超えた」と語り、サイト名こそ自ら出さないものの、東京都内の口コミ数でグルメサイト「食べログ」(MAUで6859万人で国内最大のグルメサイトだ)を上回ったと発表したグルメサイト「Retty」運営のRetty。その発表内容に対して食べログを運営するカカクコムが「Retty株式会社発表の弊社サイト「食べログ」口コミデータの訂正」という名称で反論のコメントを発表している。

食べログは200文字以上のコメントのみ「口コミ」として計測

食べログサイドの説明によると、実際にRettyに対して事実関係を確認したところ「口コミ数」自体が異なる基準で算出されているのだという。具体的には以下の通りだ。

■「食べログ」の口コミ数の基準
200文字以上のコメントを含む口コミ数

■「Retty」の口コミ数の基準
コメント無し、写真無しのものでも、スコアと利用シーンなどのお店の魅力が伝わるものを含んだ投稿数

食べログでは、「おいしい」「行きました」だけの短い口コミや、「(写真がないので)本当に行ったか分からないけど口コミしました」といった口コミはそもそも口コミではない、そんなノイズを排除した数字を出していると言っているわけだ。食べログがRetty基準で計算した場合の月間口コミ実数は以下の通り。Rettyの月間口コミ数は発表されたグラフから見る限り5万件弱(実数は現在同社に確認中)。まだまだ倍近くの数があるというわけだ。逆に言えば、Rettyが食べログの月間口コミ数の半分になるまで来ているとも見られるが。

4月 9万6802件
5月 10万5362件
6月 9万8527件

Rettyの投稿は「東京都が大半」と主張する食べログ

食べログはこれに加えて、Retty基準での全国の口コミ数も発表している。直近3カ月で毎月30万件の口コミが投稿されており、「東京都の投稿が大半であるRetty社に対して、食べログでは東京都以外の全国各都市においても活発に投稿が行われております」としている。

4月 29万7086件
5月 33万6333件
6月 29万7284件

Rettyは累計口コミ数170万件とは発表しているものの、東京以外での口コミ数については発表していない。昨日の説明会でもRetty CFOの奥田健太氏が「大阪をはじめとした都市部を中心に成長している」といった旨を説明するにとどまっている。そのため具体的な数字に関してはなんとも言えないけれども、東京での口コミが中心になっているのは間違いないだろう。

その根拠となるのはRettyが実名制を採用していること。RettyはFacebookログインを使った実名制のサービスだ。実際の口コミ数は非公開でも、「口コミを投稿することが可能なユーザー数」を調べることは容易だ。

Facebookの広告ツールの数字をもとにすると、国内の18歳〜65歳以上のFacebookユーザーは2300万人、そのうち東京都のユーザーは450万人(周辺のエリアでは神奈川県:230万人、埼玉県:120万人、千葉県:120万人、エリア合計で920万人)、大阪府は210万人(周辺エリアでは京都府:65万人、兵庫県:110万人、奈良県:65万人、エリア合計で450万人)、愛知県は150万人となっている。東京と大阪、もしくはそれぞれの周辺地域を含んだ数字を比較しても東京のFacebookユーザーは2倍という状況なのだ。この数字だけでもある程度口コミが東京に集中していることは想像できると思う。

食べログの発表についてRettyに聞いたところ、以下のような回答が返ってきた。

弊社として「口コミ」の定義を、コメント投稿に加えて、ユーザーにより選択された「オススメ度」と「利用シーン入力」、「おすすめの食事入力」などユーザーのお店選びの意思決定に資する情報としております。
ここの部分に関して両社の解釈が異なっていると思われます。
競合他社が「Retty社の口コミ数の定義に従った場合の食べログの口コミ数」として発表している数値は、リソース等不明なので詳細わかりかねますが、上記解釈の相違により我々の定義による競合他社の数値とは異なっており、依然、我々の発表した競合他社の数値は、Rettyの定義において正しく算出する上では、間違っていないものと考えています。
従って、競合他社のリリース内容に関しては、弊社はなんらその正確性/妥当性について保証していない点お伝えいたします。

食べログの「文字数も写真もない口コミは口コミじゃない」という意見に対して、Rettyは「文章以外の指標を入力することは、ユーザーの意志決定を助ける立派な口コミだ」としているのだ(もちろん、食べログにも点数をはじめとした各種の指標がある)。

両社の指標の是非については読者の判断にゆだねたい。しかしこうして食べログが緊急のリリース(プレスリリース配信サービスの「PR TIMES」では19時04分配信だった。通常プレスリリースは10時とか15時といったキリの良いタイミングにセットしておくものだ)を出すということは、かつてぐるなびやホットペッパーによる営業力勝負のグルメサイト全盛期の時代から着々とその地位を築いてきたきた食べログが、今度は後発のRettyを意識せざるを得ない状況に来ている、ということは確かだろう。