ガートナージャパン(Gartner)は2月9日、メタバースに関する展望を発表した。2026年までに、25%の人々は、仕事、ショッピング、教育、SNSやエンターテインメントなどで、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになるとGartnerは予測している。メタバースのハイプ(過剰な期待)は、デジタル・ビジネスを拡張する新たなビジネスモデルに移行するきっかけになるという。
Gartnerは、メタバースについて、仮想的に拡張された物理的現実とデジタル化された現実の融合によって創り出される、集合的な仮想共有空間と定義。メタバースは、継続的な没入感(イマーシブ・エクスペリエンス)を提供し、タブレットからヘッドマウントディスプレイまで、デバイスに依存せず、様々なデバイスからアクセス可能としている。
同社アナリストのマーティ・レズニック氏は、「ベンダーは、ユーザーがデジタル化された世界で生活を体験するための空間やサービスをすでに構築している。仮想クラスルームへの出席から、デジタル空間上の土地の購入、仮想住宅の建築に至るまで、これらの活動は現在、別々の環境で行われている。将来的には、様々なテクノロジーやエクスペリエンスにまたがる単一の環境、すなわちメタバースの中で行われるようになる」としている。
デジタル通貨とNFT
また、メタバースは単一のベンダーが所有するものではなく、デジタル通貨とNFT(非代替性トークン)によって実現される、新たなデジタル・エコノミーになると予想。メタバースは、消費者が日々接するあらゆるビジネスに影響を与えるという。
2026年までに、世界の組織の30%がメタバースに対応した製品やサービスを持つ
さらに、メタバースは、働き方にも影響を及ぼすと予測。企業は、仮想オフィスに没入型ワークスペース(没入型テクノロジを利用した仮想オフィス)環境を導入することで、従業員により良いエンゲージメント、コラボレーション、つながりの機会を提供できるとしている。また、メタバースがフレームワークを提供するため、ビジネスの実行においても独自のインフラを構築する必要はない。
さらに、この1年半の間に人気を得た仮想イベントは、今後従来以上にコラボレーティブで没入感のあるつながりの機会やワークショップを提供するという。
企業は、デジタル・ビジネスからメタバース・ビジネスに移行することで、自社のビジネスモデルを、これまでとはまったく違うやり方で拡大・強化できるようになる。2026年までに、世界の組織の30%がメタバースに対応した製品やサービスを持つようになるだろう。
ただし多額の投資は時期尚早、学習・検証・準備するために時間を割くべき
ただし、メタバース・テクノロジーの採用は始まったばかりで部分的であるため、Garnterは、特定のメタバースに対する多額の投資については注意を促している。レズニック氏は、「どの投資が長期的に有効なのか判断するのは時期尚早だ。プロダクト・マネージャーは、競争力を高めるためにメタバースを学習・検証・準備するために時間を割くべき」としている。
メガトレンドの1つ
同社アナリスト亦賀忠明氏は、「メタバースは、従来型の仮想空間を『超えた』もの。リアルの物理空間とバーチャル仮想空間を融合した、フルデジタル化された環境を指す。『メタバースはアバターで参加する仮想空間である』というように単純に捉えるべきではない。
メタバースは、『これから』の話であるため、今すぐに成熟した完璧なメタバースが登場するわけではない。メタバースは将来に向けたビジョン。すべての企業は、メタバースを2030年、またそれ以降に訪れるであろう『New World』に向けた1つのメガトレンドと捉え、インターネット初期と同様これからの将来を展望し、可能性とリスクを洞察することが重要」としている。
同じくアナリストの針生恵理氏は、「メタバースは、デジタル・ワークプレースの議論と実践を新たなステージへとシフトするきっかけをもたらす。メタバースによって、企業は、VR・AR・MRといった単なるテクノロジー採用を超えた、新たなワークプレースを模索していくことになる」と話している。
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